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Eighth Doll  作者: セリカ
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異性のお誘いはいりません


「それでは、シアとお出かけをしてきます」


「いってらっしゃい。あまり無駄遣いはしないようにね」


 アリサさんにいつもの注意を受けて、今日もシアとお出かけです。

 ミッドウェール王国に通う生活を始めて二月ほどが経ちました。

 基本的には、樹海の森の中にある古代都市を本拠地としています。

 こちらには、数日単位で滞在する生活を送っています。

 販売する物資の調達は古代都市でしかできません。

 あの辺りなら、地下迷宮に行かなくても周辺に魔物が徘徊していますので、魔道船の資材関係が調達ができます。

 フィスさんのアルコール関係も古代都市の施設を利用しなければいけません。

 今のところは順調に生活ができています。

 そして、フィスさんの資産もどんどん増えていきます。

 私達は、基本的には真の経営者であるフィスさんの従業員です。

 経理はアリサさんがしていますので、輸送のお仕事が終わる度にお給金を貰える仕組みにしています。

 決まった量の物資を運搬していますので、安定した収入があるので私も計画的にお金が使えます。

 唯一貧乏なのはコレットちゃんだけです。

 読書と調べものとやらで、働いていないからです。

 最低限の食費代ぐらいは働くようにアリサさんに言われているので、たまに魔物狩りに参加する程度になっています。

 働かないコレットちゃんの現在は、古代都市にずっとお留守番をしています。

 トランさんにすら指摘をされていましたが、アリサさんからは、ダメな人の見本と言われています。

 そして、もう1人たまに留守番をしているのがシャーリーさんです。

 毎日のように酔っぱらっているので、出航時間にも遅刻するので置いていくしか無いのです。

 次にフィスさんとレンスリット様は付いてきたりお留守番をしたりしています。

 残って主にアルコール類の生産をしているからです。

 最初は十分に作り出してからの行動だったので良かったのですが、注文次第では生産を優先しないと追いつきません。

 レンスリット様は、フィスさんと離れられませんので、一緒にお留守番になってしまいます。

 どちらにしても船から降りられない問題もありますので、古代都市にお留守番をしているのが安全かと思います。

 たまに古代都市周辺の上空を魔道船が通過していますが、今のところは発見をされていないので安心をしています。

 そうなると基本的には、残った人達でミッドウェール王国を行き来しているのです。

 時々国境近くを通過すると空賊に襲われたこともあります。

 アリサさんの許可が下りるとトランさんが喜んで砲撃してしまうので、現在は被害もありません。

 相手が古代の魔道船ではないことから、その能力の差は圧倒的です。

 防御面に少々問題が残っていますが、シアがサポートをすれば相手の攻撃が通じません。

 例え接近されて甲板に侵入を許してもシアが全員叩きのめしてしまいます。

 相手の船を行動不能にしてしまえば、トランさんも船を停船させてシアと一緒になって空賊の排除をしています。

 私やゲイルさんも応戦しますが、殆ど出番はありません。

 シアが常に私の近くにいますので、攻撃を受けることも無いのです。

 相手と直接戦う時は、基本的には剣などの武器を使ってきますが、中には銃を使う方も紛れています。

 魔物相手では大きなダメージが与えられなくても、人相手には十分な脅威です。

 私も空賊との応戦には基本的には銃で狙撃をするスタイルにしています。

 手足を狙って殺さないようにしたいのですが、私にはそれ程の腕はありません。

 なので、申し訳ないと思いつつ体を標的とさせてもらいます。

 的が大きいので狙いやすいので仕方がないのです。

 それにあちらは私達を殺す気で来ているのですから、手加減などできません。

 最初の頃は抵抗がありましたが、お互いに生きる為には仕方がないと割り切りました。

 初めて相手の方を死なせてしまった時は、かなり落ち込んでしまいましたが……みんなに慰めてもらったおかげで持ち直せました。

 シアは常に傍いてくれたのも大きいのですが、この時に初めてレンスリット様がずっと私の傍にいてくれたのです。

 ただ、私の手に優しく添えているだけなのですが、なぜか心が落ち着いて来るのです。

 私を見つめる瞳を見ていると、とても心地よいのです。

 こんな状態ですが、私はレンスリット様がとても欲しいと思ってしまいました。

 シアとは違う何かが彼女にはあるのと感じたのです。

 罪悪感よりも彼女が愛おしく感じるなんて、どうなのかと思ったのですが、自分の嗜好の方が優ってしまったようです。

 その日から、レンスリット様を意識してしまいなるべく近くに居たいと思うようになって以前よりも積極的に私が話しかけるようになりました。

 相変わらず言葉が少ないのですが、微笑む姿を見ると胸の辺りが高まってきます。

 これは、私がレンスリット様に恋をしてしまったのかと思います。

 私が頻繁にレンスリット様に会いに来るので、フィスさんは歓迎してくれますが、目的の対象が自分ではないので少し落ち込んでいます。

 自分の方が肉体的な接触で優っているのに精神的に負けたとか言い出す始末です。

 肉体的な接触と言うのは、私がフィスさんに対価を支払っているにすぎません。

 いくら体の方から私を落としに来ていても精神的な想いの強い私は、簡単には落ちません。

 私はレンスリット様のお茶をしながら、会話をしているだけで満足をしてしまうのです。

 たまに手と手が触れるだけで、幸せを感じられるのです。

 フィスさんがいくら頑張っても恋する乙女の精神力は偉大なのです。

 そんな様子を見ているシアですが、私に対する態度は変わりません。

 少しは嫉妬してしまうのかと思ったのですが、いつもの態度を崩しません。

 一度シアに言い訳みたいなことを言ってみたのですが、シアの答えは強者の発言でした。

 シアが言うには「私とエルナと精神的な繋がりは最大値を超えています。次に高いのはレンスリットになりますがそれだけです」と言われたのです。

 こんなにはっきりとシアに言われて嬉しいと思いましたが、シアには私の心の想いの度合いが分かるようです。

 試しに次に私がの心が向いているのは誰か分かりますかと聞くと……精神的にはコレットちゃんで、肉体的にはフィスさんと答えました。

 補足で、精神面でフィスさんが上位になれば、自分の次になるとまで言われました。

 そんなことを聞くと体だけはフィスさんに篭絡されかかっているのかもしれません。

 そこまで深い関係ではないのですが、本気で来られたら危なそうです。

 いまは私とシアに配慮をしていますが、気を付けたいと思います。

 話が逸れましたが、倒した空賊の処遇は最低限の物資以外は没収して国境付近の街道に捨てていきます。

 手配されている者達もいるので、軍に突き出してしまうのもいいのですが、余計な手間が掛かるので、いまはしていないのです。

 報奨金も大した金額ではないので、時間と事務処理の手間を考えると捨てるのが一番となったのです。

 ですが、船は破壊されて墜落しているし、最低限の物資だけ与えて放置していますので、その後は自力で頑張るしかありません。

 国境付近の町に行かずに樹海の森に逃げ込む選択肢もあります。

 その場合は最低限の武器しか返していませんので、生き残れる確率は低いと思います。

 気の毒かと思ったのですが、今までに散々他の商船を襲うなどの悪事をしていたのですから、これでも寛大な方と思っています。

 最初の頃は、シアとトランさんは相手を確実に殺していましたが、なるべく人を殺めないで欲しいとお願いをしたので、戦闘不能にする範囲にとどめています。

 トランさんもアリサさんに言われて手加減をしてくれています。

 2人に殴られたら、普通の人は一撃で死んでしまいます。

 特にシアは、フィスさんを真似て切り裂くことも覚えてしまったので、殴る動作よりも早く相手を倒してしまうのです。

 唯一手加減無用で破壊しているのは戦闘型の魔人形です。

 大抵は戦闘型の魔人形が最初に取り付こうとするのですが、真っ先に排除されてしまいます。

 トランさんも手加減をする必要が無いので優先的に狙っていきます。

 普通でしたら、大変な事なのですが、シアとトランさんがいることで、逆の結果となっています。

 後は空賊が所持している物資次第ではプラスになります。

 回収可能な物は迷惑料として押収してしまいます。

 そして、一番大きな収入は魔道船のコアです。

 初めて見たのですが、古代の魔道船の操船室にある宝玉を巨大化させたものです。

 船の中心部に固定されているのですが、これを起動させるには複数の魔核が必要なそうです。

 私は知らなかったのですが、最初に発見されると力を失って輝いていないそうです。

 そして、コアに魔核を触れさせると力を吸収して一定の量に達すると魔道船の動力源になるそうです。

 一度起動させてしまえば、後は操作する魔導士の魔力だけで運用ができるそうです。

 どういう仕組み化は分かりませんが、起動させたコアがその船の心臓部であり命令伝達をする頭脳になるとのことです。

 古代の魔道船は、この仕組みを簡略化させてシア達のような古代の遺産とも呼べる存在が全てを補っているのです。

 通常の魔道船は複数人の魔導士を必要として役割分担もしなければいけないそうです。

 古代の魔道船は、単独で全ての動きを即時に行動に移せます。

 しかも、古代の特殊な技術を採用していますので、防御力も違います。

 そんなすごい技術がどうして失われてしまったのかは分かりませんが、古代の魔道船がとてもすごいのはわかりました。

 そして、魔道船のコアの力の源が魔核と言うことが分かりましたので、シアがトリスの町から脱出する時に他の魔道船のコアを破壊した理由も分かりました。

 聞けば今頃は力を失ってただの大きな宝玉になっているのですが、シアが力を吸収すると媒体のコアの機能自体を破壊してしまいます。

 大きな宝玉と言いましたが、実質的にはただの石ころになってしまうのです。

 当然のように空賊の魔道船のコアの力を吸収して破壊していますので、落とされた魔道船は廃棄が確定です。

 墜とした地点は地図に記載だけはしていますので、気が向いたら軍に情報提供をしたいと思います。

 しかし、コアが使い物にならなくなっているので放置しておくのが良いかと思います。

 なので、空賊に襲われると臨時収入みたいなことになっています。

 相手にとっては運が悪いとしか言えません。

 さて、考えることは止めて本日はどこに行きましょうか。

 お気に入りの洋菓子店には帰りに寄るつもりですが、いまは欲しいと思う物がありません。

 最初に通っていた頃に欲しいと思う物は沢山買い込んでしまいました。

 前回の時にフィスさんに借りていた借金も返し終えたので、高い買い物をしなければ今回からはお金に余裕があるのです。

 本日は、軽く散歩でもして過ごそうと思っていると声を掛けて来る方がいます。


「本日の業務は終わったようですね」


 私に声を掛けてきたのは、ハミルさんです。

 最初に最後の商会で出会った時から、私に声を掛けてくる方です。

 見た目は好青年で、女性に好かれそうなのですが、私には興味はありません。

 

「はい、いまは自由時間なので、休憩をしている所です」


 シアを真似て無視をしたいところですが、商売上の関係で無視することはできません。

 立場的には私はアリサさんに雇われている従業員なのですから、あちらの方が上の人物だからです。


「それなら、このまま私に付き合って食事にでも行きませんか?」


 時間的にはまだお昼前です。

 私の予定では、まだ入ったことのないお店に行く予定です。

 勿論ですが、一緒に行く相手はシア以外にはいません。


「申し訳ありませんが、簡単な買い物をしたら船に戻りますので、今回はご遠慮させてもらいたいと思います」


 仕方がありませんので、洋菓子店で買い物をして出航するまで船で過ごすことにします。

 この人がこの時間に私を誘うと言うことは、本日の業務を終わらせている証拠です。

 私は詳しくないのですが、アリサさんが言うには仕事が早いとの事です。

 仕事ができる上に好青年で見た目も良いのでのですから、私なんかに声を掛けなくても他の女性がほっておかないと思います。

 それに私は見たのですが、たまに町中で見かけると毎回違う女性と歩いています。

 雰囲気的に仕事がらみではないので、複数の恋人がいるのかと思います。

 それなのに私に声を掛けてくるのはなんなのでしょうか?

 以前にフィスさんに相談した時の答えは「そいつって、女性にモテそうなんでしょ? きっとエルナ様が誘いに乗らないから、自身のプライドが傷ついたと思ってなんとしても落とそうとしていると思います。僕もエルナ様を振り向かそうとしているので気持ちは分からないでもありません。だけど、僕の場合は本気なので早く僕を受け入れてください! その時は朝から晩までエルナ様を満足させて見せます!」などど言っていました。

 フィスさんの考えはともかくこの方は、私を落としたいだけなのかと思います。

 要するに私が誘いに乗って体を許した時点で捨てられると思います。

 見かけた時に一緒に居た女性は綺麗な方達ばかりでした。

 自分で言うのもなんですが、ちょっと可愛いぐらいしか勝負ができる気にしかありません。

 数年後にフィスさんの部屋に飾ってあった肖像画の女性ぐらいになれば……多分いい勝負ができると思っています。

 今の私は、発育途中の若い娘でしかありません。

 恐らくは、たまには私のような少女の相手がしたいぐらいと考えているのだと思います。

 この町に住んでいるのではなく、仕事でたまに来るだけなので都合も良いからとも考えられます。


「次に船が出るのは明日のはずだよね?」


 現在の積み荷を降ろしたら、途中で別の町に搬送して欲しい物を頼まれているので、出発は明日になっています。

 搬送する荷物はこの方の商会の荷物だったので、私達の次の行動を把握していたのですね。


「確かにそうですが……」


「だったら、たまには私に付き合ってくれないかな?」


 断りたいのですが、立場的には断りにくいです。

 何度も声を掛けられていても躱していたのですが、今回は私の時間まで押さえています。


「シアと一緒でしたら、お誘いを受けたいと思います」


「この子も一緒か……」


 ハミルさんの目には、私との間を邪魔してくる存在と映っていると思います。

 未だにシアのさり気ない妨害で、私の体に接触ができていません。

 現在も私の正面にシアは居ます。

 シアの背後で、両肩に私の手を置いてハミルさんと話している状態です。

 大抵はこの配置になるのですが、その様子を見ていたゲイルさんからは「姉をナンパ男から守る妹みたいな構図だな」と表現していました。

 ゲイルさんにもハミルさんの目的が分かっているみたいです。


「分かりました。それなら三人で行きましょう」


 少し悩んだ上で、妥協をしたみたいです。

 どこな連れて行くのか知りませんが、シアがいるのですから安心です。

 私に手を出そうとすればシアの鉄拳制裁が待っています。

 もしもそうなってしまったら、どうやって隠蔽工作をするのか悩みが増えそうです。

 出来る事でしたら、軽く食事でもして終わってくれれば良いと思いつつ付いていくことにします。

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