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Eighth Doll  作者: セリカ
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妄想もしくは死後の世界?


「エルナ! 死なないでください!」


 シアの声がすると思ったら、本人だったようです。

 感覚がいまいち分からないのですが、シアが私を抱き寄せている気がします。


「最後にシアと会話ができてうれしく思います。ですが、目が見えなくなってしまったのかシアの顔がもう見えないのです」


「私がエルナを決して死なせません!」


「はい、信じています。シアは私の最高の騎士様です!」


 いまの私にできる最高の笑顔で元気よく応えれたと思います。

 吐血をしてしまったので、きっと口元の辺りに血が沢山付いていますが、上手に笑えていると信じています。

 最初に感じた右腕の痛み以降は、体が麻痺でもしてしまったのか何も感じません。

 こんな時に気付いたのですが、今のシアはとても感情的に答えてくれています。

 いつもは無表情でクールなシアの感情的な声が聞けただけでも満足です。


「かなりの痛みを伴いますが、少しだけ耐えてください」


 そう言ってシアが何かをしているようですが、私にはもう体の感覚がないのです。

 ただ、とても眠いのです。

 どのくらいの時間が流れたのか分かりませんが、意識を保っているのが不思議なくらいです。


「少しだけ待っていてください。私が必ずエルナを助けますので、決して諦めないでください」


 この状況で何をしても無駄なのはわかります。

 それでもシアが言うのでしたら……


「はい、シアの事を信じて諦めずに待っています」


 そこまで言うと、私の意識は沈んでいきます。

 これが死と言うものなのかと考えながら深い眠りが襲ってきます。

 次に目覚める事ができたら、感情豊かなシアと話がしたいです。





―――――――――――――――――――――――――――――――




「登録者が死にました。これで貴方はフリーです。戦う理由が無くなり方向性が決まらないのでしたら、私に従いなさい」


 目の前にいる個体の登録者はこれで死んだはず。

 戦闘能力的には互角だったので、いまならこちらが勝つ。

 目覚めて間もない個体なら次の登録者をあてがえば、こちらに従うはず。

 仮にある程度人格形成がされていても捕えて登録者さえ定めてしまえば問題はない。

 しかし、目の前の個体は以前に遭遇した時と違って険しい目つきをしている。

 まるで、生命体のように復讐心でも持っているかの反応だ。

 私達にそんな行動プログラムはないはず。

 

「トウェルヴ。お前はやってはならないことをした。その罪は、お前に関わる全てを抹消する!」


 目の前の個体がそう発言すると同時に姿が消えると私を殴り飛ばしてきた。

 その威力は船を貫いて外部に出される程の威力になる。

 咄嗟に全力で重力シールドを最大にして威力を半減させなければ今の一撃で終わっていた可能性がある。

 登録者を失ったのに能力が上昇している。

 そんな話は聞いたことが無い。

 甲板で態勢を整えると、空いた穴から不明の個体が現れた。

 明らかに私の戦闘能力を超えている。

 理解ができない?

 私が思考していると接近されて格闘戦になった。

 ただ違うのは、以前と違って私は常に最大の防御をしてやっと威力を半減させるのが限界になっている。

 僅かな時間の攻防で、防御に回している魔力を大幅に削られると右腕を掴まれて肩の付け根の辺りに強烈な一撃を貰うと右腕が引き千切られた。

 私は常に物理攻撃に対する重力シールドを展開しているので、相手の攻撃の威力を半減させているはずなのに明らかに力で圧倒された。

 この個体はなんなの?

 能力的に完全に負けていると判断して、撤退を試みると私の周りに黒い球体が出現した。

 その一つが触れると恐ろしい重力場の力で行動不能になった。

 これは私だけの能力です。

 なぜ、あの個体が使える?

 少しでも動けそうになると次の球体が触れて一歩も動けない。

 その様子を見ながら不明の個体が近づいて来る。


「どうして私だけの能力が使えるのか分からない」


 私だけにしか使えないこの能力だからこそ私は他の個体に対して優位に戦えていた。

 それがいま覆されて逆に自らを抑え込んでいる。


「トウェルヴが使っていた魔法は全て習得しました。今のお前は私と同等もしくは劣化版程度です」


 その答えと共に前方に黒い大きな槍が現れて私の腹部を貫くと消滅した。

 あの登録者にしたことと同じことをしている。


「エルナの腹部を消滅させた魔法『グラビィティ・グレイブ』で、腹部に穴を空けました。痛みを伴わないお前には意味がありませんが私の気分です」


「貴方に気分などの概念があるの?」


 かなりの年月が経たないと私達にそこまでの感情は育たないはず。

 目覚めている時間が長い大戦初期の個体は、かなり生命体に近い行動をとる。

 それ以外は、最初の登録者の人格を模倣するに留まる。

 時間と言う名の経験値を得なければ独自の思考を持つに至らない。


「私とお前達とはコンセプトが違います」


 この個体は私達とは違う企画で作られています。

 そんな情報は得ていないのですが、新しい情報なの?


「お前達のように初期の戦いに向けて作られた個体は、最初の登録者を重要視する設定になっています。後の世代の者は自分に近ければ性能を発揮する程度の設定です。要するにお前達は、最初の登録者の為だけに調整された個体です」


「貴方は違うの?」


「私には、全ての登録者に対応できるように最初から人格設定がされています。普段は登録者の補佐と強い思考を読み取り身の安全と可能な限り望む行動を実行します。緊急時には現在の抑えられた人格制限が解除され敵を殲滅するようにプログラムされています。お前はエルナを殺せば私の能力低下を予測したようですが、私はその逆になります」


「そんな個体が存在していたの。それでこの後はどうする?」


 常に重力球が触れてくるので動けない。

 私は、完全に終わった。


「私は、現在の登録者であるエルナに害を成す存在を決して許しません。お前の登録者であるブラッドと言う個体は、エルナを手に入れようとしていた為に生命的に危険と判断していませんでした。しかし、お前がエルナに多大なる害を与えた為に殺処分が確定しました」


 上空で待機をしている魔道船に対して、片手を掲げると複数の黒い円錐型の塊が現れます。

 これは、私が使う重力魔法の一つ「グラビティ・キャノン」です。

 ただその規模が艦隊戦仕様の数と大きさで展開している。

 母艦のサポート無しではこれだけの大きさと数は作り出せない。

 この船がこの個体の船としても指令室にある宝玉に触れていなければバックアップを得られない。

 どこから力を得ているの?

 

「お前達の戦力規模がどれほどかは知りませんが、空賊バルバロスと呼ばれる存在は私が全て排除致します」


 その言葉と同時に魔法が連続で撃ち出されると、魔道船が堕とされていく。

 被弾して墜落していく魔道船も地上に堕ちるまで執拗に撃ち貫かれて原形をとどめずに落ちていく。

 途中で、ブラッドから「なぜ攻撃するんだ」と通信が来た。

 私ではないと答えて、不明の個体の攻撃とだけ伝えると通信が途絶えた。

 同時に私との繋がりが切れたので、ブラッドが死んだ。

 今度は私の能力がダウンしたのか、辛うじて立っていたのに膝を突いている状態になった。

 押しつぶされないように耐えるだけで魔力消費が追いついていないので、このままでは解放されても確実に行動不能に陥る。

 上空の魔道船が全て撃ち落されると不明の個体が私の方を向いた。


「お前に聞きます。トランの船を狙撃した船はどこにいったのですか?」


 私が無視をしていると胸元を貫かれて私のコアが取り出されます。


「答えないのでしたら、答える必要はありません。直接コアから情報を吸い出すだけです」


 そんな情報収集方法などないと考えた。

 しかし、私のコアを侵食でもしているのか情報が全て開示されていく。

 私に心と言う物があるとすれば、全てを見透かされている感覚なのだと思う。


「詳細は全て吸い出しました。お前を廃棄したいところですが、使い道があるので有効活用することにします」


「私を支配個体にでもするの?」


「トランが喋ったようですが、エルナを直接手に掛けているお前など直属の支配個体にする気はありません。別の形で再利用します」


「どうする気?」


「まずは、不要な人格プログラムを消去します」


 そう告げられると思考が低下していく。

 私は、八十年前に退場する予定だった。

 その後の八十年間は詰まらない命令を実行しない分だけ任務をこなした気がする。

 情報が失われたのか、最初のマスターの事がわからない。

 確か、私の最初のマスターは……。




―――――――――――――――――――――――――――――――




 私は死んだはずなのですが、なぜか意識があります?

 もしかするとここは死後の世界と言うものなのでしょうか?

 うっすらと目を開けると、レンスリット様が私の口にスプーンで何かを運んでいます。

 味の方は、シアが定期的に私に呑ませている不味い飲み物と同じ味がします。

 口直しがしたいと考えていると目の前にはメイド姿をしたレンスリット様がいる事に気が付きました。

 甲斐甲斐しく私に不味い飲み物を飲ませているのですが、その表情を見ていると愛おしく感じます。

 特にその小さな唇が美味しそうです。

 右手を動かそうとしたのですが、動きません。

 そう言えば、ソーニャさんに吹き飛ばされて失ってしまったのを思い出しました。

 ですが、私の右腕側には何かが繋がっている感覚と重みがあります。

 意志を籠めると指先が少しだけ動く気がします。

 ですが、持ち上がりません。

 左腕は健在なので動くみたいです。

 少し動かしにくいのですが、動きそうです。

 そうこうしている内に不味い飲み物を私に口に運んでいるレンスリット様の顔が再び近づいてきます。

 飲ませ終えた一番距離が近づいた時にチャンスだと思った私は、左手でレンスリット様の後頭部に手を回して、自分の口に近づけてキスをしました。

 突然の事でレンスリット様が目をぱちくりして驚いています。

 遂に王女様とのキスに成功しました!

 そのまますかさず舌をレンスリット様の口内に入れてレンスリット様の口内を蹂躙します。

 レンスリット様は慌ててもがいていますが、私の押さえつける力の方が強いのか引き離せないでいます。

 私の気のすむまで堪能してから、解放すると私とレンスリット様の間に唾液が糸を引いて多分光っている気がします。

 口づけを終えたレンスリット様は頬を染めて呆けている感じです。

 私はついに目的を達成したことで、とても満足です。

 これで、正式にレンスリット様は私の第三恋人に確定です。

 満足したところで、戸惑っているレンスリット様の腕を掴んで引き寄せると、この後の続きをしたいと思います。

 本来でしたら、段階を踏んで親密な関係になりたいと思っています。

 しかし、今の私は死後の世界か夢の中だと思います。

 死んだはずなのにこんな都合のよい展開になっているのですから、深い関係になりたいと思うのは自然の摂理だと思っています。

 抱き寄せているレンスリット様を片手で器用に脱がせようとすると別の方向から声がします。


「エルナ。お主は目覚めた最初の行動がそれなのか?」


 声がする方を見るとコレットちゃんが呆れた表情で私を見ています。

 何という事でしょうか。

 死後の世界には、私の第二恋人も待っていたようです。

 するとシアも当然いる筈と考えて辺りを見渡すといません。


「シアがいません!」


 思わず口にすると私に掛けられたシーツの中から顔を出してきました。


「エルナ。呼びましたか」


 いま気が付いたのですが、シアは私と一緒にシーツの中に居たのです。

 流石は第一恋人なのですから、私と最初から密着状態だったようです。

 視線をシアの方に向ければ、シーツの中の私とシアは何も着ていない状態です。

 もしかすると私の記憶にない状態で、シアとの大人の階段を上っていたかもしれません。

 そうだとすれば、とても重要な記憶が抜け落ちていることになります。

 私が眠っている間にシアが何をしていたのかがとても気になります!

 親密な関係になる時は、私がシアをリードすると思っていたのですが、シアが私の体に何かをしていたことになります。

 何をしていたのかを思い出す為にも、もう一度やり直しを要求したいと思います。

 受け身のシアを想像していたのですが、実はシアは攻める方が得意なのかもしれません。

 そうだとすれば、私の力ではシアに敵いません。

 力づくで押さえられてシアに好きにされてしまう妄想を膨らますと……悪くない自分がいます。

 異性にされた場合は嫌悪感しか感じませんが、シアにされるのでしたら、全てを受け入れたいと思います。


「状況を見る限りシアが私を好きにしていたのは分かります。ですが、まったく覚えていないのがとても残念なのでやり直しを求めたいのです」


 私がシアにお願いをすると私の予想と違う答えが返ってきました。


「それは無理です。今回はエルナの生命維持が可能だったので施しましたが、次に同じことはできません」


 生命維持とはなんですか?

 私の質問は2人の親密な営みの事です。

 そもそも死んでしまったのですから、死後の世界ぐらいは私の妄想通りに話を進めて欲しい所です。

 それにシアが元の無表情さんに戻っています。

 私を死なせないとするあの感情的なシアはどこに行ってしまったのでしょうか?


「シアよ。エルナは違う意味で聞いておるのじゃ」


 コレットちゃんは私の質問の意味を理解してくれているようです。

 流石は三百年近くを生きているのですから、知識が豊富です。

 そんなに知識が豊富でしたら、蓄積された知識で私に夜の手ほどきを迫ってきても私は受け入れたいといつも思っています。

 シアが私をジッと見つめていると理解したのか別の返答をしてくれました。


「エルナがしたいことは理解しました。しかし、いまはそれよりもエルナを死なせないことを施す方が優先です。意識が戻ったようなので再調整を施します」


 シアがそう告げると再びシーツの中に潜り込んで私のお腹の辺りで何かをしています?

 気になって動かせる左手で、シーツを捲るとシアの手が私のお腹と同化しています!?

 まるで、トランさんのコアに何かをしていた時のような状態です。

 それを私のお腹でしているのです。

 それよりも私は死ななかったみたいです。

 よく見れば失った右腕もあります。

 ただ、思うように動きません。

 それに私のお腹には大きな穴が空いていたはずです。

 一体どうなっているのかわからないのですが、死ぬことだけは免れたようです。

 あの後にどうなったのかが知りたいのですが……私はどうして助かったのでしょうか?

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