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Eighth Doll  作者: セリカ
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刹那の終わり


 なんとか着陸したのですが、大変な所に落ちてしまいました。

 その所為で、そこを巣にしている魔物が一斉に私達の船を攻撃しています。

 船自体を破壊することはできないみたいですが、砲撃を受けて破壊された場所から魔物が侵入をしています。

 その様子を見ているとシアが説明をしてくれました。

 

「機関部周辺の通路は全て隔壁を閉じて侵入を防げていますが、数が多すぎます。エルナ達の安全を確保しつつ船から出るには時間が必要です」


「よりにもよって、ゴールデン・ビーの巣に突っ込むとはな」


 ゲイルさんが魔物の名前を呟いています。

 金色の私の半分くらいの大きな蜂さんの魔物です。

 全体が輝いているので、蜂さん自体がお金になりそうと考えたことがあるのですが、魔物の素材自体は普通の甲殻類が光っているだけでした。

 なので、これだけの数を倒しても魔物自体には価値が特にありません。

 価値があるのは別の物になります。

 古代都市に二人で住んでいた時に一度だけシアが倒して戦利品を持ってきてくれたことがあります。

 戦利品とは、極上の蜂蜜です。

 市販で売っている物よりも上品な甘みがあってとても美味しいのです。

 当時は、あまりの美味しさにちょくちょく舐めていたのですが、食べ過ぎると腹痛になってとんでもないことになりました。

 その蜂蜜なのですが、シアが大量に手に入れてくれたので、私は知らなかったのです。

 町で普通に買おうとすると、とても高い蜂蜜です。

 この巨大な巣から蜂蜜を回収すれば、すごく儲かると思います。

 状況が許せば回収がしたいところです。

 ただし、普通には無理です。

 この金色に輝いている大きな蜂さんに刺されると普通の人は一回目の毒で全身麻痺に冒されて、二回目の毒を注入されると確実に死んでしまいます。

 そして、彼らは肉食です。

 近くにいる生物の生体反応に反応して、餌と認識して襲ってくるのです。

 トリスの町の冒険者の方に聞いた時は、この蜂さんを狩るのであれば、戦闘型の魔人形が必須と言われています。

 必ず集団で襲ってくるので、対処が間に合わないと死が確定です。

 運よく刺されなくても、判断力が良いのか弱った所を捕まって巣に連れていかれると、そのまま生きたまま捕食される場合もあるのです。

 巣の規模にもよりますが、倒しきる事が出来ればかなりの利益になります。

 魔人形を使役する人がいるなら美味しい相手なのですが、滅多に生息していないこともあるので見つけるのが難しいと言われています。

 ましてや、樹海の森を探索しなければいけないので狩ろうとする冒険者は滅多にいません。

 そして、私達の船が突っ込んだ巣の規模はとても大きいので、蜂さんの数も異常に居ます。

 既に船の外部の殆どが埋め尽くされているので、脱出をするのも難しいと思います。


「この場から逃げるとしても、この数の魔物を対処しながらなんて無理じゃないのか?」


 ゲイルさんがもっとな発言をしています。

 船内の通路を映し出している映像にも蜂さんがいっぱい映っています。

 

「おい、シア。俺達は良いとして、船から出たとしてもアリサ達を完全に守りながら脱出とか無理だぞ」


 トランさんは船からは出れると考えていますが、外に出れば船内の比ではない蜂さんがいますので、いくらなんでも対処が追いつかないと考えるのは当然かと思います。

 

「ゴールデン・ビーは、全てを倒す必要はありません。巣の中心にいる女王さえ倒してしまえば命令系統が失われて統率が取れなくなります。そして、女王の死の信号を受け取ると連鎖で自滅します」


 シアが対処法を答えてくれました。

 蟻さんと違って、女王蜂が死んでしまうと一緒に自滅してしまうようです。


「ゴールデン・ビーにそんな対処法があったのか。だが、俺が聞いた話では、その女王自体が一番強いんじやなかったか?」


 その話を聞いたゲイルさんがシアに質問をしています。

 それ以前にこの集団の中から女王さんを見つける事の方が大変だと思いました。


「この船の主砲はまだ生きています。通常でしたら、全てのゴールデン・ビーを私が処理したいところです。いまは威力が落ちますが、船の主砲を拡散砲に切り替えて手当たり次第に周りを焼き尽くせばすぐに女王が現れるはずです」


 シアの意見は船の砲撃で手当たり次第に巣を焼き尽くす方が良いとの事です。

 意見を言いながらも既に行動を開始しています。

 船の前方の蜂さんが巣と一緒に焼かれて消滅しています。

 

「そう言えば、どうして蜂さんを全て倒したいのですか?」


 数は多いのですが、大きさは私が抱き抱えれるぐらいです。

 大型の魔物と違って魔核は大きくないはずなので、シアからしたら大した魅力は無いと思うのです。


「この魔物の魔核は小型ですが、密度が高いのです。この規模の数を全て殲滅すれば、通常のウォーアントの巣を壊滅させるよりも得る力が大きいからです」


 素材は駄目でも金色に光っているので、魔核の方も輝きに相応しく価値があるようです。

 巣から取れる蜂蜜は高額なのに魔物自体には価値が無いと言われていますが、シアには価値があるようです。


「出てきました」


 シアが映像の一つに視線を送ると、そこには恐ろしく大きな蜂さんがいます。

 他の蜂さんは小型なのに女王だけは、ウォーアントの女王よりも巨大です。

 

「初めて見たが、あんな化け物だったのかよ……」


 見るのは私も初めてですが、ゲイルさん達も驚いています。

 

「ねぇ、女王の周りに複数の魔法陣が展開しているのだけど、もしかして魔法も使えるの?」


 次にシャーリーさんが女王蜂の指摘をすると魔法陣から、風の槍のような魔法が撃ち出されています。

 その衝撃で船が激しく揺れ出しました。

 船体を映す映像を見ていると、船の装甲がへこみまくっています。

 同じところを何回も攻撃を受けるとついには船に穴が空いてそこから小型の蜂が更に侵入してきます。

 このままでは、船の中が蜂さんだらけになってしまうのは時間の問題です。


「これは、大丈夫なのですか!?」


 船内に侵入してくる蜂さんが増えたことで、アリサさんが慌てています。

 通路にいた作業用の魔人形も襲われています。

 生物ではないので、刺されてはいませんが、複数に取り付かれて強力な顎で嚙み砕かれています。

 あれが人でしたら、見るも無残な姿になるのは確実です。


「問題ありません。私が単独で外に出て女王を始末してきます。そうすれば、残りは全て自滅します」


「シアが1人で行くのですか!?」


 シアなら大丈夫かと思いますが、この数を搔い潜って女王を倒すと言っています。

 確かにシアには古代都市で蜂蜜を取ってきたことがありますので、倒したことがあります。

 しかし、この状況でシアと離れるのはとても不安です。


「ここからエルナ達を安全に脱出させる方法はこれが最善です。私達を襲った者達が来る前に速やかに倒してここを離れなければなりません」


「俺も一緒に行って倒した方が早いか?」


 トランさんも行こうかと言っています。

 この中で、外に出て蜂さんの群れに対して戦えるのはシアとトランさんしかいません。

 

「トランは、ここで状況確認とエルナ達の護衛に徹してください。ゴールデン・ビーが万が一にもここに侵入された時はエルナ達では対処が不可能です」


「わかった」


 トランさんが返事をするとシアが扉を開いて出て行ってしまいました。

 去り際に私の手を取り真っすぐに目を見て「すぐに終わらせますので、待っていて下さい」と告げてくれました。

 私が不安にしていたのを感じ取って安心させようとしています。

 すぐに私が「シアを信じています」と返事を返すと頷いて行ってしまいました。

 その後の様子は、途中から通路の蜂さんを叩き潰しながら甲板に出ると女王蜂を交戦しています。

 女王蜂の魔法を回避しつつ、巨大な足を叩き折りながら少しづつ押しています。

 シアが攻撃魔法を使わないのでどうしてかと私が呟くと、ゲイルさんが教えてくれました。

 小型もそうなのですが、この魔物に対して魔法は効きにくいそうです。

 余程の高火力の魔法でないと弾かれてしまうそうです。

 群がっている小型の蜂さんにも中級以上の魔法ではないと効果が無いと言われているそうです。

 女王蜂になると高火力の上級魔法でも使わないと意味が無いと言われているそうです。

 だから、シアは接近戦の物理攻撃のみで押しているのです。

 それにここまで大型の巣になると普通は、戦闘型の魔人形でもかなりの数が必要と言われているそうです。

 要するに数で圧倒しないと戦いにすらならないそうです。

 状況的にシアが有利になっていた時にトランさんが空賊の魔道船の反応が真上にある事を知らせてくれると同時に上空から恐ろしい速度で何かが落ちてくると警告しています。

 

「おい! 凄い速度でトウェルヴが落ちて来るぞ!」


 トランさんが指摘した映像を見るとソーニャさんが上空から落ちてきています!

 途中で周りに黒い球体を発生させると真下に向かって放出しています。

 それが無数に飛び交う蜂さんを貫通しながら船に被弾すると同じ形状の穴が空いていきます!

 船に対する被弾音が近くなるとソーニャさんが真下に大きな黒い球体を発生させるて、そのまま船に直撃すると大きな衝撃と共に船の装甲を突き破って私達の前に現れました!


「不明の個体の登録者を見つけた」


 現れたソーニャさんが私を見ながら呟きました。

 その冷たい目は私を標的にしているのがわかります。


「おい! 俺の船に穴を空けやがって、許さんぞ!」


 既にボロボロの船ですが、トランさんはお怒りです。


「別の反応があると警戒したけど、パワーしか強化されていない馬鹿の五十七番か」


「嫌な覚え方をするな!」


「事実です。私の目的はブラッドを誑かしたその登録者だけ。始末をする邪魔をしないのなら見逃す」


 目線は私の方に向けながら、トランさんに答えています。

 ソーニャさんの目的は私だけのようです。

 しかも目的は私を殺すつもりです!


「悪いが、ここを守るのが俺の役割だ。強くなった俺がお前を始末してやるぞ!」


 そうトランさんが発言すると同時にトランさんの周りに複数の魔法が発動しています!?

 トランさんは、魔法が使えなかったはずですよね?

 相手のソーニャさんは何となく目が少し驚いた感じはしましたがそれだけです。

 トランさんの魔法を黒い盾のようなものを作り出して弾いています。

 そのままシアのように突撃すると格闘戦に持ち込んでいます。


「驚いた。打撃にも複数の属性付与の攻撃をしている。標準型のパワーのみの特化なのにどうなっているの?」


「シアの支配個体になることを承諾したから、現時点のシアの下位の魔法が俺にも使えるようになったんだ!」


 出航前にシアがトランさんの体の一部を同化させていた時かと思います。

 あれでトランさんの能力が強化されたようです。


「そんな事が可能なのは初めて知った。しかし、支配個体は固有の人格を制限されていたはず。それ以前に初期に設定されていないと支配個体は持てないはず」


「詳しいことは知らんが、シアには制限無しで出来るんだよ。 そして、シアの下位の能力なら能力追加が可能だ。だから、提案を受け入れたんだ!」


「あの個体にそんなことが出来るなんて興味深い。だけど私の目的は変わらない」


 トランさんがネタばらしをしつつも戦っているのですが、それでも押され気味です。

 そして、真上に開けられた穴から蜂さんが入ってきます!

 いち早く気付いたゲイルさんとシャーリーさんが出てくる蜂さんを斬り倒しています。

 単体なら、剣の一振りで簡単に倒せるのですが、穴からどんどん入ってきます!


「穴を何とかしないと、手に負えなくなるぞ!」


 ゲイルさんの声でトランさんが穴に向かって手を翳すと穴が塞がっていきます。

 それで隙が出来た為にトランさんの左手が引き千切りられたように飛ばされたのです。


「クソが!」


「壁を作り出す魔法で、穴を塞いだのは正解。だけど、私と戦闘中なのに無防備に腕を伸ばすなんて愚かな行為。お陰で背後に対する防御が削れた」


 ソーニャさんが呟き右手を私に向けると黒く細い針のようなものがいくつも現れて私に向かってきます!

 躱せないと思ったのですが、誰かに突き飛ばされて大事には至りませんでした。

 代わりにその場にシャーリーさんが倒れています!


「エルナちゃん、大丈夫かしら?」


「私は無事でしたが、シャーリーさんが……」


 私を突き飛ばした代わりにシャーリーさんの体に無数の細い穴が空いて血だらけになっています。

 

「私達の仲間になる時にエルナちゃんを必ず守るとシアちゃんと約束したからね」


 最初に約束したことを守ってシャーリーさんは身を挺して私を守ってくれたのです。

 その代償として、シャーリーさんが瀕死の状態です。

 いくら細い穴のような攻撃でもこれだけ無数に受けていて床に広がる出血量を見れば助からないと私でも分かります。


「よくもシャーリーをやってくれたな!」


 侵入していた蜂さんの始末を終えたゲイルさんがソーニャさんに斬りかかりましたが片手で大剣を受け止められています。

 

「イシュトール人の血を引いていない下等生命体の分際で、私に歯向かうとは愚か」


 そのまま大剣を握られて砕かれると回し蹴りで吹き飛ばされてゲイルさんが壁に叩きつけられると倒れてしまいました。

 ゲイルさんまで殺されてしまったのかと思ったのですが、立ち上がろうとして口から大量の血を吐いてまともに動けずにいます。

 次に矛先が私に向いたのですが、トランさんはどうしたのかと思えば大きな黒い球体を頭上から受け止めて動けないでいます。


「なんだこれは! 重たすぎて動けん! 二人とも逃げろ!」


 アリサさんはその場で呆然として動けないでいます。

 私は無意識に右手に銃を持って可能な限りの魔力を籠めるとソーニャさんに向かって撃ち出したのですが、トランさんの魔法を弾いた黒い盾が現れて弾かれてしまいました。

 同時に次の瞬間には右腕に激しい痛みを感じると銃を持っていた私の右腕がありません!


「小型の魔力銃の威力が中級魔法並みだったのには驚いた。でも、所詮は生命体の限界」


 ソーニャさんが私に向かって指先を向けると、私のお腹に大きな黒い突起状の物が貫いています。

 それが消えると私の腹部に大きな穴が空いています。

 痛みを感じる間もなく、その場に倒れ込んでしまいました。

 いくらなんでもこんな怪我を負ってしまったら、絶対に助かりません。

 私の時間が終わろうとしています。


「標的の排除完了。これであの個体は弱体化するので倒せる」


 ソーニャさんが何か言っていますが、私の意識はシアを残して死んでしまう事で申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 薄れていく意識の中で、激しい音とシアの声が聞こえる気がします。

 最後にもう一度シアの声が聞こえただけでも良かった……。

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