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Eighth Doll  作者: セリカ
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懐かしき我が家へ


「追撃はありませんが、このまま姿を消したまま航行したいと思います」


 取り敢えずは逃げるのには成功したようです。

 最後に受けた攻撃に耐えられるのか心配でしたが、私とシアの絆の強さが高かったので無事でなによりです。

 それどころかあんな攻撃も防げるなんて、私とシアの愛の強さを改めて実感しました。

 安心したところで、椅子の固定を外してもらいシアの隣に来ています。

 ご苦労様でしたとシアに労いの言葉を掛けると「エルナの為でしたら当然です」と、答えてくれました。

 片手を船を動かす為の宝玉に触れているシアの背後に回って抱き着いていると室内の扉が開きました。

 そちらを見るとフィスさんが立っています。

 なんとなく表情が悲しそうです?

 そして、私とシアの前に来ると話しかけてきました。


「あの状況であいつらから逃げ切ったのはいいとして、最後のあれはなんだよ!!!」


 質問をされたシアは何のことかわからないと言った感じの表情をしています。

 私にも何のことか分かりません?


「あれとはなんですか?」


 シアにも理解ができなかったようで、フィスさんに聞いています。


「僕の船の一部を切り離して自爆させるとか酷過ぎます! これまで船体のパージなんてしたことが無かったのに僕は泣くよ!」


 パージと言うのは、船の一部の切り離すことだったのですね?

 あの時、激しい光が収まると同時にシアが「左舷甲板を含む船体をパージ。射出目標を『セカンド・エンジェル』に定めます」と言っていました。

 その後に直ぐに「進路上に巡航空母が接近。予定を変更して即時爆破に切り替えます」と言い直すと背後で大きな爆発音がしたのです。

 あれは、切り離したフィスさんの船の一部を自爆させたのですね?


「私は最悪の場合は船を捨てるように提示しました。フィスは同意したはずです」


「確かに同意はしました……だけど、あんな完璧に防御ができているのなら、必要なかっただろ!」


「あのままでは、再起動した『セカンド・エンジェル』に追撃される可能性がありました。そして、この船には攻撃能力がありません。幸いなことにあの部分には魔道船の実弾が積んでありましたので、ぶつけて自爆させることで目くらましと『セカンド・エンジェル』に少しでもダメージを与えた方が良いと判断したのです」


「物資運搬の為に積まれたままの実弾が仇になったよ! それにあいつの船は他の船に比べて装甲が厚いから、魔力防御のシールドが解除されていても半端な攻撃は耐えてしまうんだよ!」


「あの船の個体はフィスを船ごと破壊するつもりで船の殆どの魔力をあの一撃に集めていました。あのタイミングなら、パージした部位の爆破エネルギーと積んでいる実弾の誘爆で船体の一部の破壊もしくは多大なる損害を与えられたはずです」


「それができているのなら、仕方がないか……あの馬鹿と痛み分けなら僕も少しは気分が晴れるよ」


 怒り気味のフィスさんの気分が少し落ち着いたようです。

 ですが、シアの次の言葉で元に戻ってしまいました。


「残念なことに無傷の巡航空母が予定進路上に現れたので、砲撃される前に自爆させました。咄嗟に『セカンド・エンジェル』を守る形でシールドと足りない範囲をガーディアンで埋めたようですが、あの巡航空母の防御能力では全てをカバーできないと判断しますが、『セカンド・エンジェル』は装甲に複数の傷が付いた程度にとどまったと思われます。本来の目的は達成ができませんでしたが、巡航空母の戦闘能力低下と爆破の余波による空域障害の隙に戦線離脱に成功していますので、あちらの索敵能力ではこちらの船をロストしているはずです」


「はぁ!? じゃ、僕の船だけ一部を失ったことになるじゃん! サリサの船なんてどうでもいいし、あいつらを撒いただけとか僕は面白くないよ!」


「現状ではあれが最善の方法だと判断しました。船を捨てるよりは良いかと考えます」


「そうなんだけど……僕は納得ができないよ!」


「前回の戦いで、戦闘能力を失ってしまったことが原因です。諦めてください」


 お話が深刻そうだったので、私はシアに抱き着くのを止めていました。

 途中からフィスさんがいつものようにシアの両肩を掴んで質問攻めをしていたのですが、シアの最後の言葉でそのまま膝を落として項垂れています。


「うっ、うっぅぅぅぅ……僕の半身とも言える船の一部が永遠に失われてしまいました……確かに覚悟はしていましたが、あんな完璧な防御をしているのなら甲板の傷ぐらいで済むと思ったのに……」


 いつも元気な?フィスさんが落ち込んでいます。

 なんだか少し可哀そうになってきました。

 考えてみれば私の為に取った行動でもあります。

 

「なんと言えばいいのか分かりませんが、元気を出してください」


 フィスさんに声を掛けると両肩を掴んでいるシアから私の胸に飛び込んできて泣いています。

 その姿を見ていると優しくしてあげたくなったので、私もフィスさんの背中に手を回して抱きしめてあげました。

 これぐらいで、フィスさんの心が落ち着くのでしたら良いと思ったからです。

 ですが……しばらくすると私の胸に顔を埋めて泣いていたはずなのですが、やたらと頭を動かしています。

 まるで、服の上から私の前の感触でも堪能しているようです。

 そして、背中に回していた両腕はいつの間にか私のお尻を撫でまわしています?

 可哀そうだと思っていたのですが、いつの間にかいつものフィスさんに戻っています。

 私が気付いたと思った時には、器用に口で上着のボタンをはずして下着越しの状態で顔を埋めています!?

 フィスさんを急いで引き離そうとしたのですが、フィスさんの背中に回していた両手首に何か冷たい物がまとわりついているのか手が離せないのです!?

 私が怒る前にフィスさんが顔を上げると話しかけてきました。

 

「エルナ様が傷ついた僕を受け入れて慰めてくれるなんて、僕はいまとても感動をしています!」


 そう言われて私の怒る気が少しそれてしまいました。

 続けて畳みかけるようにフィスさんが発言をしました。


「僕の半身とも言える『フィフス・エンジェル』の一部を失ったことはとても悲しいのですが、その悲しみをエルナ様が埋めてくれるのでしたら、僕は立ち直れそうです!」


 シアの判断ですが、シアは私の為に最善の行動をしたのです。

 なので、私の為に自身の体の一部を犠牲にしたと思うと申し訳なく思ってしまいます。

 私が迷っているといつの間にか私は押し倒されていて最初の時に襲われた時と同じ水のクッションが私の背中にあります。

 まさかシアやコレットちゃんが見ている状態なのに私を襲う気なのですか!?

 シアは私の方を見ていますが、どうしていいのか判断を決めかねているようです。

 きっと私が本気で嫌がっていないと感じているのとフィスさんに対して申し訳ないと考えているからだと思います。

 私とシアは繋がっているようなのですから、私の迷いもシアに伝わっているのだと思います。


「ここまでしたのにエルナ様が抵抗しないなんて、僕を受け入れる気になってくれたのですね! それでしたら、エルナ様の気が変わらないうちに既成事実を作ってしまいましょう!」


 そう宣言するとお尻に回していた手がスカートを捲り上げて下着に手を伸ばしています!?

 いくらなんでもそこまでは許しません!

 

「いい加減にしてください! いくらなんでもそれ以上は怒りますよ!」


 私が怒ったのと同時にフィスさんの頭部にシアの拳が付きつけられています。


「それ以上はエルナが認めていません」


「あーあー、ここまでが限界か。わかったから、思いっきり魔力の籠った拳を下げてくれないかな?」


「エルナを解放するのが先です」


「わかったよ。こんなことなら、もうちょっと我慢してエルナ様と抱き合っていれば良かったなー」


 私の手を自由にすると、その手を掴んで立ち上がらせてくれました。


「もう致しませんので、今回は許してください」


 フィスさんが素直になって私に頭を下げて謝罪をしてくれました。


「今回だけですよ?」


「次はもっとエルナ様に信頼されてから、次の段階に移りたいと思います」


 今回は私に負い目があったので、許しただけです。

 次はありませんからね?


「多分ですが、次は無いと思いますよ?」


「そんな! でも、きっとその気にさせて見せます!」


 どうも全然懲りていないようです。

 シアがいる限りは私の心が揺らぐことなどありません。


「取り敢えずは、今夜から僕もエルナ様の横で添い寝をすることを許可してください。絶対に変なことはしないと誓いますのでお願いします!」


「そのぐらいでしたら……」


「やったー!!! ようやく毎日添い寝をする権利を手に入れました! 失った物は大きかったのですが、大きな前進ができました!」


 つい許してしまいました。

 フィスさんの大事な物が失われたと思うと断る気になれなかったのです。

 しかし、こんな状況なのに自身の欲望を優先するなんてある意味ですごい方です。


「それにしても『セカンド・エンジェル』の集約砲を完全に防ぐなんて、お前は本当にすごいよ」


 私からの譲歩を引き出すのに成功すると改めてシアに話しかけています。

 いま出てきた集約砲とは何なのでしょうか?

 きっと話を聞いていれば話題に出てくるかコレットちゃんが質問するはずなのですから、このまま二人の会話を聞くことにします。


「私とエルナの同調率を考えれば最悪ガーディアンを消耗する程度で防げると確信をしていました」


「大した自信だと言いたいんだけど、実際に完全に防いでいるから認めるよ。僕の最初の登録者であるルナティア様の場合でもここまで完全には防げるか自信がないな。恐らくだけど、ガーディアンは消耗するかと思うよ」


「エルナの私に対する信頼度が予想基準値を超えていることから、現在目覚めている経験値の高い他の個体と互角以上に渡り合えると判断しています。私がエルナの思考を完全に理解すれば私の完成度が上がるはずです」


 シアには私の愛の深さが感じ取れると言うか測れるようです。

 要するに私のシアに対する愛情度は最大に近いと言うことなのですよね?

 だとすれば私のシアに対する愛はほぼ完ぺきと言うことで良いのですよね?

 そして、シアが私の事を深く理解すると完璧になると言うことですよね?

 とても良いことを聞きました!

 シアを私の思考に染めることができれば、私とシアの愛の絆は揺るがないものになるはずです。

 未来のことを考えると私は幸せいっぱいになりそうです!


「エルナ様に聞きたいのですが、シアの事をどのように考えているのですか?」


 私が幸せに酔っているとフィスさんが話しかけてきました。

 いまの会話の流れでしたら、分かると思うのですが改めて言葉にしたいと思います。


「勿論、シアは私の最愛の人ですよ? シアの為でしたら、私はこの身を捧げる覚悟もあります。シアを失うぐらいでしたら、私は自分の全てを失っても構わないとも考えています」


 私の言葉を聞いてフィスさんはとても驚いています?

 コレットちゃんは「やたらと部屋に温度があがったのー」などと呟きながら、可愛い手で顔を煽いでいます。

 特に暑くなったとは思わないのですが、コレットちゃんのいる場所だけ温度でも上がっているのでしょうか?


「そこまで思われているなんて、すごく羨ましいよ。僕達ユニットにそれだけの想いを持ってくれる登録者ななんて滅多にいないよ。更にシアが目覚めたばかりで最初の登録者だから、余計に同調率が高いんだな」


 フィスさんは納得したようです。

 ですが、それが普通なのではないのですか?


「私もお聞きしますが、他の方達は違うのですか?」


「エルナ様ほど僕たちを想ってくれる登録者は滅多にいません。どこまで行っても僕たちは道具に過ぎません。ましてや自分よりも優先する考えを持つ者は見たことも聞いたこともありません。過去に近い同調率を持つ者もいましたがあいつはとにかく相手を殺すことで登録者と同調率が高い奴もいましたが、それだって稀です」


「そうでしたか。他の方達は分かりませんが、私はシアの事を愛しているだけです。フィスさんとレンスリット様はどうなのですか?」


 仲が悪そうには見えませんが、同調率が低いと言われていましたよね?


「レンスリット様の事を嫌っていたりはしません。むしろ僕に懐いて従順な性格になってしまいました。違いがあるとすれば思考の違いです。僕が求めているのはエルナ様のような方です。それ以外にもレンスリット様には致命的に問題があるのです」


「フィスさんの嗜好については理解できました。レンスリット様の問題点とはなんなのですか?」


「残念ながら、それは言えないのです。その一点がツヴァイに負ける僕にとっての致命的な件になっているのです。奴の登録者であるラウル様は生粋な軍人です。奴の最初の登録者も似たような人物だったので登録者が変わっても余程おかしな奴にならない限りは奴の同調率は大体高いのです。それ以前に良識のある軍人しか選ばないのです」


 赤毛の方の話題が出ましたが、私には興味はありません。

 知りたいのはレンスリット様の事だけです。

 事情を聞かせてもらえないのでしたら、他の事を聞きたいと思います。


「お話はわかりました。それで今後はどうするのですか?」


 こうなってしまっては、フィスさんは王国から追われる立場になってしまうと思うのです。

 フィスさん自体の家出が原因なのですが、私もその理由に関わっています。

 なので、今後の行動はしっかりと聞いておきたいのです。


「勿論、エルナ様と親密な関係になるまで御一緒したいと思っています!」


 私にはその予定は無いのですが、フィスさんはどこまでもプラス思考のようです。

 行先をどうするのか考えたところで、コレットちゃんが当初の予定通りにこのまま古代都市でもあり私とシアのお家である『アズラエルガード』に向かいたいと提案してきました。

 それを聞いていたシアは「都市の地下ドックは空なので、この船の停泊は可能」と答えています。

 ドックとは何なのでしょうか?

 絶対にコレットちゃんが質問をすると思っていたのに何故か納得をしていました。

 そうなると、この中で理解していないのは私だけみたいでしたので、シアに聞くことにしました。

 昔の古代都市にある港のことでした。

 それでしたら、普通に港と言ってほしかったのですが、私が勉強をすれば良いだけなので気にしないことにしました。

 でも勉強嫌いな私が古代人の書物を読んだりすると一瞬で眠ってしまいそうなので無理と思います。

 私にはシアがいますので、シアに聞けば良いので古代人の勉強はしなくても良いと思います。

 コレットちゃんの提案にフィスさんも頷いたので、懐かしき我が家に戻ることにします。

 それにしても、こんな大きな船が停泊できる場所が地下にあったなんて知りませんでした。

 暇な時に散歩がてらに探索をしていたのですが、そこそこ広そうな場所があったのを見ただけです。

 しかも瓦礫や何か壊れた物が沢山転がっているので、あれらを全て排除してもフィスさんの船が降りられるとは思えませんでした。

 取り敢えず向かえば私が知らないだけで都市の地下の施設を見ることができそうですね!


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