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Eighth Doll  作者: セリカ
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結果と交渉内容


「はぁはぁ……なんで私の剣が当たらないんだ!」


「それはお兄様の剣の腕が未熟なのではないのですか?」


「私は軍の同期生の間では十位以内に入る腕なんだぞ!」


「そうですか。すると私が強くなり過ぎたことになります。お兄様の実力でそれでしたら、私がミッドウェール王国の軍に志願した場合はかなり上位の実力と見られそうですね」


 始まってから、二十分程度経過しました。

 最初の攻撃は私の右肩辺りを狙う強烈な一撃でしたが、私はギリギリのところで躱しました。

 本当はもっと余裕で躱せたのですが、それだと面白くないからです。

 本気の一撃を躱されて驚いていましたが、直ぐに気持ちを切り替えて続けざまに私を激しく攻撃してきました。

 しかし、私は全ての攻撃を紙一重の間合いで躱しています。

 シアは、じっと私を見ているだけですが、フィスさんはうんうんと頷きながら「僕との練習の成果が出ています」と呟いています。

 普通に考えれば周りを見る余裕などない攻撃なのですが、私にはフィスさんの言葉も聞く余裕もあります。

 ついでにアリサさんは目元を押さえて呆れ気味で、コレットちゃんに関しては暇そうにあくびをしています。

 対照的に軍の人達は私の動きに驚いています。

 普通の人の動きで考えると熟練された剣の達人にでも見える動きにでも映るからです。

 私が剣を振った回数は、どうしても相手の剣の軌道を逸らさないといけない時だけです。

 しかも打ち合うのではなく軌道を逸らす為に軽く受け流す程度なのです。

 知らない人から見れば子供と大人ぐらいの差があるように映るかもしれません。

 そして、全力で攻撃している兄は肩で息をしているのに私は何事もなかったように息一つ乱れていません。

 私が疲労するまでになるには魔力をかなり消費しなければなりません。

 この体になったことで、魔力消費が充実している間は疲れなくなったのです。

 お腹が空き始めると体の防御を優先するので、身体の疲労回復までは魔力が完全に回らないだけです。

 今の私を倒すには、最低でもトランさんと同程度の実力が必要です。

 なので、普通の人もしくはそれなりに実力がある人でも私に勝つには物量で攻めるしかないのです。


「たった数年の間で、こんなに差が開くわけがない……お前、なにかしているだろう!」


 かなり疲労してから自分が遊ばれている事に気付くと今度は私が何かインチキでもしているかの難癖を付けてきました。

 別にインチキはしていませんが、死にかけて助かったら強くなっただけです。

 私が自分から強化して欲しいなどと言った覚えはないので知りません。

 目が覚めたら強くなっていただけです。


「王都で何をしていたのか知りませんが、私は生き延びる為に頑張っただけです。お兄様も訓練だけではなく地下迷宮に籠って死と隣り合わせの探索でもすれは強くなると思いますよ?」


 実際の私は、シアに守られています。

 シアが前に出る時は、ゲイルさん達が守ってくれていましたので正直に言えばかなり過保護な状態です。

 地下迷宮での事情を知っているコレットちゃんは「エルナの奴は、よく嘘が平然と言えるな……」と、小声で呟いていますが今の私にはこの距離でなら聞こえているのですから、声に出さない方が良いと思います。


「お前は地下迷宮にいたのか?」


「実家に戻る時に魔物に襲われたこと知っていると思いますが、奇跡的にも助かって冒険者になることで生活をしていたのです。明日の生活が掛かっていますので、何もしないで食事が貰える身分ではなかったのです」


 最初だけでシアと出会うことで、食事の心配などしたことなどありません。

 あの不味い飲み物以外はシアが私のお腹を満たしてくれましたから、私は恵まれていたのです。


「そうか……だが、妹に負けるなど私は認めん!」


 残っている力でも振り絞ったのか、今までで一番鋭い打ち込みをしてきます。

 躱すことは簡単ですが、最後の気迫に免じて、その打ち込みを剣で受け止めるとその勢いのままに相手の剣を跳ね飛ばして右肩に一撃を打ち据えました。

 感触からギリギリのところで手加減をしたので骨は折れていないと思いますが、かなり強力な一撃になったと思います。

 兄は右肩を押さえて蹲っていますが、勝負ありましたね。


「最後の一撃はいい剣筋でしたが、それだけです。私がいなくなっていた期間にお兄様が訓練を怠ったのか、私が強くなりすぎてしまっただけと理解が出来ましたか?」


「こんな馬鹿なことが……兄が妹に負けるなんて……」


 何を基準に考えているのか知りませんが努力の問題かと思います。

 例え私の体が強化されてなかったとしても、兄の動きから以前の私でも悪くない勝負が出来たと思っています。

 所詮はある程度認められていたので、訓練を怠っていたと予測します。


「それでは約束ですから、私の存在は忘れてください。もしも実家が私に何か干渉してきた時は真っ先にお兄様を疑います」


「………」


「例えそうなっても私は実家に一切関わる気はありません。あの家の娘でありました「エルナ・アシュレア」はもういない存在なのです」


 私がそう宣言すると無言で顔を伏せたままです。

 すると上官が近寄ってきて指示をするとこちらを振り返らずに降りて来た船の方に向かって歩いて行きます。

 実の兄ですが、昔の仕返しにしてはやり過ぎた気がします。

 少なくともここで見ていた人達は妹に手も足も出ない程叩きのめされた兄として言われると思います。

 噂次第では、人生が終了するかもしれません。

 今回のことで、いつどこでどうなるか分かりませんので、日頃の行いと言うのは大切だと思いました。

 そして、近いうちに実家から何かしら干渉があるに違いありません。

 私は兄が約束を守るとは考えていないからです。

 その時は、己の恥を晒すことになるのですが……まあ、どうにでもなると思います。


「エルナ殿。中々面白いものを見させてもらったが、その若さでどうやったらそこまで至れるのか聞いてみたくなったのだが聞いても良いのかな?」


 勝負が終わったので、私が皆さんの前に戻ると准将のおじさまから質問が来ました。

 本当のことは話せませんので、答えは一つしかありません。


「常日頃から、努力しただけです」


 私が笑顔で答えるとコレットちゃんだけは嘘つけと言った表情をしています。

 准将のおじさまは視線を一瞬だけ私の右腕に向けて「なるほど、努力は実を結ぶものだな」と発言しました。

 これは、私の強さの秘密に気付いているみたいです。

 当時の状況をそこまで詳しくは聞いていないのですが、私の状態も知っていると予測します。

 後ほどシアに私のその時の状況をどれぐらい知っているのか聞いてみたいと思います。

 その後は、予定した建物に案内をして交渉を始めます。

 交渉と言っても、シアが事前に准将のおじさまと取り決めをした内容の確認だけです。

 その内容は殆どが相手が得をする内容ばかりです。

 1つは既に権利を明け渡している空賊が所有していた浮遊島の譲渡の確認です。

 これは私の知らない所で終わっていたことなので、問題ありません。

 次に現在いる古代都市アズラエルガードの譲渡です。

 立地的にバートランド王国に一番近い軍事拠点であり、都市機能が生きている数少ない古代都市です。

 本来なら、破壊されて機能しない場所であり樹海の森に飲み込まれて存在しない物と思われていたのですが、現状の状態を見た軍の人達が確保したいと考えたそうです。

 譲渡する条件として、私が納得する拠点を提供が出来るのなら明け渡しても良いとシアが約束をしたのです。

 これに関しては、准将のおじさまの家であるワグナー公爵家及び領内は好きなだけ自由に滞在すると言う条件を出してきました。

 内容的には釣り合わないと思うのですが、ミッドウェール王国に於ける自由を得られるのは良いと思います。

 私達の家としていますが、シアが機能を回復させてそこに住み着いているだけです。

 元々自分の物ではなかったものと引き換えにと考えれば、範囲は領内と限定されていますが、無償でミッドウェール王国内の行動自由の権利を得たことになります。

 それにフィスさんが提案したのですが、ここはバートランド王国に近いことから、いつ狙われるか分からないので相手が価値があると考えている内に譲ってしまう方が得策と言っていました。

 私が眠っている間も都市の機能を少しづつ復旧していたそうなのですが、都市の感知エリアに少しづつバートランド王国所属の魔道船が近づくことがあるそうです。

 恐らくは、フィスさんの船をずっと探しているのかもしれません。

 私達は、バートランド王国からはお尋ね者になっているはずなので、少しでも安全圏であるミッドウェール王国の領内にいる方が良いと思ったのです。

 なので、これにも了承を致しました。

 次に古代の魔道船であるトランさんの船を進呈することです。

 これにはトランさんが猛反発していたのですが、実際のところは動力部が完全に破壊されていて現在の技術力では修復は不可能だったので廃船と変わりません。

 しかも巡航空母としての本来の機能である搭載されているガーディアンもありません。

 古代の魔道船とは言え戦闘能力的にも量産型の攻撃型の船に劣る砲台しか備えていないのです。

 私が意識を失う前の状態は現在の技術力では直せない使えない船でした。

 しかし、私が目覚めて見た時はフィスさんの船の隣にちゃんと修復されて並んでいました。

 事情を聞くとあの後に回収をして足りない部分はシアが撃ち落した空賊の古代の魔道船から部品を奪って、ここの設備で直したのです。

 他にも足りない部品は軍の方で廃棄処分になっていた古代の魔道船から手に入れたそうです。

 搭載可能なガーディアンも空賊から奪った浮遊島に使われずに残されていたので、元の機能に近い船に改修がされています。

 それどころか、他の船の良い所まで取り込んでいるので性能が上がっているそうです。

 そうなるとトランさんが増々反発したそうですが、シアが「エルナの生命を最優先するのであれば進呈する」と言ってしまったのです。

 シアの支配下にいるトランさんは次に魔道船を手に入れるまで我慢しなさいとか言われたとかで、泣く泣く手放したわけです。

 でも、魔道船のコアは一度登録するとシアは例外として、持ち主を倒さないと変更が出来なかったはずです。

 そのことを聞くと、コアだけは軍が提供した物に変えてあるそうです。

 船が破壊されて持ち主も死んでしまった状態で、コアだけは無傷な物が有ったらしいです。

 当時は通常の魔道船に使えないかと思ったらしいのですが、接続が不可能だったらしく保管だけされていたそうです。

 こういった部品は王国もしくは各領内の家が保管しているとのことですが、准将のおじさまの家は公爵様なので古くから色々と残してあるそうです。

 ただ、今回みたいに改修するなどの再生方法がないので、いずれ使えるかもしれないとの考えで残してあるそうです。

 今回はそれが功を奏して量産型の古代の魔道船よりも一ランク上の魔道船が作れたのは幸いとのことです。

 そして、この魔道船を登録するのに誰にするのかと聞くと准将のおじさまの背後でおどおどしていた女性です。

 私は気付いていなかったのですが、この方はノルンさんと言う護衛型と呼ばれるシア達と同じ存在です。

 隣にいる准将のおじさまの身内であるアヴェルさんと言う方が登録者のようです。

 私が承諾するとシアを伴って受け取りに行きました。

 シアに付いて来るように言われた時は、何故か異常に怯えていました?

 私が疑問に思うと、あの方は昔からワグナー家に仕えていたそうです。

 最初の登録者の方が強い存在に怯える人だったらしく、シアやフィスさんを見ると恐怖を感じるそうです。

 通常の戦いにおいては普段通りなのですが、強敵と戦う時には弱腰になりながら登録者を守ることに徹しているそうです。

 私が声を掛けた時も少しだけ怯えていました。

 もしかすると自分よりも強いと判断されたのかもしれません。

 なんとなく面白そうなので、友達になりたいと思ってしまいました。

 その登録者であるアヴェルさんは礼儀正しい方でした。

 なんとなく好感が持てる感じなのですが、こういう方が兄でしたら良かったとふと思ったぐらいです。

 あちらの大きな条件はそのぐらいで、後はフィスさんが直接話しかけていました。

 私の案件とは別に何か約束をしていたらしく、物資を積んできたのかを確認していました。

 書類をフィスさんに渡していましたが、フィスさんが嬉しそうにしていました。

 あのフィスさんが喜ぶ物とは何かと思ったのですが……きっとエッチな物に決まっています。

 准将のおじさまも「我が国では悪夢の存在と言われていたのにこれほど個性的な人格の個体とは予想外だった」と呟いていました。

 性癖を知っている人は、悪夢どころか変態と言うのが正しいと言い出すかと思います。

 この数日間でもスキンシップが激しいのですが、私が怒りだすギリギリの行動をします。

 最強に近い存在と言われているのに実際に出会ったらイメージが崩壊するかと思います。

 交渉が終わるとそのまま食事をする流れになりました。

 少しだけお腹が空いている感じがしますが、食べる量は程々にしたいと思います。

 

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