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Eighth Doll  作者: セリカ
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トウェルヴ


「止まってください! それ以上近づくと本当に撃ちます!」


 私が警告をしてもそのままこちらに歩いてきます。

 しかも銃口を向けられているのに、相手は手にしている銃を構える仕草すらしません。

 私は少しづつ下がっているのですが、あちらとの距離が近づく方が早いです。


「俺はこの通り銃口を向けていないんだが、これならどうだ」


 すると銃を腰のホルダーにしまってしまいました。

 そうなると相手は完全に武器を持たない状態です。

 空賊相手に発砲したことはあるのですが、無抵抗の人を撃ったことはありません。

 私が迷っていると感じたのか、一気に距離を詰めてきたので、思わず撃ってしまいました。

 撃ち出した魔力弾は確かに相手の体に命中したのですが、何事も無かったように霧散しています!?

 私が驚いていると銃を持っていた両手を掴まれて、そのまま持ち上げられてしまいました。


「動揺していたのに咄嗟に撃つことを選択したのは正解だったが、魔力弾だったのが失敗だったな」


「それはどういうことなのですか?」


「答えはこれだ」


 私を掴みあげていな反対側の手で首にかけていたペンダントを指さしています。


「そのペンダントがどうしたのですか?」


「これは古代の遺産の一つで、魔力中和能力があるんだ。理屈は知らんが、身に着けていると下位の魔法と魔力弾程度なら無効化できるんだよ」


 そんな物があるのですか!?

 そのような物があるのでしたら、実弾タイプを使えば通じていたはずです。

 その時はどうするつもりだったのですか?


「そのようなものが有ったのにも驚きましたが、私が魔力弾のタイプの銃を使っているとどうして思ったのですか? 私が使っている銃が実弾タイプでしたら、死んでいたかもしれないのですよ?」


「答えは簡単だ。古代の魔人形の登録者になれると言う事は、お前さんはイシュトール人の血を引いていることは確定だ。イシュトール人の血を引いていれば使用制限に掛からないこともあるが、弾の補充をしなくても良い魔力弾タイプを大抵の者は選択するからだ。ましてやお前さんのような娘なら軽くて使いやすい魔力弾タイプを必ず選ぶだろ?」


「その通りですが、私はそんなに魔力を持ち合わせていません」


 今なら、シアが近くにいるので、シアの魔力が尽きない限りはずっと撃てます。

 私だけの場合は限界があります。

 こんなことでしたら、一撃の威力を籠めて撃つのが正解でした。

 しかし、魔力を籠めるのに時間が必要です。

 どちらにしてもあの一瞬では大きな魔力を籠められません。

 

「何を言っているんだ? お前は気付いていないようだが、通常の者よりも濃厚な魔力を纏っているぞ?」


 それはきっとシアが近くにいるからだと思います。

 そんなことよりもこの人は、私の魔力が見えているのですか?


「そんなことを言われたのは初めてです。他人の魔力が見えるなんて話は聞いたことがありません」


「教えてやる必要は無いんだが、お前は俺の女になる事が確定だから教えてやろう。俺の目をよく見て見ろ」


「目ですか?」


 言われてじっと見つめると左右の瞳の色が違います。

 オッドアイと呼ばれる現象と聞いていますが、初めて見ました。

 暗いこともありましたが、相手が男性でしたので真剣に見ていなかったのです。


「左右の瞳の色が違うことで何か見えるのですか?」


「俺の一族の祖先は身内に人体実験をしていたらしくてね。その影響で俺の片目は人が纏っている魔力が見えるんだよ。どちらの目が見える方なのは秘密だがな」


 祖先の人体実験の影響が発現しているそうです。

 左右の目の色が違うと言うのは、目立ちやすいと言うか相手に覚えられやすそうです。

 深く考えたことは無いのですが、魔力が見えると何か得なのでしょうか?

 魔力が見えると言う事は……そう言うことだったのですね。


「私が構えている銃が魔力を発していたから、魔力弾のタイプと確信したのですね」


「おっ、そのことにも直ぐに気付いたか。俺は賢い女も嫌いじゃないぞ」


「最初に言われた時は判断力に優れているのだと思いましたが、見えているのでしたら別です。種明かしをしなければすごいと思いましたが、残念です」


「こんな状態でも平然と俺と会話をするなんて、面白い娘だな。やっぱりこのまま連れて行くことにするぜ」


 私の何が気に入ったのか知りませんが、このままでは強制的に転職もしくは、この人の女にされてしまいます。

 その日の内に2人も強引な人に好かれても困ります。

 でも、私がピンチなのにシアが黙っている訳がありません。

 私が逃げたいと強く思うとブラッドさんに対して複数の方向から攻撃魔法が放たれます。

 本人は下位の魔法と判断したようですが、直撃を避ける為なのかその場から移動しようとした時にシアがブラッドさんの体当たりをすると同時に手が離されて少しだけ宙に舞った私をシアが抱えて距離を取っています。


「エルナ、大丈夫ですか」


「シア! ありがとうございます!」


 シアが正装をしていれば、ドレス姿の私を抱えている姿は正に理想的な絵になっているはずです。

 弾き飛ばされたブラッドさんの方は、建物の壁に叩きつけられていますが生きているみたいです。

 シアに体当たりをされたのに頑丈な人のようです。


「魔法は囮で本命は本人か。ソーニャの範囲内じゃなかったらやばかったが……おい、ソーニャ。しっかりあいつの相手をしてくれよな」


「あいつの方が移動速度が速い。離れられたら速度勝負は無理」


「おいおい、例え上位個体でも範囲内に引き込めば五分以上の勝負に持っていけるお前よりも上なのかよ」


「範囲内でも駄目。全力で重圧を掛けているのに互角にしか持って行けない」


「まじか……するとあいつはなんなんだ?」


「これまでに遭遇した個体情報にない種類。未発見の未知の属性と判断する」


 立ち上がったブラッドさんとソーニャさんが私達の方を見ながら会話をしています。

 シアの正体を絞り切れないと言うか能力の判断をしかねているようです。

 対する私のシアは違います。


「私が得た情報では「トウェルヴ 」は、母艦と共に自爆したと記録されていました。しかし、戦闘データーから、その個体のナンバーは「トウェルヴ 」で間違いはありません。属性である重力攻撃をしていますので間違いはありません」


 あちらと違って、一度の戦闘で、シアは相手の正体を看破しています。

 シアは、相手の事を母艦と共に自爆したと言っています。

 そんな情報をどこで得たのでしょうか?

 そう言えば、フィスさんの艦隊と相打ちになったみたいな話をしていたのを思い出しました。

 

「おい。あっちはお前の正体どころか属性まで理解しているぞ。しかも過去の詳細まで知っているなら、お前も見覚えがあるんじやないのか?」


「ない。これまでの戦闘履歴にあるミッドウェール王国にもバートランド王国にもアストリア王国にも属していない個体」


「そうか。お嬢ちゃんの恋人は、どこの国にも属していないフリーで良いんだよな?」


 2人の会話から、今度は私に振ってきました。

 先ほど種明かしをしてくれましたので、そのぐらいは答えても良いと判断しました。


「どちらにも属していません。あえて答えるのでしたら、自由に属しています」


「自由ね……なら、俺達空賊と同じだな」


「残念ですが、人様から略奪などの悪行はしていませんので同じにされては困ります。それよりもシアが言うにはソーニャさんはお亡くなりになったはずですよね?」


「古代の魔人形に対して亡くなるとか、ソーニャ達を同じ人扱いしている訳だ。お嬢ちゃんが知りたいみたいだから、答えてやれソーニャ」


 ブラッドさんがソーニャさんに話を振ると答えてくれました。


「命令で母艦は自爆させたけど、私は破壊を免れた。その時にマスターは死亡した。登録者が不在となって森を歩いていると、魔物と戦っていたラルドと波長が合ったから登録者にした」


「そのラルドと言うのは俺の爺さんだ。もう死んじまったが、次に俺と波長が合ったから、次に登録者になっている訳だ」


 事情は分かりました。

 ですが、ソーニャさんは本来なら……。


「ソーニャさんは、ミッドウェール王国に属していたのですよね?」


 私がソーニャさんに問いかけると普通に返答をしてくれました。


「私達が、どこに属するかは登録者次第。それに母艦を失った。プラム辺りが更に煩いから離れられて丁度いい」


「プラムさんと言うのは誰ですか?」


「破壊されていなければミッドウェール王国に今も所属する個体。私の母艦を堕としかけたフィフスよりもウザイ存在」


 プラムさんと言うのは、元同僚さんみたいです。

 ただ、過去に何かあったのかは知りませんが嫌いな方のようです。

 そして、フィフスと言うのはフィスさんの事で間違いはないので、フィスさんを嫌っているようです。

 そうなると仮に私が空賊になってお友達になってもフィスさんも必ず付いて来るので、喧嘩が勃発するのは確実です。


「そこで暴れているお前達! この辺りは完全に包囲した。抵抗は止めて大人しくするんだ!」


 いつの間にかに周りに軍人らしき人たちが集まっています。

 このままですと、私は捕縛されてしまいます。

 そして、ハミルさんが死んでいるのですから、私にも容疑が掛かる可能性があります。

 殺したのはブラッドさんなのですが、その話を信じてくれるかは分かりません。

 それよりも大事なことは、シアの存在が知られてしまう事です。

 私が不安そうな表情をしたのに気付いたのか、シアが即座に行動に移ります。

 私を片手で抱き寄せて飛び上がると地面に無数の壁を出現させます。

 軍人の人達の前には全て出現させていますが、それ以外にも道の至る所に出現させると屋根の上を走り飛び移りながら全力でこの場から去って行きます。

 ここは地下迷宮ではないので、この後の道の整理が大変なことになると思います。

 特に通行人の人達は苦労すると思います。

 軍隊の人達が少しでも私達の方に注意が向こうとすればシアの容赦のない壁と言う障害物が大量に出現していくのです。

 もしも明日にここを通る事がありましたら、心の中で謝りたいと思います。

 ブラッドさん達とは、話の途中でしたが、次に会うことも無いと思いつつ忘れることにしたいと思います。





 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「クソ野郎を始末するついでに面白い奴に会ったな」


 どこにも属していないのなら、欲しいな。


「追いかける?」


 追いかけてもいいんだが、あの速度に追いつくとなるとソーニャはともかく俺は疲れるだけだ。

 あのお嬢ちゃんみたいに抱えてもらうのも良いんだが、見た目的に女に抱きかかえられているようにしか周りに映らないからカッコ悪いんだよな。

 空賊バルバロスのリーダーとしては、そんな噂が流れたら威厳が保てなくなるぜ。

 まあ、奴の商会は調べが付いているので問題はない。


「大体の素性は分かったから、後で会うことにするが……あの個体は町中なのにやりたい放題だな」


 俺も人のことは言えんが、町中に壁を作り出しながら去って行くとか、俺でもやったことがないぞ。


「あの個体は複数の属性と解析能力などの諜報型に近い能力を持ちながらも通常の戦闘能力は私よりも上」


「お前より上で、発見されていない個体とか何体いるんだよ」


 あんなのが何体もいると迷惑だが、手元に所有しておくなら話は別だ。


「私の知らない戦闘で破壊された個体もいるはずなのでわからない。ただ複数の属性持ちは護衛型の特徴」


「護衛型と言うとあいつと同じになるんだが……ソーニャには負けていたよな」


 俺の配下の1人が登録者になっている個体が護衛型だ。

 目立つような戦闘能力はないが、複数の種類の魔法と防御能力だけは優れている。

 ソーニャの重力攻撃の前は対処しきれていなかったが、あの個体は初見の相手なのに完全に対応していたな。


「私の知らない護衛型を強化したタイプかも。それよりも取り囲んでいた軍の中に私と同じ個体が混じってる。そいつが壁を破壊しながらこちらに向かってくる」


「俺達の方にだけか?」


 あっちにも半分ぐらいいけよな。


「あちらは、私の感知範囲内に拘わらずに途中で存在がロストした。遭遇した時のように隠蔽系の能力を発動させたと思う」


 最初はソーニャの感知能力であの個体の存在が感知ができなかった。

 あれだけ近づいているのに反応しないのは諜報型だけだ。

 戦闘にも使えて諜報型や護衛型の上位的な存在か。


「あいつの方が何かと便利だな」


「私に不満があるの?」


 珍しく不機嫌になりやがったな。

 殆ど表情を出さないがたまに拗ねるんだよな。

 かなり古くから活動していると聞いているが、他に知っている奴と違って感情が薄いから余計に困るぞ。

 それは良いとして。


「いや、ないがひとまずはもどるか。軍の奴らならどうでもいいので、片っ端から潰してしまえ」


「了解。あと、次にあの個体と遭遇したら弱体化させてから破壊する」


 あの個体が便利とか言ったら、ソーニャの奴が嫉妬してしまったな。

 こうなると命令を受け付けなくなるから厄介なんだが……その時は諦めるか。

 指示を出すと全方位に重力弾を撃ち出しながら、壁ごと軍隊の奴らを潰しまくっている。

 昔はミッドウェール王国に対して手加減をするかもしれんと思っていた。

 だが、敵対したら、知った奴でも容赦なく殺しまくるんだよな。

 昔に俺の爺さんの時に遭遇した軍の奴らの中にソーニャを知っている者がいたらしいが、過去の登録者が家族同然に親しくしていた相手だったのにあっさり殺してしまったそうだ。

 本人も言っていたが、登録者次第で簡単に敵味方を判断してしまう。

 ソーニャの奴が敵でなくてよかったぞ。

 敵として現れたら、あそこで潰されている奴と同じ死に方が確定だ。

 道が出来たところで、ソーニャに時間差の重力トラップを追手が来る方向に撒くように指示をしてそのままとんずらだ。

 通路にばら撒かれたトラップに引っかかれば、古代の個体だろうが数分はその場から動けなくなる。

 ましてや普通の人間では数十分は固定された挙句に無理矢理に体を押し付けられた影響で全身が痛くて即座に行動などできない筈だ。

 ソーニャがいると逃げるのは楽なんだよな。

 帰ったら、あいつらの船の行き先でも調べないといかんな。

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