042 茂みの山を越えて
体を引いて躱して後ろに矢を放ち一匹仕留める。
跳び上がり上に跳んでいくもう一匹をもう一本の矢で撃ち落とす。
三本矢を抜いて一本で一匹ずつ倒していく。
数が順調に減っていく。
周りを見渡し、どの個体にも変化がないことを確認しながら着実に数を減らしていく。
やがて無視は最後の一匹となり、そいつを仕留めて戦いは終わる。
終わってみればなんてことはないが、この戦い方は常に緊迫感があり、疲れる。そもそも矢を放つペースを維持するために攻撃はすべて躱す必要があるうえに、相手が何か仕掛けてきたらそれに対応するためにすぐにそれを察知し、対応しなければならない。
だが、
「なんとか終わったっす」
さらに立ち直って鎌を振りかぶるカマキリを横目にもう一匹へ大剣を振る。カマキリの攻撃を食らいつつももう一匹の頭に巨大な日々を創るほどの一撃を加え、そちらを倒した。
それと同時に鎌の攻撃を食らい、転がる。
起き上がり、もう一度大剣を敵に向ける
「なんだ、それは嫌だなあ」
まだ全然生きていた。
頭が二つに割れそうなほどの深い裂け目を作りながらも全然平気で生きていた。
困った。倒す方法が浮かばない。
でも、限界は来ていないしもう少し何とかやってみるか。
こいつらほんとに連携上手いな!ちょうど攻めようとしたタイミングで蟻酸っぽい何かを打ち込んでくるとか悪魔の所業じゃないか!
一生攻められないんだが!
また蟻酸!
踏み込まないことで回避して、そのまま『毒針』を撃つ。
「よし、刺さった!」
今回の毒は『薬死毒』毒針で体内に注入してそのまま死んでもらおう。
うげ、自分の指揮を悟ったこいつもう連携とか無視で単身でこっちに突っ込んでくるんだけど、捨て身の特攻は俺が辛いからやめて欲しいな!
突進を回避すると蟻酸が飛んでくる。そちらを回避すると今度は後ろから突っ込んできた蟻に背中を打たれ吹き飛ばされる。
この蟻爆走してる。
これ躱すよりも受け止めて捕まえた方が楽だな。
なので両手を広げて、突っ込んできたところを抱きしめるように受け止めて捕まえてやろう。
…そういえば俺の手って片方しかないんだった。
まあいい、あんな蟻ごとき片手で十分だ!
そうじゃないと捕まえられない。
再度蟻が突っ込んでくる。今度は後ろから蟻酸の援護射撃も一緒だ。
今俺が見た攻撃全てのてんこ盛りじゃないか。
どうする?今立てた作戦通り捕まえるのはやるにしても…よし、蟻を盾にして蟻酸を受けさせよう。
目論見が成功する要素は整っている。
蟻の方が蟻酸より先に届きそうだし、サイズ感から片手でも持てそうだし。俺は意気揚々と構え、蟻を捕まえて、蟻酸を防ぐ。
盾にした蟻で視界が埋まる。
何も見えないことが不安になる。その結果色々考える。
そうすると一つ思い出した。
あれ?全英のもう一匹見て無くね?
周りを見回す。ちょうど後ろを向いたときに今ぶつかろうとする大きく開かれた蟻の顎が見えた。とっさに顔を引き、腕で顔をかばう。
しまった!
これで右手まで失ってしまったら俺何もできなくなる!
幸い顎がかみついたのは籠手だった。なので俺の右腕は無事だ。
反射的な行動だったとはいえ肝を冷やした。
ただ、コント度はこっちの優位だ。
前衛の一匹は蟻酸によって倒した、倒したよな?起き上がるなよ?
そしてもう一匹はもうすでに捕えたも同然。
俺は捕まえるために手を振るって蟻を地面にたたきつけ。籠手越しに手でわしづかみにする。
そして至近距離で、
「『十頭蛇』」
念のため頭を二つ使って倒しておいた。
蟻酸の盾にした方は蹴ってみて反応が無かったのでおそらく死んでいる。あとは蟻酸を飛ばしてくる後衛三匹組のみだ。
残り八つの頭があるのでまず一匹に狙いを定め、二つの頭で攻撃する。
すると他の二匹が散開し、両側から俺を挟み撃ちしようとしている。
マズ、くはないかもしれない。接近戦なら…
二匹が飛び掛かってくる。少しだけ体を引いて曲がらないと二匹の攻撃が俺に当たらないようにする。
そうすると蟻はちゃんとまがって一方向からきてくれた。挟み撃ちの形が崩れるの気にしないんだ。
それは良いとして、至近距離でなら、方向を指定するだけでも六つの同時運用が出来る。
何の話か?無論『十頭蛇』の話だ。
「残り、全部!」
六本の毒の棒が二匹の蟻を貫く。
「あぶな!」
蟻の死体が落ちた後には蟻酸が迫ってきていた。
最後まで油断のできない相手だ。
二本の蛇は役に立たなかったみたいだ。
最後は短剣で切って倒そう。俺は走り出す。ありはもう一発蟻酸を撃つ構えだ。躱せるか?いや、出来れば撃たれる前に斬りたい。
今度こそ、失敗させない。加速するために噴射する。
「『浄風破裂』」
使わない(使えない)左腕を後ろに向けて浄風破裂を噴射の勢いにして加速する。なんと今度もうまくいかず、俺は無様に転がる。
それでも、多少なりとも一気に距離は詰められた。
もう少し、でも多分発射までには間に合わない。だからもう少し時間を稼ぐ。左腕を蟻に向け、『毒針』か『十頭蛇』を打つふりをする。
蟻が防御の姿勢を取りかける。まあ撃たないんだけどね、だって左手は浄の魔腺の影響で威力半減から七割減だし。
最後に稼いだ時間で蟻にたどり着き、短剣を振って勝利を確定させる。
「ふう、意外に大変な戦闘だった」
他の皆も勝ててるかな?
結構傷が増えてきた。
こちらも、あちらも。
どうだろう、このままいけば勝てるか…それともじり貧か…
攻めて魔力が必要なスキルも使えれば楽だったんだけど
「大丈夫、無くても、勝てる」
少なくとも、大剣の力を信じる。私が生まれるときに与えられた方の力を。
二匹ともが両方の鎌を振るって攻撃してくる。
それを切り裂き、鎌を失わせようとする。
しかし切断することはかなわず、鎌の攻撃は私に当たる。
「『凝固・解除』」
凝固を解き、身軽になる。
カマキリの攻撃を取り戻した速度で回避する。
勢いのままにカマキリの後ろに回り込み、手を大きく上に振りかぶったうえで、
「『凝固』」
そのまま大剣を振り下ろす。
カマキリの体がひび割れていく、カマキリも耐えようとしているが抵抗もむなしく少しずつ日々は大きくなっていき…
遂には両断される。
「今度こそ、まずは一匹」
もう一度『凝固』を解除する。
後ろを向くと覆いかぶさるように飛び掛かってくるカマキリが見えた。手を何もない状態で構える。
「『凝固』」
そのまま跳び込んでくるカマキリに大剣を突き刺す。
さらにカマキリが突き刺さった大剣を振ってカマキリの体を地面にたたきつける。そうするとカマキリは動かなくなった。
頭にひびを入れた方なので限界が簡単に来たようだ。
三度『凝固』を解除する。
大剣を攻撃の際にのみ出現させる戦い方が一番いいかもしれない。
魔虫の軽い解体を行い、収納袋にしまうとだいたい丁度くらいでリーダーが合流した。
リーダーの体には小さい傷が幾つもついており、そちらも意外と難敵だったという事が分かる。
「さて、登るか」
「登ろ~う」
だんだんと色の傾向が赤に移り変わっていく。
やっぱ虹と同じような変わり方なんだ。
あの結構大規模な戦闘の後はそこまで大きな戦闘はなく、やがて頂上付近までたどり着く。
「この近くに大きな花があると思います、それを探してください」
その花は頂上にあるわけではなく少しずれている様だ。
手分けして探す。
「あった」
マリアナさんが見つけた様だ。
そこに向かう。
「でっか」
とんでもなく大きい。ラフレシアのくささと白い斑点がなくなったような花だ。花弁は今まで見てきた度の花よりも分厚いがそこまで硬くはない。
「これを持って帰るのは無理じゃないですか?」
「あ、いえ。持って帰るのはこれではありません」
なんだそうなのか。
「ではなにを持って帰るのでしょうか?」
「この花の周りに咲いている花です」
「といっても結構な種類あるみたいだが」
臭くないラフレシアの周りには何種類もの花が咲いていた。しかもそれらはすべてが赤い花で見分けるのも一苦労だ。
「本当です、これは参りました。名前は分かるのですが…」
「急ぎすぎだね」
…今、名前は分かるって言っていたよな?
だったらさ、俺の出番来たんじゃないか?
「名前はなんていうんですか?」
「クウェピアです」
「分かりました。見つけます」
「え?」
「あ、そういえばフェリックス『鑑定』持ってたっけ」
そういう事です。
これは…
違う
これも…
違う
それならこっちは…
あ、これさっき見た奴だった。
いやいやまだまだ
違う
これならどうだ!
違うのかよ
あ、久しぶりの新しい奴!
…どれならクウェピアなんですか!
「この大きな花の下にもなんかあるっすけどこれは違うんすか?」
「『鑑定』」
これだ!
「ありました!」
「ありがとうございます」
「ちなみにこの花はどんな用途で使うんですか?」
「花は香水に葉は薬に実はジャムになります」
「茎と根っこ以外すべて使えるんですね」
万能じゃないか!
「はい、しかもその茎と根っこも餓えておけばまた葉や花が生えてきますよ」
どこまでも万能かよ!
「ちょうど実もあるっすね」
なん株かある、茎と根っこを少しだけもらっておこう。
葉を使って作れる薬の効能が分からないが使えないってことはないだろうからな。ジャムは作り方難しそうだが誰か加工できる人がいればその人に加工してもらおう。
「目的の物も手に入れたしもどろっか」
「あの、このまま千車旅団の方に合流しても良いですか?」
「ああ、構わない。だが方向は分かるのか?」
「はい、向こうです」
「正反対とまではいかないけど、結構方向違いますね」
「馬車をどうするか…」
「じゃあ、一人で馬車を回収しに行きます」
「いやいや、それはやめておいて」
あれ?いい案だと思ったんだけど
「どうしてですか?」
「フェリックス君は信用がないからね」
信…用?え、嘘、マジで?
「信用じゃなくて信頼だな、フェリックスが一人で行くと死にかねない」
「あれ?言葉間違えた?」
ローシェさんがごまかすように笑ってる。
本当に焦ったんですけど。
「でもそうなると馬車が操縦できるのはカイさんしかいないのでカイさんが馬車を回収しに行くってことですか?」
「それが良いと思う、カイは離脱能力も結構あるからね」
「了解っす、じゃあ行ってきます」
「ああ、頼む。山のふもとで合流しよう」
「あ、地図に合流地点書いてもらっていいっすか?」
「分かった」
カイさんが別行動になった。
青緑が目立つ山の下り道を下っていく。
名前・種・Lv
フェリックス・人・68
攻107/50 防216+45 魔159 精181+25 俊115+2 器115-10
HP266 MP262
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 瞬間装着 十頭蛇
装備 黒覆布 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装




