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Eighth Doll  作者: セリカ
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お帰りは……


「流石はエルナ様です。とても良く似合っていますよ!」


「ありがとうございます! とても肌触りの良いドレスなのですが、宜しいのですか?」


 私は今、破かれた服の代わりを貰っている所です。

 案内された場所には、沢山のドレスが並んでいました。

 破かれた服もそこそこしたのですが、ここに並んでいるドレスはかなり上質なものです。

 いま私が着ているドレスを売却したとしても破かれた服が何着も買えそうなぐらいに高そうなドレスです。

 正直、これを貰っても良いのか悩むところです。


「ここにいた、僕の恋人たちのお古なので気にしないで下さい」


 お古と言いましたが、とても状態が良いので新古品と呼んでもいいぐらいです。


「それにしても選んでいただいたものは私にぴったりのサイズなのですが、フィスさんは見ただけで相手の体型などが分るのですか?」


「分かりませんよ? ですが、地上でエルナ様の体に触れている間に、大体の体型は把握をしたのです」


「そ、そうなのですか……」


 確かに地上で散々弄られましたが、あれで私の体型を把握してしまうなんて、シアの体調管理能力に匹敵するのかも知れません。

 そのシアも可愛いドレスを着ていますので、一段と可愛く見えてしまいます!

 いつもは少年のような姿をしているので、ドレスを着ているのはとても新鮮です。


「シアの分まであるなんて、フィスさんの侍女の方達には幼い子もいたのですか?」


「危険物……じゃなくて、シアの分はレンスリット様のお古です」


「王女様が着ていた物なのですか!?」


 シアが今着ているドレスは王女様のお古のようです。

 今晩は、お姫様となったシアと一緒に眠りたいとの考えが頭をよぎってしまいました。


「訳があって、この船にいることが多かったので、私生活に必要なものは積み込んであるのです。特に追加で増えるだけだし部屋はいくらでも空いているので、古くなった荷物はそのままなのです」


「王女様は王宮暮らしよりもこちらの方が長いのですか?」


「そんなところです」


 王女様なのにお城よりも、魔道船での生活の方が長いのですか?

 もしかすると、王女様は立場が微妙なのでしょうか?

 この国は第一王子と第二王子で争っていると聞いています。

 なので、王女様は嫁がなければレンスリット様の継承権は第三位と思いますが、他に兄弟はいるのでしょうか?

 

「お聞きしたいのですが、レンスリット様のご兄弟は何人いらっしゃるのですか?」


「そんな事を聞いてくるなんて、エルナ様はこの国の国民ではありませんね?」


「えーっと……私は田舎者なので、王都の事には疎いのです」


 他国の出身者と言うのはいくらなんでもまずい気がします。


「まあ、エルナ様は可愛いから、深くは追及しません。レンスリット様の上には王子が二人と王女が二人います。王子の二人は醜い後継者争いで支持者達を自分の陣営に組み込もうと頑張っています。上の王女様の二人は既にこの国の有力者に嫁いでいます」


 レンスリット様には上にお姉さんも二人いますので、末っ子なのですね。

 そして、そのお二人は既に嫁いでいるとの事です。

 

「特に秘密でもなんでもないので、教えてしまいますが、要するに上の王子達がレンスリット様を自分の派閥もしくは隣国に嫁がせたいのです。この国の宰相と軍部の筆頭の家には2人の王女が嫁いでいます。今のところは中立を保っていますが、レンスリット様がどちらに付くかで、片方に動く可能性はあります。どちらも国を割ってしまうぐらいなら、権力争いに破れた方を消した方が国の被害は最小限で済みますからね」


「すると王女様が、お城よりもこの魔道船にいるのは、保護する為なのですね?」


「そんなところです。一番厄介なのは、第二王子のレナード様ですね。あの方はミッドウェール王国と通じているとの噂なので、レンスリット様をあちらの国に嫁がせれば大きな後ろ盾ができます。僕も聞いただけなのですが、レナード様が王位を継いだら、前回の大戦で、手に入れた領土を譲渡するみたいな約束をしているらしいのです」


 私の母国である、ミッドウェール王国が第二王子と関係があるとの噂らしいです。

 すると、レンスリット様の嫁ぎ先次第では大きな戦争に発展をする可能性があると思います。


「噂とはいえ、そんな話が出回るのは、第二王子様にとっては、あまり宜しくないと思われますが?」


「勿論噂だけなので、確たる証拠がないのです。第一王子側が相手を貶める為に流している噂だと逆に抗議して、第一王子を卑怯者とか呼んでいるぐらいです」


「お二人は、それほどまでに仲が悪いのですか?」


「うーん……昔は、それほどでもなかったんだけど、無難な兄と優秀な弟といった感じかな? だけど、王位を継ぐのは優秀な方が良いとか唆した奴らの所為で、増長してしまったんだよね」


「それは気の毒というかなんと言っていいのでしょうか……」


 王族の方は、王位の継承権争いは今後を決める大変なことかと思いますが、庶民となった私には雲の上のお話です。

 できれば、争いに巻き込まれる前に他の国に行きたいと思います。


「まあ、レンスリット様には僕が付いていますので、簡単には手が出せないのですが……代わりに王宮では、僕に対する嫌がらせが激しすぎて、僕はこうして外に出会いを求めて家出をしてしまった訳です」


「そうでしたか」


「なので、エルナ様が僕の恋人になってくれると……」


「エルナが希望した衣装は全て確保しました。ここでの用件は終わりましたので、そろそろ家に帰って食事の用意をする時間になります」


 フィスさんが私に話しかけた所で、シアが帰りましょうと提案をしてきました。

 確かに時間的には、食事の用意をする時間です。

 置いてきぼりにされてしまった、コレットちゃんは今頃は泣いているかもしれませんので、心が温まるスープでも作ってあげたいと思います。


「ちょっと待て! これから、エルナ様にはディナーを楽しんでもらってから、今晩は僕の自慢の寝室に泊まってもらうつもりなのです! できれば僕も御一緒をして清々しい朝を迎える予定です!」


 どうもフィスさんには私の為の予定が有ったみたいです。

 王女様も召し上がっているディナーには興味がありますが、私が帰らないとコレットちゃんの食事がありません。

 特に作り置きなどはしていないので、保管してある日持ちのする物を適当にそのまま食べて済ましてしまう可能性が高いのです。

 せっかく私生活が改善されたのに、不健康な食事をさせる訳にはいきません。

 それに恋人のお腹を満たすのは私の義務でもあります。

 仮にこの魔道船に泊まることになると、フィスさんと朝を迎えなければいけないとなると貞操の危機でもあります。

 回避ができる危険は避けたいと思います。


「シアがそう言っていますので、私は帰ることにします。王女様に挨拶だけして戻ろうかと思います」


「エルナ様もそんな事を言わずにもう少しここにいて下さい!」


 フィスさんが私の手を掴んでお願いをしてきました。

 ちょっと可愛らしいと思ってしまいましたが……フィスさんの中身は獣さんに近いのであまり長く傍に居ると再び襲われる危険があります。


「コレットちゃんも一緒に居ましたら、お泊りをしても良いと思いましたが、今頃はいじけて泣いているかもしれませんので、恋人の私としては慰めてあげなければいけません。恋人を求めているフィスさんでしたら、ご理解をしてくれると思うのですが?」


「ぐぐぐっ……こんな事でしたら、コレット様を捨てなければよかった……あの方がいじけるとは思えないのですが……だからと言って、連れて来ると勝手に歩き回るから、嫌なんですよね」

 

「それでは、今晩はこの辺りで失礼をさせてもらいます」


「ここで無理を言って、エルナ様に嫌われてしまう訳にはいきませんので、今回は諦めます。それにしても、あれだけの荷物を仕舞った鞄はどこにあるんだ?」


 フィスさんがシアに荷物の事を聞いていますが、フィスさんには自分の空間に仕舞うことができないのでしょうか?

 いつもの事ですが、シアは聞かれても無視をしています。

 なので、私が答えるのは良いとして、逆にフィスさんにも質問をしたいと思います。


「あのぐらいの荷物でしたら、シアは自分の便利な空間に仕舞えますよ? それとお聞きしたいのですが、フィスさんは持てないのですか?」


 私が答えるとフィスさんは驚いています?


「いくら護衛型でも、あれだけの荷物は持てないはず。一桁だから、許容量が大きいのか……羨ましいな。ちなみに僕への質問なんだけど、僕達みたいな戦闘型は荷物は一切持てません。その分のソリースも全て戦闘に関する能力に振り分けられています。後期のナンバーの護衛型も登録者の最低限の私物ぐらいしか仕舞えないのです」


 シアは最初から、ある程度の荷物を持つことができました。

 後に私のお願いで、容量を増やしてくれたので、現在はかなりの荷物が持てます。

 その能力を拡張する為にシアは魔核の力を必要としていましたが……。


「フィスさんは能力を強化する事はしないのですか?」


「そんな事はできません。僕達は最初に決められた能力しかありませんので、拡張は不可能です」


 すると……能力強化ができるのは、シアだけなのでしょうか?


「なるほど……先ほどの戦闘で、僕の能力を模倣していましたね。おい、シア。君は同じ理屈で、ストレージを増やすことも可能なんだな?」


 当然ですが、シアは無視です。


「経験値がないから、登録者以外は反応しないか。では、エルナ様にお聞きします。シアは能力拡張が可能ということで間違ってはいませんよね?」


「えっ……と。シアは物覚えが良くて頼りになるのです!」


 能力の拡張とかは分かりませんが、私がお願いすれば色々と学習をしてくれますので、多分これで合っています!


「そうなんだ。さっきの戦いで、小手先の攻撃をすると全て同じ威力で模倣されるから、一気に大技で倒してしまおうかと思ったぐらいですから、かなり個性的な個体です。下手をすると僕達よりも戦闘向きだと言えますので、足りないのは経験だけです。僕達と同時期に目覚めていればきっと勝てなかったかもしれません」


「シアは私の騎士様ですから、とても頼りにしています! ですが、最初の頃はフィスさんの方が完全にシアをあしらっていましたよね?」


「そこは経験の差です。僕達には相性がありますから、シアが僕の苦手な属性を習得していたら、初めから全力でいきました」


「フィスさんの苦手な属性はなんなのですか?」


 意外と質問には簡単に答えてくれるので、もしかしたら教えてくれるかも?


「流石に自分の苦手な属性を答えたりはしませんよ? 僕が水属性だからといって、火属性が苦手ではありませんからね?」


「単純に水と火なら、お互いに苦手なのかと思いました」


「まあ、戦場で遭遇したら分かりませんけどね。戦闘補助の仲間がいたら、どんなに強くてもひっくり返るからね」


 戦闘補助というと、ライラさんを味方に付けていれば勝率はかなり変わってきます。

 ヴァイスさんとの相性さえ良ければ、例えコレットちゃんが助けに来てくれても負けていた可能性があります。

 能力が生かせていない状態で、シアだけに限定すれば完全に動きを封じていたのです。


「例えば動きを制限する能力とかですか?」


「おや? エルナ様はあいつを知っているのですね?」


「ええっと……例えばです」


 フィスさんの言うあいつという方を指しているのが誰なのかは分かりませんが、きっとライラさんの事だと思います。

 追われているとの事で、もうどこかに旅だってしまったと思いますが、言ってしまっても良いのでしょうか?

 いえ、危険な目に遭いましたが、だからと言って簡単に教えてしまうのはどうかと思います。


「ナンバー『トウェンティ ナインス』です。名前はライラと呼ばれています。以前に取り逃がしてしまったのですが、この国にまた居たんだな……まあ、今の僕には関係がないので、どうでもいいのですけどね」


 やはりライラさんの事で、間違いないようです。

 ここで詳しい事を聞いてしまうと追及されかねませんので、お話はこのぐらいで、お家に帰りたいと思います。


「お話の途中ですが、この辺りで帰りたいと思います。この魔道船は同じ場所のままなのですか?」


「移動はしていませんので、同じ場所で待機中です。船体だけは姿を消していますけどね」


「では、下に降りるだけで良いと思いますが、お願いをできますか?」


 かなりの高さですから、同じようにあの水の足場がないと降りられません。

 しかし、あの不思議な水の足場はどういう魔法で浮いているというのか、私達を乗せているのがとても不思議です。


「わかりました。それでは、僕に付いて来て下さい」


 フィスさんの後を付いていくと、とても広い室内に来ました。

 室内には何もありませんが、フィスさんが手を室内の一部に向けると床が開いて、夜空が見えます!

 するとここは魔道船の最下層なのですね。


「ここから降下する方が早いです。いま足場を作りますね」


 そう言うと、大きな水の塊の足場を作ってくれました。

 来る時は景色を見ることに夢中になっていましたが、改めて下を見ると怖くなってきました!

 落ちたら、間違いなく死んでしまうと思うと、これは勇気がいります。


「あの……この魔道船を下に降ろしたりはしないのでしょうか?」


「僕の船はちょっと大きいので、降りられる広さの場所が必要なのです。なので、浮遊島の港か大きな湖などがある場所に限定されてしまうのです」


「確かに下から見た時はとても大きな魔道船だと思いましたが……」


「要するに、この足場に乗るのが不安なのですね?」


「正直に申しますと、その通りなのです。来る時は初めての景色に見とれていたのです」


「これは、僕が活動している限り、この船の重力化の範囲内でしたら、絶対にすり抜けたりはしません。僕の魔法というよりもこの船の機能の1つなのです。僕とこの船を作った製作者のちょっとした発想です。僕に残っている記憶では、神秘的でロマンチックな気分になれると言っていましたね」


 その方は、高い所に対して全く恐怖を感じないのだと思います。

 確かに空を飛ぶのも憧れますが、透き通った水の足場で空を眺めるのは神秘的かと思いますが……これが突然解除されたらと考えてしまうと……。

 私が躊躇をしていると、シアが私をお姫様抱っこで抱き上げて、フィスさんが作った足場に移動しました。


「エルナは、私の方だけを見ていて下さい。それで怖ければ、目を瞑って私にしっかりと抱き着いていれば、何かあっても必ず地上にお連れします」


 私の不安を感じ取ったシアが、とても頼もしいです!


「はい! 私の騎士様を信じます!」


「いいなー。こんな事なら、僕が先に抱き抱えて送り届ける行動をすればよかったよ。エルナ様の苦手なことが分かりましたので、次は僕がエスコートします。それでは明日にでも伺いますので、今晩はおやすみなさいー」


 そのまま足場が下に降下していくのですが、下を見ずにシアの方だけを見つめていたので、気付いたら地上に到着していました。

 家の方を見ると明かりが付いていますので、コレットちゃんは在宅しているみたいです。

 戻ったら、まずは食事にすることにしましょう。

 そう言えば、王女様に挨拶をしませんでした。

 帰る間際に下に降りられるかを考えていたので、すっかりと忘れてしまいました。

 明日にでも見えると言っていましたので、その時に考えましょう。


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