043 ミツバチ
さて、これがこの山最後の戦闘かな?
もう山を半分ほど下っている。そしてここにきて遂に今まで何体も出てきた蜂の大本がお目見えだ。
行く先には道を塞ぐように【嵐の花】の茂み、その茂みと半分一体化するようにしてハチの巣があった。
今までのハチもどきたちは多分ここから出てきていたんだろう。にしてもこんな巨大なハチの巣とか恐怖しかないな。でもあの大きさのハチが棲んでいると考えると小さくも感じられる。中にいる数はあまり多くないんじゃないか?
「あれは…ハチの巣?」
「多分そうだと思います」
「取り敢えず燃やす?」
「その物騒な思考止めません?」
「何で?」
「周りの花とかも燃えそうですし」
「え?でもさっきも使ったよ?」
え、この人…え?
「出てきたぞ」
もう出てきたようだ。
今まで通りのハチもどきに加えて、丸っこい体に複眼だけをつけて、触覚すらもなくなった樽の様な蜂も出てきた。
なんだこいつ。
「来るぞ、避けろ」
え?
目の前を見ると樽蜂が突っ込んでくるところだった。
その蜂を何とか躱すと、蜂は方向転換することもなく地面に突き刺
さっていた。
ころっ
蜂の胴体が、針から落ちた?そして膨らんで?…
あ、これ爆発しそう。逃げよ。
ポンッ
ある程度逃げた後に後ろを向くと軽い爆発音とは裏腹にかなり大きく抉れている地面が見えた。
「爆発力強」
こいつら家族というか子孫をなんだと思っているんだ?
こんな使い捨てみたいな効率の悪い事をする種族がいるんだ…
「まだまだ来るぞ」
巣の方を見る。
巣の上には爆弾蜂がずらーっと大量に並んでいた。
「う~む対策しないとやばそうだね~」
「ローシェさんが全部魔術で撃ち落とせば…!」
マリアナさんの言ってることが無茶ぶりすぎる。
「マリアナちゃん鬼畜だね!?」
「まあ、撃ち落とせる限り撃ち落とすけどね」
ローシェさんが岩の弾を撃って一体を攻撃する。ローシェさんの魔術が当たった爆弾蜂は地面に落下した後に爆発した。
「結局意味がない?」
「こっちも試してみます『毒針』」
当たった。その場で破裂した。
「やっぱ意味ない?」
もう少し試してみたいけど…
「さすがにそんな待ってくれないよな」
並んでいたすべてのハチが一斉に飛んでくる。
やっば!
とっさに対応する。
一斉に蜂が飛んできた。どうしよう。
恐らく逃げ切ることは不可能。だったら。
「『黒曜の堅牢』」
大剣は出していない。だからこれが使える。
体から黒い煙が出てくる。その黒い煙は空中で光を受けてきらめくガラスの破片の様な材質の黒い石になる。
その石が全身を少しの隙間もなく覆っていく。
一人の少女はスキルを起動してからすぐに黒曜石の彫像のようになった。
その彫像に、蜂が殺到する。
止まって詠唱していたら爆発で死んでしまいそうなので走りながら詠唱する。しかしながらそのやり方だと当然舌は噛みそうになるし足はもつれそうになるしで色々と大変だ。
「岩薄く作りて我を守れ、これこそが我が盾也」
ブーン
羽音がする。
身を捻って避けて噛みそうになりながらも詠唱を続ける。
「盾枠に並びて我を守れ、これこそが我が壁也」
小石に躓く。あ、まずい。
その前に狙いをつけていたであろう蜂は頭の上を通り抜けていった。でも今助かっても詠唱が続けられるか分からないからな~
それでも何とか立ち上がる。そして目の前に丁度いい岩を見つけた。
そこに背中を預けようとして、思い出した。
あの依頼人は?
周りを見回して見つけた。依頼人のもとに走る。
そうして近づき、
「壁四方を包み屋根となれ、これこそが我が砦也」
よし、出来た。
後は
「『複合魔術武装:岩盾壁砦』」
出来た。
一人の女性と男性をを連なる岩の盾が覆い隠し、爆風から守る。それはまるで岩の盾で作られた砦のようだった。
どう防ぐのが正解だろうか。
防ぐ方法は幾通りも思い浮かぶ。しかし、当然耐久性や持続性などの差異は出来る。
その中でも一番耐久性が高く、持続性に優れる物は…
彼は地面に剣を突き刺した。彼が力を籠めると地面が割れていく。そうして作った地面の日々の中に彼は潜り込み、ひびの上に魔力で障壁を創り、それを維持し続ける。堪えぬ蜂の爆撃によって何度も壊されそうになりながらも彼は障壁を維持し続けた。
躱すのは無限に続かない、俺の戦闘扇子が良いわけではないこともその理由の一つだが、俺は言いたい。圧倒的物量の前に個人が無力なのは当たり前だと。死霊が大量に襲い掛かってきたときは相性の問題とスキル獲得のおかげで何とかなったが今回は何しても爆発するダイナマイトが空から落ちてくるようなものだ。どう切り抜けろと?
躱した蜂が地面に落ちて爆発し、近くにいた蜂が誘爆する。
えぇ…
連鎖的に爆発する機能あるのかよ、それ今は近くにいたのが少なかったからよかったけどもし周りに大量のハチがいる状態だったら爆風だけで死ぬぞ俺。
数匹の爆発の爆風でも俺の黒覆布が随分とたなびき、首が引っ張られる。そろそろ耐えられなくなって吹き飛んでもおかしくない。
まずいな。
両側から迫ってくる蜂。
それを体をそらしたりして運良く躱す。
ただしその後の運はとても悪いが。
両側からきていた蜂が爆発する。近くにいる蜂は前より多い、しかもその蜂の周りにいる蜂もかなり多く…
あれ?これもしかして俺に攻撃してきてる奴全員爆発するんじゃ。
「『瞬間装着』」
上下の鎧を装着する。持っててよかった『瞬間装着』これで、耐えてくれ。
爆音が轟く。
どちらからだろう。どこからだろう。誰のところからだろう。
それを見てみたいという思いはあるが今の私は動けない。動くこともできるがそのためにはスキルを解除することが必要であり、そうすると蜂の攻撃によって死んでしまうので今は我慢しないと。
爆音に不安を募らせながら祈る。
全員生きていますように。
爆音が轟く。
その音を男性と女性は砦の中で聞いていた。
「い、今の音って…」
「うるさい!気が散る!無視して」
「で、でも…確認しないと…」
「だ~か~ら、うるさいって。こっちはこっちで生き残ることに必死なんだからほかを構う余裕はない!」
不安なのは分かる。もしそれがリーダーなら不安はない。だけどそれ以外の二人だととても心配だ。しかし見に行くわけにはいかない。大丈夫、信頼しよう。そうしないと被害を増やしかねない。
爆音が轟く。
飛び出したくなる衝動に駆られる。
落ち着け。落ち着け。
焦って短絡的な行動をして状況が崩壊することが一番良くない。
落ち着いて周囲を確認する方法を探せ。
何がある。何が出来る。
そうだ、海魔との戦いで使ったあの連絡用の魔道具。
それを取り出し、全員に対して連絡を行う。連絡の内容はシンプルだ。
「無事か?」
二人の反応があった。
しかし一人の反応は一向に無かった。
爆風と爆炎が収まった。
俺は生きている。黒覆布は爆風で跳んで行ってしまったが多分近くにあるだろうから今は探さない。
上下の鎧は壊れてしまった、あれだけの爆風を耐えてくれたのだからとても質のいい鎧だったのだろう。ドミニク師匠はさすがだ。
服は普段着で、戦闘の場とはとても不釣り合いだ。
懐かしいな、サーター山での戦いを思い出す。でも今は籠手も短剣もある。実質的にどちらか一方しか使えないのが惜しい。
もう一度、起き上がる。
他の人たちは防御を固めている様だ。
俺の方に向かってきている蜂はすべて先ほどの爆発で吹き飛び、もういない。
巣の方へと俺が歩いていくと今まで見てきた見慣れたハチもどきが出てきた。
「ようやく、本番って訳かな?もうだいぶ消耗しているんだけど」
蜂は全然攻撃してこない、なんでだ?
よく観察してみる。そうすると蜂は少しずつだが動いていて、今も陣形を組みつつあることが分かった。こいつら形を整えることから入りやがった。でも今攻撃しても買えりうちに会う事は確定している。
どっちにしろ他の人たちが出てくるのを待つしかないんじゃないだろうか?
「あぁー、もしかしてこれ、リーダーたちが出てくるより陣形組み上がってハチもどきどもが攻撃してくる方が早いのか?」
だとしたら現状でもう詰んでる気がする。
救いの手が欲しいな。
なんて
「やめい」
お?マジで救いの手?
「何故貴様らはそう…殲滅殲滅しか能がないのだ」
いやあ、膨らんだ希望が穴の開いた風船のようにしぼんでいく。
だって、ほら、声の聞こえる方向とかさ、内容的に、ね。
むしろ逃げたくなってきた。
この圧倒的強キャラ感というか他者を踏みにじりそうな女王っぽさというかサイコパス感というか…
無音の足音と共に蜂の巣の奥から人型の何かが出てきた。
名前・種・Lv
フェリックス・人・68
攻107/50 防216+45 魔159 精181+25 俊115+2 器115-10
HP266 MP262
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇
装備 黒覆布 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
フェリックスの連絡用魔道具はぶっ壊れた。




