024 共同戦線 後編2
私は今、一人の人間が死にゆく様を見ている、何故か、あの時と重なる、それは彼という人間自体が似ているからか、訳もなく重ねてしまうほどに私に焼き付いているからかは分からない、剣を振り被る、体の遅さがまどろっこしい、
「っ『凝固』!」
見捨てることは出来ない、死なせることなど絶対にできない、なぜなら私は重ねてしまったから、あの光景とこの景色を。もうこれ以上、途切れた足跡を見たくない。
「と
この剣では及ばなかった、私には届かなかった
ど
この剣は決意の証、いつか立ちたい未来を夢見て
け
この剣は重荷、ずっと私が背負うもの
ーーーー!」
黒い大剣を投擲する、剣は横向きに回転しながら、クラゲの触刺を切り裂いていく、クラゲの注意はこちらに向き、彼は死ななかった。
それだけで全身が安堵するのが分かる。
「…良かった……」
クラゲはこちらに意識を向けつつも、全ての触刺を斬られたためか再生するばかりで襲ってはこない、
こちらからもクラゲを牽制しつつ、剣を取りに行く。
ただ、触刺を全て斬られたとしてもクラゲは何もできなくなるわけではない、剣の周りに陣取り、こちらがそれを取りに来ると知っているかのように剣を守る。けれど、私は一人で戦ってはいない、
「やっ!」
クラゲの一部が短剣によって切り裂かれる、こちらを全神経を使って警戒していたのだからそれは認知できないはずであり、実際対処し損ねている。
その隙にフェリックスは大剣を抜き、重さで潰れそうになりながらもこちらへと大剣を持って来、こちらへ渡した。
「届いたね」
表情から茶化していることが窺える、さすがにそこを茶化すのはどうかと思ったので柄で割と強めに小突く。
「あ、ごめんなさい」
素直に謝られた、そして、フェリックスは自分の過去を知らないのだからそこを気遣えなくて当然だと気づいたのはその後だった。
結構痛かった、でも、今はマリアナさんの予想外の感情表現への驚きや戸惑いの方が大きい、それで何かあって心を開いたのかと思って茶化したら見事に地雷を踏んだわけです。
う~~ん
人付き合いって難しいなぁ
じゃなかった。
今は目の前の海魔に対処しないと。
相手は触刺の再生を完了させ、こちらへとそれを向け、飛ばしてくる、ほとんどはマリアナさんを狙っているようでが、一部こちらへと向かってくる、さて、どう対処するか悩みどころだが、そうだな、マリアナさんを信じよう。
マリアナさんが防御しきると信じて俺は突っ込んで相手の力を少しでも削ぐことにしようか。
突っ込む。相手から伸びてくる触刺を近いものは切り飛ばし、躱せるものは躱して、海魔に接近する。
接近完了、至近距離で、幾つもの斬撃を海魔に入れる。
ん!?見たことない動作!
クラゲが俺に向けて、開いた口のような部分を向ける。
とっさに反応しようとしても反応しきれなかったが、致命的な攻撃ではなく回避するための動作の様で、その口の部分から勢いよく海水が噴射され、その勢いで海魔は離脱した。俺は無事であり、そして本体への攻撃が多少なりとも効いていると分かった。
マリアナさんと合流すべく、こちらも距離をとる。
俺は近くまで来てマリアナさんの変化に気付く、
「いくつかの傷口が変色している?」
マリアナさんの体の傷口のいくつかが紫色に変色しているのだ。
「毒か?」
「そうみたい」
あ、返事した、独り言だったけどやはりマリアナさんと会話するのは慣れないな。
「なら俺の技能が使える。」
『浄化』には多少の解毒の効果がある、それがアンデットの消滅という効果が発揮される要因にもなっているわけだが。
「『浄化』」
何度も繰り返し、確実に一つずつ、傷口から毒を除去していく、もう体内に回ってしまったものはどうしようもないが、これでしばらくは大丈夫だろう。
「ありがとう」
「あ、はい」
かなり喋るようになったな、だいぶ戸惑ってる。
でも、これマリアナさんに毒がちゃんと効いてしまうから厳しいな、まずマリアナさんに気持ちとして死んでほしくないというのと、戦力的に死なれたらもうこちらに勝ち目がなくなることの二つの理由でマリアナさんを毒には晒せない、そうなると、俺が盾になって、でも相手は攻撃を二人に分割することだってできる、どうにかして動きを止めないと、でも全ての触刺をを止めるのは現実的ではない、であればどうするか。
答えは一つしかない。
「マリアナさん、一つ作戦があります、いえ、一つしか作戦がありません」
「それは?」
「俺が動きを止めます、なので海魔を仕留めてください、本体ならば再生能力はありません」
「本当に止められる?」
「はい、…多分」
「じゃあ、仕方ないのか」
「分かった、仕留めて見せる」
「ありがとうございます」
相談を終えて、海魔の方へと向き直る。
海魔が再び触刺を伸ばすより早く、俺は短剣を投げて、海魔に突き刺す。
「さあ、こちらを捉えろ、お前の相手は俺だ」
俺だけとは言わないけど、むしろ戦力的にはマリアナさんと言えるが、海魔の攻撃を受ける相手は俺なのだからこれで合っているはずだ。
案の定、単細胞な海魔(クラゲは単細胞生物ではない)には考える脳みそはなかったようで多くの触刺を俺に向ける。
迫る触刺を俺は回避せずに刺さらせる、今回の攻撃も毒が混ざっているようで、毒が体内に流し込まれるのを感じる。
海の戦いでは俺には制約がある、それが今、無い同然になろうとしていた。
「ッ!」
辛い、何本もの触刺が彼に突き刺さる。とても痛々しくて我慢できないが、今は仕留める事だけに焦点を合わせる。
大剣を大きく振りかぶりながら加速する、海中で態勢を整え、大剣を左下から大きく斜めに斬り上げる!
邪魔をする触刺が何本もあるがそれらもろともにその体を両断する。
『凝固』を解除する。
クラゲが死んだことを確認し、その死体の中で指定の部位を収納袋の中に納め、クラゲに刺されていた彼のもとへと駆ける。
流し込まれる毒を感じる、でも効かない、当然さ!
そしてこれによって俺の毒がお前を上回っていると証明された、だったら、『薬痛毒』で動きを鈍らせることぐらいは出来るよな!
逃がさない、お前が俺に毒を流し込んだこの触刺が、俺からお前に毒を逆に流し込む。俺の血は毒だ、その毒が今お前に流れていくのだ。
痛みはあまりない、でも疲労で朦朧としていく感覚の中でマリアナさんが仕留めて駆け寄ってきたことは分かった、
ああ、そうだった、マリアナさんは俺が毒使いであることを知らないんだった。
「ごめんなさい……あの…上まで引っ張っていってもらえると助かります」
「分かった」
彼等は上まで登っていく、海底域の王者が狙っていることを知らないままに。
海底域の王者、ビット湾の海底における生態系の覇者は海魔ではない、
あくまで王者のようにふるまっていただけであり、そもそも海魔はよそ者だ。
多くの魔物同様に自然発生し、親も子も持たない。一代限りで途絶えるにもかかわらず絶滅しない種である。
どちらにせよ海魔はそのあと死んでいた、王者と人間、どちらに殺されるかの違いしかないのだ。
その王者が、いま彼等に牙を剥く。
「起きて、起きて」
気絶してたみたいだ
にしても妙に緊迫感のある声だが一体何が…
「追われてる」
追われてるって何に?
その答えは後ろもしくは下を向くと得られた。
げぇ、何あの巨大な魚、マジで!?もしかしてウツボもどきの親玉?
とにかくサメみたいな見た目をしたその下部が異常に細長い魚が目下接近中!
海の天井はまだわずかに明るい程度で、海面に着くには時間がかかる、そして陸に上がるとなればもっとだ。
「逃げきれないですか?」
尋ねると
「うん」
予想通りの答えが返ってくる。
「やっぱりそうですか」
「あのクラゲよりも断然強い、もしかしたら毒で一方的に殺すことがあのクラゲにできたのかもしれないけど」
「もう確かめるすべはないですけど」
くぅ、速い―
追いつかれる追いつかれる、まずい――!
ドン
サメウツボもどきの横から真っ黒な深い闇に溶けるような魚影がある。
それは何かのスキルだったようで、見えるようになったその姿はマッコウクジラもどきと形容するほかない、その頭は相当固いであろうことが窺える、
マッコウクジラもどきとサメウツボもどきが戦いを始める、サメウツボはその尾をクジラに巻き付けて絞めて攻撃し、クジラはサメウツボの胴を頭でぐりぐりと抉る。
なんにせよ、海底の王者たちによる襲撃は終わったのだ、マリアナさんに引っ張り上げられながら、遠くなっていく海底の王者たちを見ていた。
因みに陸に上がったら筋肉を貫かれたことを再び自覚し、さらには体の重さもあって動けなくなりました。
名前・種・Lv
フェリックス・人・58
攻94/50 防186+45 魔139 精154+25 俊102+2 器102-10
HP229 MP229
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体
装備 戦闘用水着 水中呼吸器 水かき 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐70 40 60 80 40(35) 重+35
装備スキル 開放 閉鎖 武装 呼気排出 吸気吸入
彼という人間自体が似ているからです。




