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Eighth Doll  作者: セリカ
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フィフス


「お久しぶりです、コレット様」


「うむ、久しぶりじゃな」


「数十年前にお別れをした時よりも可愛らしい姿をされておりますね」


「この服装はわらわの同居人の趣味ゆえ気にしないでほしいのじゃ。それよりもお主の姿もまったく変わっておらぬの」


「それを知る為に王宮を出たのではないのですか?」


「まあ、そうなのじゃが」


「その答えを手に入れたようですが、そちらの方達のご紹介もして頂けるのでしょうか?」


「うむ。現在わらわと一緒に住んでおるエルナとシアじゃ」


 コレットちゃんが私達を紹介してくれましたので挨拶をしたいと思いますが、相手の方は身なりからして身分の高い方と思われますので失礼の無いようにしたいと思います

 特にコレットちゃんと話している方の背後にいる方はどう見ても身分の高い貴族の御令嬢と推測をします。

 思わずドレスの裾を掴む仕草を仕掛けてしまいましたが、いまの私は剣が扱える軽装の服装でしたので、私に剣の基礎を教えてくれた方を真似て挨拶をしてみました。


「ご紹介に預かりましたエルナと申します。こちらは私のこい……大事な人のシアと申します」


 危うくシアの事を恋人と紹介してしまう所でした。

 皆さんからは恋人発言は知り合い以外はなるべく控えるように言われています。

 ですので、私にはこれが限界の紹介なのですが、そのシアはいつものようにだんまりです。

 違う点があるとすれば、私が自己紹介をする為に前に出たのですが、また私の前にでて相手の方を警戒するように見ています。

 シアが見ている人物はコレットちゃんと話を交わした方なので、この方がシアと同じ存在なのだと思います。


「私の名前はフィスと申し上げます。コレット様の古い友人と思って頂ければ宜しいかと思います。こちらの方はバートランド王国第三王女のレンスリット様でございます」


「そちらの方は王女様なのですか!?」


 つい驚いて声を出してしまいました!

 どうして王女様がここに来たのですか?

 それよりもいまの私の対応の方が問題です!


「申し訳ありません! 突然思ったことを口に出してしまい失礼を致しました」


 この国の王家の方に目を付けられてしまうのは得策ではありませんので直ぐに謝りました……無礼な娘と思われてなければよいのですが。お付きのフィスさんは優しい口調で応えてくれました。


「構いませんよ。ここには休養を兼ねたお忍びで来ているものなので楽にして下さい。レンスリット様も宜しいですよね?」


「はい、僕も堅苦しいのは苦手なので、普通に話してもらえると嬉しく思います」


 可愛らしい王女様は私の言葉を特に気にしていないみたいです。

 それよりも王女様はボクっ子です!

 私よりも年下に見えますので私の射程距離内の少女に思えるのですが……何故か違和感を感じます。

 相手が王女様だからでしょうか?

 いつもの私でしたら、こんな可愛い子を見たら心がとても揺り動くのですが……。


「ありがとうございます」


 取り敢えずは頭を下げて返事をしておきました。

 そうは言われても、この国の偉い様なのですから、気軽に接するのは少し躊躇います。

 しかし本来の私は身分などを気にする方ではないので、目を付けられない為に表面上は従っておこうとしか考えていません。

 余計な身分よりも自由な庶民の暮らしの方が私は好ましいと考えているからです。


「そんなに畏まらなくてもよいのです。そうですね……私はコレット様と接している感じでお願いします。レンスリット様はどう致しますか?」


「僕も歳の近い方とは親しくしたいと思っていますので……」


「流石にコレットちゃんと同じには……」


 コレットちゃんと同じ扱いとなると……私の恋人さんになってしまいます。

 その様子を見ているコレットちゃんは、私が身分の高い人との会話で困っているのをニヤニヤしながら見ています。

 いかにも「ほれ、早くわらわと同じようにちゃん付けで呼ぶのじゃ!」と言っているような表情をしています。

 見た感じではフィスさんは私と同年代か少し年上といった感じです。

 レンスリット様は添い寝がしたいと思うぐらいに可愛い子なのですが、流石に王女様にそんなことをしてしまったら私は確実に不敬罪で捕らえられて死罪になってしまうと思います。

 ですが、王女様は親しくなりたいとの希望なので抱き着くぐらいは許してくれるかも?

 私がそんな考え事をしているとフィスさんの方からお声が掛かりました。


「私のことは気軽にフィスと呼んで下さい。別に私は王家の者ではありませんし、その子と同じなので、一応は人に仕える存在です」


 王女様の事に気を取られていて、目の前のフィスさんがシアと同じ存在であることは忘れていました!

 そのシアは未だに私を守るように前に立っています。


「それでエルナ様にお聞きしたいのですが、その子はナンバーはいくつなのですか?」


「ナンバーとはシアの事ですか?」


「そうです。私の記憶にない個体とお見受けいたしましたので、宜しければ教えて頂けたらと思ったのです。先にお教えしますと私はナンバー5のフィフスとなります」


「申し訳ありませんが、私はシアのナンバーは知りません。あとシアの事を番号で呼ぶのは止めて欲しいのです」


「それは失礼を致しました。その子の様子から察すると最近目覚めたとお見受けいたします。そしてエルナ様を守るように立っているのですから登録者護衛型みたいですね。この型は殆ど破壊されてしまったはずなのですが、まだ残っていたとは驚きました」


「どうしてそう思うのですか? それともう一度言いますが、シアをそのように呼ぶのは止めて下さい」


 良い方と思ったのですがシアを物扱いするのでしたら、私は好きにはなれません!

 随分と物知りみたいですが、過去にシアと同じ存在が居たのを知っているのかと思います。


「へぇー、貴女は僕達を同じ人として扱う人間なんだね。僕としてもそっちの方が好感が持てるんだよねー」


 私がちょっと怒り気味で答えた後に、いきなり雰囲気が変わりました!?

 先ほどまでは王女様のお付きの侍女のような感じでしたが、この人も一人称が僕になりました。

 そして、私達を見る目も面白そうな物を見つけた少女のようです。

 もしかしたら、こちらが素の方なのでしょうか?

 

「おい、エルナ。フィスの素顔はこっちが本当じゃ。大人しくしている時ほど何を考えているか分からん奴じゃからの」


 私の考えていることを見透かしたのかコレットちゃんが教えてくれました。

 それにしても何を考えているか分からないというのは危険なのではないのでしょうか?


「酷いですよ、コレット様。僕はちょっと初めて見る子に興味が湧いただけですよ? どうもナンバーが分らないみたいだけど、調べる方法はあるからちょっと調べさせてね」


 そう言うとフィスさんが私の方に手を伸ばしてきた所で直ぐにシアがその腕を掴みました。


「ちょっと君のナンバーを調べるだけだから、その手を放してくれないかな?」


「エルナに対して本人が許可をしない行動をしようとしたので止めただけです」


「君って意外と力があるね。僕の知っている護衛型とは違うみたいだけど興味が湧くなー。ちょっとエルナ様にお願いがあるんだけど、この子に大人しくしているように言ってくれないかな?」


「止めたとして、私に何をするつもりなのですか?」


 私に触れようとしたフィスさんの腕をシアが掴んだままですが何か危険な予感がしてきます。

 彼女の口調とは裏腹にシアの方を見た時の目はとても友好的とは言えない鋭いものでした。

 シアのナンバーを調べるのにどうして私の方を調べる必要があるのでしょうか?

 どのように調べるのか分かりませんが、直接シアを調べた方が分るのではないのでしょうか?


「君がこの子の登録者で間違いないと思うから登録した時に体のどこかに紋章を刻んだはずだよね? あれは見れば僕達のナンバーが分るんだよ」


 体のどこかに紋章?

 そういえばシアと繋がったと思われる儀式の時に私の胸に何か魔法陣のような物が吸い込まれていった覚えがあります。

 もしやそれが紋章なのでしょうか?

 私が反射的に胸の辺りを押さえると、フィスさんが目的の物を見つけたような表情になりました。


「そこかー、大抵は手の甲に刻むのに珍しい所にしたんだね? そうなると、いま確認するにはその服装だとボタンとかないので上着を脱いでもらうか破くしかないんだけど、エルナ様はどちらが良いですか?」


「どちらもお断りいたします。周りに人がいないとはいえ、外で堂々と脱ぐ気はありません。あと服を破いたりしたら絶対に弁償をしてもらいますので、できれば止めて下さい」


「そっかー……じゃ、服は弁償してあげるから力づくで押さえ込んで破かせてもらおうかな。エルナ様って僕の好みの部類だからついでに押し倒して僕の物にしたいと思ったんだよね」


 思わず身の危険を感じて背後に少し下がってしまいました。

 今までは私が可愛い子にアプローチをして親密な関係になりたいと思っていましたが、まさか自分が同性に襲われる事態になるなんて予想をしていませんでした。

 フィスさんもボーイッシュの可愛らしい姿ですが、私よりも見た目が上そうなので私の範囲外なのです。

 自分が誰かを可愛がるのは良いのですが、私が誰かに何かをされるのはちょっと遠慮がしたいのです。


「1つ聞きたいのですが、フィスさんは女性でよいのですよね?」


 侍女の姿をしているので間違いはないと思うのですが……。


「僕達に性別なんてないけど、どちらかというと、僕の体型は女性型だね」


「私も女性なのですが、フィスさんもそちらの趣味の方なのでしょうか?」


「んー、僕の最初の登録者が可愛い少女を愛でる趣味の女性研究者だっただけなんだけど、協力している内に僕もそうすることが好きになっただけだよ。そうそう、安心して欲しいんだけど僕はかなり長い時を経験しているからその辺の奴よりも相手を喜ばせる自信はあるので、エルナ様が望むなら確認をするついでに良い夢を見させてあげますよ?」


「いえ結構です。私はされるよりもする方が好きななのでご遠慮したいと思います」


「おや? その言い方だと僕と同類に聞こえるんだけど……もしも僕がレンスリット様を登録していなかったら、エルナ様とは波長が合いそうなので登録ができるかもしれないねー。僕ってこんな思考だから血筋以外は大抵は登録者に選ばれないんだよね」


「シア! その方を私に近付けないようにお願いします!」


 今度は別の意味で貞操の危機です!

 男性に興味はありませんが、かといって同じ女性に手籠めにされるのは遠慮したいと思います。

 私の言葉を聞いてシアが掴んでいる腕をそのまま持ち上げてフィスさんを投げ飛ばそうとしたのですが、フィスさんは投げ飛ばされずにその場に舞い降りて立っています。

 シアはすぐに私を抱き寄せて後方に下がって距離を取ってから私の前にいますが……右腕がありません!


「シア! その腕はどうしたのですか!? それよりも早く止血しないといけません!」


「その必要はありません」


「しかし、シアの腕が……」


 いきなりのことで動揺をしてしまいましたがシアは至って冷静なので傷口の方を見ると柔らかい金属が斬られたような感じです。

 急いで出血をしなければと思ったのですが血など出ていません?

 これは一体どうなっているのでしょうか?

 シアの怪我も気になりますが私達人間とは違って骨などもないように見受けられます。

 そもそもシアも痛がっているそぶりも見せていません。

 フィスさんの方を見ると斬り落としたシアの右腕を自分を掴んでいた腕から引きはがしています。

 

「もう、いきなり投げ飛ばそうとするからつい切断してしまったじゃないか。まあ、いきなり片手無しのハンデは詰まらないから返すよ」


 そう言ってシアの右腕をこちらに投げるとシアが腕をキャッチして斬られた切断面に腕を持っていくとくっついて切り口もわからなくなりました!?

 そして戻った右腕も何事も無かったように普通に動いています。

 治癒魔法も不要とはシアはすごいというのか便利というのか……取り敢えずはシアの腕が戻ったので良しとしますが、どうやってシアの腕を斬り落としたのでしょうか?

 フィスさんの方を見た感じでは剣などの刃物を携帯しているとは見受けられないのですが、魔法の類なのでしょうか?

 ですが、今までにどんな相手と戦ってもシアが怪我をする事なんてなかったのに、フィスさんは何らかの方法でシアを傷付けられる手段を持っていることになります。

 シアの方を見ればフィスさんを敵と認識したのか戦闘態勢に入っています。

 非常に嫌な予感がします……私はシアを止めるべきなのでしょうか?

 あちらの言い分を聞いて私が少し我慢すれば良いだけなのですから、ここは大人しく相手の要望を聞くべきなのかもしれません……。


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