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毒と浄は輝玉に宿る  作者: 狐池
旅の始まり
33/110

033 クラーケン1 槍の触手

小蛇が着弾する。

続けて第二陣を発射する。

4回に分けて合計10本全てが命中した。

そのすべてが勢いでイカの動きを一瞬止めるだけの効果は発揮した。

眼下で猛烈な勢いで海岸に向けて突っ走る馬車が見える。

接近戦で海中の本体に攻撃して海中に注意をそらし押し込む戦術か?

かなり効果がありそうだ。

あれ、でもだとしたら俺ひょっとしなくても置いて行かれてね?

人生三度目の高高度からの落下ーーー!

そこまで高くない高度からの落下経験なら片手で数えきれないレベルではある俺の経験(主にガルドとかガルドとかガルドとか!)からするとどこかの部位を犠牲にしないとダメージがでかくなる!

であれば再生速度の速い左手を犠牲にするのが吉!

ゴンッ

鈍い音を立てて石造りの道に落下する。

目論見通り体は守れたものの左手は予想通り犠牲になってまともに使えそうもない。握ったりするぐらいしかできない。

けれどあのイカと戦うために海まで行かなきゃ。

「『装備装着』」素早く外せる装備を素早く外し、スキルで水中での戦闘に備えた装備を着ける。

海岸までの距離を左手の喪失によりバランスを崩しかけながらも走る。

走っていくと海中に沈んでいく触手が見えた。狙いは成功した様だ。

海岸には馬車が乗り捨てられている。

馬車の馬の額に手をやって撫でる。

「ごめんな、今は緊急なんだ。ちょっとだけ待っててくれ」

馬は答えるように小さく鳴いた。

それを確認して海に潜る。

片手しかない身では推進力が足りず、あまり速度が出ない。

他のパーティメンバーを探す。


音が聞こえてくる。

あっちだ!

見えてきた見えてきた。

けれど本体ではなくいまだ触手のみの状態だ。

パーティメンバーが触手を相手に戦っている。

本体は何処だ?今までの感じからすると今回の海魔も触手は再生しそうだ。

ん?視界の端に何かが映って

「危ない!」

突如起きた爆発の衝撃で俺は吹っ飛んだ。

その爆発の衝撃で俺が元々いた位置で大きくのけぞっている触手を見た。

不意打ちされかけていたのか。

でも、これで声の方向からみんなの位置が大体わかったぞ。

また泳ぐとすぐに合流できた。

「戦況はどうですか?」

「割と苦戦気味かな~」

「どうしてですか?」

「あの触手がめちゃくちゃ硬い、今まで見たいに剣を振ったら切れるとかそういう感じじゃない」

「それでいまだに本体が探せていないってことですね?」

「そうだね。ところでフェリックス君その左腕はどうしたんだい」

「空中から落下した時に犠牲にしました」

「犠牲になったじゃなくて犠牲にしたってところに君の慣れをを感じるよ」

「変な捉え方しないでください!」

「合流したか、フェリックス」

「はい、ついさっき」

「基本的に戦いはお前とローシェで行うことになりそうだ」

「それは先ほど言っていた物理が通らない、という事と関係があるんですか」

「その通りだ。俺たちは本体を探す。お前たちは触手の相手をしておいてくれ」

「了解です」

会話はそれだけで、リーダーはもう見えなくなってしまった。


了解ですとは言ったものの、四方八方から飛んでくる高速の突きを捌かなければいけないとは聞いていない。

しかも触手の一撃一撃が今までとはまるで違う、おおざっぱで純粋な質量による脅威ではなく、速度とその正確性、そして先端の鋭さに由来するまるで武器の様な脅威だ。

その攻撃を傷を負いながらもかろうじて生き延びる。

ローシェさんの回復魔術が飛んでくる。

それは素直にありがたい。

だんだんと触手がローシェさんの方に偏るようになってきた。実力的には俺の方が低いけど、結構長時間耐えてるうちに厄介な方から潰そうという思考に切り替わったかな?

なんにせよ俺の負担は軽減された。



リーダー、カイさんとともに触手の根元を探す。

下から上へと延びる触手を辿っていると、

ベシャ

「何の音だ?」

「分かりません」

「音自体も曖昧で分からないっす」

「どっちからだったか…」

「不明なことが多いですね」

「なんだ?」

「あまり気にせず先に進むっす」

「そうだな」

再び海の深くへと、触手の根元の本体へと進む。

その道中は驚くほどに攻撃されなかった。

探索はとても順調に進み、

遂に最後までたどり着く。

「地面だと?」

「本体は地中にあるのでしょうか?」

「そもそも長すぎるんじゃないすか」

「それもそうかもしれないが、俺達はずっと触手を辿ってきた、間違えることは考えられない」

「じゃあ掘り起こしてみましょうよ」

「そうだな」

リーダーが剣を振りかぶり、魔力を纏わせた一撃で海底を抉る。

触手はあっさりと抜け、その根元は海中に投げ出される。

触手に触れてみるも何も反応しない。

謎が深まる。いやそれよりも異常だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

周囲を歩いていると他にも触手が地面に埋まっているのを発見した。

それらも同じように掘り返すが、やはりどれもが本体とつながっていない。

「どういうことなのでしょう」

「悩んでいても何も解決しない、今はローシェたちと合流するぞ。向こうも10本の触手を捌くのは難しいだろうからな」

念のため上に浮上する時も一本の触手を辿って上に上った。

触手に触れながら上まで登ったので、幻覚などを見せられているわけでもない。

そうして辿っていくとちゃんとローシェさんとフェリックスのところまでたどり着く。両者ともにかなりぼろぼろのところまで粘っていたようだ。もうすでに傷だらけになっている。

リーダーが駆けだす。



間違えた。

対応する順番を誤った。

もう受けるしかないけど…

かなり深い傷になりそうだ。

かなり正確な突き。間違いなく心臓を狙っている。

体を少しでも避ける。最悪再生するまで死なない傷であれば生き残れる。

次の瞬間の攻撃に備えて思わず目を閉じる。

ただ聞こえてきたのは金属同士がぶつかり合うかのような高い音。

目を開くと、リーダーが触手を斬りつけていた。

「ありがとうございます」

「礼は良い、問題がある。それを解決しなければならない」

「ローシェさん!」

カイさんがローシェさんを呼ぶ。

ローシェさんは一時的に触手を引き離すために小規模な爆発を起こしこちらに向かってくる。

「問題ってなんだい?」

「触手の根元に本体が無かった」

「え」

「!」

(無言でうなずく同行した二人組)

「じゃあ、この触手はイカのものではないんですか!」

「どっちにしろ操る体が無い状態で触手が動くわけがないから」

「幻覚を見せられていたという可能性はないですか?」

「無い。実際に触れられた」

触れられるなら確かに幻覚ではないか。

でも、ならどうして?

きっと、何かでごまかされているだけだという事は確実だ。

触れられる実体のある幻覚?

いや、それはもう幻覚ではない。

「もう一つどこかに本体につながるように枝分かれしたところがあって、そこが隠蔽されているのではないですか?」

「登ってくるときに触手に触れながら登ってきたからあり得ない」

そうか、それが正しいとすれば実体が無い本体につながる触手と本体につながらない実体のある触手という構図になる。

でも、なんか違う気がする。

もっと別のからくりがあるのではないだろうか?

眼前で触手が魔術によってそれていった。

「戦いにも集中しようね」

「あ、すいません」

触手を躱したり殴ったりしながら

もう一度考える。

何をどうやればそんな奇怪なことが出来る?

そもそも触手は遠距離から操る物なのか?

そこでリーダーからもらった情報を考える。

リーダーは最初に今回の海魔がイカだといった、それは恐らく目撃情報なのだろう。つまり触手の近くに本体もあったという事だ。

だとしたらちゃんと触手と体がつながっている可能性が大きい。

あ、なんか来た。

下の方を殴って上に逸らす。

現状の情報が確かなら触手はまるで槍の様だ。

実際攻撃する時も槍の様に突き込んでくる。

「リーダーたちがイカの触手を辿っているときに何か変なことはありました?」

「……()()()()()

そうか、それなら。

可能性が大きく絞れるぞ

もう少しで判断できそうだ。

今絞り切った可能性をそれぞれもう一度考えて間違っていると判断できたものを排して正しそうな物を選ぶ。



名前・種・Lv

フェリックス・人・60

攻97/50 防192+45 魔143 精160+25 俊105+2 器105-10

HP237 MP236

スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇

装備 戦闘用水着 水中呼吸器 水かき 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣

耐70 40 60 80 40(35) 重+35

装備スキル 開放 閉鎖 武装 呼気排出 吸気吸入



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