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Eighth Doll  作者: セリカ
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仲間が増えました


「せっかく来たのに肝心な相手が連れていかれたぞ」


 先ほどまでは、愚痴を言っていましたが静かになってしまいました。

 私もシアが居なくなってしまったので、寂しいです。

 そう言えば、疑問に思っていたことがありましたので、ついでに聞いてみたいと思います。

 普通でしたら、答えてはくれないと思うのですが、この方は答えてくれる気がします。


「トランさんにお聞きしたいのですが、どうしてシアに気付かれずにコレットちゃんのお家を囲んだのですか?」


「お前、俺の名前を知っていたのか」


 最初から、サリサさんが普通に呼んでいました。

 シアと戦うようにと指定もしていましたので、余程の事が無ければ忘れたりはしません。


「サリサさんが呼んでいましたので、覚えました」


「ふーん……俺を数字や人形呼びではなく、最初から名前で呼ぶなんて珍しいな」


「私は、数字とか個体などと言う呼び方は好きではありません。名前があるのですからそちらで呼びたいと思っています」


「同じ個体以外は、俺の事なんて五十七番と言う番号でしか呼ばない奴が殆どだ」


「せっかく最初の方が付けてくれた名前があるのでしたら、そちらの方が良いと思います」


「お前……いい生命体だな」


「宜しければ、私の事はエルナとお呼びください」


「わかった。それで、エルナが知りたいことはなんだ?」


 なんとなく友達レベルに成れた気がします。

 答えてくれる気になっていますので、お聞きしたいと思います。


「コレットちゃんのお家をいつの間にか囲んでいた件です。いつもでしたら、近づかれる前にシアが気付くので、不思議だったのです」


「あいつは、感知範囲も諜報型並みだったのか。俺なんてかなり近づかないと同型の反応に気付けないぞ」


 つい、シアの索敵範囲が広いことを教えてしまいました。

 フィスさんもそうでしたが、普通は近づかないと感じ取れないようです。


「戦闘も強くて、攻撃魔法も使えるのに諜報型並みの感知能力があるなんて、羨ましい能力だな」


 しかし、トランさんの意識はシアの能力が高いことを羨ましがっているようです。


「そんな奴でもピアの能力は見破れなかったようだな」


「その方は誰なのですか?」


「詳しいことは言えんと言うか完全に詳しくは知らんが、あいつの能力は自身が認識している存在を隠蔽する能力の個体だ。戦闘補助系なので、戦闘能力は戦闘型の魔人形よりも上程度しかない欠点持ちだけどな」


「そんなすごい方もいたのですね」


 そう言えば、突然囲まれた時にシアは自分と同じ反応が三人いると言っていました。

 私は、もう1人を赤毛のツヴァイさんと思っていました。

 それならば、トランさんに挑まれる前にシアの実力があれば、強引に強行突破も可能だったのかもしれません。

 結果的に考えれば、シアに積極的に戦ってもらえば脱出は不可能ではなかったと思います。

 私が慎重になってしまったのが、失敗のようです。


「まあ、もう他の奴らと一緒に本国に返したぞ。あいつらは派閥的には中立の軍部に一時的に借りていただけだからな」


 もういないのでしたら、隠れている存在に警戒しなくても済みそうです。

 ですが、次回からはシアの感知に頼りすぎないようにしたいと思います。

 私に次があればの話ですが……。

 では、トランさんはどのような経緯なのでしょうか?


「トランさんは、どうして私達の捕縛に参加していたのですか?」


「俺の前回の登録者だった者がこちらの陣営だったからだ。まあ、どうでもいいんだけど、次の登録者次第でどこに付くか知らんぞ」


「いまのお話からすると、登録者次第では敵側に寝返ってしまう事もあるのですか?」


「あるぞ。だから、俺のような登録者不在の個体は基本的には国外に出させてもらえない。そして、本国で波長の合う者と出会うまでは暇なんだよ。今回は頭数が足りないから呼ばれただけで、本当は本国待機だったんだ」


「すると毎日がお見合い生活だったのですね」


「お前らで言うそんな所だな」


 私にはシアがいますが、もしかするとトランさんは登録者次第ではこちらに付いてくれるかもしれません。

 ふと、私の部屋の反対の部屋に捕まっている扉の方を見ると、ゲイルさんとシャーリーさんが格子越しにこちらを見ています。

 私とトランさんの会話を邪魔しないように静観していてくれているみたいです。

 そうです!

 トランさんがゲイルさんかシャーリーさんを相方と認めれば味方を増やすことが可能かと思います。

 上手くいかないかもしれないのですが、試してみたいと思います。


「トランさんにお願いがあるのですが、あちらに私のお知り合いが囚われているのです。宜しければ扉を開けてもらえますか?」


 私の言葉聞いたトランさんが背後の扉の方に向くとゲイルさんとシャーリーさんを確認しました。


「俺の相手にならない生命体か。別にいいぞ」


 するとカードのような物を扉の取っ手にの上の四角い所に翳すと鍵が開きました。

 まるで、私達が持っている組合のカードで、地下迷宮の移動するのと似ています。

 鍵穴などに差し込まずに翳すだけで良いのですから、便利な鍵だと思います。

 そして、二人が出てきたのですが、特に反応はありません。

 先ほど波長が合うと良いと言っていましたが、どのように確認をするのでしょうか?

 私が悩んでいるとシャーリーさんが声を掛けてきました。


「エルナちゃんの隣の部屋にいるアリサも頼めるかしら?」


 私の隣の部屋にはアリサさんもいるのでした。

 お二人だけしか指定をしていませんので、こちらもお願いしましょう。


「私の隣の部屋の方もお知り合いなので、お願いできますか?」


「かまわないぞ」


 そういって開けてもらったのですが、アリサさんが出てきません?

 室内を覗き込むとシーツが置いてある固い台の上で眠っていました。

 中に入ると普通に眠っています。

 こんな所で眠って痛くないのでしょうか?

 私が起こしても良いのか悩んでいるとシャーリーさんがシーツを剥ぎ取って起こしています。


「ちょっと、アリサ。起きなさいよ」


 体を揺すりながら起こされたアリサさんが目覚めるとシャーリーさんに文句を言い出しました。


「あのね……せっかく寝ているのにどうして起こすのですか?」


 起こされたアリサさんは不機嫌です。


「こんな所で良く寝れるわね?」


「騒動があってから、捜索に駆り出されたり余計な仕事を沢山させられて最近は寝不足なのよ。こんな所でも仕事から解放されて眠れるのなら文句なんてないわ」


 きっと私達の所為で余計な仕事が増えたのかと思います。

 そこまで仕事を頑張ったのに怪しいと言う理由で投獄されてしまう仕打ちまで受けるなんて、とても運が無いと思います。


「そんなのは適当に手を抜けばよいじゃない。アリサって、真面目よね」


「不真面目な酔っぱらいに言われたくないわ」


 2人がそんな会話をしているとトランさんがジッとアリサさんを見ています?

 どうしたのでしょうか?

 すると次の行動は、アリサさんの右腕を掴んでいます。


「えっ? この子は何なの?」


「お前、俺と僅かだが波長が合うな。更にイシュトゥール人の反応があるぞ」


 ゲイルさんやシャーリーさんには無関心でしたが、アリサさんとは波長が合うみたいです。

 このままアリサさんを登録者と認めてもらえれば、シアやフィスさんに次ぐ強い味方が得られるかもしれません。


「アリサさんとは仲良くなれるのですか?」


 私が質問をすると答えてくれました。


「ああ、俺の登録者になれるぞ。人格的には不適合だが資格はあるな」


 これでアリサさんに納得してもらえれば、味方を増やすことが可能になると思います。

 話に付いていけないアリサさんは呆然としていますので、改めてお願いをしてみたいと思います。


「アリサさんにお願いがあるのですが、トランさんの恋人になってもらえませんか?」


「エルナさんも捕まっていたのですね。それよりも私がこの子と恋人になると言うのはどういうことなのですか? いくらなんでも初めて出会ったばかりか、こんな若い子を恋人にするなんて、歳の差を考えると無理です」


 私の言葉を補足するようにシャーリーさんが補足をしてくれました。


「ちょっと意味が違うんだけど、エルナちゃんとシアちゃんみたいな感じになって欲しいと言っているのよ」


「それって、この子は女の子なのですか? エルナさんの趣味には気付かない振りをしていましたが、私にはそのような趣味はありません」


 別に隠してはいなかったのですが、アリサさんは私の嗜好に気付いていたようです。

 出来れば共感してもらいたかったのですが、アリサさんには賛同が貰えなさそうです。


「アリサの言いたいことは分かるんだけど、それとは違った特別な関係になって欲しいと言うことよ。貴女が知っているのか分からないけど、その子は古代人の遺産の子よ」


「古代人の遺産の子って……まさか!?」


「分かったかしら?」


「シアさんがとても強い理由が分かりました。すると貴方は古代人が残した強力な魔道人形なのですね」


 腕を掴んだままのトランさんが口を開きました。


「そうだ。その理解で正しい。それで、お前には資格があるがどうする?」


「話程度にしか聞いたことはありませんが、それを受け入れると私はどうなるのですか?」


「俺は、お前を登録者と認め可能な限りはお前を守り命令されれば敵対する奴らと戦ってやる」


「私は、王国の貴族や軍人ではありません」


「そんな物は関係ない。俺が認めるかが重要なだけだ」


「仮に受け入れたとしても私は国の為に尽くす気はございません」


「いいぜ。俺たちは、登録者の意思に従うように作られている。お前がこの国と戦うと言うのであれば従ってもいい。だが、俺程度では他の強力な奴らと戦闘能力の差で大した力にならんがな」


 トランさんの返事を聞いて、アリサさんが考え込んでいます。

 しかし、組合に勤めているのにアリサさんは王国の為に働く気はないようです。

 どうしてなのかを考えているとシャーリーさんが耳打ちをしてくれました。

 アリサさんの曽祖父の方は元々は王国に仕える方だったらしいのですが、何か汚名を着せられて没落してしまったとのことです。

 その後は、本国から追放されてトリスの町に流れて来たそうです。

 どうして、シャーリーさんがさんなことを知っているのかを聞くと、シャーリーさんの身内もアリサさんの曽祖父に最後まで付き従っていたそうです。

 2人にはそんなことは関係ないような間柄で育ってきたそうですが、ある事件を切っ掛けに疑問を抱いて両親から教えてもらったそうです。

 そのある事件の所為で、アリサさんは王国には良い感情を持っていないそうです。


「分かりました。では、私を登録者と認めてください。ただし、貴方は王国とは縁を切ってもらいます」


「いいぜ。実際の所この国には飽き飽きしていたし、俺もフィスのように好きなことがしたいと思っていたからな」


「では、お願い致します。それでどうすれば良いのでしょうか」


 トランさんは、掴んでいた腕を離すと指示を出しました。


「そのまま右手の甲を俺に差し出してくれればいい。後は事が終わるまで、動かなければいいだけだ」


「これで良いのですか」


 アリサさんが右手の手の甲を向けると、トランさんが両手で何かを掴もうとする形を作るとシアの時と同じような紋章が現れました。

 それをアリサさんの右手の甲に近づけると吸い込まれていきます。

 何か熱いものが押し付けられた表情をしましたが、アリサさんは言われた通りに動かないでいます。

 その輝きが収まるとアリサさんの手の甲に紋章が浮かび上がっています。

 私とは違う形をしていますが、あれがトランさんの印のようです。

 事が終わると浮かび上がっていた紋章が消えてトランさんが片膝をついています。


「これで、お前は今から俺の登録者だ。俺の力が及ぶ範囲は、お前の矛になると誓うぜ」


「では、宜しくお願いを致します。それから私の事はアリサと呼んでください。貴方のお名前を教えてください」


「俺の事は、フィフティー セブンスまたはトランと呼んでくれ」


「では、トラン君と呼ぶことにします。まず、現在の状況が知りたいのですが、教えてください」


「俺も詳しいことは知らされていないが、そこのエルナと不明の個体の捕縛の為に来たんだ。いまは任務が完了して捕縛したんだが、エルナに言うことを聞かせるためにあの2人を捕まえたらしいんだが、アリサはその片割れと関係があると言うだけの理由でここに拘留されたと言う訳だ」


 その話を聞いてアリサさんが私とシャーリーさんを交互に見ています。

 そして、溜息をつくと……。


「シャーリーはともかく、エルナさんは何をしたのですか」


「実は……」


 そのまま今までの経緯を素直に話しました。

 話を聞き終えると、私に真面目な表情で話しかけてきました。


「理由は分かりました。申し訳ないのですが、エルナさんには責任を取ってもらいます」


「私にできる事でしたら……」


「難しいことではありません。ここから出た後は、私も貴方達と行動することにします。どちらにしても私はこの町にはいられないと思いますので、頼りにさせてもらいます。だからと言って全てをお任せするわけではありませんので私もできることは致します。要するに私も貴方達のお仲間にしてもらえれば良いのです」


「それで良いのでしたら、構いませんが……その前に私は現状では逃げることができないのです」


 自分の首に付いている首輪を指さして答えました。


「その首輪は……重要な容疑者に付けられる物ですね。それを外すには付けた者にしか出来なかったはずです」


「はい。サリサさんと言う方に付けられました」


 私が答えるとシャーリーさんが話しかけてきました。


「さっき、シアちゃんを連れて行った人ね。アリサと一文字違いの女性よ」


「その説明の仕方は何ですか? 名前が似ていることは分かりましたが普通に教えなさい」


「なんとなくアリサと同じで真面目そうだった気がするわ」


 黙って聞いていたトランさんが、シャーリーさんの言葉に反論しました。

 

「あいつは、命令を実行するだけのつまらない奴だ。アリサの方が意志を強く感じるぞ」


 トランさんは、繋がったことでアリサさんの感情を感じることができているのだと思います。

 

「そうなのね。それにしても強くて可愛い子に弁護されている気分はどう?」


「知りません。それよりもまずはそのサリサと言う人物を何とかしないといけませんね」


 私は、この首輪がある限りはサリサさんに逆らえません。

 連れていかれたシアの事も心配ですが、結構な時間が経ったと思うのですが、どうなったのでしょうか?

 シアには大人しく待つように言われていますが、トランさんが味方になったのですから、可能であれば行動が起こしたいと思うのです。

 なんとかサリサさんに言うことを聞かせて首輪さえ外す事ができれば……と、考えていると扉の向こうの通路の方がなにやら騒がしい気がします?

 いつの間にかトランさんが私達の前に出て扉の向こうを警戒しています。


「トラン君、どうかしたのですか?」


「俺と同じ個体がこちらに近づいて来ているんだが、なんとなく強力な奴な感じがするぞ」


 そんなことを聞いたので、私たちはトランさんの背後にいる事にしたのですが、人の叫び声が聞こえたと思うと、正面の扉が切り刻まれていきます。

 そして、壊された扉の向こうに立っていたのは僅かに険しい雰囲気をしているシアです。

 姿を見たことで安心をしたのですが、改めてその姿を見るとシアは何をしてきたのでしょうか?

 魔物がいる訳でもないのにシアの体には、沢山の血が付いています。

 シアの足元には見張りの方と思われる人物が倒れているのですが、動く気配がありません。

 先ほどの叫び声もありますので、シアが殺してしまったと考えるのが妥当だと思います。

 まさか、シアが人を殺してしまう行動に出るとは思っていませんでした。

 連れていかれた先で、何かあったと考えるべきなのですが……。


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