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Eighth Doll  作者: セリカ
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フィスさんの交渉


 フィスさんが壁の向こうで相手をするとして、向こうの様子が見えないのは不安です。

 知り合いでしたら、説得話になると思うのですが、それ以外の場合はどうなるのでしょうか?

 危険な方ですが、私を好いてくれているのですから少しだけ心配です。

 いくら強くても同じ力を持った方を複数も相手となると絶対とは言えないと本人も言っていました。


「フィスさんにお任せいたしましたが大丈夫なのでしょうか?」


 シアに小声で話しかけると壁を作り出すのと同じ手の動きを見せると正面の壁が透けて見えるようになりました!?

 完全に向こうに映る姿が見えるわけではないのですが、フィスさんの正面に多くの方達がいる事が分かります?


「これはどうなっているのですか?」


 私がシアに質問をすると答えてくれました。


「一部分だけ壁の材質をクリスタル状にしました。光の屈折率の調整が難しいのでこれ以上は正確に映せません」


 よくわからないのですが、はっきりとは見えませんが相手が大勢いることだけは分かります。


「ですが、これは相手からも見えてしまうのではないですか?」


 こちらから見えるのですから、相手からも見えますよね?


「あちら側は接近して調べられない限りは壁の一部の変化に気付けません。あちらの変化は小さな点程度にしてあります」


 またしても分からないのですが、あちら側の壁は調べないと分からないようです。


「ふむ……壁の材質を変えるだけでこのようなこともできるとはな」


 コレットちゃんも興味を示して触りながら見ています。


「シア嬢ちゃんの言った通り大人数が来たな。それにしてもこんな覗きみたいなことまでできるとは密偵なんて仕事が捗りそうだな」


 ゲイルさんも見えている相手の集団を見て感想を述べています。

 確かにシアの隠れる能力とこの壁の一部を透かさせる技があれば隠れて調査ができそうです。

 周りが地魔術で作り出せる壁を作っても違和感がないことが前提です。


「何人かに見覚えのある人がいるわ」


 シャーリーさんには知り合いがいるみたいですよ?


「バートランド王国の者で間違いはないことは確定だな。すると教会関係者か?」


 ゲイルさんが質問をすると……。


「私と飲み比べで負けた人がいるのよ。確か造船関係の人だわ」


「なんで、そんな奴と飲み比べなんてしているんだよ?」


「以前にウォーアントの素材を売る時に私が勝ったら色を付けて買ってくれると言うので勝負したのよ」


「それで、査定が良かったんだな。仮にお前が負けていたらどうなっていたんだ?」


「私と付き合いたいみたいだったけど、負けないと分かっていたから承諾したわ」


「お前と飲み比べで勝てる奴がこの国にいるとは思えんが……例え勝っても飲み代が凄すぎて一気に目が覚めると思うな」


「でも貴方は目が覚めないじゃない?」


「長い付き合いだからな。必要経費と思っているぞ」


「ふふ、素直じゃないのね」


「……」


 ゲイルさんが黙ってしまったので、会話は終了です。

 どう聞いても熟練の恋人の会話としか思えません。

 お互いに完全な信頼関係ができているのかと思います。

 少しだけ羨ましいと感じているとシアがそれを察知したのか、私の手を握ってくれました。

 そうでしたね。

 私にはシアがいるのですから、誰かを羨む必要はなかったのですね。

 壁に映し出されている様子を覗うと誰かが前に出てフィスさんに話しかけている所です。


「お前は何をしているんだ?」


「何って、憂さ晴らしだよ?」


「お前が無意味にこんなことをする訳がない。それ以前にこの地下施設に来ること自体が考えられんのだよ」


「そんなの勝手だろ? それよりも僕の居場所を正確に割り出したのは、サリサがいたからか」


 フィスさんがあちらの代表さんと思われる方と会話をしていたと思ったのですが、サリサと言う方を指摘すると一人の女性らしき方が前に出てきました。


「フィス様、お久しぶりです」


「お前がここにいると知っていたら来なかったよ」


「それは申し訳ありませんでした。ですが、そろそろお城にお戻りください」


「嫌だねー。あそこにいると面白くないから、当分は戻る気なんてないよ」


「貴女だけでしたら、遊んでいても構いませんが、レンスリット様はどうしたのですか? あの方は今後を決める大事な方なのですから、帰ってもらわなければ困ります」


「レンスリット様は、僕の母艦でお留守番しているよ。お前の言う今後とは、第二王子のレナード様の意向だろ?」


 レンスリット様は私の横にいます。

 みんなと一緒に様子を見ていますが、とても不安そうです。


「我が主から、貴女を見つけ出してレンスリット様を確保せよと命じられているのです」


「そうかい。それなのになんでここにいるんだよ?」


「たまたま本来同行する者の主が病で倒れた為に同行を拒否したのです。私達のような古参の者でなければ主と別行動をするなんてできません」


「諜報系で、まだ新しい奴と言うことは……名前は知らないけど、ナインティースだな。経験値が無いと登録者と別行動をすると言う選択肢はまず取らないからね」


「ご理解ができましたところで、レンスリット様とお戻りになってください。いまでしたら、レナード様の計らいで、破壊した港と魔道船の件は穏便に処理致します」


「それで、貸しでも作らせてレナード様の都合のよい処遇をレンスリット様にするつもりかい?」


「私は主のお言葉に従って命令を遂行するのみです」


「はいはい。相変わらずお前は堅苦しいね」


「私達は主である登録者の命令は絶対です。貴女のような思考を持つのは一部の者だけです」


「あっそう。それで、僕は戻る気が無いんだけど、力づくで抑え込むつもりかい? 人数は要るけど、戦闘型の魔人形が何体いても僕の敵じゃないし。諜報特化のお前が僕とやり合うつもりなのかな?」


「私には無理ですが、ツヴァイ様もいます。更に数でも私達が優っていますので、単独の貴女では限界があります」


「だよなー、お前もいたのかよ」


 フィスさんが面白そうな雰囲気になると集団の中から、ゲイルさんと同じぐらいの体格の男性と連れ添うように赤毛の人物が前に出てきました。

 赤毛の人物は戦士のような姿をしているのですが、男性とも女性とも見える人物です。

 

「いたら何か問題なのか?」


「なんで軍部のお偉いさんまでいるんだよ?」


「お前が原因なんだよ! 人手が足りないから、私とマスターまで……」


 赤毛の方がフィスさんに文句を言おうとしたのですが、体格の良い男性がそれを遮りました。


「ツヴァイ、そう熱くなるな。それよりもフィスよ。気が晴れたのなら戻ってこい。お前はツヴァイと同じこの国の最大戦力の1人だ。このような所で争っていても仕方がない」


「お断りいたします。僕に命令ができるとしたらレンスリット様だけです。それよりもラウル様もその馬鹿のお守りで大変なのにどうしてここにいるのですか?」


「誰が馬鹿だ!」


 赤毛の方が剣を抜こうとしたのですが、またしてももう一人の方が諫めています。


「フィスの言葉を真に受けるでない。済まぬがツヴァイを挑発するのは止めて欲しい。どうしてここにいるのかは、サリサが言った通り人手が足りないからだ。ここにいる魔物を被害を抑えて狩るにはお前達ナンバーズが必要だからだ」


「そうですか。でも、ここに来ると言うことは、魔道船の部品の調達ですか?」


「その通りだ。本来ならお前が居てくれた方が良いのだが、出会えたのならそのまま共に行動をせぬか?」


「マスター! こんな奴なんて必要ありません! 私がいるのですから、ここの奴らなんて敵ではありません!」


 フィスさんをお誘いするお話になりましたが、赤毛の方は反対のようです。

 内容からして、あの赤毛の方はフィスさんと同じぐらいの強さなのかもしれません。


「これだけ鋭利にここの魔物を処理できるのは造船技術者の者達に都合が良いのだ。お前の力を疑う訳ではないのだが、状態優先で持って帰りたいのだ」


「ちょっと溶ける程度なのに……」


「あはははは! 火力調整がダメだからいつまでたっても馬鹿なんだよ! 威力ばっかりで僕みたいに華麗さが足りないんだよねー」


「……お前は殺す!」


 フィスさんが笑いながら赤毛の方を馬鹿にしてしまいました。

 当然ですが、相手の方はお怒りです。

 剣を抜いたのですが、またしても止められています。


「ツヴァイよ冷静になるんだ。フィスは、お前をからかっているだけなのだから熱くなるでない。フィスも何度も挑発するのは止めないか。こんなことは言いたくないのだが、現在の状況ではお前の方が不利なのは確実だ。それに登録者が不在で尚且つ同調率が高くないお前では勝率が低いのは分かっているのだろ?」


「確かにラウル様の言う通りです。ツヴァイに対する発言は謝罪致します」


 説得されたのか、フィスさんが頭を下げて謝罪をしています。

 気になることを聞いたのですが、登録者が不在なのには何か問題があるのでしょうか?

 そして、同調率が低いと指摘されていました。

 フィスさんとレンスリット様の繋がりが低いと言うことなのでしょうか?

 以前にライラさんも同じことを言っていましたが、同調率が低いと能力が発揮できないと聞いています。

 すると今のフィスさんはあれで能力が発揮できていないと言うことなのですか?

 レンスリット様と同調率が高いともっと強いことになります。


「それで、この後はどうするのだ?」


「僕はもうしばらく遊んでいます。お城に帰るとすれば、新しい恋人を見つけてからです」


「はっ! お前はいつもの病気じゃないか! いつも思うんだが、頭がおかしいんじゃないのか?」


 フィスさんの恋人探し宣言を聞いて赤毛の方がフィスさんを病気扱いをしています。

 被害者の私としては、病気と言うよりも変態さんなだけかと思います。


「ツヴァイのようなおこちゃま思考にはこのこの素晴らしい考えが分からないんだねー。愛の伝道師たる僕の指導でもしてやろうか?」


「アホか。病気がダメならただの変態だ。こんな奴がこの国の最強の一角と思うと恥ずかしいわ!」


「僕もお馬鹿なお前と同列と思われていると知能が低く見られそうで嫌なんですけど?」


 赤毛の方と罵り合っていますがいますが、フィスさんとは仲が悪そうです。

 フィスさんは余裕そうですが、赤毛の方は剣に手を掛けて斬り殺したいと言わんばかりの目で睨んでいます。

 流石に何回も止められているので、辛うじて抑えているのだと思います。

 そんな二人を見ながらやれやれと言った感じで、男性の方が話しかけました。


「それで、お前の目に適う者はいたのか?」


「目星はつけています」


「そうか。それならば早くその者を連れて城に戻ってくるんだ」


「流石はラウル様! 僕の考えを理解してくれているのですね!」


「理解はともかく、その者が同意しているのであれば問題は無かろう」


「うんうん。ラウル様の賛同を得られたので、僕は気分が良いです! あっそうです。ここに転がっている奴らを進呈しますので、今日の所は見逃してもらえませんか?」


 私達が倒した魔物を進呈する提案をしています。

 ですが、魔核の力が失われているので、後ほど解体した時にまずいような気がするのですが、どうなのでしょうか?

 もしくは、ここで解体作業を始めてしまうと直ぐにばれてしまいます。


「手間が省けるのでそれは助かるが良いのか?」


「どうせ僕には必要がありません」


「それなら回収させてもらおう」


 男性が指示を出すと控えていた者たちが順番にストレージリングに収納していきます。

 ここで解体をしないので、魔核のことは知られずに済みそうです。

 しばらくは良かったのですが、先ほどのサリサと言う方が指摘をしてきました。


「何体かが別の者の手に拠って倒された形跡があります。フィス様は本当に単独なのですか?」


「さあね?」


「そして、どれにも同じ形跡があります。急所を一撃で貫いている形跡です。痕跡から、フィス様とは違います」


「たまには、僕も殴りたくなっただけだよ。王宮の奴らの嫌がらせのストレスが限界だったからね。あいつらの代わりに殴られた魔物に感謝して欲しいかな?」


「そうですか。それではそう言うことにしておきます」


 フィスさんが誤魔化してくれましたが、どの魔物にもシアが魔核を回収する為に突き刺した形跡があります。

 手刀で突き刺したり直接殴って貫いている個体もあるのですが、フィスさんの鬱憤晴らしと言うことになりました。

 回収が終わるとあの人達は別の方向に行ってしまいました。

 なんとかやり過ごせたようですが、私達が覗いている壁にフィスさんがもたれ掛かった時にサリサと言う方が近づいてきて一言告げました。


「フィス様が単独と言う話は納得していません。どこかに私達と同じ個体がいるのではないのですか?」


「どうしてそう思うんだ?」


「フィス様の反応を捉えた時に僅かでしたが、同じような反応を感じたのです。直ぐに反応がロストしてしまったのですが、違和感を感じるのです」


「お前のセンサーの調子が悪いんじゃないのか?」


「私は正常です。この反応は私の上位型に一度だけ感じた事のある反応でした」


「取り敢えず分からないんだろ? それよりも部隊から遅れるのはまずいんじゃないのか? お前の戦闘能力でもここで戦えないことはないけど特殊な大型やクイーンと単騎で遭遇したら勝てないんじゃないか?」


「長期戦なら負けないこともありません。今回は不問としますがいずれ答えてもらいます」


 そう告げると行ってしまいました。

 その後ろ姿にフィスさんが声を掛けたのですが……。


「気が向いたらねー」


 要するに答える気はないみたいです。

 フィスさんが仕事が終わったから入れて欲しいとシアに声を掛けたのですが、シアの感知範囲からあの人達の反応がなくなるまで、ダメと言われて文句を言いながら壁を背に座り込んでしまったようです。

 しばらく時間が経過するとシアが良いと判断したのか、壁が無くなるとフィスさんが倒れてきました。

 背もたれにしていた部分を消したので当然とも言えます。

 その後は壁を戻したのですが、シアはフィスさんに抗議されています。

 主に自分の扱いについて対応が悪いと言うことです。

 なんにしても穏便に終わらせましたので、私にはフィスさんと一晩一緒に寝る約束を果たさなければいけません。

 約束はしたのですが、お家に帰ってからの最初の夜は用心をして眠りたいと思います。


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