002 選択し、決断をもとに、出発する
前世の記憶を得た結果、今の俺の性格は前世の記憶などにも影響されて少し前とは変わっている。
戸籍は作れないようだが、いわば前世の俺と融合したような状態の今の俺は今まで興味を抱かなかったものにも興味が出てきている。
その中でも特に興奮しているのが、
冒険だ!
今までは世界を知るという行為にあまり興味が無かったが、今はもっと周りの国々の事やこの国の様々なほかの場所まで訪れてみたいと感じる。
だって俺の記憶の量は前世の方が圧倒的に多いのだ。だから前世の方に親しみが出て、今の世界に興味が溢れる。
けれど、やはり学校にいけないのは俺の前世の事情もあってとても残念だ。
「お父さん、俺は学校に行けないでしょ」
「そうだ。すまない」
「うん、でも大丈夫。もっと興味のあるものがあるんだ」
「フェリックスの興味は何処に向いているんだ?」
兄さんが声をかけてくる。
「俺は旅、冒険がしたい」
「そうか、なら冒険者が良いだろうね」
「なにそれ」
「そのまんまだよ」
兄さんが説明し、ときどきお父さんが補足する。
冒険者とは冒険者ギルドの組合員の内、依頼をこなす役割の者の事で、冒険者ギルドはこの世界でも国家を除いて最大級の組織である。(むしろ小さい国家ならその規模で上回ることもあるかもしれない)冒険者ギルドは民間や国家からの依頼を受け、難易度別に分類し、スタッフを通して冒険者達に達成してもらい、依頼者からの報酬のうち一部を手数料として受け取ることや、ギルド直営の施設の利用料などで成り立っている組織だ。
冒険者という呼称ではあるもののその中には自身の故郷での採取や研究などを生業としている者たちも多く、戦闘員や旅する者だけではない。
「分かった、でもお前はまだ自分の魔腺に対応する魔術や属性攻撃もできないだろう、だから」
「俺と父さんで、お前の属性技能発現を手伝ってやるよ」兄さんがお父さんの言葉を引き継いだ。技能はスキルの事だ。
属性というのはそのままだが、俺の場合はちょっと特殊だ、なにせ毒浄は、両方とも火水風土光闇の基本属性に属さない。普通は誰もが基本属性の魔腺を一つは持つ事が多いからだ。最初は基本属性で、魔腺の使用感覚をつかむ。例えば火、火から魔力を受け取り、体内を循環させ、火と同じ魔力を火に流し込み、火の勢いを上げたりしていくうちに技能を発現させる。
通常は上学校でゆっくり半月ほどかけて発現させるものらしい。
「でも俺魔腺の属性毒と浄だよ」
「そうか、 それは大変だな……」
「大きさは」兄さんが恐る恐る聞いてくる
「心臓のが小さめの代わりに他のは心臓より大きいみたい」
「すげーな」
「それなら無理やり魔力注入して力業で励起すれば発現するかな?大きいという事は壊れたりしないだろうし」
お父さんがぶつぶつとめっちゃ怖いこと言ってる。発言内容から壊れる可能性のあることをやろうとしているように聞こえるのですが!
「魔力の扱いはお母さんがうまいからお母さんにやってもらうのがいいんじゃない」
うそ、兄さんまで…
「お母さーん」
呼ばないで
「どうしたの」
今までの話をうまくまとめて兄さんが説明してくれた。
ほんとは説明してほしくないけど
「手を前に出して」
我慢するしかないか、
手を前に突き出す
お母さんが俺の手に手のひらを合わせる。
直後ものすごい電流を流されたかのような激痛に襲われる。
「ギャー――――――――――――」
右手首の周辺からは毒々しい紫色の固体と液体の中間のような何かが生成され(おそらく毒そのもの)、
左手首周辺からは清らかな淡い青緑色の気体か液体か、区別のできない透明な物質があふれる。
「お、お前両方上半身というか、両方手にあるのかよ!変わってんなー、それでバランス取れてんの?」
気付けば毒は庭の地面を一部溶かし、透明な物質は覆ったろ頃に雑草や花を生やしていた。
《毒魔術》
《浄魔術》
これは!鑑定ができるようになった時と同じ!
「もうできた!できたから終わりに!してくれー」
お母さんは我を忘れていた。
俺の両手から出てきた毒と浄化の煙?に呆然としていた様だ。
けど、俺の声で我に返り魔力を流すのをやめてくれた。
現在の俺のステータスだ。
名前・種・Lv
フェリックス=プラウズ・人・10
攻30 防45 魔40 精36 俊36 器36
HP72 MP75
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性
お父さんが何かを思いついたように家の奥に入っていった。
「フェリックス、この木剣を持ってリオの攻撃を受けてみてくれ」
「え、それは無茶だよ」
兄さんのリオは剣術を上学校で鍛えている、そんな兄さんの攻撃を初心者の俺が受け止められると?
しかしお父さんは俺に木剣を押し付け、お兄ちゃんにも木剣を持たせた。
俺は右利きなので右手で剣を持つ。
「じゃあ、行くぞ~」
「もう仕方ない!良いよ!」
直ぐに兄さんが本気でないことが分かった。なぜならとても真っ直ぐで、しかもいつも庭で素振りしているときよりも全然剣の速度が遅かったからだ。
(具体的に言うといつものは見えないけど今日のは見える)
上から振ってきたため、俺も剣を券を頭の上に構え受け止めようとする。
木剣が迫ってきたため反射的に目を閉じ、剣を強く握る。
しかし想定していた木剣が木剣にぶつかることによる衝撃は来ず、来た衝撃は頭を木剣で叩かれた衝撃だった。
「魔術を使うなんて聞いてないよ~」
確実に防いだはずだ、叩かれた位置的にも防いだ方角から飛んできていたはずなのに。
それでも叩かれているのだから魔術しか考えられない。物質をすり抜けるような魔術があるのかは分からないけど
「魔術は使っていない、手を見てみろ」
手を見る、そこには俺の持っていた木剣は無かった。
「あれ?」地面を見ると、木剣の先端が消えてなくなるところだった。
お兄ちゃんの木剣も腐ってボロボロになっていた。
「おそらくお前の右手の魔腺から毒属性の魔力が漏れ出ているからだろう。」
夕飯を食べた後自室に戻り俺は自分の能力の確認を行うことにした。
俺は毒魔術の詳細を見た。
『腐食』『溶毒』
恐らく『腐食』の方だろうな、お父さんに聞いた話では、『溶毒』は毒を作る魔術だが、腐食は触れたものを腐らせる、つまり物質ではなく熱の伝導に似た形式で伝わっていく魔術らしいからだ。幸いなことは、まだ魔術が弱く、強く握らなければ『腐食』が起きないことだ。
そういえば左手はどうなのだろう
浄魔術の詳細を見る。
『浄化』『再生』
試しに自分の部屋のごみ箱に向けて『浄化』してみる。
手がほのかに輝いたが他にはどうともない。
その状態でゴミ箱に触れてみる。特に見た目に変化はないがきれいになった気がする、次は手のひらに『溶毒』を出してそこに触れる、すると『溶毒』が消滅した。おそらくこれは『腐食』の浄魔術版だ!
因みに、『浄化』は腐食を止めることができた、『再生』は『腐食』で消えた分を元に戻せることが分かったが完全に消滅したあの木剣は再生できなかった。あと、俺の左手からは常時うっすらと『再生』が出ていることが分かった。これも右手の『腐食』と同様に強く握らないと効果を発しないと分かった。
次の日
家族からは肩掛けの小さめバッグを貰い、その中に銅貨20枚と魔獣の解体などに使用するナイフを入れてもらった。
取り敢えずこの町のギルドに言って登録しよう。
この世界の貨幣についてだが基本的に100枚で上の貨幣と同価値になる。
価値の順は、銅貨→銀貨→金貨→玉貨となっている。
さあギルドに着いた、お兄ちゃんにもらった地図を見ながらだと一瞬だった。
早速中に入る、何人もの人が中で談笑している。
内装は入り口からまっすぐ道が伸びており、その道が、受付で広がっている、道の両側には飲食スペースの様な物が広がっており、いくつもの丸机といすが置いてあった。入り口から見て左側の壁には大きな木の板が設置されていて、そこに何枚も紙が止められている。両端の奥からは階段で二階に上れるようになっていて、二階は一階の半分ほどの面積だ。
取り敢えず受付に進もう。
受付の人に聞く、「ここが冒険者ギルドですよね?」
受付にいた人が「はい、そうですよ」
「冒険者になるためにはどうすればいいですか?」
「ここで簡単な手続きを行うだけでいいですよ、このギルドは基本的に自由なので」
良かったー試練とかあったらクリアできる自信なかったよ
「じゃあお願いします」
「分かりました」
そして一枚の紙を渡された。
紙に各項目は、名前と年齢だけだった、そしてその下に大きな四角い空欄があった。取り敢えず名前は姓を書くと家族に迷惑がかかる可能性があったため、名だけ書いて年齢は隠さずそのまま書いて渡した。
「姓はないんですか」
「はい」
そもそも戸籍が無いから名前もあるのか分からないけど。
「分かりました」
そして一度奥に行きまた戻ってきた。
その手には紙の代わりにカードが握られていた。
「このカードに血を垂らしてください」
えっ!?
針も渡された、勇気を出し、針を指に刺し血を垂らす。
すると血がカードに吸い込まれ跡形もなく消えた。
針は強く握らないように気を付けていたから腐食は受けていないようだった、針を刺した左手もすぐ綺麗になり傷も癒えた。
そしてそのカードを、受付の人が受付の机に半分埋め込まれた水晶にかざした。かざされたカードは水晶の上で浮き、ほのかに光っていた。
「では、ギルドの説明をしますねあの掲示板からクエストが受けられます、一度に受けられるクエストの数に限りはありませんが、期限以内に達成できなければ罰金があります、また、自分の冒険者ランクに応じたクエストのみ受けられます。そしてランクについてですが、ランクはF~AまでとAの上にSがあります。Fの下にはGがあり、Gはいわゆる見習いです。未成年である場合はGからとなります、ランクは貢献度で分けられており、一定の貢献度に達すると試験が受けられ、試験の達成により昇格できます。この貢献度はクエストの達成によって付与されます。」
他は全部知っている情報だったので省く。
説明を聞き終わったので、クエストを受けられる掲示板に来てみた。
たくさんのクエストがある、俺は確かGランクのクエストを見ればいいんだよな。
じっくり眺める、
クエストの項目は6項目だ、対象、ランク、貢献度、報酬、地域、期限だ。
ランクと貢献度はそのままで、
報酬はお金以外のアイテムなどの場合もあり、
対象はどういう種類か、や対象となる草や魔獣などだ。
地域は何処の地域で行うかで、無い場合もある。
期限はクエストをいつまでにクリアしないかいけないかで、これも無い場合もある。
ふと俺は気づいた、あれ?なんか同じ地域のクエストが三つもあるんだけど。それぞれ貢献度は6、5、3だ、すご、それだけでランクアップに必要な貢献度の半分ぐらい行くんだけど。
でもなんでみんな受けないんだろ?
あれかな、Gランク冒険者の絶対数が少ないのかな?
早速受けてきた。
その三つの内容だ。期限は今日から何日後かで、項目は対象、ランク、貢献度、報酬、地域、期限の順番だ。
フタタカダケの採取・錬金術師
Gランク
3
銅貨10枚
サーター山
無し
ミストーディアの角の納品・オークション店
Gランク
5
アシッドスパイダーの縦糸
サーター山
11日後
霧の源の採取・鍛冶屋
Gランク
7
装備一式の制作
サーター山
10日後
3つ目の報酬などはとてもユニークだ
俺専用の装備!憧れるこがれる!
早速依頼を受けに行くと、受付でスサ雉というアイテムを貰った。
これはこちらの世界のコンパスの様な物らしい。
ありがたい。
さて、依頼に行く前にギルド別棟にあるという図書館に行ってみたい。
行先について調べるのは大事だからな、まあ前世でそんなこと全然してないんだけど。
名前・種・Lv
フェリックス・人・10
攻30 防45 魔40 精36 俊36 器36
HP72 MP75
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性