シアの操船
シアの後を付いていくと見た事のない場所に出ました。
そこには何故かコレットちゃんがいます?
シアと私が来たことで、コレットちゃんが声を掛けてきました。
「エルナも来たのじゃな。それと、フィスはなんと?」
「このまま逃亡をする選択をしました。なので、私がこの船の操作を行います」
「確か行動アクセス権とやらを貰っておったな? それで、フィスの船なのに操作が可能なのか?」
「本来はそれだけでは無理です。あくまでもフィスが操作している時に許可された情報に介入ができる程度です。先ほど一時的に全権を譲渡されましたので、私の判断で全ての行動が可能になりました」
「じゃが、お主に操作ができるのか?」
「基本的な操作方法は初めから習得済みです。事前に船体情報の一部は得ていますので、読み取れなかった現状の状態と残りの情報を得るだけです。操作に問題はありません」
シアがそう告げると中央にある大きな綺麗な宝玉のような物に左手の手の平を翳すと輝きだしました。
同時に室内が明るくなり周りの壁が透き通ると外の景色が映し出されています!?
「これはまた王国の船にずいぶんと囲まれておるのー。しかも背後に浮いている真っ赤な色をした船が一番大きいのじゃが、あんな船もあったんじゃな」
コレットちゃんが言っている大型の船は地下迷宮でフィスさんと口論をしていた赤毛の方の船と思います。
お話の内容から、先ほどの攻撃はあの船からだとフィスさんは指摘しているのだと思います。
よく見れば、その船の隣にいる船も他の船とは違う形をしています。
フィスさんの船に似ていますが、あちらはフィスさんの船よりも一回り小さいのですが、砲台のような物が付いています。
「フィスが甲板に出たら前方の船に対して攻撃を開始します。正面の包囲網に穴を開けたら、全力でこの空域から離脱します」
「それで逃げ切れるのか?」
「この船自体には攻撃能力はありません。この船は本来は旗艦を守る戦闘可能な護衛艦を含めた艦隊と攻撃に特化したガーディアンで戦う編成なのです」
「古代の魔道船なのに攻撃能力の無い船もあるのじゃな。例え護衛艦とやらがおっても守りはどうするのじゃ?」
「その為に、旗艦防御型のガーディアンがあります。余程の相手が現れない限りは、艦隊全体を守っていたのです。現時点での最大搭載数は減らしていますが、そのガーディアンを後方に集中的に展開させれば後方のあの船の攻撃は防げると判断します。前方の魔道船の火力ではこの船の装甲を破壊するのは不可能ですが、回せるガーディアンで適度に配置しますので、残りの穴は船体に傷を付けたくなければフィス本人が防げば良いのです」
「フィスの奴をこき使ってやろうと言うのじゃな。それよりも、わらわは最初の攻撃の時にここから一部の可視化されておる部分から、外の様子を見ておったのじゃが、昼間と見間違う光の塊が衝撃と共に通過していったのじゃ。そこいらの魔道船の砲撃とは比べ物にならない威力にみえたのじゃ。わざと外したのだと思うのじゃが……この船の一部を掠めただけであれだけの衝撃だったのじゃから、あれをまともに喰らったらこの船でも無理なのではないのか?」
「特に警戒態勢にもなっていなかったので、直撃を受けていればかなりの損傷を受けた可能性が高いです。接近する艦隊に気付けていても操船の権限がフィスのままではガーディアンを消耗するか防御を貫かれると判断します。しかし、現在の主導権が私にあることで耐えられると判断します」
「ほぅ? それはなんでなのじゃ?」
「私とエルナの繋がりが高いからです」
シアの口から、私との繋がりが高いと言われました!
私の思いが通じているのだと思ってもいいのですよね?
キスに続いてシアの告白まで聞けるなんて、私はとても嬉しいです!
「よもや主の口からそんな言葉が聞けるとは意外だったのじゃ。ついにエルナの病気が侵食したのか……」
幸せな気分に浸っているのにコレットちゃんが失礼なことを言っています!
後でコレットちゃんにはお仕置きをしなければいけません!
「私たちは登録者次第で能力及び母船の性能を引き出すことが可能です。フィスの船である『フィフス・エンジェル』の全能力は先ほどフィスから全権限を一時的に受け継ぎましたので、いまの私ならこの状況からでも撤退が可能と確信をしています」
「お主はそんなこともできるのか? わらわが知りえた情報では、特殊な古代の魔道船は対となる存在にしか扱えないと文献に記載されておったはずじゃ」
「その書物を書いた者は知識が足りないのか情報不足と判断します」
「貴重な古代の書物と言われて高い買い物をしたのじゃが……ぼったくられたのじゃ!」
「完全な譲渡はできませんので、完全に間違ってはいません。しかし、自身の半身とも言える母艦の権限を一時的にとはいえ譲渡する事態には余程のことがないと判断しません。今回の場合は、フィスがエルナに固執しているからです」
「なるほどの……フィスの奴にそこまで思われとるのなら、第三恋人とやらにでもしてやれば良いのではないか?」
コレットちゃんが私の方を向いて発言しました。
その表情は完全に面白がっているような気がします。
「そうですね……フィスさんの姿がもう一回り幼い姿でしたら考えても良いと思います」
「ほほぉー、姿が幼ければ変態でも許容可能なのじゃな?」
少し問題がありますが、姿が幼ければ私は受け止める覚悟はあります。
むしろ大歓迎してしまいそうです。
可愛い少女もしくは幼女が私と過度なスキンシップをしたいと言うのは私の本来の理想でもあります。
そう考えるとフィスさんの問題は容姿だけになります。
「フィスが甲板に出ましたので、行動を開始します。旗艦防御型のガーディアンを更に追加して船体の全体に展開。全システム起動と同時に発進をしますので、二人は席について体を固定してください」
シアが色々と言った後に近くの椅子のような物に座っていたコレットちゃんが同じように座るように指示をしてくれましたので、座ることにしました。
椅子に座ると腰の辺りに勝手に何かが巻き付いたので、これで体の固定がされたのでしょうか?
隣のコレットちゃんも同じように座って正面の風景を見ています。
すると周りの景色が動き始めると前方にいる魔道船が次々と攻撃を受けています!?
他の画面のような物を見ればフィスさんが大きな水の塊を作り出して投擲しています。
前方の魔道船との距離が縮まると後方から激しい音がするのですが、背後からの攻撃と思いますが、大丈夫なのでしょうか!?
私が後ろを気にしたのに気付いたシアが右手を私の方に向けて動かしたと思うと私の正面に別の風景が映し出されました。
その光景は、背後の船からの砲撃なのですが、激しい光がこちらに撃ち出されているのですが、全てこの船に届く前に消滅しています!?
よく見ると先ほどこの船から出されたガーディアンと呼ばれる物が隊列を組んでそれぞれが光のような膜で繋がっています。
あれで防いでいるのでしょうか?
コレットちゃんも私が見ていた風景を見ていますのでとても驚いています。
シアに質問をしようとしたのですが、先にコレットちゃんがシアに話しかけています。
「なぜ後方の船からの攻撃がまったく当たらないのはどうしてなのじゃ!? どう見ても正確にこの船に砲撃が命中していると思うのじゃが、まるで魔法の盾に防がれておるように見えるのじゃ。魔道船にそんな大規模なシールドを張る魔法のような物があるのか?」
「通常の船にはありません。この船に搭載されている旗艦防御型のガーディアンを一定の間隔で配置してシールドを広げているだけです」
「そう言えば、この船から出されたガーディアンは船の周りにいるだけじゃの」
「あのガーディアンには攻撃能力が無い代わりに防御に特化しています。単体でもシールドを展開して攻撃を防ぐことができますが、隊列を組んで一定の間隔で繋がる事で母艦全体の防御も可能です」
私は見ているだけなのですが、背後からの船の砲撃は激しそうです。
しかし、その全てを防いでいるのですからすごいことなのですよね?
「背後の大型の船の攻撃を防げているとは中々のものじゃな」
「私達の母艦の性能は登録者との同調率に比例します。後方の大型戦艦『セカンド・エンジェル』の攻撃力は確かに強力です。攻撃がこちらのシールドに防がれているのは、私とエルナの同調率がナンバー・セカンドとその登録者との同調率よりも優っている為です。もしも同じ同調率だった場合は相殺されてあちらの船に蓄積してある魔力とこちらのガーディアンとの消耗戦になります」
シアの説明によるとあの赤毛の方達よりも私とシアの絆の方が上と言うことですよね?
比較するつもりは無いのですが、私とシアの繋がりが強いと思うと嬉しくなって頬が緩んでしまいそうです!
「魔道船にそんな仕組みがあったのじゃな」
「私達と対になっている母艦のみです。後期ナンバーの量産型の船は個体登録をすれば起動が可能な代わりに標準の性能しかありません」
「ふむ……じゃが、その標準の性能でも現在の魔道船よりは上なのじゃろ?」
「この船から得た情報によると現在の技術では建造は不可能と判断します。後期ナンバーの量産型の船は現時点では未発見の浮遊島から発見もしくは埋もれた施設から発掘するしかないと記録されています」
「量産型と言うことは、未だに古代の魔道船が探せば見つかるわけじゃな」
「未発見の無事な施設に残っていれば可能性はあると判断します」
シアの船が見つからなくても、その船を見つければ私達の船にすることが可能なようです。
気になるのは、後期ナンバーと言うのは何番からになるのでしょうか?
大きな船の隣にいるフィスさんの船に似ている船は量産型とフィスさんは言っていました。
確かシックスティーシリーズと言っていましたので、60番台は量産型と言うことになると思います。
「その量産型の船とやらはシアにも動かすことは可能なのか?」
「個体登録している個体が破壊されているか誰も登録していなければ可能です」
「すると敵対した相手を倒して奪うことも可能と言う訳じゃな」
「不可能ではありません。現在でも対となる母艦以外はその方法で奪っていると記録されています。奪うことが不可能なのは、私たちと対になる母艦のみです」
「なるほどのー。話は変わるのじゃが、先ほどから点滅しているそれは何なのじゃ? もっと質問がしたいのじゃが、先ほどから気になって仕方がないのじゃ」
私も気になっていましたが、コレットちゃんがシアに質問をしていたので黙って聞いていたのです。
「戦闘が開始されてから直ぐに巡航空母シックスティーフィフスから通信回線を開くように打診が来ているだけです」
「出なくても良いのか?」
「私には話すことがありません。あちらの話が聞きたければ音声のみ繋ぎますが、無言を貫いてください」
シアがそう言うと室内に買い物の帰り道で話をしたサリサさんの声だけが聞こえてきました。
「その船を動かしているのは誰です。フィス様と思っていたのですが、フィス様は前方の艦隊に対して攻撃をしています。その船を動かすにはフィス様と同格の個体であることが最低条件のはずです。我が国でフィス様に肩入れする同格のナンバーの者は居ません。考えられる個体は他の国の固体か未発見の個体に限定されます」
フィスさんが前方の艦隊に対して攻撃をしていることで、別の者が船を動かしているのがバレています。
あの宝玉に触れていないと船が動かせないのですから、気付くのは当たり前でしたね。
「何者かは知りませんが、ツヴァイ様の船の攻撃を無力化するほどの同調率を持つ者と言うことは、目覚めたばかりの個体の可能性が高いと予測します。貴方はフィス様の知り合いであるコレット様が目覚めさせた個体……」
ここで声が途切れてしまいました?
一体どうしたのでしょうか?
そして、あちらの予測では、シアを目覚めさせたのはコレットちゃんと思われているみたいです。
私の横で、「そうだったら、わらわは苦労などせんわ……」と小声で呟いています。
「声が途切れてしまったのですが、何かあったのですか?」
気になりましたので、シアに質問をすることにしました。
「聞くだけ無駄と判断しましたので、通信を遮断しました。ついでにメッセージを送っておきましたので、後は自力で判断するはずです」
「そうだったのですか。それでなんと伝えたのですか?」
「シックスティー フィフスは情報収集に特化したタイプです。なので、「諜報型なら自分で調べてください」と、メッセージを送っておきました」
要するにシアからの宿題と言う訳ですね?
もしかするとシアは、教師の素質があるのかもしれません。
無言で授業を進めていきそうなので、ちゃんと授業を聞いておかないと次に質問をしても「以前に教えたので知りません」などと言われそうな気もします。
「後方から、最初に砲撃された威力の熱源体がきます。衝撃に備えてください」
「衝撃ですか?」
私が聞き直すと同時に船が激しく揺れます!?
背後を映している画面を見ると光っているだけで何も見えません?
先ほどシアは、最初の攻撃が当たっていればこの船も無事ではないと言っていました。
外に出しているガーディアンと言う物で耐えているのだと思いますが、大丈夫なのでしょうか!?




