浴室の罠
「フィスさんは、いますか?」
フィスさんの船がある地下の港に向かい船に入ると浴室のある場所に来ました。
扉を開けて声を掛けたのですが、返事がありません。
どうやら、私がいつまで経っても来ないので探しに行ったか、諦めて私室で何かしているのかもしれません。
脱衣所に行くと私の着替えと書かれた箱が置いてありました。
中身を見ると……えっちな下着と怪しげな寝巻が入っています。
一緒に中身を見ていたシャーリーさんからは冷やかされ、アリサさんからは「エルナさんにはまだ早すぎます」と、言われる始末です。
私もこれに着替える気はないので、シアに別の服はないのかと尋ねたのですが、シアが言うには「エルナの体が成長してしまったので、以前の衣服はフィスが全て作り直すと言ったので渡しました」と、答えを貰っています。
いくらなんでも素直に全部渡さなくても良いと思ったのですが、フィスさんの邪な趣味まではシアには理解ができなかったようです。
取り敢えずは、下着だけは替えさせてもらいますが、この寝巻に着替える気はありません。
ここには服屋さんもないのですから、現時点で私が着る物を手に入れるにはフィスさんから得るしかありません。
フィスさんの私室には以前に見たドレス以外にも沢山の衣装があったからです。
あれだけあれば、私に合うサイズの服もあるはずです。
取り敢えず今の私に体格的に近いシャーリーさんに服を貸して欲しいとお願いしたのですが、拒否されました。
その理由は、目の前にある寝巻をどうしても着せたいらしいのです。
それならとアリサさんにお願いしたのですが、シャリーさんに捕まって剝かれると浴室に引きずられてしまいました。
今のシャーリーさんに普通の人であるアリサさんが勝てる訳がありません。
別の服を取りに行こうとしてくれたのですが、軽く重力負荷をかけて動けなくしてから衣服を脱がされて今は浴室の中です。
残されたのは私とシアだけになってしまったのですが、シアは既に衣服を脱いで私の行動待ちになっています。
仕方がありません。
着替えに関しては後回しにして、浴室に行くことにしました。
中に入ると既に湯船に浸かっているシャーリーさんが手招きをしています。
周りに注意をしながら近づくと、突然湯船から複数の水の触手のような物が全身に巻き付いて湯船に引き込まれると背後から、フィスさんに抱き着かれています!?
「いきなり何をするのですか!」
突然の事なので、大きな声で怒ったのですが、フィスさんはそんなことなど気にせずに私の体を触りまくっています!
「僕はずっと待っていたのに全然来てくれないから、忘れられたのかと思っていじけていたのです。だから、このぐらいの歓迎は許してくれますよね?」
「言っている意味が分かりません! そんなことよりも放してください!」
こんな歓迎など聞いたことがありません。
離れようとしても湯船の中なので、お湯が意志を持って私を拘束しているのです。
強化された今の私なら抵抗が可能と思ったのですが、身動きが取れません。
シアの方を見れば、一緒に湯船に引き込まれたらしくお湯に浸かっている状態です。
私の方に向かおうとしたみたいなのですが、流石は水を操るフィスさんです。
シアの行動をほぼ食い止めています。
それでも少しづつ私に近づいているのですが、そこにシャーリーさんが抱き着いて妨害をしています。
それでシアの動きが進まなくなったので、恐らくは重力負荷まで掛けられているに違いありません。
シアの目が少し険しくなりそうだったのですが、シャーリーさんが「あれは、フィスちゃんの愛情表現なんだから少しぐらいは大目に見てあげるのも恋人の役割と思うわよ」と、言われて納得をしたのか、その場で素直に湯船に浸かっています。
以前なら、お構いなしに私を助ける行動をしていたのに私が眠っている間にシアが大人しくなっています。
私が疑問に思っているとフィスさんが耳元に囁いてきました。
「いくらエルナ様の体が強化されていても水場では僕に抵抗することは不可能です」
「いい加減にしませんと本当に怒りますよ!」
「怒っているエルナ様も可愛いんだけど、本気で抵抗するのは止めた方が良いです。いまのエルナ様は感情のコントロールができていないので、無駄に魔力を消耗してしまいますよー」
「それはどういうことなのですか!?」
「シアから聞いていると思いますが、いまのエルナ様はなにかしらの強い行動をするとコアが過剰な反応して通常よりも強い力を発揮する為に知らないうちに魔力を消耗してしまうはずです。いまも僕の拘束から逃れようと全力を出しているみたいですが、魔力の無駄なので力を抜くことをお勧めします」
フィスさんに言われてなんとなく小腹が空いて来たような感じがします。
先ほどあれだけ食べたのに早すぎます。
仕方なく抵抗しずにフィスさんに好きにさせようと考えるとお腹の違和感が消えました。
「僕の説明を聞いて納得したみたいですね。このまま色々としたいところですが、いまは抱き着くだけにしますので、大人しく一緒に浸かりましょうねー」
仕方がないので、背後から抱き着かれたまま大人しくすることにしました。
宣言通りに私に抱き着いたままなのですが、さりげなく私の育った物を揉んでいます。
呆れながら無視をしているとフィスさんが耳元に話しかけてきました。
「大人しくなったエルナ様に教えますが、この船の中ではいくらエルナ様が強くなっても僕には勝てません。僕たちのような対となる母艦持ちは船のバックアップを受けることが可能なのです。もっとも船のサポート範囲内じゃないと駄目ですが、母艦の被害を無視すれば現状でも全盛期並みの力も出せます」
船の力まで借りられるのでしたら、いくら強くなっても私に勝ち目などありません。
少しは強くなれましたが……自信が揺らぎそうです。
「僕はエルナ様にぞっこんなのですから、そんなに落ち込まないでください。それにこの一年間にシアに色々と学習させたお陰で、僕の行為が正しく認識されたからエルナ様も素直になってください」
「シアに何を教え込んだのですか?」
「僕の言葉だけじゃ納得してくれなかったけど、シャーリーが協力してくれたからです。軽く説明しますと……」
フィスさんは、私が眠っている最初の頃は必要最低限以外は体に触れさせてもらえなかったようです。
しかし、シャーリーさんが復活してからは2人で共謀してシアに色々と教え込んだそうです。
シアの中のシャーリーさんの立ち位置は、私のお姉さんと言う認識だったそうです。
確かに私はどこかの実の姉よりもシャーリーさんみたいな人がお姉さんの方が良いと思っていました。
だから、シアはシャーリーさんを私を守る姉と言う認識で復活させたそうです。
あの時のように別行動をしてしまった場合の護衛目的も兼ねているとのことです。
目覚めたシャーリーさんにシアが説明をしたそうです。
私がそう考えてなければシャーリーさんは復活できなかった可能性は考えられます。
ついでに私のフィスさんに対する考えは、頼りになるかもしれない危険な変態さんだったそうです。
フィスさんがシアにそんなことを言われた時はかなり落ち込んでいたらしいそうです。
しかし、そこで諦めずにシャーリーさんを説得してシアに愛情表現的な知識を頑張って教えたそうです。
「だから、僕がエルナ様に接触することをある程度は容認しているのです。さっきは、エルナ様が驚いていたので止めようとしましたが、シャーリーの口添えがあれば大抵は納得してくれると信じていました」
「いつから、シャーリーさんとも仲良くなったのですか?」
「以前は、僕が作ったワインを飲みまくる困った存在と思っていたけど、僕たちに近い存在になったことで話が通じるようになったんですよね」
「何か共通点ができたのですか?」
「ヒントは、エルナ様の目の前にありますよ」
「私の目の前というと……」
私の目の前には、アリサさんとシャーリーさんとシアがいます。
シアは大人しくしていますが、そのシアの背後から抱き着いて可愛がっているシャーリーさんがいます。
そして、その様子を呆れた目で見ているアリサさんがいます……本人は否定していましたがやはり私と同じ趣味に目覚めたのでしょうか?
「お聞きしたいのですが、シャーリーさんもフィスさんと同じ趣味に目覚めてしまったとかですか?」
この予想が正しいと私も範囲内に入っているとしたら、危険度が増す予感がします。
「僕よりは深入りしていないんだけど、彼女の場合は可愛いものを愛でるというか抱き着く性癖が増えたのです」
「どうしてなのですか?」
お酒大好きのシャーリーさんにどうしてその様な性癖が追加されたのかが気になります。
「エルナ様は、僕たちの体をちゃんと観察をしたことはありますか?」
「観察ですか?」
観察と言われても体の隅々まで見ている訳ではありません。
いつもシアと一緒に着替えていますが、未成熟な可愛い女の子に見えます。
目の前のシャーリーさんを見ても普通に私より育っている物を持っているお姉さんにしか見えません。
私が疑問に思っているとフィスさんが私の左腕を掴んで答えに誘導してくれました。
「あの……何をさせているのですか?」
「ナニって、僕の下半身を触って違和感を感じませんか?」
「違和感ですか? 別にすべすべのお肌で……あれ?」
誘導されるがままにフィスさんの体に触れているのですが、普通ならある物がありません!?
お尻の方にも誘導されましたが、完全に何も無いのです。
「僕の姿は、女性型に近いけど、トランみたいな男の子に近い容姿の中性型でも何もありません。エルナ様も説明されたから理解が出来ると思いますが、僕たちの体はコア以外は流体金属で構成されています。外見は製作者の好みだと思いますが、それ以上の余分な機能はありません」
確かに説明されましたが、そんな所をまじまじと観察したことなどありません。
すると……シアやシャーリーさんにもこれが適用されていることになるとすれば……。
「シャーリーは、元は普通の人間です。ゲイルとも恋人関係だったのですから、それ以上のことは望めません。乙女のエルナ様でも察しがつきますよね?」
要するに男女の深い関係が結べないと言うことですよね?
いくら私でもそのぐらいは分かります。
「だから、シャーリーは僕の考えに賛同してくれるようになったのです。味覚や感触だけは僕たちでも識別が可能なのでこうして楽しむこともできるからです」
そう言いながら、私の体をまさぐっています。
拒否したいのですが、フィスさんの触り方は湯船の中でも気持ちがいい部類なのです。
「いまの彼女には、味覚と接触した時の感触だけが唯一の楽しみになってしまったのです。僕達のように時間を掛けて人格構成をしているのなら、気にならない欠点なのですが元は普通の人間の記憶と人格を有しているのですから、今まで得られていた満足感を失ったのは大きいと思います」
確かにシャーリーさんは酔えなくなってしまったことを言っていました。
私は、逆に酔って意識を失わないのは良かったと思っていましたが……そう考えると排出行為もしなくてもいいのですから、ある意味で利点なのではないのでしょうか?
私が考え事をしていると何故か体が内側から暖かくなってきている感覚に襲われます?
特にお腹の辺りが温められている気がするのです。
それになんだか少し変な気分になってきたのです。
「フィスさん……もういやらしいインチキな行為はしないと約束をしましたよね?」
この感覚は私に魔力を流して興奮させていた感覚に近いので、それをしているのだと思います。
もうしないと約束をしたのに調子に乗って破っています。
「僕はエルナ様には嫌われたくはないので、約束は必ず守ります。それにそんなことをしなくてもエルナ様には弱点が増えたのでそれを利用しているだけです」
「私の弱点を利用とはなんですか?」
フィスさんが言う私の弱点とは、コアがお腹にあることだと思います。
でも、魔力回復方法以外に思いつきません。
あるとすれば、シャーリーさんにされた重力負荷によるコアの誤認識ぐらいだと思います。
「エルナ様は食べた物を魔力に変換するので普通の人間がしなくてはいけない行為は不要です。でも、その器官はそのまま残っています。人体の臓器で説明をすると胃の部分にコアが埋め込まれています。その先の器官もコアに接続されていますので、そこに水分を逆流させてコアを冷却するとコアはエルナ様の体を内側から温めようとしているのです。血管を通して微粒子になっている流体金属も徐々に反応するはずだから、そろそろ全身が温まっているのではないですか?」
説明されている内に体の全身が既に火照っているような感覚になっています。
湯船の中に居ますので、感覚的には長湯をしてしまいのぼせかけている気がしてきました。
しかもその感覚は急速に高まってきているのです。
「つ、次からは……これも禁止としたいと思います……」
なんとかダメと伝えたかったのですが、私にはこれだけ伝えるのが精一杯になっています。
「僕が毎回のように苦労して手段を考えているのに次から次えと禁止事項が増えると僕は不利になってしまいます。なので、エルナ様が眠っていた時のことを許してくれて尚且つキスをする権利を僕にもくれるのでしたら、二度としないと誓います」
「約束ですからね……」
頷くつもりはなかったのですが、私の考えが纏まらないのです。
恐らくは初めからこの状況を作って私に承諾させるつもりだったのかと思います。
私の言葉を聞くと濃厚な口づけを交わしてきました。
普段ならいくらお願いされても断っていたのですが、ついに許してしまいました。
しかもフィスさんのテクニックは私の想像を超えています。
流石は長い時を経験値にしてきただけあって、私程度では抵抗など不可能です。
気が付けば、自分から求めたいと思うぐらいです。
「勿論約束は守ります。今後はしませんが、今回はこの状況で可能な体験だけはしっかりと教えて差し上げますね!」
そう宣言すると体験したことが無いことをいろいろとされてしまいました。
何人もの侍女に試してきたらしく、肉体の限度も十分に熟知しているギリギリの攻撃です。
意識は朦朧としていましたが、それを眺めているアリサさんとシャーリーさんは興味津々の目で見ていた気がします。
途中で意識を失ってしまったのですが、気が付けば私はベッドの中です。
お目覚めのキスをフィスさんにされて起きたのですが……私はとんでもない約束をしてしまいました。
フィスさんは、ついに私を篭絡したような気でいますが正気の状態でしたら、それ以上の譲歩をする気はありません。
せっかく目覚めたのですが、早くも問題が増えた気がします。




