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Eighth Doll  作者: セリカ
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一年前の出来事


「いい動きになってきましたねー」


 現在、私はフィスさんと体術の勉強中です。

 体の魔力消費を抑える為にアドバイスを受けながら組み手をしているのです。

 最初はシアに習っていたのですが、様子を見ていたフィスさんが代わることを提案してきたのです。

 結果的には指導に向いているのはフィスさんの方でした。

 的確に細かいアドバイスをくれるフィスさんに対して、シアはほぼ無言の寸止めだったからです。

 完全に無言と言う訳ではないのですが……残念ながら言葉足らずで次にどう生かせば良いのかが分かりにくいのです。

 聞けば、シャーリーさんの時もフィスさんが色々と指導をしていたそうです。

 それからは、私の訓練が始まるとシアはトランさんを連れて都市の外に出かけて暗くなると戻ってくるようになりました。

 フィスさんに「魔核集めでもしてきたら?」と言われたからです。

 私のことは自分が付いているし、シャーリーさんも都市には残っているので、必ず私を守ると約束をしたからです。

 それからは、フィスさんの指導を受けているのですが……シアがいなくなるとおさわり行動が増えてきます。

 注意をしたいところなのですが、露骨にやるのではなく自然に触れる状況に持って行くので注意がしにくいのです。

 そうさせない為にも頑張っているのですが、熟練の動きをするフィスさんに数日程度の私が追いつくのには無理があります。

 体は反応しているみたいなのですが、私の思考が追いつかないのです。

 それでも体を意識することで、過剰に防御反応をさせないようには出来てきたと思います。

 最初の頃は、少しでも打撃を受けたりすると全力でその部分に魔力を注ぎ込む傾向があったので、相手の攻撃を見極めて判断することを教えられました。

 言葉では難しいので、実地で体に覚えさせたとも言います。

 威力調整をしてもらっているとはいえ、フィスさんの強力な打撃を受けると私も無傷ではいられません。

 しかも、生身の体が基本なのですから、普通なら死んでしまいます。

 そこで、フィスさんが戦闘時に着ているボディスーツを私用に調節した物を着ていますので、ある程度の衝撃は抑えられています。

 とても薄いのでこんな物で威力が軽減されるとは思ってもみなかったのですが、実際に着ているとちょっとした打撃ならまったく痛くありません。

 下級魔法ぐらいなら、魔力を籠めれば無効化もできます。

 とても凄いと思ったのですが、他の人もこれを着ていれば条件が同じになるのに記憶の無かったシアはともかく、バートランド王国に所属していたトランさんは着ていません。

 理由を聞くと、これを考案したのがもフィスさんの最初の登録者の方で、外部と情報共有をしなかったから正式採用されていないそうです。

 フィスさん自身も最初は登録者の方の指示に従って身に着けていただけで途中から教えられたそうです。

 晩年に後に他の者に対して有利になるはずだから、秘匿するように言われたそうです。

 フィスさんは一桁台なのですが、他の方面にソリースを割いているらしく本来は直接戦闘向きではないそうです。

 それでもシアと対等以上の所しか見ていないので、不向きとは思えません。

 詳しくは教えてくれませんでしたが、これを身に着けることで補っているとのことです。

 

「そろそろお昼の時間なので、休憩にしますか?」


 丁度投げられて組み伏せられると、お昼の時間が告げられました。

 お腹も減ってきましたので、食事にしたいと思います。

 最初の頃に比べて魔力消費を抑えられるようになってきましたので、必死に食べるようなことはありません。

 しかし、持参してきている量は地味にあったりもします。


「そうしたいと思いますので、解放してもらえると助かります」


「僕としてはこの態勢を維持したいのですが、夜に続きをしましょうー」


 相変わらず訳の分からないことを言い出します。

 そんな続きはしませんが、気を取り直して食事にしたいと思います。

 正直、食事感覚がおかしくなったのか魔力が減らないとお腹が空きません。

 目覚めてから八日ほどが経ちましたが、無理をしなければさほど疲労もしません。

 とても便利なことなのですが……自分が普通の人とは違うと実感しました。

 命が助かって、強くなれた代償と思えば不満などありません。

 この先の事をシアに尋ねたのですが「肉体的な影響はしばらく様子を見ないと分かりません」と言われました。

 もしかすると数年先に何か異常があるかもしれないので、体調には気を付けたいと思っています。

 私が目覚めるまでは、絶対に話さなかった事をフィスさんにもどうしてこんな事が可能なのかを問い詰められていました。

 自身の事なので、私が答えて欲しいとお願いをすると答えてくれました。

 思い出したシアの記憶は完全ではないのですが、情報の中に生命体にコアを組み入れる情報があったらしく試したそうなのです。

 助かるかは不明だったらしく、私は運が良かったみたいです。

 シャーリーさんに関しては、コアに人格を移しただけなので実際には助かってはいません。

 いまのシャーリーさんは生前の人格を引き継いだだけの存在と言っても間違いはありません。

 私には見分けがつかないのですが……本人にも説明はしてあるので、納得はしているそうです。

 なんにしても二人とも内容は違えど助かったと思うことにしました。


「フィスさんに聞きたい事があるのですが、宜しいですか?」


「僕に答えられることでしたら、お答えします」


「お聞きしたいのは……」


 自分の体の調整を優先していたので聞くのを忘れていたことがあります。

 まずは空賊に襲われた後の事です。

 私達が生存していているのですから、あの後にシアが何とかしてくれたのは分かります。

 でも、その後はどうしたのか分かりません。

 この都市にミッドウェール王国の軍隊が駐在している状況も聞かされてはいないのです。

 結論から言いますと、空賊は壊滅してしまったそうです。

 まず軍隊が駐在している理由は、シアが私達の船を付かず離れずの距離で監視していた一番近くにいる軍の魔道船に姿を現すように打診をしたそうです。

 あちらは気付かれていないと思っていたようですが、シアが定期的に捕捉していたのです。

 分かっていたけど敵意も無く監視をしているだけだったので無視をしていたそうです。

 そして、私達が襲われた状況を把握していたのですが、戦力的に無理と判断して上官に指示を仰いでいる所にシアが通信回線を開いて呼び寄せたそうです。

 その事も上官に伝えると要求を呑むように言われて来てくれたわけです。

 そのまま私達を回収しつつこの都市を目指す途中でフィスさんに連絡を取って、フィスさんの船を呼んで合流するとそのまま軍の船を伴ってこの都市に戻って来たそうです。

 軍の代表の方は、いつぞやに出会った准将のおじさまです。

 フィスさんの船で私の安全が確保されるとシアと准将のおじさまとの間でいくつかの取引をしたそうなのですが、シアにそんな交渉能力があるなんて初めて知りました。

 いまは私の知っているシアなのですが、その時はまるで別人のように完成された人格だったとフィスさんが教えてくれました。

 私の記憶が正しければ、意識を失う前に最後に聞いたシアの言葉にはとても感情が籠っていた気がします。

 そのことをシアに問いただしても答えてはくれません。

 私もシアのそんな姿を見たいと思ったのですが、無理に問いただす必要は無いと思いそれ以上は聞きませんでした。

 その後はシアが率先的に空賊を始末すると言い出したので、そのまま空賊の本拠地に向かい殲滅してしまったそうです。

 空賊の魔道船も結構な規模を有していたらしいのですが、フィスさんの船である「フィフス・エンジェル」を旗艦として准将のおじさまの手勢の艦隊だけで圧倒してしまったそうです。

 フィスさんの船の随伴登録をすれば一個艦隊規模は姿を消せます。

 そのままシアがソーニャさんから手に入れた情報を元に空賊の浮遊島に近づいて襲撃を掛けると戦端が開かれたのですが、数で優っていた空賊の艦隊はことごとく撃破されたそうです。

 最初の先制攻撃の後もフィスさんの船のガーディアンが展開している防御壁の砲撃用の隙間から軍の船が一方的に撃ち減らしてしまったそうです。

 現在のフィスさんの船に攻撃能力はありませんが、防御力は絶大です。

 普通の魔道船の攻撃は完全に防いでしまう為に砲撃が通らないので意味を成しません。

 過去に自分達がされていた戦い方をできるとは予想していなかったそうですが、お陰で味方に殆どの被害を出さなかったそうです。

 あちらにも古代の魔道船が一隻だけあったのですが、甲板に居たシアの魔法による攻撃で落とされてしまったそうです。

 空賊の艦隊を無力化させてから、上陸したシアとフィスさんとトランさんの三人で浮遊島に居た者たちは殆ど殺されたらしいのですが……それを見ていた軍の人達は改めて三人を脅威と確認したみたいです。

 しかし……またしてもシアが大量殺人をしてしまいました。

 私が関わっているので責めることなどできません。

 その話をしているフィスさんも罪悪感などの雰囲気はまったく感じません。

 いくら感情を持つようになってもそこまでは望めないということです。

 あちらにも1人だけシア達と同格の存在がいたのですが、シアに倒されてしまったとのことです。

 護衛型と呼ばれる存在でしたが、主と一緒にシアが殺してしまったそうなのです。

 フィスさんの話では、登録者だけ始末して取り押さえて連れてくれば味方に引き込める可能性があるとシアに提案したのですが、シアは却下してしまったそうです。

 私に害を成した時点で不要と判断したそうです。

 制圧した後は、軍に任せて都市に戻ると私とシャーリーさんの調整に集中をしていたそうです。

 その後は、何を言っても「エルナが目覚めるまでは何も答えません」と宣言をすると元のシアに戻ってしまったとのことです。

 流石のフィスさんも「あいつを怒らせると怖いなー」と言っています。

 ついでに教えてもらったのですが、空賊の本拠地であった浮遊島は、准将のおじさまの家であるワグナー公爵家の所領になったそうです。

 この国では浮遊島の権利は発見もしくは手に入れた者に権利が与えられます。

 無人の浮遊島を発見しただけで、統治もしくは確保が出来ない場合は国に情報を渡すことで報奨金が貰えます。

 ただし確保が可能な場合に限り所領として得ることができるのです。

 空賊などの国家に盾突く者たちが所有する浮遊島を個人の武力で制圧すれば自分の物になりますが、それだけの戦力が必要です。

 今回は、シア達が殆ど制圧してしまったのですが、全ての権利を譲渡してしまったそうです。

 代わりに自分達のこの国における立場を手に入れる条件とのことです。

 特に敵対している筈のバートランド王国所属のはずのフィスさんの存在が知られています。

 個人の部隊とは言え大勢にフィスさんの船である「フィフス・エンジェル」を見せています。

 過去の戦いで、ミッドウェール王国の艦隊を数多く沈めてきた船です。

 フィスさん個人にも倒された同格の存在も複数存在します。

 過去の歴史を知っている者から見れば、敵以外に考えられない存在です。

 登録者を殺して捕獲が出来れば寝返らせることも可能なのですが、フィスさんは王族の血筋の者が所有していたので、そんなチャンスは訪れなかったのです。

 しかも、前回の大戦までは同じ個体の配下までいたのですから、可能なら倒すしかなかったのです。

 現在の形としては、私達は准将のおじさまの客人扱いになっています。

 フィスさんとしては、恐れられていますが引き籠り生活から解放されて喜んでいます。

 しかし、私が目覚めるまでは結局はこの都市にいたのですから、変わらない気がします。

 更にはやっていることが、眠っている私への悪戯です。

 しかも、シャーリーさんまで共謀しているなんて予想外です。

 私が眠っている間に色々なことが起きてしまいましたが、数日後には准将のおじさまが私に会いに来ます。

 その時に一年前の話の続きがしたいそうなのですが……シアがどんな話をしたのかまだ聞いていませんので、それまでに聞いておくのが私への課題になりそうです。


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