021 狙いを定めて1
元々嫌な予感はしていたのだ。
だって、寒かったし、街に来た時や宿の朝など何回かそのことを感じていた、それ自体は風が強いからだと思おうとしていたのだが、
ざぶん
ばしゃ
しゃっしゃっしゃっ
「リーダー寒いです」
「最南端なんだから仕方ないだろ」
だって南の海って言ったら暖かいのを想像するでしょ!
こういうところでも二つの世界観での違いが感じられる、でも南が寒いってもしかしてここは南半球?
「リーダー、一番暖かいのは何処ですか」
「どこだろうなぁ、でもおそらく一番可能性があるのは大砂漠かもな、詳しくは知らないが西の大陸の方にもかなり暖かい地域があると聞いている」
大砂漠、砂漠だから熱いのだろうか、でも砂漠ならほかにもありそうだが
「砂漠の中でも大砂漠なんですか」
「ああ、あそこは太陽の位置がとても高くなるとも聞いている、それもあって暖かいのかもしれないな」
赤道付近なのか、それで熱いというのもたしかにありそうだな、まあ赤道直下なのにもかかわらず砂漠であるというのも奇妙な感じはするが。
ま、そこは異世界パワーかな?
「で、海がとても冷たいという事だったな、ローシェ!」
「はいは~い」
「防寒の効果ある術無かったか?」
「あるね」
「それをフェリックスにかけてあげてくれ」
「あ、寒がりなのかい、いいよ『陽天の温もり』」
おお、あったかい
「ありがとうございます」
てかこの人万能すぎでは?
そして俺は再び海に潜る。
視界に泡が満ちる、海に入ったことはなかったがこんな感じなのかと感心する。すぐ前を魚が泳ぎ去る。
奥を見ると群れた魚がはるか向こうを一体の魚影のように泳いでいる。
海底はなだらかに深くなっていき、そこに沈む岩の大小はばらばらだ。
試しに手足を動かしてみる、ローシェさんから受け取ったアクセサリーのおかげでスムーズに動ける、無い時と比較していないのでどれほど効果があるのかは実際には分かっていないが。
依頼で求められていた魚を探す、かなりの数が必要なので出来る限り迅速に動く。
しばらく泳いでいくと海底は見えないくらいに深くなっている、別に呼吸に問題はないので潜りに行ってもいいが、そこまで興味もないためより堅実にこのまま進もう、資料によると今私が求めている魚は浅いところに生息しているらしい。
「———ッ」
後ろから気配を感じる、ただの気配ではなく、敵意だと判断する。
素早く体の向きを変え、敵影を視界に収める、そこにいたのは他の魚と比べると巨大な魚だ、口の中に並ぶ牙はとても鋭く、目は獰猛な光がともっている、
「支障なし」
ゴボガバボゴバ
形容しがたい泡を猛烈に立てるような音とともに敵性魚類は突進してくる。
「『凝固』」
手元に大剣を出現させ、戦闘態勢に入る、突進は交わさずに真正面から両断する。
「『鋼割き』」
上から大剣を振り下ろす、スキル『鋼割き』も使用しているため、まず両断できないことはないだろうが、問題はその先だ、今下方から急速接近する敵の気配を感知している、この魚を両断することは間に合うだろうが、その次に接近する魚2に対応しきれるだろうか。
ズン———
重たい音とともに敵性魚類が沈む、それと同時に体を捻ってものすごい勢いで迫る魚2の突進を回避、すれ違いざまに横薙ぎに大剣を振るい
「『岩砕き』」
ゴス
破砕音と共に勢いのままに海面上へと打ち上げられた魚は力尽きた。
「死体の回収は…一応しておこう」
下へと潜り、魚1,2の死骸を回収し、細かく切って収納袋にしまう、幸いにしてその近くにターゲットとなる魚が群れを成していたためかなりの数の魚が獲れた。
一応、初潜水の成果だ。
再びの海中。
今度は落ち着いて周りを観察する余裕がある、やはり南国の海のイメージとは似ても似つかない、例えば環礁はないし、サンゴの他にもイソギンチャクや鮮やかな熱帯魚もいない。
でもきっとサメなどはいると思うのだ、出来れば会いたくないな。
しばらく泳ぐだけで、すぐに目的の魚の群れを発見することが出来た、海魔は目撃できていない。
海魔を見つけたら、信号を出す手はずだ、これは光を発生させるものであり、使い捨てだ、これまでも、そして今現在も、多くの冒険者が海魔を見つけ、討伐すべく奮闘しているが、まだ討伐されていない、そもそもどんな姿なんだ。
肌に海流とは別の海水の流れを感じた。
臨戦態勢!
下か上か前後左右のいずれかか、さあ、どこからくる!
果たしてその答えは下だった、下から細長い鋭い牙の並ぶ口を開けた魚、俺の知識では靭という姿が一番近い魔獣?魔魚?が接近している。
この海で毒とか使ったら明らかに海洋汚染がひどそうなので、殴り殺させてもらおう、後おまけ程度に斬撃。
「『武装』!」
下からの突進を体をのけぞらせて回避する、何回もの戦闘を経て、俺も単純な攻撃なら躱せるようになった様だ。
通過するウツボの腹部に打撃をお見舞いする、それ自体はたいして堪えた風でもなく平然と俺に対峙する位置に陣取りなおしている。
「余裕しゃくしゃくってとこですか」
じゃあ、こっちから、行くぞ!
足で海水を蹴って加速する。
ウツボの腹をひっかく、血が出れば多少は痛みもあるでしょう。
ボゴボゴボゴ
ウツボが口から泡を出しながらもだえる、そして身をよじり、尻尾を振るう。その尻尾は俺に当たり、俺は弾かれるが、水中という事もあってあまり飛ばされる距離は長くない。
だめだ、決定打が無い。
至近距離での毒針なら大丈夫か?
いや、止めておこう、まだ短剣もあるんだ、少しずつでも傷をつけていけばいつかは倒れるはず。
今度はウツボの側からの突進だ。
やはり単調だな、なんでかは分からないが。
体を半歩引いて躱し、すれ違いざまに傷をつける。
順調かと思いきや体を曲げてこちらに再び突進、そこにさらに傷をつけるが、やはり同じようにターンしては突進を繰り返す、一体何が目的だ?
「あ」
気付けば周りを囲まれていた、なるほど俺を締め付けようとしていたのか、不味いな。
バチン
とっさに腕を上げたため腕は締め付けられなかったが、体が締め付けられて動けなくなってしまった、こうなったら心臓を狙うしかない、
「gaaaaaaaa」
俺に巻き付いたうえで首を持ち上げて、俺に威嚇する、
鰓の下を狙って短剣を突き出す。
こちらに威嚇のために首を向けていたのがあだになったな、お前の防御は背中側の方が厚いのはこれまでつけた傷の感覚で分かっているんだ。
再びウツボが、しかし先ほどよりも多く泡を吐き出す、それとともに血も口から出てくる、青っぽい血だ。
そしてそれは俺がウツボの心臓を射抜けた可能性が高いことを示していた。
これにて俺の水中での初戦闘は終了した。
次にであったのは巨大な…クジラ?だ。
とても巨大で、(実際に見たわけではないが)向こうの世界のシロナガスクジラやジンベイザメにも勝る大きさだと思われる。
その腹の下には大量の魚が群がっており、中にはコバンザメの様にくっついている魚もいた。
目を凝らしてみたが、俺の探している魚はいなさそうだ。
一度海面上に上がってみると、その巨大な魚の浮き出た背中が見える、まるで島の様だ、視点が低い事もあるが、果てが見えない、背中の上に上がってみたいが、さすがに怒るかもしれないので止めておこう。
にしてもこの魚を何らかの手段で手懐けて背中に大砲とかを設置したら立派な戦艦になるんじゃないか?
件の大発明家さんがやっていませんように。
その後もしばらく海を泳いで目的の魚を探し、しばらくしたら、陸に戻った。海を泳ぐのもよかったが…
「疲れた」
「体力が無いぞ少年!」
ばしん
相変わらずこの人のノリにはついていけない
「気分転換に魚の解体をしようと思うので獲ったのを集めてください」
「りょうか~い」
取り敢えず、俺が獲ったものとローシェさんが獲ったものを集めて解体を始める、しばらくすると他二人も集まってきた。
「おう、お疲れさん」
「お疲れっす」
「ありがとうございます」
マリアナさんは戻ってきていない様だ、遠くまで泳いで行ってるのかな?
ローシェさんの獲った魚は傷一つなく綺麗で、カイさんの獲った魚はどれも一本だけ矢が突き刺さっていた、一本で仕留めているのだから相当な技量だと思う、シャークさんの獲った魚はどれもきれいに両断されていて、切断面が見とれるほどに美しい。
俺の獲った魚の死体はぶん殴ったようにへこんでいる、なぐって気絶させたからな。
順調に解体を進める。
名前・種・Lv
フェリックス・人・57
攻93/50 防183+45 魔137 精152+25 俊101+2 器101-10
HP226 MP226
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体
装備 戦闘用水着 水中呼吸器 水かき 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐70 40 60 80 40(35) 重+35
装備スキル 開放 閉鎖 武装 呼気排出 吸気吸入




