045 スズメバチ
外道蜂の顔面に『病毒』の「毒霧」を「噴射」する。
病毒は細菌というよりウィルスの様な物を大量に生成している様だ。
魔術で生物を生み出すというのはかなり難しい事なので、生物と無生物の間であるウィルスが生成されているのだろう。
厳密にはウィルスともいえないのかもしれないが、病原体ってところも同じだし、いいだろ。
「こっ、こっ、こっ。なんだこれは!小癪な」
「普通に動けてる?」
「こっ、こっ。あああ煩わしい、無性に腹が立つ!殺す!この人間が!」
「病人は安静にしていろよ。そんなんじゃ治る物も治らないぞ」
因みにこれは俺の心からの忠告。どうせ聞き入れないだろうし、聞き入れたらこっちもリーダーたちが復帰するまでの時間稼ぎが出来るだろうし悪い事がないからな。
まあ、それは打算的な部分だけど、それを抜きにしたとしても…
言いたいことだけど。
まあ、向こうからしたら俺のせいだから何言ってんだって感じだろうけど。
「いちいちいちいち、嫌味ばかり言い続ける奴だなあ」
「本心なんだけど」
「うるさい!」
速っ!こいつ!同情するべきじゃなかった。いまだ全然速い!
ゴン
殴られる。転がる。
体がふらつく、結構ダメージが入ってきているのか?
『鑑定』
HP78/266
三分の一、きってる。それに加えて傷口の周りが紫色に変色して膨らんでいる。
もう耐久戦にも限界が来ている。早く、終わらせなきゃ。
別の、攻撃。追加で与えなくては。
ならば使える攻撃は、
「『十頭蛇』」
使う毒は『病毒』、ウィルス製の十の蛇、あの外道蜂に追いすがれ。
《スキル変質確認病原十蛇》
名前変わったっぽいな、じゃ、せっかくだしそっちで。
腕を前に突き出し、手を平らに広げ、指を前に向ける。
「『病原十蛇』」
現れたのは今までの毒々しい色合いの蛇を模した毒柱とは異なり、間違っても美しくなど見えない病的な白を赤紫色で縁取ったような不気味な蛇を象った病原体。
先端はギザギザと大きく裂け、口の中では得体のしれない物が蠢く。
縦横無尽に空間内を動き回り、外道蜂を追い回すそれはどちらかというと美女を追い回す悪役の眷属の様で…
「これが、毒使いの宿命…」
まあでも、容赦はしないさ。気を抜いたらこっちが死ぬ。
走り回る蛇に病原体の蛇は多方向から迫る。
それを外道蜂は躱すが、さらに方向転換して蛇は蜂を追いかける。
しかししょせんは五本しかない、躱しているうちに全ての蛇が一方行から追いかける構図になってしまっていた。
「上手いなぁ」
蛇の動きを変えようと思って気付く。
「これ五本同時に動かせると思ってたけど…」
蛇が、自分で動いてる?
どういう原理だ?制御できないのは怖い、けどこれを使うしかない。
追いつけ追いつけ追いつけ!
その前に、蜂がこっちにたどり着く!
左手!威力の元帥はこの際諦めよう、
無くなった腕のスペースを埋めるように、腕の太さの毒の柱を伸ばせ、
「『毒蛇』」
これが『毒小蛇』の正統進化先だ!
あ、潜り抜けられ、て?
視界の下から『毒蛇』を潜り抜けて現れる外道蜂、視界の端で、その純白の針がきらめく。
迫る針は五本、まずい、さらに毒を注入されたら毒がさらに早く回ってしまって…
針が刺さる。体を駆け巡る痛みと即効性の毒で体が倒れそうになる。
蛇が蜂を食らう蜂が目を見開き硬直する。
「眩暈、が」
外道蜂は足取りがおぼつかず、いまにも倒れそうだ。
「酔っ払いの様な千鳥足」
「この、人、間、があぁ」
そのまま憤死しろ。
息が上がっている、顔がほてっているのか肌色の頬は赤くなっている。倒れ、手を衝き四つん這いで咳をしている。
かなり苦しそうだ。さすがに、これは…
それでも、この外道蜂は充血した目をこちらに向けて俺を睨みつけている。思わず怯む。
この威圧、だてに女王じゃない。
やはり、少しでも生かしておいたら俺の方が殺されそうだ。
この殺し方は生理的に受け付けないが、これしかないのだから仕方ない。ごめんなさい。
「『病原十蛇』」
蛇が、外道蜂に食いつく。
彼女は、口から血を流し横向きに倒れ、苦しそうに呻きながら死んだ。
それが、女王バチの最期だ。
ガン!
何の音だ!?
音の方向を見ると爆炎の中からリーダーが出てきていた。
え……
とっさのことに頭が固まる、それは、まずい。
「リーダー!」
「フェリックス、どうした?」
「逃g」
蜂に食いついていた五匹の蛇が新しい生物を見つけそちらへと走る。
それに引っ張られ、俺の指もそちらへ向く。
「それは、何だ?」
「逃げて、ください!」
目の端から何かが出てくる、そのせいで視界の端が黒く覆われて何も見えない。
頬を伝って方へ落ちたそれは、紫色の毒だった。
もう、毒がここまで…
背後からはものすごい数の羽音。
後ろを振り向くと大量のハチが俺を飛び越して飛んでいく。
ミツバチではなくハチもどきだ。
女王バチを殺されて怒っているのか?
だとしたらなんで俺を殺さなかった?
太会にさっき女王蜂に刺されて連鎖的に死亡したハチもどきの死骸が目に映った。
「この毒が回った時点でもう死んでるも同然ってか?」
リーダー達は…
ローシェさんが何やら大量の岩の集合体で出来た壁で蜂の大群を押しとどめている。
でも蛇の食いつきもあり、壁はもう破壊寸前だ。
視界が黒く塗りつぶされて行き、塗りつぶされるより先に、暗転する。
せめて結末だけは、蛇の処理だけは、
って思ったけど、無理だったか…
「何とか出てこれたはいい物の」
「何なのさ!このハチの大群!」
「どうしたんですか?」
「多分フェリックスが何かやらかした」
「それで、これは…」
壁が瓦解する。蜂の波が押し寄せる。
その隙間を塗って迫るのは
「不気味な白い…蛇?」
「を象った何らかの魔術だろうね、おそらくフェリックス君の」
「フェリックス、何を…」
「私が、断ち切ります」
「やめた方が良い、おそらく無理だ」
「でも、毒も物質です」
「おそらくあれは単なる毒じゃない、もっと細かい、何らかの群体だ。」
「でも、魔術で生物は作れない、フェリックス君、あんなもの、どうやって」
リーダーと呼ばれていた人が剣を振って魔力の刃を飛ばす。
「ローシェ、次の壁を頼む」
「そうだった、ごめんごめん…」
ぶつぶつとローシェさんが魔術の詠唱をした後
「よし、これでどう?」
もうしばらく止める事が出来るようだ。
だが、絶望的な状況なのは誰の目にも明らかだ。
壁には再びひびが入り始めている。今度の壁は半透明の壁であるためにむしろ向こう側がよく見える。襲い掛かってくる五匹の白く不気味な蛇と蜂が壁に噛みついて砕こうとする姿は壁越しに見るだけでも体がすくむ。やっぱり自分は旅団の馬車の中で食器を作っているのがお似合いだったんだ。戦いの場に参加するなんてことするべきじゃなかった。
「嫌だ、もう」
蜂の群れは壁にそって空を覆うように広がり、光を遮る。
そうか、絶望は暗闇の様な物だったんだ。
「全く、さっきの華麗なる逆転劇を見ておいて今出てくる感想がそれかい?人を見る目がないとはこのことだ」
前に出てくる人影があった。
「そうだ、依頼があったっけ」
「へ?」
「では、依頼に応じて今こそ答えを示そう」
「そ、そんなことは!もう、今は…いいんです…」
「やだね、いまさら聞く耳持ってやるわけがないだろう?」
でも、さっきのたとえで言うと
「目は開いているかい?こちらを凝視できているかな?ならよろしい」
一人の魔術師が杖を構える。
「しっかりと目に焼き付けたまえ~、これが君の求めた答え、君の夢に私が与える道しるべさ!」
杖が輝きだす。
「その光は空間を塗りつぶす。
幾条もの光線は散り散りに飛び交う道標。
光はすべて弾け、輝き、彩る。
『強発光』『多条光線』『拡散光』合成、」
さっきのたとえで言うと、希望は光の様なものという事になるのだろうか。
「『複合魔術武装:連鎖拡散光線』」
半透明の壁が砕ける。
大量の蜂が押し寄せてくる。
魔術師の杖が放つ強い光が空間を塗りつぶすように埋めていく、その光に塗りつぶされた中から、四方八方へ光線が飛び出していく。
その光線の途中のあちこちがはじけるように膨らみ、またその中から光線が飛び出してくる。
光線から何本もの光線が飛び出、その光線からも何本もの光線が枝分かれしていく。
もう何も見えないのだ。
暗いからではない、光が強すぎて、眩しすぎて、もう、何も見えないのだ。
「ま、ざっとこんなもんよ」
魔術師は相手方の殲滅を確認すると顔も見せず、背中を向けたまま何事もなかったかのように歩いて行ってしまう
「…マリアナ」
「なんですか?リーダー」
「フェリックスの回収を頼む」
「何でですか?」
「多分ローシェも倒れる、俺はローシェを回収する」
「了解です」
何事もなかったかのように歩いていく魔術師の背中は少しずつ小さくなっていき…
それと同時に少しずつ傾いていく。
その角度が一定に達した時、
バタッ
「やっぱりか」
一人の男性が駆けだす。倒れた女性を担いで再び歩く。
思い出したように振り返り、依頼人へと声をかける。
「まあ、こんな奴だが仲良くしてやってくれ」
「はあ」
一人の魔術師を担いだ剣士と、その後を承認が遅れを取り戻すように小走りで欠けて追いつく。その後を少女が少年を背負って追いかけていく。戦いの後の、帰り道だった。
名前・種・Lv
フェリックス・人・70
攻110/50 防222+45 魔163 精186+25 俊118+2 器118-10
HP273 MP269
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇 病原十蛇
装備 黒覆布 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
こっこっこっ
は咳の音




