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毒と浄は輝玉に宿る  作者: 狐池
旅の始まり
10/110

010 刻限

試しに三人称多めで書いてみたら変な感じになった気がします。

死霊魔術について話すことにする。

死霊魔術はその名の通り資料を使役する魔術だ、しかし、その場にあふれる死霊を使役するだけでなく、生き物の亡骸から死霊を作り出すこともできる魔術だ、そしてその亡骸には怨念(未練や恨みなどの生前に果たしきれなかった想い)が付着することがあり、それがより付着している状態であればあるほど召喚される死霊は強力もしくは大量になる。

通常の死霊魔術師は、一度亡骸から死霊を生成すると、使役と共に怨念を晴らすことの手伝いもしたりする、ただしそれをすると死霊の大幅な弱体化や消滅も起こるわけだが、もしくはスキル『彼の者に安らぎあれ』を覚えており、それで成仏させることも多々ある、

しかし、それが通常であれば、普通でないことをするものも出てくるわけだ。

たいていの死霊魔術師は、そもそもそのような残酷なことをしようと思わず、またしようと考えても技量、もしくはスキルが足りないことで結局実行できない。

無限循環、それが多くの死霊術師には出来ない事。しかしそれをなすことが出来た者がいる。

そのものに残酷な所業を行う事への罪悪感はなく、

たとえ死霊魔術師としての技量が足りずとも、

そのものの固有のスキル、即ちユニークスキルである結界。

『業無尽にあふれる絶対死地』はそれを可能とした。

そもそもこの結界の効果とは、

一、戦闘する対象を逃さない鳥かごとしての意味を持つ障壁としての効果

二、結界内部の怨念を全て一か所に集め自由に死霊として召喚するという効果

三、死霊が死した後に()()()()()亡骸にしばりつける効果


である。

これにより、彼は死霊を一度召喚士、怨念が亡骸に無くなった後に、

今度は死霊の死骸となる素材から再び死霊を作り出すことが出来る、

そして彼には大容量に収納袋がある、その中に大量の死骸を詰めると、

結界内に出すことでいつでも死霊を召喚することが可能になる、

当然結界の展開及び維持には莫大なMPを消費する、

けれどもそのことを入れてもなお強力なこの能力を使って彼は殺したものを何回も何回も何回も殺すことでレベルを上げていた。

怨念は何度も繰り返すうちに蓄積されていき、今では彼の袋の中の「素材」のうち古いものは常に可視化されるほどの怨念を纏い、収納袋越しに彼を呪うようになる、それは精神(こころ)に引き裂くような痛みを与え、体にし、常に痛みを与え続けた、それが数十年続き……

いつのまにか彼の心も体も強く痛むことはなくなっていた。



浄魔術という魔術がある、それは呪いと病を癒やし、不浄を消滅させることに特化した魔術であり、全く攻撃能力を持たない、

ただし、その攻撃の例外となる者がある、

いや、その表現は正しくないかもしれない、それはその者たちにとって常に、幸福な終わりであり、「痛み」でもなく、「未練」や「恨み」、「憎悪」を払う光だから。

しかし、間違いなく浄魔術は彼ら死霊にとってその存在を消滅させる必殺の攻撃となる、問題はそれを受ける側がどうとらえるかだけだ。


もしも仮に——

その魔術を使って無限に続く怨念の螺旋を断ち切れるものがいたならば

それは彼の命をも刻限に至らせられるかもしれない




怨念が見える

いくらこの魔術がある世界でも明らかに異常だ。

実際お父さんからそんな話は聞いていない。

よく童話を聞かされていたが、それでも全く出てきていない。

ザワ

生暖かい風が吹いた。

気持ちの悪い空気が空間に充満するこの世の終わりでも始まるかの様だ。

そしてそれを起こした張本人は俺の苦しむ姿を見て笑っていた。

「これは、なんだ」

それに対してそいつはこう言った。

「終わりだ、刻限が来た」


死体が動き出す

亡骸に再びの命が宿る

死骸にきっともう何度目もの本人たちも望んでいないであろういびつな命が吹き込まれる

俺の足下と

俺の頭上に

巨大な魔法陣が展開される。

あちこちで小さい魔法陣が起動し、ゾンビやスケルトンをはじめとした様々な死霊が湧き出る。

二つの巨大な魔法陣の内、上からは幽霊のタイプが、

下の魔法陣からはゾンビなどの個体のタイプが、

大量に湧き出てくる。

そして、俺が気付いたのは巨大な魔法陣から出てきた死霊たちに見られる特徴だ。

それは、欠損した部位、もしくは骨の隙間などのああるべきものが足りない場所から黒い炎が噴き出ている。

霧の山の中での死霊たちには見られなかった特徴だ、それが意味するのは果たして、怨念の濃さだろうか。

とにかくこいつらを浄化してやることが最優先だ。


召喚は続く、俺の周りの死霊の数が増えていく、もう数十匹の範囲はとっくに越している、今やその数は数百にも及ぶだろう。そして周りの小さい魔法陣から発生した死霊も俺の周りに集まってきているので、もはや逃げる手段はないと考えていいだろう。

まあ元々逃げるつもりはないから構わないが。ここまでの数がいると浄化しきる前に物量で押しつぶされそうだな。



「あいつが蹂躙されてからでも駆逐するのは遅くねえな」

そういってガルドは高台に座り、自分が蹂躙するに値しない弱者が死にゆく姿にほくそ笑んだ。

彼は未だ気付いていない、彼の中で痛みを運ぶ血液に

彼は未だ気付いていない、彼の中で死にゆく内臓に

彼は未だ気付いていない、少しずつ動かなくなっていく筋肉に

彼は未だ気付いていない、自身を死に追いやる毒の魔手がもうすぐそこまで体を蝕んでいると

痛みを常に感じ続ける彼には死に至る痛みが感じられなかった。


極論、この結界内にいる資料基アンデットはすべてガルドの配下であるともいえる、たとえ常に殺してやろうと殺意を向けていても、

だから、今も彼の号令で動き出す、不満はありながらも、体は動かされるから。

「やれ」

戦場に響く声で号令をかける。



処理が追い付かない

そもそも浄化できるのが左手だけなので体の向きを変えながら全方位処理しなければならない時点で無理だ。

どうにかしなければならないが、準備できる時間はとっくに過ぎた。ガルドの掛け声から死霊の軍は俺の包囲網を縮め、攻撃を開始している、今俺の周囲にいる個体が、ガルドに恨みの強い個体であるため迷いがあり、清軍が詰まっているが、それも時間の問題だ。

何か、起死回生の一手が必要だ。

広範囲を一度に浄化できるような一手が!

周りから無数の手が伸び、迫る。

まるで助けを求めるような、救いの可能性にすがるような、その手を時に躱し、時に掴んで少しずつ数を減らす、しかし未だに増加は止まらず、総数で見ると死霊の軍勢は増える一方だ。そしてその数は今や四桁にまで届いていそうだ。

分かってる。俺だってもうわかってる。このままじゃじり貧だ。その証拠に俺の周りの円が最初は半径7mくらいあったのに今や1mもないだろうし。

幽霊の手が俺の体を通過する。

イタイッ!!

その一撃が通ったことを皮切りに俺の被弾率が加速度的に増えていく。

均衡が崩れ始めたのだ。

俺も懸命に体を動かすが、数が多くて捌ききれない、もう俺の周りの円は

半径30㎝をきった。もう密接状態だ、これでは躱せるものも躱せない。

伸びてくる手が、爪が牙が、俺の体を引き裂き、傷を増やす。

浄化だけに使っていたMPを回復にも回して生き延びる、でもそれだと浄化によって数を減らすペースも落ちる、気付けばもう数は増えていないが、減少速度が大きく下がったためにあまり意味はない。

『浄化』を手に纏わせるだけでなく気体として放出出来たら違ったのだろうが、先ほどから試しているものの上手くいかない、全てはオーラとなって収束してしまう。

でもこれ以外に広範囲に『浄化』を伝える手段はない


結論から言えばこの時の俺は『浄化』に対する認識が誤っていた、『浄化』とは拡散していく気体を手の周りに留めているのではなく

魔力のオーラを手に纏っているものなのだ。ちょうどこれは『腐食』と同じような性質だ。それゆえに手にその性質が継承される。それに俺はを経たのちに気付く、だからこの時によって一つのスキルが目覚めなければ俺は勝てなかった。

空気に伝播させたいのであればそれは簡単に為せる。

纏うオーラの内側から魔力を爆発的に放出し、空気にオーラの性質を継承させる。その発想が無かったのだ。

簡単に言えば風船ガムと同じだ。「『浄化』のオーラ」という薄い膜を纏った手の内側から魔力という名の「息」を吹き込んで膨らませる。

そしてそれを()()()()()()続ける。

ただし、その中から出てくる「息」は『浄化』の性質をもつものであり、死霊の天敵なのだが。

結局俺は窮地を抜けられた、それだけでいいのだ。


《浄魔術不適工夫使用確認∴浄風破裂》

「来た」

俺は驚愕している、「声」の内容は理解できる、でも、だとするとまるで何かが間違え続けている俺に助けをくれたみたいだ。

でも、今は使うだけだ、鑑定の時間すら惜しい、このまま使用する!

「戦場包むは浄き風呼起せよ『浄風破裂』」



ある一人の人間を中心として風が広がった、わずかに色のついた煙と呼ぶにはあまりに綺麗な風が戦場を包み込む、そして幾度もその生を虐げられた者たちにも届く。

それは死霊を癒し、怨念を断ち切り、天へと繋げる一陣の風。一点から広がり周囲を包む浄き風。

それは千数百もの死霊を同時に消滅させ、死霊たちの終わりをもたらした。



俺の耳にかすかに声が聞こえた、言語化するのも難しい、意味そのものが振動になったかのような「声」だった。

だから、俺は

「確か、ガルドだったよな」

聞こえたから俺は

高台からの見物に耽るけるそいつに言う

恨みよりも先に感謝を伝えた彼等はきっととても苦しかっただろうから、

そいつの余裕を

俺がここで一つの螺旋を

断ち切る


「終わりだ、今度はお前の刻限だ」



もしも仮に——

その魔術を使って無限に続く怨念の螺旋を断ち切れるものがいたならば

それは彼の命をも刻限に至らせられるかもしれない


——何故ならそれが意味することは、全ての死霊を死骸を残さず一瞬で消滅させられる能力の持ち主であるのだろうから


名前・種・Lv

フェリックス・人・40

攻70 防135 魔103 精111 俊78 器78

HP163 MP169

スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂


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