第十七話『圧倒する魔王の暴』
(な、なんだあの黄金の鎧は! とてつもない圧力を感じさせる! それなのに魔力を一切感知できない! どう考えても普通じゃない! そして、そんなモノを平然と装備できている存在も又異常だ! アレは危険すぎる!)
それは隊長だけでなく、隊員の中にもゴールドの異様さを感じ、足を震えたり後ずさったりする者が出てくる。
「た、たいちょう。あ、アレは」
「落ち着け! レティシア・メドナイト・ピースメーカーを仕留めるのは、後回しだ! あの『黄金』の未知の敵対者に全力で挑む! 陣形再編!」
初見の相手に対しては、かなり慎重に油断なく事を構える神官陣営。
ゴールドの力を正確に把握できなくても、神官という職業上もしかしたら彼に対して何か感じ入るものがあったのかもしれない。
(へえ。テンプレートな敵キャラみたいに油断してこちらを軽く見てくると思いきや、中々どうして)
「全力粉砕せよ!」
そう隊長がタクトを振るう。
それに応じて使役されている十二体の天使で編成された上位戦天使団がゴールドに対して突っ込んできた。
12体もの上位戦天使による大質量攻撃。
しかし、狙われているゴールドは、気だるげに独り言を言い始めた。
「……ふう。油断も無く立ち向かう気概は良し。しかし、些か技が単調だ。種も仕掛けもない。だから全く怖さがない。怖さがないという事は、容易く場を支配できるということだ」
そう、彼らを批評しながらあるアビリティを発揮した。
全てにおいて片が付く【術】を。
「ハイパーアビリティ・天使支配権」
――その権能が発揮されたと同時に12体の天使達が突如動きを停止させた。
「 」
その停止風景に一番驚愕したのは、勿論天使を使役していた神官陣営である。
「し、しはが」
「っあ! ああ、ああああ!」
「えぁ! あ、ば、ばかかああ!」
「うう、うああああ」
言葉にならない。
言葉にしたくない。
そんな静寂がもたらしたのは、ありえない程の恐怖。
そして、そんな静寂を破るのも原因を作った存在であった。
「ふむ。やはり、何も仕掛けがない。下級天使か。詰まらん」
下級天使。詰まらない。
その単語の意味を認識した直後の神官陣営は――
――発狂した。
「ば、ばけ、ばけものおおおおお!」
「こ、こんな、嘘だあああああ!」
「こ、ころ、ころころろおされえええ!」
それは、この神官陣営のまとめ役である【隊長】も例外では無かった。
「……ば、馬鹿なぁ上位戦天使団のコントロールを奪っただと? そんな事人間ができるわけが無い。それこそ【神の権能】でなくては……」
ぶつぶつ。ぶつぶつ。呟きながら顔を青ざめた隊長。
発狂する隊員達とは違い、ある可能性に辿り着こうとしていた。
しかし自力で辿り着く前に、あっさりと答え合わせが来てしまった。
お読みいただきありがとうございます。
終始圧倒し続けるゴールドでした。
次回は第一章の最終話です。




