可愛い騎士様
しばらくして目が覚めると、シアに膝枕をしてもらっている状態でした。
よく眠れたのか、体調がとても良くなったと思います。
下に布を何枚か敷いてから眠ったので、体が痛いなんてこともありません。
まだ数日しか経っていませんが、久しぶりに気持ちの良い目覚めです。
美少女の膝枕で眠れるなんてとても幸せです。
顔をシアの方に向けると、眠っているのか目を閉じていました。
シアも眠っているとしたら、これはチャンスです!
私がそっと起き上がると、残念ながら目を開けてしまいました。
そのまま眠っているのでしたら、その可愛らしい唇にキスがしたかったのですが、とても残念です。
起きたのですから、まずは挨拶を致しましょう!
「シア、おはようございます! もしかして、私が起きるまでずっとそのままの姿勢だったのですか?」
「そうです。エルナが望んだので、そのまま待機をしていました」
私が望んだからなんて言われてしまったら、次はもっとイケナイ事を望んでしまいそうです。
早く私の色に染めたいと、心の動揺が抑えきれません。
まずは、しおらしくシアの美味しそうな膝の心配をして今晩も堪能したいと思います。
「ごめんなさいね……どのくらいの時間を眠っていたのか分かりませんが、膝は痛くなかったですか?」
「問題は有りません。時間の方は9時間ほど眠っていました。ところで痛みとは何でしょうか?」
「私はそんなにも眠っていたのですか!? それと痛みを知らないなんて、怪我をしたりしたことは無いのですか?」
いくら安心ができたとはいえ、そんなにも眠っていたなんて初めてのことです。
しかも、私の為にそんなに長い時間も体勢を維持してくれたなんてとても感激です!
ですが、痛みを知らないなんて……もしかして不感症なのでしょうか?
これからの計画を考えると感度は良い方が望ましいのです。
ですが……「シアは不感症なのですか?」などと失礼な質問はできません。
私が悩んでいるとシアの方から答えてくれました。
「怪我と言うのは最初にエルナに出会った時の症状かと思いますが、私には経験がありません」
不感症ではなく、怪我をした経験が無かったようです。
きっと怪我をしたことが無いほど強いのですね!
ですから、私の頭の重みなど気にならなかったのかと思います。
それにしてもシアの膝はとても柔らかくて気持ちが良かったのです。
その証拠にシアの膝に私の涎が付いてしまいましたが……本人はまったく気にした様子も見られませんので、あれは私のシアに対するマーキングと思っておきましょう!
それから少しだけ他愛のない話をしてから、シアに水を出してもらって顔を洗いました。
私としては地下水の池の水でも良かったのですが、顔を洗おうかと思った時にすぐに水の塊を手の平に出してくれたので、素直に使わせてもらったのです。
私と心が繋がったので、私の行動を察してくれたのでしょうか?
そうでしたら、とても気が利くなんて私の恋人は最高です!
それから、シアに食料を出してもらって少しだけお腹を満たしてから進むことにしました。
通路を塞いでいた壁をどうするのかと見ているとシアが素手で壁を殴りつけると壁が破壊されました!?
塞いだ時は地面から壁が競り上がってきたのですが、出る時は過激です。
こんなに大きな音がすると、魔物が近くにいたら気付かれてしまうと思います。
確かあらかた狩ってしまったと言っていましたので、大丈夫かと信じます。
「進みます。エルナは早く地上に出たいのですよね?」
「できれば早く出たいのですが……シアの話ですとまだ何日か掛かるのですよね?」
「最短で地上に戻るのでしたら、エルナと出会った場所の先に向かう方が早いです」
「私と出会った場所ですか? ですが、あの先は行き止まりになっているので、空でも飛べないと無理ですよ?」
「所々に樹木が生えていますので、それを足場にするのです。いつもはあそこから地上に出ていました」
そんなことができるのですか!?
シアの身体能力を考えれば可能かと思いますが、私には無理です。
そうなのでしたら、私がいなければ、あの行き止まりから自分だけは地上に出られたのですね。
あの裂け目の下の方は何も見えない底無しのような感じでしたから、もしも途中に生えている樹木に飛び移るのに失敗でもしたら、私は助からないと思います。
それ以前に飛び移るなんて行為は私には無理です。
「シアだけでしたら、可能かも知れませんが……私には樹木に飛び移って移動をするのは無理なので諦めます。申し訳ないのですが、このまま進んで出口を目指したいと思いますので、お願いできますか?」
「わかりました。このまま進みますので付いて来て下さい。入り口に向かっていますので、魔物が復活しているかも知れませんから注意だけはして下さい」
「済みませんが宜しくお願いしますね。私も少しぐらいでしたら、剣は扱えますので自分の身はなんとか自衛をしてみます」
「大丈夫です。魔物の相手は私がしますので、身を守ることだけに専念して下さい」
「ありがとうございます! シアは私を守ってくれる騎士様ですね! 可愛い少女が私の騎士様なのはとても理想的ですよ!」
「騎士とは何か知りません。エルナは私の『登録者』なので、私が守護すべき存在です。私の力の及ぶ限りは必ず守ります」
「私を必ず守るだなんて……まるで愛の告白を受けている気分です! ところで、シアに聞きたいのですが『登録者』とは何なのでしょうか?」
どこかの受付の登録とは違うと思いますが、シアの特別になった人を登録者と呼ぶのでしょうか?
「『登録者』は『登録者』です。それ以上の説明はできません」
「良く分かりませんが、私がシアの特別になったと思っておきますね!」
「それで良いかと思います。ではそろそろ進みます」
シアの特別で合っているみたいです!
認め合うのは良いことですよね?
少なくとも私はそう解釈させてもらいました。
「はい! お願いしますね!」
シアの突然の愛の告白のお蔭で私の気分はとても良いです!
まだしばらくは地上に出れませんが、シアと一緒でしたら、何も心配は無いと思います。
本来でしたら、ここは危険な洞窟かと思います。
壁が僅かに発光をしているのでまったくの暗闇ではありませんが、シアが作り出している頭上の僅かな明かりが更に2人を照らしているので、私達だけの空間を演出しているみたいです。
質問したこと以外には口数の少ないシアですが、2人で静かに歩くのも悪くありません。
黙々と進んで行きますがこのまま魔物が出なければ、暗闇の中を薄っすらと光る壁と頭上の明かりで2人っきりで進むのは良い雰囲気です!
危険な場所でなければ、私としてはずっと歩いていたい気分です!