表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eighth Doll  作者: セリカ
58/141

趣向



「やっと起きてきたか」


 私が食堂の扉を開けると読書をしていたコレットちゃんが呟きました。


「時間的に昼食の時間になりますが、どうしますか」


 シアからは、食事の時間を告げられました。

 私としては、笑顔で出迎えて欲しいのですが……コレットちゃんはいつものこととして、シアとはそろそろ笑顔の挨拶を交わしたいのが私の望みです。

 私から声を掛けないと事務的な反応しかしてくれないのが現在の悩みなのです。

 おはようと言いたかったのですが、時間的には日も高くなっていますので普通に会話として流すことにします。


「では、今から食事の用意もしますが、レンスリット様達の分も用意しても良いのでしょうか?」


 シアに監視されていると聞いていましたが、最初は存在感が薄すぎて気付くのに遅れてしまいました。

 王族の方に対して挨拶を忘れてしまうなんて失敗してしまったと思ったのですが、特に気にされていないみたいなので、大丈夫と思っておきます。

 それに昨日と違って、シアに近い男の子のような姿をしているのです。

 こうして見ると、とても愛らしく感じてしまいます。

 無事に辿り着けたと思っている私の弟みたいです。


「エルナ様が作るものでしたら、僕とレンスリット様は何でも頂きます!」


 そう発言するフィスさんは、いつの間にかレンスリット様の隣に座っています。

 レンスリット様は、無言で頷いています。

 なんとなく最初の頃にシアに似ている気がするのですが、こちらはなんとなく照れた感じがするので恥ずかしがり屋さんなのかもしれません。


「では、用意いたしますので、少しだけ待っていてください」


 私とシアが厨房に向かうとフィスさんの声が聞こえてきます。


「はーい! エルナ様の愛情料理を期待して待っています!」


 フィスさんは料理の味などは分かるのでしょうか?

 シアも一応は食事をしていますが、特に変化はありません。

 感想を聞くと魔力にどのくらい変換されたかしか答えてくれません。

 聞いている数値が多少上下するので高い時は美味しいと思うことにしました。

 唯一違う反応をするのは糖分などの甘い物を食べた時です。

 甘い物だけは追加で食べてみたいと反応をしてくれるので、毎日作っているお菓子作りの腕はかなり上達したと思っています。

 昨日のうちにコレットちゃんが買って置いてくれた食材では人数分に足りませんので、シチューをメインにして分量を増やすことにします。

 これなら多目に作れるし残ったら、シアに保存をしてもらえば良いので無駄にならないのです。

 出来上がって人数分を用意してテーブルに並べてから皆で食事にすることにしました。

 その間のみんなの行動は、コレットちゃんは相変わらずの読書ですが、フィスさんはお客様なのに積極的に並べるのを手伝ってくれました。

 レンスリット様は当たり前なのですが、ずっと座ったままです。

 ですが、特に反応らしき反応もしないので、たまにお人形さんなのかと思うぐらいです?

 私とシアの出会いのことを思い出すと、フィスさんとレンスリット様は実は逆なのではと思うぐらいです。

 ですが、用意される食事を頂く時はちゃんと挨拶をしてからお召しになっています。

 庶民の食事でも大丈夫なのかと心配をしたのですが、とても美味しそうに食べてもらえたので良かったです。

 この辺りは年相応の少年……ではなく少女のように食べてくれましたので、可愛いと思ってしまいました。

 普段の私なら、レンスリット様は私の範囲内の方なのですが、何故かシアやコレットちゃんのような感情が湧き上がらないのです?

 こんなに可愛らしい子なのに何故かその気にならないのです?

 とても疑問に思ったのですが、相手が王族なので流石の私も恐れ多いと感じているのだと思うことにしました。

 ついでにフィスさんは、私の料理を褒めながら綺麗に食べてくれました。

 少々大げさに感想を述べるので本当なのか疑問に思うぐらいです。

 シアから、摂取した物は魔力に変換されるだけと聞いていますので、どこまで本当なのでしょうか?

 私としては、普通に美味しいと言う感想と反応の方が嬉しく思います。


「それで、この後はどう過ごされるおつもりなのですか?」


 フィスさんが本日の予定を聞いてきました。


「本日はお休みをいただいていますので、家でゆっくりと過ごすつもりです」


 本当はシアと一緒に買い物に行く予定でしたが、王女様がいらっしゃるのに出かけるわけにはいきません。

 買い物は次のお休みにしたいと思いますが、その前に地下迷宮に行く予定が入っていました。


「そうなのですか? 僕としては、エルナ様と出かけたいと思って服装を合わせてきたのです」


 そうだったのですか?

 私はてっきり人目に付かない服装でも選んだのだと思っていました。


「レンスリット様はどうなさるのですか?」


「勿論連れてきます。その為に違和感のない服を着てもらっているのです」


 確かに違和感はないと思いますが……こんな可愛らしい子だと逆に目立ちそうです。

 それに……。


「昨日の会話で私のことは知られてしまいましたので、お聞きします。レンスリット様はたとえ着替えていても王女様とバレてしまうのではないのですか?」


 私はこの国の国民ではありませんので、王族の方を知りません。

 私の国のミッドウェール王国の国王様夫妻は演説をなされたことがありましたので、お顔は存じています。

 王太子様も姉の通う学園に在籍為されていた為に姉が帰ってくる度に高価な映像記録画像を見せられましたので、知っています。

 あれを購入する為に私のお小遣いをかなり減らされてしまったので、私はかなり根に持っています。

 王太子様の画像を取るぐらいなら、私が気に入っていた後輩の子の画像が撮りたかったです。

 私が自分の国の王族の方を知っているぐらいなのですから、この国の方が知っていてもおかしくはありません。

 肖像画などではなく、映像装置と言う物で撮影した物があるのですから、正確な情報が伝わっているはずです。

 私が通っているお店には、最初は誰なのか分かりませんでしたが、この国の王女様の絵が飾られていたのです。

 聞いた話では、あのお店に一度だけお見えになった方と聞いています。

 恐らくは第一王女様か第二王女様と思います。

 肖像画ではなくありのままでしたが、とても綺麗な方でした。


「その点は大丈夫です。レンスリット様は名前だけで、国民の前には姿を一度も見せたことはありません。ついでに言うとこの国の一部の者しか素顔を知りません」


「どうしてなのですか?」


「昨日も言いましたがどちらにも利用されない為です。レンスリット様が生まれた時には、既に2人が争っている状態だったので、王女が生まれたとしか伝えていないのです」


「よく分かりませんが難しい状況なのですね?」


「まあ、そんなところです」


 レンスリット様の素性は知られていないとしてもフィスさんは知られていますよね?


「フィスさんは古くからいますので、知る者もいるのではないのですか?」


「僕ですか? ウォーゼル様の統治時代の者が生きていれば民衆にも知る者がいると思いますが、そんなに多くはないと思います。現在、僕の姿を知っているのは王族の側近か軍部の奴らと同じナンバーズの奴らぐらいです」


「ナンバーズとはなんなのですか?」


「あっ!……まあ、いいですか。つい口が滑ってしまいましたが、エルナ様なら教えてもいいかな。ナンバーズと言うのは僕やシアのように数字持ちのことです。このタイプは個々の特化した能力がある為に特別な存在とも言えます。何人いるかは秘密ですが、後期型でも強い奴はいます。補助系の奴らと連携されると僕も流石に苦戦は免れません」


 この国にはシアやフィスさんのような存在がまだたくさんいるみたいです。

 補助系とはライラさんのような方かと思いますが、確かに共闘されるとシアもただでは済まないと思います。

 本を読みながら聞き耳を立てているコレットちゃんは、「おそらくあの者とあの者は確実じゃな……」などと呟いています。

 恐らくはコレットちゃんには目星が付いているのだと思います。


「そんなことよりもせっかくなのですから、買い物に行きませんか?」


「そうですね……」


 お誘いは嬉しいのですが、そろそろ手持ちの予算がないので軽く食べ歩きでもして欲しいものは見るだけになってしまいます。

 地下迷宮に行かないと私のお小遣いが既にピンチなのです。

 本当は結構な稼ぎが合ったのですが、私が無駄遣いをしてしまうのがいけないのです。

 貰ったドレスのように着る機会のない服をつい買ってしまったりしています。

 破かれなくてホッとしていますが、下着に関しては中に着る物なので見えないことを良いことに質の良くて肌触りの良いものを選んでいます。

 当然なのですが、お値段もお高いのでコレットちゃんからは、一番の無駄遣いと指摘されています。

 自分はおませさんの物を身に着けているのに説得力が無いと思うのは私だけでしょうか?


「僕が誘うのですから、好きな物を買ってあげますよ?」


 それは本当ですか!

 好きな物と言われると欲しいものはたくさんあるのです!

 ですが……。


「とても嬉しい申し出なのですが、昨日出会ったばかりの方に買ってもらうのは申し訳ないのです」


「僕の詳細を知っている者なら、遠慮なんてしないのにエルナ様は謙虚ですね」


 本当は買ってもらいたい物はあります!

 フィスさんなら、資産も多そうなので私が望むもの程度でしたら買えると思います。

 しかし、フィスさんに何かをしてもらうと何かしらの対価が必要かと思います。

 特に私が目的なのは明白なのですから、大きな買い物をしてしまったりすると、とんでもない要求をされそうな気がするのです。

 それに簡単に手に入れてしまうよりは、自分の力で稼いだお金で買った方が愛着が湧くと思います。

 差し当たっては、最近の破かれた物に限って値段が高く気に入っていた物ばかりです。


「そう言うことなので、ご厚意だけ受け取ることにします」


「でも、エルナ様は僕に服を破かれた時にとても怒っていましたよね?」


「あのようなことをされれば誰でも怒ると思いますよ?」


「そして、直ぐに弁償をして欲しいと申されていました。下着も破ろうとしたら本気で怒るのですから、もしかするとお財布事情が厳しいのかと思ったのです」


「……なんのことかわかりません」


「実はですね。僕も下着にはうるさいのです。なので、エルナ様が身に着けていた物が平均的な庶民が身に着ける物より良い物を身に着けていたのはわかっているのです。エルナ様は着る物にお金を掛けているみたいなのですが、貴族でもないエルナ様が購入するには余程の稼ぎが無いと無理ですよね?」


 まさかフィスさんがそんなことに詳しいとは思っても見ませんでした。

 今朝も私の着ている物を全て脱がしてしまうのですから、興味など無いと思っていたのです。


「ご存じなのでしたら、昨日フィスさんの船に忘れてきた私の物を返してください。あれは私が持っている中でもお気に入りの物なのです」


 破かれていない物を返して欲しいとは言い難いので、全てを対象にしました。

 それだけを指定するのは恥ずかしかったからです……。


「うーん……代わりを上げたからもういらないと思って処分してしまったのです」


「処分してしまったのですか!? あのセットでいくらしたと思っているのですか! しかも先日に最後のお小遣いを全て使って購入したばかりなのに酷過ぎます!」


「やっぱり、お金が無いんですね?」


「……」


「でも代わりにもっといい物を昨日差し上げましたよね?」


「それはそうなのですが……しかし、自分で頑張ったご褒美に買った物なのですから、比べることなどできません!」


「そう言われれば分からないでもありませんが、もう魔力に変換してしまったから返せないんですよ」


「魔力に変換ですか?」


 下着を魔力に変換するなんて可能なのでしょうか?

 それよりもどうやって変換したのですか?

 まさかとは思いますが……とても嫌な予感がします。


「そうです。一緒にお風呂に入れなかった時にシアに洗濯でもしていろと言われたんだけど、なんとなく温もりを感じていたらつい食べてしまったのです!」


 その言葉に私もそうですが、聞き耳を立てていたコレットちゃんも固まっています。

 そして、コレットちゃんのフィスさんを見る目が冷たくなった気がします。

 シアは甘い物好むのにフィスさんは下着を好むのですか?

 残念な気持ちもあるのですが、そちらも気になったのです。


「そんな物を食べても大丈夫なのですか?」


「エルナ様の味がして美味しかったですよ?」


「私の味ですか!?」


 衝撃的な事実を聞きました!

 私の味が美味しいと表現されていることです!

 もしかしたら、私の体からは何か食欲でもそそる風味でもあるのでしょうか?

 思わず自分の肌を舐めて確認をしたい衝動に駆られてしまいました!


「僕達は体内に何かを取り込むことで魔力に変換ができます。ただ、僕が好むのはエルナ様のような美少女が身に着けている物が好みなのです」


 単に好みの問題でした。

 シアは甘い物を好みますが、フィスさんは特殊過ぎます!

 美少女と言われるのは嬉しいのですが、それがフィスさんを喜ばせているだけと思うと複雑な気分なのです。


「それ以外にもエルナ様だったら、舐めるだけで魔力変換ができます。エルナ様って、シアと繋がっているのが理由みたいですが、魔力容量が大きいので水属性の僕には取り込める範囲なのです」


「では、今朝の行為も……」


「僕に言わせれば、朝から美味しい飲み物でも飲んだようなものです。シアではありませんが、僕もエルナ様だったら、登録者にしても良いぐらいと思っています。そうだったら、毎日ご奉仕するのですが、いかがですか?」


 頭が痛くなってきました……変態さんと思っていましたが、更に私の予想を超えた存在でした。

 こんな特殊な性癖を持つ方が正式に王家の代表として公表されているのです。

 国民の方が知ってしまったら、王家の威信が地に堕ちてしまうのではないのですか?

 なんにしてもとんでもない方に気に入られてしまったことには変わりはありません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ