第十九話『止め』
しかしゴールドの寛大さにだけ甘えていられないのか、エリザベートはある提案をする。
「……ゴールド様。それでは、第一の側仕えとしてゴールド様に愚かにも牙を向いたアノ竜に止めを刺す役目をエリザにお任せください」
ゴールドに跪き臣下の礼を行いながら驚く内容を伝えてきた。
「なに? 止めだと?」
「……は! ゴールド様の偉大なる究極呪文によって、最早虫の息と化しております駄竜です」
(馬鹿な。終末光を喰らったんだぞ。生きているわけが)
驚愕を飲み込みながらクレータを注視してみる。
すると確かに何かがいた。
『もぞもぞ』と動いている物体。
辛うじてソレが虹の竜姫アマリリスだと分かるぐらいの損傷、いや損壊具合であった。
着ていた虹のドレスは、薄汚れを通り越して黒焦げになっており、ぼろ雑巾の様だ。
肉体自体も四肢は無くなっており、達磨状態であった。
頭に生えていた虹の角も折れていた。
眩い虹の長髪もその輝きを失いボロボロだ。
虹色の光彩を放っていた瞳も視点が最早定まておらず、意思も砕けっ散っていた。
虫の息。
いや、これはもはや壊れたおもちゃであった。
かつて人間を蹂躙し、おもちゃ扱いしていた虹の竜王とは思えない有様であった。
それでも生きている事。それ自体がゴールドを驚愕させた。
(なんて生命力)
その一言に驚愕を込めつつ。ゴールドは動き出した。
「そうだな、止めを」
ゴールドが虹の竜姫アマリリスについて発言しようとした時。
――それは起こった――
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