提案に負けました
「そろそろいいかな?」
「……」
「エルナ様って、本当に我慢強いのですね? 普通の子達だったら、ここまでしたら自分から求めてくれるのに増々気に入ってしまいましたねー」
「するのでしたら、さっさとして下さい。どんなにされても私からお願いする事は絶対にありません」
あれから、魔力で私に何かをしていた事を全身にされて更に私の体をフィスさんの手で弄り回されたのですが……こちらの技術も強敵でした。
年期の入ったフィスさんのテクニックとやらで私は理性を保つのが精一杯なのです。
この歳になってまさか粗相をしてしまうことになるなんて恥ずかしくて逃げ出したい所です。
「強気な発言ですねー。まあ、次からは体の中からも弄ってあげますので必ずエルナ様を落としてみせます。今回はまずは僕の物だと思わせる為にも手を付けて置きたいのです」
私の口から求めるように言わせるのを断念してフィスさんが次の行動に移ります。
やっぱりこんな形で乙女の大事な物を失うなんて嫌です!
「シア! お願い助けて!」
「そう簡単に僕の束縛というか凍らせた縛りは溶けな……」
フィスさんが言葉を言い終える前にフィスさんが蹴り飛ばされて転がっていきます!
そして、私を拘束していた水が支配を失ったのかそのままだだの水になって解放されました。
座り込んでいる私の前にはシアがいます!
「遅くなってすみません。体の方は大丈夫ですか?」
「はい! 間に合いました! シアは私の頼もしい騎士様です!」
「私は騎士ではありません。騎士というのは剣などの武器を主体に戦う戦士の上位職と認識しています」
「それは物の例えです。それよりもシアはどうして何も着ていないのですか?」
シアが私の危機に間に合ってくれたことにはとても感謝をしています。
ですが、どうしてシアは全裸なのでしょうか?
フィスさんの水弾の攻撃で着ている物はボロボロになってしまいましたが、凍らされてしまった時はまだ衣服を着ていたはずです。
「凍結状態を解除をする為に全身に炎の付与を実行しました。私の火力上限を上げましたので衣服が耐えられずに燃えてしまったのです。経費の方は貯蓄している分から差し引いて下さい」
確か魔法の付与というのは武器などにするものと聞いていますが、シアはそれを自分の体に使ったことになります。
衣服が燃えてしまう程の熱さなのですから、とても高温なのかと思います。
それよりもシアがその熱さに耐えられるというのに驚きです。
そして、私が普段からお金に細かいのでシアもお金に関しては拘るようになってしまいましたが……シアの分として貯蓄している分から引いて欲しいなどと言うのですから間違いなく私の影響が出てしまっていると思われます。
「すごくいい所だったのに邪魔するなんて酷いなー」
シアに蹴り飛ばされたフィスさんが文句を言いながらこちらに歩いてきますが左腕があり得ない方向に曲がっています。
ですが、シアが腕を斬り落とされ時と同じで平然としていますので痛覚などがないと思われます。
私が曲がっている腕の方を直視したので、それで気付いたのかもう片方の手で元の向きに曲げ直すと左腕の感覚が戻ったのを確認する為に腕を回したりしています。
「個体ナンバー『フィフス』に再度警告します。エルナに近付くことは認められません」
「嫌だね。僕はエルナ様を自分の物にしたいと判断してしまったからね。エルナ様が僕に惚れてくれればついでに君も手に入るんだから邪魔しないでほしいんだけど?」
「そちらの能力は把握しました。次は対応が可能です」
「そうかい。普通の護衛型と違って君は色々と上限が高そうだね!」
フィスさんの言葉を皮きりにシアに対して遠距離魔法の攻撃を開始しました!
先ほどの水弾に加えて氷の矢のような物までが混じっています。
対するシアはそのままフィスさんに向かっていくのですが氷の矢が当たる寸前に同じく氷の盾のような物を作り出して相殺しています。
水弾に対しては防御もしないのですが、シアの体に触れると水蒸気になって蒸発をしています?
先程シアは自分の体に炎の付与をしたと言っていましたので、これは水弾だけでしたら躱す必要もなく攻撃を無力化できているということなのでしょうか?
「ちょっと、もう僕の攻撃に対応しているなんて速すぎるでしょ! 同時に処理ができないように水弾と氷の刃を混ぜたのに!」
そのままフィスさんに肉薄すると殴りかかったのですが、目の前に氷の壁がシアの前に立ちふさがりますがシアの拳があっさりと破壊をしました。
フィスさんはその僅かな隙に距離を取ってシアの周りで謎の爆発を発生させていましたがシアは無傷です。
シアが作り出した風の槍を止めた謎の爆発と同じかと思いますが、確か水蒸気爆発の魔法と言っていましたが私にはどのような原理かわかりません。
すると今度はシアの方がフィスさんの方に手を翳すとフィスさんの周りで同じ爆発をしています。
「どうして護衛型なのに僕と同じ攻撃魔法が使えるんだよ!?」
「先程の攻撃でフィフスが使った水魔法『スチーム・ボム』は習得しました」
「はぁ? 習得ってなんだよ!? 僕達は最初に決められた属性しか扱えないはずだよね?」
「知りません。私は登録者を守る為に最善の行動をするようにプログラムがされています」
「なんだよそれ。それよりも護衛型は特化した能力がない代わりに最小限のほぼ全ての基本魔法と個体によって特化した防御仕様が備わっているだけで相手の能力を学習するなんて聞いてないよ!」
シアは必要最低限の受け答えしかしませんので、今度はシアが大量の水弾と氷の矢を作り出してフィスさんに攻撃をしています。
その規模はフィスさんと何ら変わりかありません。
「ちょっと! 君って、いくつの魔法を同時展開ができるんだよ!」
フィスさんの方は今度は小さな水の壁ではなく、氷の大きな壁を作り出してシアの攻撃を受けています。
「まったく、同じ攻撃をもう模倣して来るなんて、これならどうですか!」
フィスさんが上空に手を翳すと上空に大きな鋭い氷の槍が数本現れました。
するとシアも同じ事をしてフィスさんと同じ数だけ氷の槍を作り出したのです。
お互いに撃ちだすと寸分変わらずに命中をして相殺されています。
「これも同じ威力とか君って本当に護衛型なの!? 中級魔法だけど威力だけは最大に設定したのに僕は傷つくよ!」
恐らく風の中級魔法の『エアリアル・ニードル』の水魔法版だと思います。
そうなるとシアには次に同じ攻撃をするには時間が必要になる筈です。
「こうなったら、ちょっと手加減ができないけど力づくで無力化させてもらうよ!」
フィスさんの周りに大きな魔力を感じます!
今までは分からなかったのですが、シアとの本日の練習のお蔭で私にも相手の魔力がある程度は認識ができるようになったのです。
私が感じている感覚はシアよりも大きいと思われます。
シアはこれに対応ができるのでしょうか?
対するシアは近づくのを止めて距離を取って、フィスさんの方を観察をしつつその場に待機をしています。
フィスさんがどんな魔法を使うのか分かりませんがシアが模倣をすることができればシアに攻撃が届く前に同じ魔法で相殺ができると考えているのかもしれません。
それでシアが対抗ができればよいのですが、とても不安です。
私が2人の様子を固唾を呑むように見ていると別の方面から介入がされました。
「我の行く手を阻む者を足止めせよ! フレイム・サークル!」
それまで、戦いに介入をしなかったコレットちゃんです!
初めて見る魔法ですが、フィスさんを囲むように炎の壁が作り出されました。
視線はシアの方を向いていますが、コレットちゃんに抗議の言葉を話しかけています。
「コレット様、これはどういうつもりなのでしょうか? 場合によってはコレット様といえどお仕置きをしなければいけませんよ?」
「その辺りでよいじゃろ? お主の最初の目的であった確認とやらができたので、目的は達成されておるはずじゃ」
「まだ、エルナ様の大事な物を貰っていません」
「それは欲が深いというものじゃ。それにいつもなら、相手に対して無理強いはしないのがお主のやり方ではなかったのか?」
「……僕は最近は欲求不満なのです。好みの子と添い寝もできない程に忍耐を強いられているのです。つまみ食いをしたくても僕の周りに配置されている侍女たちは年配の者達だけだし、少し前に嫁がせた子が最後の子だったから若い子の温もりが恋しいのです」
「お主は人では無いと言いながら、その欲求は人と大して変わらんの。むしろ、異常とも言える思考の持ち主じゃの」
「僕の最初の登録者の影響です。あの方は生涯最後まで若い娘を愛人として囲って人生を全うしました。若い娘と愛し合うのが若さの秘訣といつも言っていましたが、普通の者よりも確かに若い姿を維持をしていましたので僕にはわからなかったのですが、若い娘の精気というものを吸収していたのだと推測をしています」
「御伽話の吸血鬼でもあるまいし普通の人間にそんなことができるわけないじゃろ? それにしてもお主の最初の主はとんでもない奴じゃの」
「そのとんでもない方の子孫がレンスリット様です」
「するとわらわの隣にいる王女も近い将来にお主と変わらない娘になるのじゃろうか?」
コレットちゃんが横にいる王女様を見ながら失敬な事を言っています。
王女様は俯いて何も言いませんが……。
「レンスリット様にも色々と指導をしましたが、残念ながらそちらの方面には関心を持ってくれませんでした」
「それはなによりじゃ」
コレットちゃんとそんな会話をするとフィスさんが溜息をついて集めていた魔力を霧散させました。
「もう気が逸れましたので終わりにしますので、この炎の壁を消してくれませんか?」
「お主が納得してくれてよかったのじゃ。こんなことでお主の足止めができるとは思っておらんからの」
コレットちゃんの説得が成功したのか、フィスさんが諦めてくれたようです。
これは、止めてくれたコレットちゃんに何かサービスをしなくてはいけませんね。
「消せないことはありませんが、以前よりも炎の壁の威力が上がっていますので、面倒だと思っただけです。せっかく少しづつ魔導士の質を落としていたのにコレット様はどうも気付いたみたいですね」
「なんじゃ、お前達が間違った情報を伝えたのじゃな?」
「別に僕じゃないんだけど。昔に高位の魔導士が大きな大戦でほとんど戦死をしてしまったから、一部の才能のある上層部の者達以外には威力よりも範囲を広げるように仕向けただけです」
「なんでそんなことをしたのじゃ?」
「さあねー。それもあるけど量産型の魔道人形が便利だから、そっちの方面に流れただけじゃないのですか? 僕らも気付くまでは、黙っていれば良いと言われているだけだしね」
「誰がと聞きたい所なのじゃが、その言い方では教えるつもりはなさそうじゃの」
「コレット様は聞き訳が良いので好きですよ。それとそっちのエイスもそろそろ警戒するのを止めてくれないかな?」
今もフィスさんに対して警戒をしているシアに話しかけていますが、当然のようにシアは無視をしています。
「あー、経験値の少ない個体って面倒なんだよな。エルナ様からもお願いをしてくれませんか?」
今度は私にシアを止めるように話しかけてきました。
私としてはフィスさんに対して文句が言いたい所ですが、このままシアが戦っても勝てはしないけどなんとか負けないぐらいの勝負ができるのかもしれないと思いましたが、あちらは経験豊かなお姉さんなので、いくらでもシアを何とかする方法を持っているかと予測します。
なので、この辺りで止めるのが最善なのかと思います。
最後にシアがフィスさんを蹴り飛ばして腕をひん曲げたのでおあいこと考えれば良いのです。
衣服に関してはフィスさんから言質を取っていますので問題はありません。
「シア、警戒を解いて私の側に来て下さい」
「宜しいのですか?」
「これ以上はシアが傷付いたりするのを見たくないのです」
「わかりました。ですが、今もエルナの体に残留をしているフィフスの魔力を解除させるべきです」
私には得にそのようなものは感じられません?
フィスさんが蹴り飛ばされた時に体の中から感じていた感覚は失われているので、後は2人の戦いの間に私の火照っていた体も元に戻っています。
先ほど、フィスさんの大きな魔力が感じられるようになっていたのですから、そのようなものがあれば気付けると思うのですが?
「私にはそのようなものが残っているとは感じないのですが?」
するとシアが私の下腹部を指して答えます。
「フィフスの残留魔力がエルナの下腹部に僅かに残っています。次にエルナに何かをする時に外と中からエルナを同じ状態にする為と判断されます」
「私のお腹にですか!?」
「私の情報によれば人体が子孫を増やす為の器官と判断されます」
「私の子孫を増やす器官ですか?」
確か、人体の構造を教えてくれた授業がありましたが……まさか!
私が恥ずかしくなって赤面をしているとフィスさんが代わりに答えを言いました。
「あーあー、せっかく分からないように残したのにばれちゃうなんて、護衛型って登録者の身体情報も管理をしているから嫌なんだよね。そこに仕込んで置けば次からは早く素直になるからすごく都合がいいのにね」
「フィスさん! 早く解除をして下さい!」
「はいはい、わかりましたよ」
私に近付いてくると手を私の下腹部に向けると何かが無くなったような感じがします。
「手早く気持ちよくなれるのに残念だなー」
フィスさんはとても残念そうですが、こんなことをしているなんて抜け目がありませんね。
次の機会をしっかりと狙っている証拠でもありますので、今後も警戒をしたいと思います。
「取り敢えずは破いてしまった服の代わりを進呈をするので、僕の船にご招待をします。どう致しますか?」
フィスさんは私を自宅にでも招き入れるように丁寧な姿勢で会釈をしています。
あの大きな魔道船に乗れるのも魅力的な提案でもあります。
「あの魔道船に乗せてもらえるのですか!?」
「こんな時間ではお店もやっていないし、僕のコレクションなら、いっぱいあるから好きなのを進呈いたします。気に入ったら余分に差し上げますが如何ですか?」
とても魅力的な提案です!
フィスさんのコレクションというのが少し気にかかりますが、破いた服の代わりに高級な衣装が手に入るかもしれません!
王宮に居たのですから、上質な衣服を手に入れるチャンスでもあります。
欲しい服はいっぱいあるのですが、その為にはお金を稼がなければいけません。
私の現在の収入では全てを手に入れることは無理なので、この誘惑には勝てる気がしません。
それに一度しか乗ったことのない魔道船に乗れるのですから、空からの景色が堪能できるのでとても嬉しいのです。
そんな私をコレットちゃんが呆れたような目で見ていますが、今晩は空からの夜景が見れる機会なのですから、お言葉に甘えたいと思います。




