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毒と浄は輝玉に宿る  作者: 狐池
旅の始まり
25/110

025 ある男の話

本編ではないけど、重要な話です。

「大丈夫さ、父さん母さん、俺は生き方をもう決めた。だから大丈夫さ。」

男は話している。

「大丈夫、父さんと母さんの想いも分かっている。俺の旅は二人の理想のためでもあるんだから」

「うん、ありがとう。俺も父さんと母さんの息子であることに誇りを持って旅するよ」

「いってきます」

ある一人の男の旅立ちである。



時は流れる、旅立った時点でまだ青年だった彼はもう大人になっている、彼の旅は光を浴びることなく、ひっそりと進む。

その旅路にはたとえばこんなことがあった。



「ああ、神よ、神はいないのか」

村人は嘆く

「いえ、神はいますよ」

「ただ都合がつかないだけです」

「だから代わりに僕が来ました」

「あ、なたは?…」

「いえいえ、知らなくて結構ですよ、ただ、この神々の争いに人の身を以て勝利をもたらすべく戦う者です」

「む、無謀です、あれは、あれは…」

「お兄さん!助けて、将軍様が、あそこで戦ってるんだ」

「僕を信頼してくれるのはありがたいですが、何故信じてくれるのでしょう」

「分かんないけど…」

「しょ、将軍様を助けられるなら!それはあなたしか、いないんじゃないかって……」

「ありがとうございます、君たちの頼みは僕が受けました、その将軍様を助けてきますよ」

「「ありがとう!」」


「ふう、やはり子供は純粋だな、出来れば創世神陣営に与するような行動はしたくないが、まあ仕方ないか、人の頼みだ。」

その男は駆けだす、その身に両親の理想を背負って。

「お、いた、確かに戦ってるようだけど…」

「凄い戦いだな」

その戦いは低地で行われていた、村の周囲の高台から駆け下りてその男は将軍の助太刀をする。

「せいっ!」

「誰だ、貴様は」

「村の子供たちに頼まれまして、助太刀です」

「俺に助太刀が必要だとでも?」

「あなたの事は知りませんが、頼まれたので来たのです」

「ふ、面白い、では助太刀を頼もう」

「この大軍勢相手に一機で挑むなんて、何か時間を稼いでるのですか?」

そこで間をおいて

「例えば、救援が来るまで村を守り切るみたいな」

「は、違うな」

「この戦いの俺の勝利はこの〈邪なる魔物〉達の殲滅だ。」

「へぇ、無謀じゃないか、最高だ!」

「当然だ」

「でも子供たちの頼みだ、君が死にそうになったら引きずってでも連れて帰るよ」

「…まぁ、構わん」

「だから、そこまでは付き合うよ」

「は、好きにしやがれ」

「ああ、では改めて先陣を切らせてもらうよ」

「おう」

今までに一度もあったことが無いはずである彼等はその装備を少し見ただけで互いの戦闘スタイルを把握し、速度重視である男に先陣を、防御重視であり、あまり動かない将軍が後ろで敵の注目を集めるスキルを併用する。

男は魔物の軍の中の癌となり、将軍は後方の壁となる。



「ははっ、遅いな、そして大量だ、経験値には困らない」

手に持つ双剣を細かくたくさんしかし一撃一撃で魔物を沈める程の高精度で振るいながらも、彼は脳を全く使っていないかのように、背中に交差させて装備している杖から遠方に向けて魔術を放つ。

彼の攻撃範囲はとても広かった。

「数は多いけど雑魚ばかり、魔術だけでも殲滅できるんじゃないか?」

「少しやってみるか」

男の背中の杖から鼻垂れる魔術は広範囲に及ぶものへと変わり、魔術の範囲の隙間を縫うようにして、動き回る。

「うん、やはり動き回れるのは楽しいね、立場とか今は忘れて動き回ってしまおう」

ひとしきり暴れまわり、一息ついた時には彼の見渡す限りに生き残った魔物はいなかった。

「さて、向こうはどうかな」



「さあ来い」

魔物たちは我先にと将軍に飛びつく、しかし将軍にその牙や爪は通らない、躱しているのではない、防御しているのだ。

将軍は無抵抗のまま目を閉じる、魔物は効かないことも考えずにただ無意味な攻撃を繰り返す、けれど当然その周期は将軍の動き絵お引き金に崩れる。

「『カウンター・インパクト』」

一瞬にして土地は割れ、砕ける。

断続的な大地の震動が収まると、魔物は壊滅していた。


少しすると、男が戻って来た。

「走りづらくなってるね、この地面」

「平然と走ってきたやつが言う事ではないな」

「そうともいえるかもね」

「そちらも随分と破壊の跡があるじゃないか」

「大規模魔術で雑に処理できるくらいには()()だったからね」

そう、彼らはさっきまでの言葉と矛盾することを話す。

けれど彼らの発言はおかしくはない、なぜならこの先が本当の戦いだから。

地平線から魔物の大群がやってくる、あの軍隊をせん滅したことによって現れた増援、今まではどこかに隠れていた魔物の軍隊だ。

「きたきた、第二派」

「幾つまであるだろうな」

試しに将軍がそう尋ねてみると、

「う~~ん、そうだね」

男の左目が光り、瞳孔が広がったり縮んだりする。

「6くらいまでだと思うな」

「そうか」

「でもこんな見知らぬ男の結果信じていいのかい」

「構わんさ、お前の事はなんとなく分かった」

「早」

そう思ううと同時に彼はこうも思う

(そういう僕も、もうすでに将軍の事を信頼してしまっているし、言えたことではないな)

「さっきと変わらず僕が先行してきましょうか?」

「ああ、頼む」

「りょーかい、行ってきます」

その言葉と同時に地を蹴って、彼はすぐに見えなくなった。

「やっぱ速ーな」

「俺はしばらく待機だな、それとも、ここに来るまでに終わってるか」



「まだ弱い、この調子だと僕だけで片付けられてしまうのではないか」

そして本当に彼は一人で魔物を殲滅してのけた。

「おーい、終わったぞー」

「やはり一人で十分だったか」

「なんでそんなにくつろいでるのかな?」

「どうせお前なら一人で終わらせるだろうと思ったからな」

「じゃあ次も一人で殲滅しようかな」

「待て、次は俺が行こう」

「あ、そう?」

「5当たりだろ、だったらもうそろそろ準備運動を始めた方が良いだろうからな」

「そうかもね」



将軍は一人で3ウェーブ目を殲滅した。

彼は自身に強化を何重にも施し、3ウェーブ目を一撃で終わらせたのだ。

「ふい~、終わった終わった」

「お疲れ様ー」

「次までは余裕だろうな」

「うん、だいぶ数が減ってきたけど次はまだ余裕があると思うな」

「では行くか」

「そうだね、行こう」

彼等は二人でまたも現れる魔物の軍勢を滅ぼしに向かうのだった。


「第4波、二人掛かりならかなり余裕だったね」

「次からが正念場だろう、ここが容易いのは当然だ」

「100体ほど、うん読みは当たったみたいだね」

「そうみたいだな」

「本当はもうそろそろ向こうが来るのを待ちたいところだけど」

「どうしてだ?」

「だって君の番なくなるよ?」

「それはないな!」

「なんだよその自信」

「気にするな、隠し玉があるのはお前だけじゃねえ」

「ああ、いやお前の場合は隠し事か」

「別に隠し玉でも正しいよ、僕にとってはその事実が隠し玉になることもあるしね」

「実際にあったのか?」

「…あるだろうしね」

「そうか」

「ともかく、僕はさっさと行くよ、君も戦いたかったらその隠し玉使うほかないんじゃない?」

「お前はせっかちだな」

「そうかもしれないけど…」


100体の魔物の掃討戦が始まった。

その中にて戦い続ける二人の戦士は徐々に消耗していく。

定期的に世界に発生するようになった魔物による襲撃戦の仕組みはある程度解明されている。

襲撃の数はウェーブが1進むごとに10分の1になり、強さは10倍になる。1度の襲撃での魔物の強さの総合は下がらないのだ。


二人は分かれ、片方は前線へ、もう片方は奥に陣取る。


「隠し玉って程じゃないが、このスキルを使うか」


「さて、そろそろより広範囲を殲滅してしまうか」



「『強酸猛毒雨』」

「『戦場の恒星:加速式』」


天を紫の雲が多い、そこから降り注ぐ強酸性の雨が血を溶かし、あらゆる魔物の外装を、肉を溶かしていった。


数百メートル先にいる魔物の速度が急加速する。

まるで重力に引き寄せられるかのように将軍へと引き寄せられていく。

「『緑燭の長刃』」

大剣の先から大きな魔力の刃が伸び、将軍のリーチが伸びる。

彼が剣を振り回す。一振りで10程度の魔物が死んでいく。

一方の将軍も魔力の消費が大きいようですぐにその状態は止まる。

「こちらは終わったぞ、ふぅううぅ」


「こちらに毒は効かないけど、君らはこのままだと死んじゃうんじゃない?大丈夫?」

「『不浄吸収』」

血に溜まる毒が男の体に吸収されていく。

「『加毒循環』」

何体もの魔物が彼に襲い掛かる。彼はよけるが、動きが鈍っており、傷が掠ってしまう。

「『浄血循環』」

「アアア!やっぱつらいなぁ」

動きが鈍っている彼に魔物が何度も打ちかかる。

「精製っ完了!『醜腐猛毒旋風』」

暗く、醜く、この世のすべての不浄を凝縮したかのような猛毒が旋風の様に渦を巻く。彼に襲い掛かった魔物はすべて渦に巻き込まれ、腐り、溶かされ、跡形もなくなっていく。

彼は手のひらにさらに力を籠め、最後に爆発的に力をかけ、大きく渦を破裂させる。

「『浄風破裂』」

彼の周りを浄化の風が覆う戦場の猛毒は瞬く間に浄化されていく。


彼等は大きく消耗している。

ただし、男は異常になっているようでふらふらとしている。

残りのウェーブを乗り切ろうと二人は戦う。



二人の男が村に凱旋する。

片方は全身に傷を負いながら、もう片方は所々を毒に汚染されながら。毒はだんだんと直っていくが、完全に治るにはまだ遠そうだ。


しばらく村の物と談笑した後に彼は村から旅立つ。

彼はその後もいくつもの地域で戦った。

その末に彼は多くの物に知られずにどこかの地域で死に果てた。

その死因については諸説あるが、どれも確実性のある資料はないため

ここでは何も記載しないことにする。



————とある歴史書より


この歴史書はかなり詳しく、広い範囲の歴史について記載されていて、かつ信憑性も高いです。

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