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Eighth Doll  作者: セリカ
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近づく集団


「さて、どうする?」


「相手がバートランド王国の者で、わらわの知っている者なら話はできるやもしれぬが……軍部の者とはあまり関わってないからの」


 王国関係者かもしれない一団が現れたことで、ゲイルさんとコレットちゃんが話し合っていました。

 シアは感知した情報を伝えてからは黙ったままです。

 判断は私達に委ねているのです。

 シャーリーさんは基本的にゲイルさんの判断に従います。

 

「僕としては、遭遇したくないんだよねー」


 フィスさんは家出中なので、見つかれば連れ戻されると思います。

 ですが、フィスさんの実力から考えても普通の人達に対抗ができるとは思えません。

 力づくで抑えようとするのでしたら、同レベルの存在が必要かと思います。


「なら、逃げるか?」


 ゲイルさんは撤退を提案してきました。

 ですが、シアが感知しているのですから、相手にも私達の存在が知られているのかと思います。


「ここで撤退すると相手に感づかれてしまいます。動かない方が得策です」


 シアが提案をしてきたのですが、動かない方が良いのはなぜなのでしょうか?

 確かに通路の一部を囲って簡易的な空間にしていますが、相手の感知範囲は分からないのですが近づかれれば知られてしまうのでは?


「おい、シア。どうして動かない方が良いんだよ?」


 フィスさんがシアに質問をしていますが無視されています。

 残念ですが、シアは答えません。

 フィスさんは「またか……これだから、経験値の少ない奴は……」と呟いていますので、私が聞くことにしたいと思います。


「どうしてこのまま動かない方が良いのですか? シアを信用していない訳ではないのですが、近づかれれば気付かれるのではないのですか?」


 シアたちは、お互いを同じ存在として認識をしていたはずです。

 違いがあるとすれば、認識ができる距離感です。

 シアの感知範囲は、ライラさんを越えています。

 ですが、フィスさんはシアに言われるまで、気付いていない様子でした。

 このことから、それぞれに感じ取れる範囲が違うのが分かります。


「現在、その集団は真っすぐにこちらに向かってきます。あちらに感知範囲が広い者がいるようです。そして、この国の所属の者達であるのなら、フィスの存在だけは確認されていると判断します。そして、動かない方が良いのは現在この空間だけは私の力で認識ができないようにしているからです」


 シアが詳しく説明をしてくれました。

 そのことで、フィスさんが更に質問をしています。

 

「おい。なんでお前にはそんな能力があるんだよ!」


 フィスさんが説明を求めているのは私達を認識させない能力と思います。

 私も知らなかったのですが、いつの間にそんな力を手に入れたのですか?

 シアは無視するつもりみたいでしたのですが、両肩を掴まれて揺すられているので仕方ないと言った感じで答えました。


「エルナに必要と判断したので習得をしました」


 どこかで聞いたことのある発言です。

 以前にもコレットちゃんが同じ状況で困っていましたよね?


「はぁ!? なんで、諜報系の奴らの能力を習得できるんだよ!」


 フィスさんの言葉通りでしたら、諜報能力に優れている者にはシアがいま使っていると言っていた能力があるようです。

 すると……もしもフィスさんにそんな能力が合った場合は、私に対する乙女の危険度がかなり上昇すると思われます。


「エルナに必要と判断したからです」


「同じ言葉を繰り返すとか……これだから、経験値が無いのは困るんだよ! 意味が分からないからもっと詳しく説明しろよ!」


 いつものことですが、シアは私が基準と考えているので、私に有益と判断すると能力を習得をしてくれます。

 ですが、いつそんな魔法を模倣したのでしょうか?


「もしやとは思うがフィスの船の能力を模倣したのじゃな?」


 コレットちゃんが予測をしましたが、あれはフィスさんの船の能力ですよね?

 あれも魔法の範囲でよいのですか?


「フィスの船が展開している機能を領域魔法として習得しました。あれほどの領域は無理ですが、現在の閉鎖空間の範囲だけなら展開が可能です」


「僕の船の能力を魔法として習得するなんて、お前はなんなんだよ?」


 流石にフィスさんも驚いています。

 私も知りたいので、フィスさんとも話をするようにお願いをしたいと思います。


「シア。ここにいるみんなは私達の仲間なのですから、質問には答えてあげてください」


 私の言葉に頷くとフィスさんの質問に答えてくれました。


「行動アクセス権を得た時に権限の及ぶ範囲内で、あの船の性能を可能な限り解析した結果です」


「僕は限定的なアクセス権しか許可していないはずだ! なのにそれだけで、そんなことまでできるようになるなんて万能すぎるよ! 護衛型と思っていたけど実は僕も知らないタイプなんじゃないか?」


「私は護衛型とは一度も認めていません。現時点で私が答えられるのは、エルナの安全を確保する為に防御重視を優先しているだけです」


 方向性は分かりませんが、シアは私を最優先で考えてくれているのですよね?

 そう思うとシアに常に愛されていると思います!

 私の可愛い騎士様は最高の恋人です!


「僕は初期の頃から活動しているんだけど……まあ、いいや。それで、お前の判断としてはこのままやり過ごせばいいのか?」


 フィスさんは、シアの提案を採用したいと思っているようです。


「私は感知した時から、自身の存在を隠蔽していました。察知されているのかは分かりません。現時点では、私達を索敵をした者にはここに誰もいないと判断しているはずです。しかし、それでもこちらに向かってくるのはフィスがこの地点で認識されているからと予想します」


 すると、フィスさんが目印になっているのですか?


「なるほどね……誰だか知らないけど僕が相手をしてやり過ごすのが無難かなー」


「可能であれば、それが最善と判断します。外に転がっている魔物の切断面から分かる者ならフィスが倒したと判断すると予測します。もう一つの可能性としては、他国もしくは、別の集団だった場合はフィスが危険な状況になります」


「バートランド王国の手の者ならいいとして、別の奴ら場合だった場合は戦うことになりそうなんだけど、お前が僕の心配をしてくれるなんて思わなかったよ」


「エルナから、フィスを仲間と認識して欲しいと言われましたので、認識することにしました」


 先ほどの私のお願いをした時から、フィスさんとレンスリット様も保護対象になったと思います。

 それまでは、同行者程度の認識だったのかと思います。


「全てはエルナ様次第と言う訳か。まあ、僕はエルナ様の恋人候補なのでその認識で間違っていません」


 シアは私の言うことは聞いてくれます。

 それとは別なのですが、私はフィスさんを恋人にする予定はありません。

 残念ですが、フィスさんは私の範囲外です。

 

「それで、この空間から出ると感知されるんだよな?」


「されます。移動速度からしてじきにここに着くはずです」


「相手の状況は確認しているんだな」


「相手は、こちらをロストしているはずですが、確認の為に向かっていると判断します。相手がこちらを察知したのは領域魔法の範囲を広げているだけです。あの船が所在を隠せているのは光学迷彩と領域魔法の探知波を吸収して相手に返していないからにすぎません。私は更に別の要素を組み込んでいます」


「……船の行動アクセス権限を与えただけで、僕の船の秘密がバレバレじゃん! それで、何を組み込んでいるんだよ?」


「これ以上は教えられません」


「僕の船の秘密を暴露したんだから教えろよ!!!」


「それよりも外の対処をしてください」


 シアがそう告げると問い詰めていたフィスさんを突き飛ばして同時に壁の一部を開けると転がっていきました。

 そして、即座に壁が元通りになってフィスさんだけが外に放り出された形になりました。

 

「おい! 僕だけ除け者にする気か!」


 遮断された壁の向こうでフィスさんがお怒りです。


「先ほどフィス自身が相手をすると発言していました。エルナの為にも上手く誤魔化してください」


「ぐぐぐっ……そう来たか! 仕方がありませんので、エルナ様の為に頑張る事にします! それで、エルナ様にお願いがあるのですが聞いてくれますか?」


 フィスさんは私の為に頑張ってくれるそうです。

 そして、そのついでに何か私にお願いがあるみたいですよ?


「お願いとは何でしょうか?」


「穏便にやり過ごせたら、僕と一晩だけで良いので、一緒に寝ることを許してください!」


 最初の日の朝にとんでもないことをしたので、それ以降は私達のベッドに立ち入ることを禁止したのです。

 勿論ですが、着ている物を脱がすなんてことはもってのほかです。

 それが守れないのでしたら、コレットちゃんのお家の出入りも禁止すると言いましたら、その条件を呑んでコレットちゃんのお家で地下迷宮に行くまでは滞在していたのです。

 ことが穏便に済むのでしたら、それぐらいは良いのですが、フィスさんは油断がならないので危険なのです。


「私に触れないことが条件でしたら一晩だけでしたら、良いと思いますがどうしますか?」


「エルナ様の肌に触れられないなんてとても残念なのですが、一緒のベッドにいられるだけで我慢しますので約束ですよ?」


「わかりました。フィスさんを信用しますが、触れたりしたら次はありませんからね?」


「約束は守ります! 触れられないのは残念ですが、至近距離でエルナ様の寝顔と吐息さえ感じられれば僕は満足できます!」


 ……私が言うのもなんですが、本当にフィスさんはどしようもない方です。

 しかし、そんな宣言をしたのですから、間にシアに入ってもらうことにします。

 フィスさんではありませんが、シアが目を閉じている顔を見ているだけで私も気持ちよく眠れます。

 そして、シアが壁に近づくとフィスさんに話しかけています。


「集団がフィスの感知範囲に入りました。私達はこのまま待機をしますので、フィスの交渉力に期待します」


「ああ、僕にも近づいてくる奴らが分かったよ。それにしても戦闘能力も有って感知範囲が諜報系と変わらないなんてお前は凄すぎるよ。改めて成長したお前とは戦いたくないと思ったよ」


「エルナと敵対しない限りは、フィスは仲間と認識しています」


「じゃ、仲間なら、しくじったら手伝ってくれよ?」


「エルナが望むのなら、私はフィスのサポートをします」


「頼もしい言葉だね。そうならないように努力するとします」


 フィスさんがそう告げると会話が終了したようです。

 しばらくすると壁の向こうから何人かの足音が響いてきます。

 私にも多くの人と判断ができる足音です。

 足音が止まるとフィスさんが声を掛けたみたいです。

 状況によってはどうなるか分かりませんが、ここはフィスさんに期待したいと思います。


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