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Eighth Doll  作者: セリカ
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ダメでした


「どうなったのですか?」


 薄めに開けていた目を開いてシアに質問をしました。


「エルナの安全を優先する為に離脱しました」


 そのまま地面に着地すると残りの魔道人形が私達を取り囲みます。

 ですが、シアは気にもせずに突き進むと進路上の魔人形を蹴り飛ばすとそのまま走り出しています。

 そして、片方の手を背後に向けてスナップさせると地面からダンジョンで作り出していたような壁を次々に作り出していますが、その壁を破壊しながら追ってくる者がいます。

 その人物は、先ほどまでシアが相手をしていたトランさんです。

 ものすごい速度で追ってくるので、シアとの距離が縮まっていきます。

 私がいるので、シアが本来の速度で走れないのです。

 シアが諦めたのか、立ち止まると私を下ろして身構えます。


「途中で逃げるなんて面白くないと思わないか?」


 シアは相手の問いかけに対して、無言で攻撃を開始しました。

 今度は先ほどとは違い魔法を織り交ぜた攻撃をしています。

 相手はシアの魔法攻撃を避けながらシアに一撃を入れようとしていますが、シアは確実に躱しています。

 

「拳の威力を最大にしたら、全て回避行動に出るのは良いとしてまったく当たらん。一撃でも当たれば、破壊する自信はあるのにな。それにしても複数の魔法まで扱えるなんて、そんな属性は聞いたことが無い。俺も力以外に攻撃魔法が使いたいな」


 2人の戦いを見守っていると背後から首を掴まれました!?

 首を掴まれながらも相手の方に顔を向けると先ほどシアに吹き飛ばされたサリサさんです!

 表情は変わりませんが、服装がボロボロになっています。


「抵抗はしないでください。このまま貴女の首をへし折ることは可能です。そこの個体も戦闘を止めてください」


 私が人質に取られたことで、シアが距離を取って動きを止めてしまいました。

 相手のトランさんもつまらなそうな顔をして戦闘を中断してしまいました。

 

「警告をします。エルナに致命的な危害を加えた場合、シックスティー フィフスと関わりのある全ての存在を私の力が及ぶ限り必ず排除します」 


 滅多に表情を変えないシアがサリサさんを睨みつけて話しかけています。

 こんな時ですが、目付きが鋭くなったシアもカッコいいと思ってしまいました。


「これ以上抵抗しなければ、何も致しません」


「ならば、エルナの首から手を放してください。エルナが死に直面している以上は信用ができません」


「貴方は護衛型なのでしょうか? 登録者の安全を最優先にするのですから……」


「手を放せと言っているのが聞こえませんか?」

 

 シアがそう告げると私とサリサさんの周りに小さな風の槍が複数発生しました。

 この魔法を使う時のシアは、最小の数で作り出すはずなのにすごい数になっています。

 以前のコレットちゃんが作り出していた時との違いは全てが細長い針のような形状なのです。

 このまま刺されたら、全身が串刺しになってしまう姿が想像できます。


「分かりました。これなら宜しいですか?」


 すると私の片腕を曲げて背後で持ち上げると首から手を放してくれました。

 正直、少しでも力を入れられていたら、本当に折られてしまうと思いました。

 私が苦しがっている姿から解放されると風の魔法が解除されたのか消えてしまいました。


「あれだけの数を作り出して正確に私だけに狙いを付けていました。しかもかなりの魔力を感じました。あれを受けていたら耐えられる自信はありません」

 

「先ほどの打撃時にシックスティー フィフスの基本強度は理解しました。特殊能力でも持っていなければ私の敵ではありません」


 シアの口からサリサさんは相手にならないとの言葉が出ました。

 そんなことを相手にハッキリと言ってしまうなんて……シアは正直なので仕方がありません。


「私は戦闘型ではありません。貴方達のようなタイプには直接戦闘では勝てません」


「それで、これでお終いなのか?」


 トランさんがサリサさんに話しかけています。

 ですが、その表情はつまらなさそうです。


「損害は出ましたが、予定の範囲内です」


「じゃ、ここからは俺の好きにさせてもらうぞ!」


 そう宣言するとシアに再び襲い掛かっています!

 シアは私が人質に取られている為に相手の攻撃を躱すことに徹しています。

 私を捕らえているサリサさんは、止めるわけでもなく何故か傍観をしています。


「おいおい、近接格闘戦だけなら自信があるのにこうも当たらないと自信を無くすな」


 シアに話しかけているようですが、当然のように無視をしつつ最小限の動きで全て回避をしています。


「おい! そこの登録者!」


 もしかして、私の事ですか?

 この場には他にそれらしき人がいないので私だと思うのですが、なんなのでしょうか?

 不思議に思っていると続けて言葉が投げかけられました。


「こいつに戦えと命じろ!」


 そんなことを言われても私はシアに命令などしたくはありません。

 それに私が捕まっているのですから、シアの本気が出さないかもしれません。

 私が悩んでいるとサリサさんが声を掛けてきました。


「実力が知りたいのでトラン様と戦うように命じてください。ただしお互いに完全破壊まではしないように制限は掛けてください」


 よくわからないのですが、シアの実力が知りたいようです。

 相手が了承しているのでしたら、シアにお願いをしたいと思います。

 それにシアがトランさんを倒して即座にサリサさんから私を奪い返せば逃げるチャンスも訪れます。

 私の考えが通じたのか、シアが私の目を見た後に攻撃に転じています。

 相手の攻撃を躱しつつ拳や蹴りを当てていますが、相手はまったく動じていません。

 シアの一撃は大型の魔物を吹き飛ばす威力があるのにそれに耐えられているのです。

 あの方は体の方も丈夫なようです。

 しばらくそんな感じで交戦をしていたのですが、シアが初めて相手の打撃を両腕で受け止めると、その反動で大きく距離を取りました。

 そして、シアが相手に対して宣言をしました。


「ナンバー『フィフティー セブンス』の解析が終了しました。これより行動不能に追い込みます」


「なんだそれは? 今までは俺の情報収集をしていたって訳か?」


「答える必要はありません。知りたければ自分で調べてください」


 そう答えると同時に今度はシアの方から攻撃を仕掛けています。

 そして、宣言通り相手を行動不能に追い込んでしまいました。

 先ほどまでは、打撃をメインに戦っていたのですが、フィスさんのように相手を切り裂く攻撃に切り替えたのです。

 戦いは一瞬で終わりました。

 迎え撃とうとしたトランさんが繰り出した拳を躱し伸びた腕を切断すると続けざまに殴りかかってきた左腕も切断してしまったのです。

 両腕を失ったところに腹部に強烈な一撃を入れると吹き飛ばされはしませんでしたが、なんとか踏みとどまっています。

 そのまま至近距離まで間合いを詰めると、相手にトドメとばかりに強力な拳の連打を入れると最後に蹴り飛ばして私とサリサさんの前に転がってきました。


「こいつめちゃくちゃ強いぞ! 最後の攻撃で防御に回した魔力の殆どを削られたぞ!」


 トランさんがシアが強いと言っていると、そのシアがこちらに歩いてきます。

 その様子を見ていたサリサさんが今度は私の頭に片手で持てる筒状のような物を当てています。


「登録者の安全を確保したいのであれば、それ以上は近づかないでください。止まればこちらも銃を下げます」


 その言葉を聞いてシアが立ち止まりました。

 確か銃と呼ばれる遠くの標的を攻撃する武器のはずです。

 個人で遠距離攻撃ができる便利な武器なのですが、多少は魔力が必要です。

 自身の魔力を籠めることで攻撃に使えるのですが、威力が個人の魔力の素質で変わってきます。

 しかも古代人の血を引いていないと使えない制限もあったはずです。

 お父様も所持をしていましたが、魔物に対しては威力が乏しいので使えないと言っていました。

 威力に関しては魔法を使うか魔力を乗せた武器で攻撃した方が良いからなのです。

 使いどころとしては、今のように人に対して使うのが効果的です。

 もしくは、サリサさんが私に向けているのは実弾のタイプかもしれません。

 弾の制限がある代わりに魔力を籠める必要ありません。

 しかし、何らかの制限が掛けられている為に誰でも使えないようになっていたはずです。

 元々は古代人の遺産の一つなのですが、一般の人達には使えない仕組みになっていると聞いています。

 何にしてもこのまま撃たれれば私が死んでしまうのは確実です。

 シアもそれが分かっているので、立ち止まったのかと思います。

 シアが立ち止まったことで私の頭からは銃を下ろしてくれました。

 安堵はしましたが、その手にはまだ銃が握られているので安心はできません。

 そして、シアの瞳はサリサさんを険しい目で見ています。


「近接戦闘でトラン様が負けるとは予想外でした。個の戦闘能力だけでもフィス様やツヴァイ様と変わらないと判断します。しかもこちらが提示した通りに相手の戦闘力を奪うまでの計算ができています」


 サリサさんが感心をしているとシアが敵対した相手に珍しく答えています。


「ナンバー、フィフティー セブンスの最大の打撃力は私よりも上ですが、当たらなければ意味はありません。魔力を極端に拳と脚部に回すことによって通常よりも更に強力な打撃力を得る代わりに身体防御力に回している魔力が半減してしまう欠点もあります」


「こいつ、俺が気にしている欠点を正確に見抜いているじゃねーかー。目覚めて間もなくて経験値の少ない個体と聞いていたのにツヴァイやフィスと変わらないじゃねぇか!」


 転がったままのトランさんが怒っています。

 今の言葉からすると、シアの戦闘経験が少ないので勝てると思っていたようです。

 ですが、シアは暇さえあれば魔物を片っ端から駆逐しています。

 唯一負けたのはフィスさんだけです。

 ですが、負けてしまいましたが良い所までは善戦しています。

 フィスさんも言っていましたが、シアに足りないのは戦闘での経験値だけなのですが、シアは相手の戦い方を見ているだけでも学習してしまいます。

 その点を踏まえるとフィスさんの動きは前回の地下迷宮でほぼ把握しているはずなので、同じ動きができると思っています。

 魔法に関しても一度でも見れば覚えてしまいます。

 ただ、開放するには蓄えている魔核の力が必要なだけです。

 私の為になるか、自身の戦闘能力強化に繋がる魔法しか覚えませんが、最低限の魔法だけでシアは十分に強いのです。


「驚きました。固有の人格が構成されていないことから目覚めてそれ程時間は経過していないと判断します。しかし、戦闘能力といい状況判断能力は経験値が高いようにも判断できます」


 そう言葉にすると私の顎を掴んで自分の方に向かせて質問をしてきました。


「貴女にお聞きします。あの個体との経緯を教えてください」


「シアの事を個体呼ばわりする方には何も教えることはありません」


 シアはシアです!

 シアの事を個体とか数字呼びすることは私は認めません!


「では、ナンバーを教えてください」


「知りません」


 知っていますが、私には不要なので記憶にありません。


「そうですか。では何と呼べば宜しいのでしょうか?」


 意外なことに名前を聞いてきました?

 次は強引に聞き出してくると思ったのですが、乱暴なことは好まないのか、シアに対して警戒しつつ配慮をしているのかもしれません。


「シアと呼んでもらえるのでしたら、少しは答えるかもしれません」


「わかりました。シア様との経緯を教えてください」


 えっと……なぜこの方は、シアを様付けで呼んでいるのですか?

 意味が分かりません?


「その前に教えて欲しいのですが、どうしてシアの事をシア様と呼んでいるのですか?」


「私は、自身よりも上位の位置に属する存在に対しては敬意を払う考えを持っています。例え敵対していても同じ数字持ちに対しては自分よりも能力が優っている個体に対しても同様です」


 要するにシアが自分よりも強いからと言う訳なのですね?

 よくわからないのですが、変わった考えをしています。

 それはともかく私に言われた通りに名前で呼んでいるのですから、私も約束を守りたいと思います。


「シアとは落ちてしまった地下迷宮で、偶然に出会って助けてもらったのです」


「目覚めている状態で、遭遇したとなると貴女は最初の登録者ではないのですね。それでしたら、経験値が高いことが理解ができます」


「どうしてそう思ったのかは知りませんが、私はシアの最初の人ですよ? シアと名前を付けたのも私です」


 答える必要はないと思ったのですが、シアの最初の相手は私です。

 私がシアの最初の人と言うのがとても重要だからです。

 私とシアはお互いに初めてどうしの運命的な出会いをしたと考えると私の気分がとても良いのです。

 少し前にシアと初めてのキスもしたし、シアからの告白も聞けましたので次の段階になっても良いと思っているのですが……それ以上の進展はしていません。

 シアにキスをしてもらう為にたくさん飲んで酔おうとしても……「これ以上のアルコールの摂取はエルナの体調に良くないのでいけません」と、警告をしてくるようになってしまったのです。

 私の為に警告しているのですから、聞かないわけにはいきません。

 私の考えを見通しているのか分かりませんが、シアからお預けをされています。

 私との同調率が高いとのシアの告白?を聞けたのですが、シアから私に手を出して来ることもありません。

 フィスさんと違ってシアに求められたら……私は身を任せたいのですが、私が眠るまで手を繋いでいる状態から進展しないのです。

 私としては、シアがもっと積極的になってくれたらといつも思っているのですが、まだそこまでの想いが伝わっていないようなのです。

 きっと私の心を理解してくれたら、次の段階に登れるはずなのです。

 戦闘に関しては理解力が早いのですが、恋人関係に関してはシアは奥手のようなのです。

 でも、そんな所もシアの良い所なので、私はいつも待っている状態なのです。


「誰かの手で目覚めさせた訳でもないのに自立行動をしていたのですか? そのような話は聞いたことがありません」


「でも、いま聞きましたよね?」


 私が思ったことを口にすると黙ってしまいました。

 本来は誰かが目覚めさせないと眠ったままなのかもしれません。

 確かシアは、空から落ちてきた衝撃で目覚めたと言っていたと思います。

 そのことを告げようとした時に私の首に何かが嵌められました?


「あの……これは何なのでしょうか?」

 

 私が質問をすると同じ物を少し離れた地面に投げつけて、私の知らない言語の言葉を呟くとそれが爆発しました!?

 

「その首輪は、私の魔力に反応します。起爆コードを魔力に乗せて流せば貴女の首に付いている物も同じことになります。爆破以外にも付けた者に戒めを与えることができます。現時点では、シア様を拘束する手段はありません。代わりにその登録者を人質に取ればよいのです。御理解ができましたら素直に従ってください」


 要するに私はシアに対する人質になってしまったようです。

 大きな爆発ではありませんでしたが、私が死んでしまうには十分な威力です。

 他にも何かできるようですが、あまり考えたくありません。


「ひとまず場所を変えますので、付いてきてください」


 そう告げると私の腕を放して倒れているトランさんの両腕を回収すると、以前にシアがフィスさんに左腕を斬り落とされた時と同じように繋げています。

 サリサさんが私の傍を離れるとシアが近くに来ました。

 どうするのかを聞かれましたが、現状は従うしかありません。

 しばらくすると、どこかに待機でもしていた馬車に乗せられました。

 こんなことでしたら、エリックさん達との話が終わったら、さっさと町を出ていれば良かったのかと思います。

 欲をかいて私物を取りに戻ったのは失敗でした。

 お偉いさんと最小限の人達だけでしたら、シアがいれば何とかなると思っていたのです。

 この後はどうなってしまうのでしょうか?


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