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毒と浄は輝玉に宿る  作者: 狐池
旅の始まり
28/110

028 穴をつついてタコを出す

連続投稿です。

注意してください。

なっが、詠唱なっが、なんだあれ、実践で使えないだろ。

そう思ってローシェさんを見ると、ローシェさんが固まっていた。

どうしたんだろうと思っていると、

「ローシェの奴、自分の動きを封じて威力を上げやがった」

「え!?そしたら援護はどうなるんですか」

「そこは心配ないだろうが動かなくても発動できるような低級の魔術しか使えないだろうな」

「てかなんであんなに詠唱長いんですか」

「ローシェは割と万能なところはあるが、かなり浅く広く、タイプだからな。

詠唱を短縮することができないんだ」

そこで少しリーダーは言うのをためらうようなそぶりを見せてから

「そして、あれがローシェのユニークだ」

「あれが!?」

「ああ」

まあ、ローシェさんがユニークスキルを持っているであろうことはなんとなく知っていたけどさ、馬鹿みたいな威力だったよな、凄いなぁ。


ズ————


巣穴から一本の触手が出てきた。

ちゃんとタコらしく吸盤が張り付いている、しばらく見ていると次々に何本も触手が出てくる。8本で止まってくれると嬉しいな。

そういえば、触手は例のごとく再生するようなので、今攻撃することに意味はない。だから今は温存だ。

リーダーはスキルのチャージに入ってるけど。

タコであることはやめていなかったためか8本だけだった触手を完全に外に出した海魔はその頭を巣穴から出してきた。

頭は大きく、自身でも持ち上げきれないのか海底についている。


いざ、戦闘開始だ。

俺は一直線に駆け出す、今の段階で俺に任されている役割はタコの攪乱だけなので

何も考えずに突撃するという行為が許される。

後方ではリーダーが大規模な魔力の展開を行っているようで、そちらに気を取られて俺は注目されていない。

窮していない鼠でも、猫を噛めるかな?

突撃!

まずは手始めに、目を潰すところからだ。



俺の最初の役目はタコの意識をこちらに向けさせ、他二人の接近を援護することだ、本来の予定ではローシェがさらに援護に加わる予定だったが、あいつは勝手な判断で今戦闘不能に陥っている。

つまり今頼れるのは自分自身の力のみという事だ。

「久しぶりだな、この状況」

心が猛っている。

周囲に支配下に置いた魔力を展開し、準備に時間のかかる大技の準備を開始する。


「さあ、開幕一撃!その脳天かち割ってやる!」

持っている剣を天を突くように高く掲げるようにして構える、そうして振り上げた剣を勢いよく振り下ろす。

展開していた魔力はすべて剣に吸収されて行き、周囲に展開していた魔力全てを食らった剣の刃は振り下ろした軌道の形に圧縮された魔力の刃を残す。

その刃はタコに向かって突き進む。

たいしてタコは自身を支えるための4本の触手を残した4本の触手で猛進する刃を止める。

ただ、勢いは止まらない。

肉盾となった4本の触手全てを砕いて進む魔力の刃はタコの頭へと到達し、

いともたやすく切り裂いた。


「!」

切り裂いた頭からは青い血や墨が漏れ出、それらが拡散してタコの傷口が見えるようになって露になったのは半ばで止まった傷口。

勢いはまだまだ減衰していなかった、肉体によって止める手段はなかった、

いくつかの情報を照合してシャークは素早く結論を打ち出す。

「あの墨、もしや魔力拡散作用があるのか!?」

あの墨はただの視覚情報の阻害に使われるものではなかったという結論、それが真実かどうかはともかくとして、素早くそれを伝える必要はある。

シャークは事前に用意した手段を利用して、その情報を仲間に伝えるのだった。



私に任された役割は戦力の温存、相手の脅威の全貌が明らかになる間では力を温存し、敵の情報をつかみきってから大規模な攻撃を仕掛ける。

「ッ!!」

上からの触手による叩き潰しを目的とした攻撃。

このタコの触手は、長さこそ長い物の幅はそれに見合うほど太いわけではないので無事危険域から脱出する。

ついでとして触手を斬りつけておく。

そこで異常に気が付いた。

「剣を…離せ…!」

吸盤が丸まって大剣を()()()()()

大剣の『凝固』を一時的に解除し、拘束から抜け出す、掴んでいたものが無くなった吸盤は、それでも何かを掴もうと少しの間パクパクしていたがすぐに元のように動かなくなった。

そしてマリアナは手段を利用して、吸盤の情報をパーティのメンバーに伝えた。



「流石リーダー!」

おかげでタコのふもとまでたどり着いた。

目につかないように頭付近まで泳いで登り、攻撃が通過するのを待つ。

ズゥン———!

重い音とともに魔力の刃が通り過ぎ、墨が放出される。

それを確認した俺は少しずつ高度を下げて…

勢いよく直下に突っ込む。

その過程でタコの目を何回も切りつけ、片目を潰す。

7度くらい目を斬りつけただろうか?

もう眼はぐちゃぐちゃになっており、もう再生は不可能だと考えられる程だ。

上から降下してそのまま切りつけたため逆さまになっている視界の中でタコを見る。

その直後

潰れた目が光った。

「やッ…!」

とっさにタコを蹴って加速して離脱しようとするが、そのままタコの眼光に飲み込まれる。


広範囲を焼き尽くす様な攻撃ではなくレーザーの様な一点を焼き焦がす光線だったのが幸いし、俺の被害は局所に収まった。

腹部が大きく焼けただれているが部位欠損までは至っていないため自然治癒でどうにかなることを期待したい。俺の再生能力は今ではかなり上昇しており、部位欠損でもなければ時間さえあれば治ってしまう。

まあ、その時間が長いんだけど。

順調に人外への道を歩んでいる気がしてならない。

そして俺は忘れずにその脅威を報告した。



最終的に集まった情報は三つの脅威だ。

先ず、墨の脅威。視界を封じるだけでなく魔力攻撃も霧散させてしまう。

次に、吸盤の脅威。手のように動かすことができ、掴む力はかなり強い。

最後に、目の脅威。目を潰そうとして潰すとより強力な光線発射兵器となるか隠し球。

そして、これらの情報が集まると同時に、リーダーは攻撃態勢への移行を指示したのだった。



空からは矢が降ってきて、底ではリーダーが気を引いたり俺が殴ったりしながら時折マリアナさんが切り裂いて、そんな戦闘をしていた。

いつ覆されるかは分からないけれど、少しずつ、確実に相手の体力を削り、戦いが進んでいるという実感はあった。

「このまま行けるかもしれないけど…ずいぶんと遠いな」


ここで俺にとっての想定外が発生する。

それは、攻撃範囲の広さについて。どうやら俺は触手による薙ぎ払いの威力と範囲の脅威度を見誤っていた様だ。



「速、いっ!」

ぐんぐんと迫る薙ぎ払われる触手、跳躍による回避も間に合わず、

タコから離れて回避しようにも触手に追いつかれるまでにたどり着ける距離じゃない。

押しつぶされるような圧迫感、迫る触手は俺の上に影を落とす。

トラックなんか比じゃない圧倒的な質量によるひき潰しの実行。

でも、万事休すにはまだ早い!

どうにかして脱出しなければ!

ここで俺には二つの道があると気づく。即ち、止めるか逃れるか。

触手を止めることで生き残るか触手から逃げることで生き残るか。

手札の再確認。

『武装』状態の籠手による殴りと短剣による切り付け、そして毒針。

たったそれだけの手札を延々と回し続ける。

斬って殴って刺し溶かす。

何とか自分が生き残るスペースを作り出す。

ただそれだけを意識する。

このタコの触手は長さに比べて細いだけで幅はかなり太い。

けれど何とか触手を防ぎきり、その影響で一本の触手を切断できた。

いずれ再生するだろうが、これで今は防ぎ切った、さっさと離脱を…


そこで俺が見たのはもう一本の眼前へと迫り、俺に影を落とした触手だ。

体を支えるためのものを除いてすべての触手で薙ぎ払いを行っているのか?だとしたら、一本をしのぎ切るだけでかなりMPと体力ともにすり減らした俺にはもうこれ以上…

逃げるときのことをシュミレートする。

触手から遠ざかると同時に上へと昇っていく場合、そのまま遠ざかる方向に水平移動する場合、触手を乗り越えて逃げる場合。

いずれの場合も触手の柔軟性が牙を剥く。

包み込むように曲がって追われたら俺にはどうしようもない。

だから、

立ち向かうしかない。

この先持たなくなって、力尽きて本当の意味で詰むことになったとしても今のために全てを使ってしまえ。

そうやって何とか立ち上がる。



「守れないのは、嫌か?」

「はい、ですが戦術的には、行かない方が良いともわかっています」

「俺には、お前が守れなかったことでどれだけ心に傷を負ったか分からないが」

「お前にとって誰かを守れたという事がどれだけ大きい意味を持つのか知らないが」

「守りたいならば行ってこい、最悪火力は俺だけで足りる」

「…はい!、ありがとうございます」



「はぁ、さっさと溶けろよローシェ」

パーティメンバーの後先考えない愚行に、呆れたように息をつく。



名前・種・Lv

フェリックス・人・57

攻93/50 防183+45 魔137 精152+25 俊101+2 器101-10

HP226 MP226

スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗

装備 戦闘用水着 水中呼吸器 水かき 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣

耐70 40 60 80 40(35) 重+35

装備スキル 開放 閉鎖 武装 呼気排出 吸気吸入


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