031 戦力強化~蛙でとった杵柄~
次の日、かなりの激戦続きでパーティ全員疲れていたので、休息をとることになった。
そんな日の朝食後。
「フェリックス君~」
「はい、なんでしょう」
「そういえば魔法のこと教えるって言ったよね」
「ああ、そんな話もありましたね」
「今日やる?」
「別にいいですよ」
疲れた状態でぼんやりと答える、魔法について教えるのでさらに疲れたり怪我したりすることはないだろうし。
「じゃあ外出てー」
あ~、はいはい外ですね…
「外?」
教えるだけなら室内でいいのでは?
いやな予感がし始めたのはこのあたりからだ。
「何をするつもりですか?」
「実践も少しやろうかなーなんて」
「それってローシェさんと魔術撃ちあったりするんですか?」
「そうかもしれないね」
「休息で怪我するなんてことになりません?」
「ないんじゃないかな」
せめて目を合わせて欲しいんだよな
仕方ない、覚悟を決めよう
そのまま外に出た。
流石にいきなり魔術の打ち合いを始めるような脳筋な教え方ではなかったローシェさんが、まず話し始めた。
「君は結構恵まれてる環境だからね、それを生かした方が良いんだよ」
「俺結構弱いですよ」
「知ってる」
「そういう事ではないんですね」
「そうそう、君が恵まれているっていうのは『鑑定』の事だね、通常魔術師は感覚的に体内の魔力残量を把握しながら戦っている、けれど君は自身の魔力最大値や消費した魔力を数値で見る事が出来るだから、君がすべきことはあらゆる魔術の使用方法で魔力をいくつ消費するのか徹底的に検証することだ。」
「確かに『鑑定』持っている人の方が少数らしいですしね」
「うん、でもそれはそれとして魔力を捉える練習はした方が良いんだけど」
「最初に魔術獲得する時どうやった」
「ど、どうやりましたっけ?…」
思い出したくない
「…」
「はい、分かりました、言います。」
「それでいい」
「魔術師の母が両腕に強制的に魔力流し込んで無理矢理魔腺励起させて獲得しました」
「そ、その方法でやるのか~へ~」
「もう二度とやりたくないです」
「ちなみに頑張れば私この距離からそれ出来るんだけど」
「絶対やらないでくださいね!?」
「あはは、やらないやらない」
俺は結構頑張った、色々な情報を聞いて魔力を捉えようとしたのだ。
でも、無理だ。
恐らく『鑑定』『解析』に慣れてしまっていて魔力を意識しづらいのだろう。
様々な方法を試した。
心を落ち着かせ、集中することで体内に意識を向けてみたし、
魔術を使ったり溜めたりしながら魔力の流れを感じようとしたし、
魔術という形ではなく、純粋な魔力として手の先に集めようともしてみた。
最後の方法では一応魔力は集まるのだが、魔力の流れや残存魔力量を捉えるというこの訓練の目標は達成できていない。
ローシェさんにコツも効いた。
体内ではなく心臓に意識を向けるんだ、とか
集める方法は分かるんだからその前後で感覚をよく比べてみる、とか
けれど結局俺はどの方法でも魔力を感じることは出来ず。
苦渋の決断として…
「お願いします」
例の強制的に体内に大量の魔力を流し込むやつをやることになるのだった。
ローシェさんの言葉は嘘ではなかった。
実際遠くから大量の魔力を流し込んできた。
でもやっぱり感じることは出来ないかった。
そして滅茶苦茶痛かった。
思うに、俺には適性が無いんじゃないだろうか。
だから仕方ない、仕方ないんだ。
そう思い込んで痛み損の自分への慰めとする。
「ん~~さっきのことは残念だけど…まあ『鑑定』あれば必須技術でもないし…よし、次行くか」
「切り替え速いですね!」
「他人事だからね」
「さらっと責任放棄しないでください!」
「次だけど、『毒小蛇』の事だ」
「ああ、新しい活用方法思いつきましたよ、でもまだ4本以上同時操作はできませんけど」
「見せてくれない?」
「いいですよ」
「『毒小蛇』充填保持」
因みに後についてる二つの宣言はあった方がやりやすいだけなので必須ではないです。
「ほうほう、それで?撃ってみてよ」
「右人差し指、中指、薬指」
右手から三本の『毒小蛇』を発射する。
そしてその三つが着弾した後
「左人差し指、中指、薬指」
同様に左手からも発射する。
最後に、残り全部を一気に撃つ。ただし残りは四本なので制御しきれない、それも表現するために4本を一気に射出する。
「こんな感じです」
「いいんじゃない、後は制御できる本数を増やすだけだね」
「あ、そうですか」
「これに関してはスキルとかもあるとは思うけどそんな簡単には獲得できないし……うん、コツを教えてあげよう」
「そして、そのコツとは?」
「そもそも指十本を別々に操作できるんだから『毒小蛇』もうまくやれば操作できるはずなんだ」
「それ暴論では?」
「本題に入るけど基本的にやるべきことは操作したいものを一つの視界に納める、まずこれが手順一、手順にはいくつか方法があるんだけど…一つは10本を一つとして扱う、つまり10本全てが連動して動くようにするのさ。これをすると動きの複雑性はなくなるけど結構簡単に操作できるよ」
「成る程、二つ目は?」
「もう一つはその10本を指の延長上として扱う、これは結構難しい代わりに習得できれば複雑に操れるよ」
「あの、『毒小蛇』には神経が通ってないんですよ」
「頑張れ!」
でも方法は分かった、これから練習して少しずつ習得していこう。
「あと『装備装着』スキルを獲得したいです」
「わかった、はい」
はい?
俺が手渡されたのは巻物の様な物だった。
「それに魔力通せばいいから」
半信半疑のまま、巻物みたいな何かに魔力を通す
《装備装着》
「……」
「どうした?」
「どういうことですか、これ」
「一部の獲得が簡単なスキルはこうやって獲得するためのアイテムが作られたりしてる。でも万人が獲得できるようなスキルで作らないと売れないし、獲得が難しいスキルは作れなかったり作れたとしてもコストが高かったり、獲得が確率になったりするからあまりたくさんの種類はないんだよ」
「どうして『装備装着』のを持ってたんですか」
「余り」
何のだろう。
まあ、あまり深く考えなくていいか。
そこまで説明するとローシェさんは中へ入っていった。
俺は外に留まり、『毒小蛇』の応用の練習をしている。
いきなり10本で練習しているのだが、やはりなかなか上手くいかない、段階を下げて、5本でもやってみるのだが、やはり上手くいかない。
そうしてやっていると、たいてい予想外の事があるもので、
《十頭小蛇》
今回もその例に洩れなかった。
「おぉ、新しいスキル」
ただ変化としては、今まで使っていた『毒小蛇』の応用系をスキルとして獲得しただけなのであまり意識しなくても使えるようになったくらいだ。
確実に便利にはなったけど。
にしても『毒小蛇』は未だに技のままでスキル獲得できてないんだよな。
後名前も謎だ。
十の頭というのは分かる。指一本から出る先っぽを頭と考えれば十個あるからね。
でも分からないのは「ヤマタ」の部分だ。
向こうの世界の八岐大蛇に合わせたのか?
俺の知識から引っ張り出して?
でもだとしてもわざわざ変える意味が分からないし、そもそも意味が通っていない、だって頭は…
うん?
俺は手を見る。
そこには十本の指が並び…八つの指と指の間があった。
片手五本の指の間は四つ、それが両手で八つ、指の間を「又」とすると、
八つの又でヤマタ…
もしかしてそういう事?
それに気づいて何とも言えない気持ちになった後、俺は宿の中に戻った。
ローシェさんに聞いたらこれは新しいスキルで、そのように新しいスキルが生まれることは多々あり、たいてい今までの魔術の技に無い使い方がなされたときに獲得される様だ。
でも、そのタイミングは謎で、結構時間差があったり、すぐに獲得したりという風に差があるらしい。
そうだ、ローシェさんにずっと気になっていたあれを聞こう。
「ローシェさん、この前魔術を使って攻撃していた時に謎の爆発が起きたんですけど、何か原因に心当たりはありますか?」
そこまで重要なことではないけどずっと心の中に引っかかっているのですっきりさせたい。
「ふむ…、その時毒魔術と浄化魔術を同時に使ったりしたかな?」
「はい」
「その相手は魔術を弾いたりしたかな?」
「あ~言われてみればしていたかもしれないです」
「やっぱりね」
「フェリックス君、それはね…」
名前・種・Lv
フェリックス・人・60
攻97/50 防192+45 魔143 精160+25 俊105+2 器105-10
HP237 MP236
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭小蛇
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
これはタコ型海魔討伐戦最終局面の話
「よし、シャークが救出に向かった。これで私は遠慮なく墨の外に脱出できるね」
そういってローシェはタコから遠ざかる方向へ、全ての触手がシャークを追っている今、ローシェを追うものはいない。
ローシェは墨の外に出ると、詠唱を始めた。
「風は吹き荒び海を巻く、巻かれた海は海流へ
海流は暴風へ、流れる力で闇を押し流す
即ちここへ現れるは海を青く染め上げる扇の風」
「『複合魔術武装:海流扇子』」
そこに現れたのは巨大な扇子、魔術で組み立てられたその扇子は、墨の外にあっては拡散されない。
その扇子がひとりでにただ一度扇がれる。
そのひと振りで海流が巻き起こり、墨を吹き飛ばしていく。
墨の濃度が濃い中心部のほんの一部は吹き飛ばせなかったが、十分だ。
ここまでやれば、カイが一撃を入れる。
ローシェは自身の作った連絡用の魔道具で伝える。
「貫通力のある一撃で決めちゃって!」
それに対しての答えは一本の矢。
ちょうどシャークをはじめとしたビルトの残りの面々が墨の中から出てきている。
もう仲間を巻き込む心配はない。
放たれた一本の矢は巣穴の中のタコを的確に貫き、とうとう死へと至らせた。
この一連の攻撃をフェリックスとマリアナは気づかずにいつの間にかタコが死んでいると感じたのだった。




