030 一寸先は墨
連続です。注意してください。
今の戦況を確認する。
まず海上からタコを狙撃しようとするも、墨によって仲間への誤射の確率が高まってしまいうかつに弓を打てないカイ。
隅の魔力拡散効果によって魔術の講師が意味をなさなくなったローシェ。
魔力が枯渇し、タコの外側で唯一の戦力であるが、何が起こるか読み切れず、慎重にならざるを得ないシャーク。
タコの内側で毒が効かないのではないかと疑問を募らせるフェリックス。
フェリックスとともにタコの体内の蛙の討伐に挑むマリアナ。
重い衝撃と共に弾き飛ばされる。
巣穴の外に出ている触手は今や墨によって視界が遮られた海の中を縦横無尽に暴れまわり、シャークでも回避は難しい。
焦りが募る。
二人はタコの体内に会って今なお生命の危機に瀕しているだろう、もしかしたらもう死んでいるかもしれない。
二人を助けたい。
その思いでひたすらにシャークは焦る。
けれど隅に紛れて襲い来る触手は躱しきれず巣穴へと一向に知被けているようには感じられない。
直ぐ足的さえまともに見えない海の中、シャークは文字通り暗中模索する。
マリアナさんは攻勢に出ている、現時点で判明している主な蛙の攻撃方法は回避のための跳躍からののしかかり、長い舌による攻撃。
その二つだ。絶対にそれ以外の攻撃手段もあるだろうが今の所見せる気配はない。
因みに俺は、外部との連絡を試みている、魔力を飛ばして連絡するもので、タコとの戦いの最初でも使用したものだ。
しかし連絡できている気配がない。
いくつかの可能性を考えて…
「あー、あの墨のせいかもな」
だとしたら連絡は難しい、か。
じゃあ俺も攻撃に参加するか?
でもな、おそらく毒は効かない。
『溶毒』だけに耐性があるという場合も考えられるため断言はできないが恐らくそうだろう。
だとすると俺は蛙の高速軌道に追いつけないため、近接のナイフを扱えず、攻撃できることがなくなるのだが…
ならいっそのこと蛙の事に関して考えてみるか。
そもそもあの蛙の存在は違和感しかない。何故生き物の体内に別の生き物が、しかも胃という危険域の中に住んでいるのか、そしてなんで胃液が出ていないのか。
「寄生にしてもわざわざ胃は選ばないだろうな」
だが寄生という推測しかできないためやはり蛙は寄生しているのだと考えられる。けれどなぜ寄生する場所として胃を選んだ?
分からないことだらけだ、せめて『解析』が出来れば話は早いのだが…
「あ、出来た」
最近では『解析』が使えないか不要な場面しかなく、ほとんど使ってこなかったためまず最初に『解析』を試すという事が出来なかった。
でも『解析』が出来るというだけで分かることが幾つもある。
まずは蛙自身はそこまで強くないこと。
でもあの俊敏性は異常なので恐らく俊敏性が高く他のステータスは低い、それは解析後のステータスを見る事でもうかがえる。
寄生蛙
Lv92
攻97 防62 魔30 精61 俊172 器32
HP275 MP24
スキル 耐酸性 美香 魔声
見事な偏り方、意外とHPが高い
「マリアナさん『解析』が出来た!相手は俊敏偏重型、魔法よりも物理攻撃の方が高いから要注意!加えて耐久は薄いけどHPは高い『美香』と『魔声』っていう知らないスキルもあるよ!」
頑張れマリアナさん!
「『解析』持ちうらやましい…」
「防御は物理魔法両方60くらいだったよ」
「そもそも私の<攻撃>がどの程度の高さなのか知らないんだけど」
「あ、そっか」
「…」
「うん、でも多分大丈夫じゃない?俺でも装備無し状態で93あるから」
「ふーん」
「倒すのに支障はある?」
「当然、向こうは速すぎる、跳躍能力も高いし」
「だったら俺が捕まえるよ、マリアナさん遠距離攻撃全く持ってないでしょ」
「そうだよ」
「俺は一応持ってるから頑張ってみる」
「頑張れ~」
とはいっても毒針は当たる範囲が狭すぎるし、簡単に躱される、
ある程度軌道修正が出来て攻撃範囲が広い遠距離攻撃、そんな都合のいいもの持ってない気がするけど…
いや、ある!
蛙を追いかける、蛙は俺の接近に反応して跳び上がる。
「待ってた」
親指と小指をたたむ。
そして
「『毒小蛇』」
人差し指中指薬指から毒の線を出す。相変わらずそこまで操作できるわけではないけれど。
その三本の『毒小蛇』が命中しそうになって、蛙が空中ジャンプを決めた。
聞いてない!
そんなスキルはなかった!
もしかしてスキルとか関係ない能力なのか?
まあいい、2回は飛べないことを祈ってもう一度!
そして撃ち落とせ!
先ほど使った左腕ではなく、まだ使っていないうえに威力の高い右腕で『毒小蛇』を放つ。
今度は命中するかと思われたが、
「下への加速?そんな回避方法もあるのか」
しかし急速に落ちていく蛙は今度こそ身動きが出来ない様だ。
マリアナさんはそこを見逃さなかった。
落ちていく蛙と駆け抜けながら跳び上がったマリアナさんの大剣が交差する。
これは…?
二つの回避方法を使い切ってもう躱す手段はないと見た。
ならば駆け抜けて斬るのみ。
蛙に接近。
蛙の顔がこちらを向く、いやな予感。
すれ違う瞬間勢いをつけたことでパンチとも言えるような力になった舌による攻撃を受けて、攻撃はそれる。
倒せなかったか。
蛙の後方へと抜けて素早く蛙に向き直る。
マリアナさんの攻撃も逸らされた。
どうしよう。
『毒小蛇』の使い方を変えるか。
出来るか分からないが指に『毒小蛇』をストックして、一本ずつ放てれば、確実に何発かは当たるだろう、そこを捕まえてマリアナさんに斬ってもらえばいい。
いけるか?いけそうだ。
やってみるしかないだろう!
蛙が着地する、その瞬間に仕切り直し、悪いねそっちには不利だろうけど
「『毒小蛇』」
魔力をまだ発射せずに溜め込む。
二本ずつ五回に分けて指に発射前の『毒小蛇』を纏わせる。
蛙が着地する。
「左小指!」
蛙はジャンプして回避する。
「右小指」
蛙の空中ジャンプが使用される。
「両親指」
縦に連ねて加速しても当たるようにしてみる、下に向かって加速するが下の方を躱せず被弾。
弾かれてすぐに体勢を整えられた。
でもその瞬間も狙う。
「右薬指」
のどが膨らみ口から音波を出して無効化した。
迷わず放つ、まだ折り返しだ。
「左薬指、両人差し指」
左薬指は本体に向けて、右人差し指を上に、左人差し指をこちらから見て左に向ける。逃げる方向は右のみ
そしてとうとう回避手段が尽きたのか右へと逃げる
先ほどの被弾で少し遅くなっているので、
そこをすかさず
「右中指」
横への空中ジャンプを敢行し、回避に成功するも…
「まだ残ってるんだよ、左中指」
今度は回避に失敗し、二度目の被弾をする。指に魔力を充填しながらそこに走り、
復帰して逃げようとする蛙を
「『毒小蛇』」
威力を抑えめに、出来るだけ早く再充填した『毒小蛇』で打ち抜いていき、
「捕まえ…」
られた。
俺の体に舌が巻き付き、動きを阻害する。
だけど、もうあと一息だ!
手を伸ばせ!もうちょっとで捕まえられる。
舌で振り回し、気絶させようとする蛙に対し、舌を掴むことでこっちも離さないと意思表示。
舌を手繰って先へ進み、蛙の元までたどり着く。
舌による締め付けはきつくなってきて、
けれどこっちも蛙を掴んだ。
「マリアナさん!」
「捕獲ご苦労様!」
大剣を大上段から振り下ろす。
大剣でならとても威力が高いだろう。
大剣の切っ先が俺の目の前すれすれを通り抜けていき、蛙を両断する。
「倒した…!」
「フェリックスを斬らなくてよかった」
「まあ、マリアナさんなら今回も何とかしてくれるだろうって思ってたけど」
「後からなら何とでもいえるけどね」
「それ言われると俺何も言えなくなるんですけど」
「ところでどうやって外出よう」
マリアナさんが無言で壁を斬りつけるが、出てきたのは墨だけだった。なんで墨が出てくるんだ…
取り敢えず胃に入ってくる前の通路を辿っていくと、
「これ絶対口だよな」
「絶対口だね」
触手を全てきり割いて再生される前に巣穴にたどり着く。
何かの武器で墨を拡散させる。
何も考えず突貫して、襲ってきた触手全てきり割いて巣穴にたどり着く。
それが俺が思いつく三つの策だ。
だが、墨を振り払う道具はない、そして、触手が襲い来るのを待つのは時間がかかりすぎる、おそらく向こうも周りが見えていない、斬っている間に再生するだろう。
だから実質取り得る手段は一つ。
突貫する!
「ローシェ」
「はいはいなんです?」
「しばらく一人で持ちこたえろ」
「へ?」
「ちょっと二人を助けてくる」
「は?」
「じゃ」
「おぉ…」
巣穴の方向は完全に覚えている、方向感覚と距離感覚は俺の持っている絶対的な武器の一つだ。
このおかげでサーター山の霧の中などの特殊環境を除いて迷う事はない。
触手が左から迫る。
触れないように飛び越える。
そのままその後は泳いで進む。
今度は上から触手が来る、
「これは躱し切れないな」
だから切り裂く
触手を切り裂いて道を作り、離脱してまた進む。
さっきの接触で居場所がばれたのか、触手の密度が高くなってくる。
だが、
「関係ない」
多くを無視、躱せないのは対処。
それだけで進んでいき。
巣穴にたどり着く。
巣穴の入り口から口だけが見える、魔力を体外に放出しない、強化斬撃による一撃で口を開く。
ガンッ!
硬い音だ
「開かない」
そうしてる間にも触手が襲ってくる。
それらに対処しながらない外から対処できるタイミングを探す。
二人を待つしかない、何をしているんだ?
口にたどり着くと外で音がする、戦っている様だ。
リーダーたちだろう。
内側から口を斬りつけてこちらが到着したことをアピールする。
多分リーダーはない外からの攻撃で突破しようとしている。
「マリアナさん、両側から攻撃するみたい」
「了解」
俺はナイフによる連撃で、マリアナさんは大剣による重い一撃で、
リーダーは片手剣でバランスの取れた剣戟で。
俺達三人は
口を破った。
「良かった、二人共」
リーダーの緩んだ顔が珍しい。
「だが今ここは相手のお膝元だ、一刻も早く脱出するぞ」
ずいぶんと離れてきた。
「あれ、墨が薄くなってきてる」
それは次第に顕著になっていき、そしてさらには完全に墨が消えた。
なんか釈然としないけど…
タコ、倒した?
名前・種・Lv
フェリックス・人・60
攻97/50 防192+45 魔143 精160+25 俊105+2 器105-10
HP237 MP236
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗
装備 戦闘用水着 水中呼吸器 水かき 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐70 40 60 80 40(35) 重+35
装備スキル 開放 閉鎖 武装 呼気排出 吸気吸入
タコの中にいた蛙は成体になると胃の中に卵を詰めて別の生き物に食われるという生態をしています。卵と幼体には強力な酸性への耐性があり、タコの中に来る生き物を全て食って成長しました。
それによってタコは食べ物を消化する意味がなくなり、胃酸を出さなくなりました。
タコの方は蛙と外敵の両方を処理する目的でフェリックスたちを食べました。




