第二話『無自覚な異世界転移とヤバい女の片鱗を見せる吸血姫カーミラ』
「――う、あ、なんだ?」
ログアウトしたと思ったゴールドの視界に映るのは、ギルド拠点である豪華絢爛なお城の中でも、特にそれが顕著な玉座の間と呼ばれる空間だった。
「なんだ? ログアウトしたはず……。なぜ玉座に?」
少し混乱しながら玉座に座るゴールドに、声が、かかります。
「――どうしましたゴールド様」
そのきれいな声の方向に首を振り向いてみると、心配した顔でゴールドをのぞき込む少女がいた。
ゴールドは、その少女を知っていた。当然名前も。
「カーミラ?」
その名を口にしながら、その十四歳ぐらいの白いゴスロリ風の洋服を着ている少女を見る。
美しい銀色の髪。
前髪は、お姫様カット。長いロングヘアーは、クルクルと内側にカールされたお嬢様な雰囲気を感じさせる。
もちろんその髪型に似合うお姫様然とした美しい顔をしている。
しかし、人間離れした特徴もよく見れば、見受けられた。
血のように赤い右目と、水のような青い左目の所謂オッドアイを持ち。
そして透き通るような白い肌が、人外の印象を強く持たせた。
そんな人ではない、何かの存在感を持つ、美少女が目の前に立っていたのだ。
「はい。貴方様の下僕カーミラですわ。ゴールド様、なにか不都合などがありましたか?」
(あ? どういうこと? なんでNPCが勝手に喋っているの? AIモードは起動してないはず、というかこんなに人間らしく受け応えできた? 合成音声もきれいだ)
「いや、ログアウトを行えたと思ったのだが……」
(って何聞いているんだ俺。NPCが、そんな受け応えで、答えるわけない。どうせテンプレな回答が返ってくるだけだよ)
「っう! も、申し訳ありませんゴールド様。寡聞にしてログアウトなるものをワタクシは知りません! 浅学菲才な下僕のカーミラをお許しください!」
そのカーミラの対応にゴールドは驚愕した。
(なんだこの反応……。既存のAIモードの反応ではありえない。それになんだコレ。匂いが。いい匂いがする)
お読みいただきありがとうございます。
異変とヒロインの吸血姫カーミラとの出会いでした。
次回はこの作品のある意味醍醐味である「勘違い」が面白い方向へと物語を転がします。