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Eighth Doll  作者: セリカ
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自身について


「まず聞きたいのは、私の体についてです。どう考えても助かる怪我ではなかった筈です。お腹の穴もそうですが、私の右腕は無くなってしまった筈です」


 こんなに完璧に治療ができる話を聞いたことがありません。

 治癒魔法は、怪我の度合い次第では癒すことは可能です。

 しかし、基本的には本人の代謝機能を大幅に促進させているのだと聞いたことがあります。

 要するに治療に掛かる時間を魔力で補うことで短縮させているのです。

 大きな怪我となれば、高位の治癒魔法が使えないといけません。

 なので、私のように体の一部を失った場合は再生は不可能と言われています。

 私が仮に助かったとしても右腕は永遠に失われます。

 ましてやお腹に大きな穴が空いてしまったのですから、体内の臓器が復元できるわけがありません。

 私が助かる可能性はゼロに等しかったのです。


「エルナの体の半分には『DollUnitSystem』を組み込んでいます。私達に近い存在にしたことで、エルナを死なせずに済んだのです」


「えっと……そのドールなんたらと言うのは何なのでしょうか?」


「現在の者達は、私達のことを古代の遺産の個体と呼んでいますが、私達の正式名称は『ドール・ユニット』と呼ばれるのです」


「正式な呼び名があったのですね。それを私に施したことでシアに近い存在になったと言う解釈で良いのですか?」


「そうです。エルナの体には「シックスティー フィフス」のコアを融合させています。腹部を失った時にコアを起点に腹部の再生と神経接続をしました。血液を大量に失っていたので、代わりに私達の体を構成している「流体金属」を微粒子にして身体の機能を維持したのです。右腕は完全に私達と同じになりますので、次からは「流体金属」さえあれば再生が可能です」


 私のお腹にはシアが倒したサリサさんのコアと呼ばれる物があるみたいです。

 左手でお腹に触れてみると、特に違和感のようなものを感じませんが以前とはなんとなく感覚が違う気がします。

 右腕も同じです。

 しかし、シアがそう言うのですから、右腕に関しては斬られたりすると以前にシアの腕が切断された時と同じ状態になるのだと思います。

 試しに切ってみたいのですが、いくら何でも怖くてできません。


「シアの話を聞いていると、お腹と右腕だけが、シアと同じで良いのですよね?」


「それに加えて、全身の血管を通して身体強化がされています。だから、エルナの体の半分は私達に近いと言えるのです」


「そうなのですか……話を聞いていると良い事のように聞こえるのですが、それで何か不都合な事でもあるのですか?」


 シアに近くなったと言う事は、もしかすると私は強くなったのですか?

 そうだとすれば、悪いことではないように思えてきました。


「エルナには長所と欠点が出来てしまいました」


「長所と欠点ですか?」


「そうです。長所としては、身体能力の大幅な上昇です。基本能力は、諜報型である「シックスティー フィフス」に近い戦闘能力を得ています」


 私の強さはサリサさんと同じぐらいになったようです。

 それはとても良いことだと思います。

 私がいくら鍛えてもシアに追いつくことはできなかったのですが、近い存在になれたことは幸運と思います。


「エルナには生命体的な欠点とは別に私達と同じ弱点が追加されてしまいました」


 シアの指す生命体的な欠点とは、シア達と違って肉体的に脆いことを言っているのだと思います。

 私達から見れば普通の事なのですが、シアにとっては欠点と考えられているようです。

 しかし、シア達に弱点などあったのでしょうか?


「シア達に弱点などと言う物があるとは思っていませんでしたが、あるのですか?」


 するとシアが私のお腹を指さして説明をしてくれました。


「私達の弱点は体を構成する流体金属を維持する為の「コア」が弱点となります。このコアが破壊されると私達は体の維持が出来なくなるのと同時に機能が完全に停止します。エルナの腹部にも組み込んでいますが、エルナの場合は生命的には死なない代わりに体の機能が停止します」


「もしも私のお腹にあるコアが破壊されてしまうと私は動けなくなってしまうと言う解釈で良いのですか?」


「そうです。そして、エルナの体は大量の魔力を必要とします。無理をして魔力を使い過ぎると行動不能に陥ります」


「それは私の魔力で足りるのですか?」


「エルナの基本魔力総量は「シックスティー フィフス」よりもあります。エルナ自身の魔力総量と「シックスティー フィフス」の最大魔力総量を足したものとなります。滅多なことで魔力切れを起こすことはありませんが、身体強化の影響で肉体に直接攻撃を受けると魔力を消費して自動防御をしてしまいます。魔力の自動回復量の範囲なら問題はありませんが、身体的に負荷と判断される強力な攻撃を受けるとコアが自己防衛を優先する為に強制的に魔力を消耗していきます」


 足りるのなら良かったです。

 サリサさんの魔力は沢山あるとして、私の魔力はオマケ程度と思った方が良いと思います。


「次にエルナの魔力の回復方法なのですが、私達と比べると魔力の回復力が遅めです。それを補う為にエルナは外部から体内に直接摂取をする必要があります」


「外部からの摂取と言いますと……あの飲み物になるのですか?」


 今までは、定期的に飲んでいたあの不味い飲み物を毎日飲まなければいけないのでしょうか?

 まさかとは思いますが、あれを三食全てに飲むことを義務付けられてしまった場合は私は泣きたいと思います。


「本来なら、水分の代わりに常時飲むことを推奨しますが、別の方法でも取り込めるように調整しました」


 三食どころか水の代わりに飲むと言う恐ろしい言葉を聞きましたが、他に方法があるようなので安心をしました。

 いくらシアへの愛があるとはいえ、水代わりに常に飲むのは厳しいです。


「その方法とは何でしょうか?」


「エルナの食事量が大幅に増える事です。体が魔力の補充を必要とすると空腹感を感じるように調整しました。食事は空腹感を感じなくなるまで食べる事を推奨します」


 通常の食事で済むのは助かります。

 ただ、その食べる量が増えたらしいのですが……。


「どのくらい食べる必要があるのですか?」


「現時点ではわかりません。魔力の消耗具合にもよります。変換比率から想定すると高カロリーな食事が推奨されます」


 以前にシアにクッキーを上げた時は、僅かに魔力に変換されたと言っていました。

 高カロリーと言うのが分かりませんが、一度空腹になってから考えたいと思います。

 今のところは空腹感を感じていません。

 恐らくは、レンスリット様が飲ませてくれていた不味い飲み物で満たされているからだと思います。

 

「大体の事は分かりました。死なずに済んだだけでも幸運なことですが、強くも成れたのですから文句などありません」


 なんとなくシアの表情が済まなそうにしている感じがするのですが、シアが処置をしてくれなければ私はここに居ません。

 シアの話を聞いている内に体が完全に動かせるようになりました。

 無くなった右腕もちゃんと自分の意志で普通に動かせます。

 取り敢えずは何か着る物が欲しい所です。

 考えてみると私は眠っていた期間はずっと裸だったと思われますが……深く考えない事にしたいと思います。

 気になるのはフィスさんに本当にどこまで何をされたかです。

 知らない方が良いかもしれないのですが……聞くべきなのか悩みます。

 

「動けるようになったので、皆さんとも挨拶がしたいと思います。なので着る物を出してもらえると助かります」


 特にゲイルさんには謝罪をしたいと思っています。

 私の為にシャーリーさんを死なさてしまったのですから……。

 思案をしている私の前に出されたのは、私の私物ではない衣服です?

 それは、シンプルな白いワンピースです。

 

「これは誰の物なのですか? 私が購入した服には無かった筈です」


 しかも一緒に用意された下着がとても派手な物になっています。

 これを選んだ人物を予測すれば、フィスさんしかいません。


「申し訳ないのですが、エルナの外見が成長しているので、以前の物はありません。フィスがエルナが目覚めたらこれを渡せばサイズは完璧と言っていました」


 やはりフィスさんの趣味のようです。

 他に選択肢はありませんので着る事にしました。

 都合よく鏡があるので見ながら着替えていましたが……何気に大人っぽくなった私がいます。

 外見が成長したと言われましたが、確かに成長しているようです。

 眠っていたのに体はしっかりと育つことを初めて知りました。

 特に小ぶりだった物がそこそこの大きさになっています。

 着替えが終わって鏡の前で自分を見ているのですが……少し大人の女性に近づいた少女と言うのが私の感想です。


「ゲイル達なら、この時間は都市の周りで魔物を狩っている筈じゃから、行くと良い。わらわは、エルナが目覚めたことをアリサに伝えてくるのじゃ」


 いつの間にか扉の方に移動しているコレットちゃんが私に言葉を告げました。

 私が鏡の前で、自分の姿を観察している時は座っていたはずです。


「先ほど、軍の方が駐留していると話していましたが、大丈夫なのでしょうか?」


「シアが同行すれば、問題はあるまい。この都市でシア達に勝てる者など存在せぬからな」


 そう告げると出て行ってしまいました。

 私もシアを伴って部屋を出ると、そこはフィスさんの船の通路でした。

 通路を進むと作業用の魔人形とすれ違いながら外に出ると、地下の港です。

 フィスさんの船である「フィフス・エンジェル」の隣には墜落したはずのトランさんの船もあります。

 ただ、以前とは外見が少々変わっています。

 軍人さんが数人いましたが、私とシアを見ても特に気にした様子はありません。

 その内の1人がどこかにいってしまったことぐらいです。

 軽く会釈をして通り過ぎてから、地上に出る為の装置に乗り込んで移動しました。

 着いた先にも何人かの人がいましたが、一番驚いたのは壊れていた施設が綺麗になっていることです。

 

「シアさんが御一緒と言う事は、その方がエルナ様で宜しいのでしょうか?」


 私が周りを見ていると大人しそうな男性が声を掛けてきました。

 数人の軍人さんがいることもそうですが、なぜ私は様付けで呼ばれているのでしょうか?

 私が不思議に思っていると相手の方が手に持っている書類と見比べて再確認をしてきました。


「写真の方と同じと思うので、間違ってはいないと思うのですが、確認をしても宜しいでしょうか?」


 そう言って一歩を踏み出そうとしたのですが、シアが私の正面に立ちました。

 そして、一言。


「エルナの許可なく近づくことは認められません。それ以上近づくと排除をします」


 シアに警告されて相手の方の動きが止まってしまいました。

 そして、目だけは私に向けて何とかして欲しいと訴えている気がします。

 他の人達もシアの言葉を聞いて身構えていますが、恐れていると言う方が正解かと思います。

 シアの事を知っていれば、人の身では絶対に勝てないと分かっているはずです。

 私が実際にソーニャさんと遭遇した時に圧倒的な差で殺されかけたのですから、生身の人間が勝つなど不可能と思えるからです。

 

「私の名前はエルナと申しますが、何か御用があるのでしょうか? 私は目覚めたばかりなので、現在の状況に詳しくありませんので説明してもらえると助かります」


 私がシアの両肩に手を置いて話しかけた事で、相手の方は安心をしています。

 話を聞くと、この都市での決定者は私になっているそうです。

 私が目覚めたら、駐留している上官の方が話がしたいので場を設けて欲しいとの事です。

 私としては、他のみんなと会いたいので後ほど伺いますとだけ返事をしました。

 それを聞くとその方は上官に報告に行くと言って立ち去りました。

 場が収まったことで、他の人達もゆっくりと寛いでいます。

 建物を出ると壊れたままの建物もありますが、一年前よりは綺麗になっています。

 外壁に向かうまで、何人かの人とすれ違いましたが、皆さん私を見て驚いている感じでした。

 軽く会釈をすると挨拶を返してくれます。

 中には私の事をジッと見ている人もいましたが、シアが視線を向けると明後日の方向を向いています。

 そんなことを繰り返して、都市の外に出るとゲイルさんとトランさんが居ます。

 周りには倒したと思われる魔物が転がっています。

 私とシアに気付いたゲイルさんとトランさんがこちらに来ると話しかけてきました。


「やっと目覚めたなエルナ。あの時は守り切れなくて悪かったな」


 トランさんが謝ってきましたが、あの場はどうすることもできなかったと思います。


「トランさんは頑張ってくれましたので、気にしないでください」


 次にゲイルさんに話しかけられました。


「目覚められて良かったな。全然目覚めないから心配していたんだぞ」


「心配をかけてすみませんでした。それよりも……シャーリーさんの事で……」


 私が済まなそうにしていると背後から誰かに抱き着かれて声を掛けられました。

 しかもその声には聞き覚えがあります。

 

「エルナちゃん、目が覚めてよかったわね!」


 その声の主は、死んだと聞かされていたシャーリーさんのものです!?

 私が顔を横に向けると間違いなく本人です。

 死んだと聞かされていたのにこれはどういうことなのでしょうか?

 正面のゲイルさんを見ると頬を指でかいています。

 コレットちゃんが嘘をついていたとは思わないのですが、説明が欲しい所です。


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