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Eighth Doll  作者: セリカ
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私にもありました!


「シア、どうですか?」


「まだ不安定ですが、十分にその剣を使いこなせていると思います」


「私にも魔力があったなんて、とても嬉しいです!」


 本日は私の新しい剣を受け取ったので、ちょっとお試しで色々と試している所なのです。

 お店の方は本日はお休みなので私の休みに合わせて武器屋さんに行ったともいえます。

 そして、この新しい剣は魔力を流すことで通常の武器では傷を付けられない相手にも対抗ができるという素晴らしい剣です。

 私は魔力判定で無能と言われていたので、魔法に関する事には無縁と思っていたのです。

 自分用の新しい剣を作ってもらえるのは嬉しいと思っていましたが、その剣の力を生かせないと考えていました。

 ですが、私が武器屋の親父さんに剣を貰ってから試し切りをしてみるといいと言われて連れて行かれた部屋に行き親父さんが指定してきた物は古い鎧でした。

 せっかくの新しい剣の試し切りで硬い鎧なんて斬ったりしたら刃が傷物になってしまうと思いました。

 私は木などにした方が良いのでは? と提案すると「嬢ちゃんの魔力を流せばあれぐらいなら十分に切ることが可能だ」と言ったのです。

 ゲイルさんと同じ仕様で作ったので私にも魔力があると思われていたみたいです。

 ですが、正直に私には魔力の素質がないことをお話しました。

 すると……「いや、嬢ちゃんにはゲイルの野郎よりも魔力があるはずだぞ?」と言われたのです?

 私の母国の検査で適性無しと私は言われています。

 あの検査は古代人の遺産に関渉ができるかの検査と同時に魔力がどのくらいあるのかを調べていたのです。

 そもそも魔力が無ければ古代人に関する物が動かすことができないので、私は無能と判定されていたのです。

 親父さんから取り敢えず試してみると良いと言われて剣を抜いてみると以前に試しに振ってみた剣よりもなんとなく私に馴染む感じでした。

 刀身の方も綺麗に仕上がっていますので、これで今からあの硬そうな鎧に使うのは躊躇われます。

 そして、私に魔力があったとしても今までに使ったことがないのですから、そもそも剣にどうやって魔力を流すのでしょうか?

 私が困っていると一緒に居たゲイルさんが自分の大剣を抜いて実践してくれました。

 すると剣の表面が薄っすらと光っているというか何かが刀身を包んでいる感じになりました。

 ゲイルさんが言うには自分の中の魔力を手の先に集める感じで、剣に集中させると後は剣が魔力を吸い上げてくれるそうなのです。

 ですが、私にはその魔力の感覚すらないので分らなかったのですが、取り敢えず剣を持つ自分の手の方に意識を集中させてみると良いと言われました。

 魔力無しの私には無理だと思ったのですが、目を閉じて私が剣を持つ両手を意識するとなにか吸われていく感じがすると私が持っていた剣が光り出したのです!

 その輝きはゲイルさんの時よりも強い光を放っています。

 ゲイルさんは驚いていましたが親父さんは予想通りだったのかゲイルさんに「お前よりも強い仲間が増えそうだな」と話しかけていました。

 それにしてもこれはどうなっているのでしょうか?

 親父さんにそのまま指定した鎧を斬ってみると良いと言われて半信半疑でしたが騙されたと思って剣を振り下ろすと硬そうな鎧が何の抵抗もなく斬れたのです!

 剣が光っているので私にも魔力があるのには驚きましたが、ただ光っているだけで正直絶対に弾かれると思っていたのです。

 私が切った鎧の方を向いたまま呆然としていると親父さんが話しかけてきました。

 

「魔力の素質があるとは思っていたが、ゲイルよりも一度に放出できる魔力がこれほど高いとはな。それよりも嬢ちゃんよ、そんなに魔力を流していて疲れないのか?」


「なにか減っていく感覚はあるのですが、今の所は大丈夫かと思います」


「ふむ、ゲイルよりも魔力容量も高そうだな。強い魔力に耐えられるように作って正解だったな」


 私の魔力がそんなにあるのですか!?

 素質が無いと国のお墨付きだったのにどうなっているのでしょうか?

 とても不思議なのですが……私の母国の検査機関が節穴だったとは考えにくいのですが、無い物があるということはとても喜ばしいことです!

 これなら私にも戦える力があるということにもなります。

 そして魔力があるのでしたら、私にも魔法が使えるのでしょうか?

 家族の中で私だけが初歩的な魔法すら使えなかったので、心の隅では引け目を感じていました。

 どうして私だけがと思うよりも、無いのでしたら代わりに剣の腕を磨けば少しは自分の存在価値を見出せると思っていた頃もありました。

 今なら私にも家族というよりも母と姉に対して自信を持てると思います。

 それよりも親父さんにはどうしてそんなことが分ったのでしょうか?

 とても気になったので、親父さんに聞いてみることにしました。


「それにしてもどうして私に魔力があると分かったのですか?」


「嬢ちゃんの手を見た時にどのくらいの魔力が受け入れられるか試しただけだぞ」


 私の手を見ていたのは剣をどのくらい握っていたなどを調べる為と思っていました。

 時間がある時は可能な限り素振りなどの練習をしていたので、私の手は母国の学園に居た頃から他の女子に比べてお世辞にもお嬢様の手とは言えませんでした。

 最初の頃は手の平に水膨れなどができて大変でしたが、その甲斐があって丈夫な手になったと思っています。

 ですが、親父さんがそのようなことをしていたなんて私はまったく気付けませんでした。


「私にはあの時にそんなことをしていたなんて分かりませんでした」


「ゲイルの奴と同じ剣を作るのだから、わしは嬢ちゃんは魔力持ちとばかり思っていたので、どのくらいなのかが知りたかったんだ。試しにわしの魔力を軽く送ってみたのだが、あっさりと受け入れるのでどこまで受け入れるのかを試したんだ。まさかわしが武器に流せる魔力以上の容量があるとは意外だったがな。わしが使うとこんな感じだ」


 親父さんが部屋の壁に掛けてあった大剣を抜いて軽く気合をいれたような声を出すと大剣が私と同じように輝きだしました!

 ゲイルさんは薄っすらとした光が纏っていたのに対して親父さんが魔力を纏わせるとまるで光の剣のようです。

 それを見ていたゲイルさんはため息をついて呟いています。


「はぁ……それは俺に対する自慢か?」


「わしは嬢ちゃんと話しているのだから、お前なんていないと思っているぞ」


「そうかよ。引退した癖にまだ現役で戦える自慢かと思ったぞ」


 武器屋の親父さんは元は冒険者だったようです。

 するといま手にしている大剣は現役の頃の自分の剣なのかもしれませんね。


「お前も嬢ちゃんぐらいに魔力が流せれば硬い魔物相手には優位に戦えるようになるぞ?」


「努力はしているが今の所はこれが限界だ。まあ普通の武器よりも耐久性と切れ味が上がるだけでも上々だが、エルナ嬢ちゃんにこれだけの力があるとはシア嬢ちゃんと同じで力押しの戦いができるな」


「その嬢ちゃんなら、大型のウォーアントの甲殻だって斬れると思うが力押しというのはなんだ?」


「この子がシア嬢ちゃんだ。信じられないかもしれないがその大型の硬い甲殻を手刀で貫くんだ。まあ殴ったら相手が怯むから、そのまま連打でぶちのめしてしまうから恐ろしく強いんだよ」


 シアの戦い方は魔核の位置が正確に狙える時は手刀で貫くか相手を一撃殴って怯んだところを一気に畳み込んでボコボコにしてしまいます。

 なので、シアの最初の一撃に耐えられないと一方的な攻撃をされてしまうので2階層のガーディアンと同じぐらいの耐久力がないと戦いにならないと思います。

 

「まだそんなことを言い出すのかと思ったが……お前が冗談なんて言うはずがないしな。まあ、その話を信じるとしてお前達に強力な仲間ができたのは良かったな」


「ああ、お蔭で俺達も下層に降りられる仲間入りができたのでありがたいぜ。しかし、エルナ嬢ちゃんにこれだけの力があるのなら戦い方を考える必要があるな」


 ゲイルさんがそう呟くと今まで静かにしていたシアが話しかけてきました。

 

「ゲイルに警告します。エルナを危険に晒す戦い方をするのは認められません。それが守れない場合は私はエルナを守ることを最優先と致します」


「おっ、この嬢ちゃんは喋れたのか?」


 親父さんは初めてシアが喋っている所を見たので驚いています。

 最初の日にシアにも武器がいるのかを質問してくれたのですが……当然のように無視をしていました。

 現在もエリックさんのお店で注文を取りに行っても「注文は?」の一言でオーダーを取ってきます。

 最近ではお客さんの方も目を見て判断をしているそうなのです。

 何を注文するか言われるまではじっと見つめているのですが、その視線に耐えられなくなって注文をしてくれるみたいなのです。

 僅かに瞳の雰囲気が変わるらしく、それが気に入ったのか密かに固定客がいるそうです。

 そのシアが発言をしたのはゲイルさんに対してだからです。

 ゲイルさん達とは普通に会話をするようにお願いがしてあるので、私の時ほどではないのですが通常の会話はしてくれます。


「それは分っている。あくまでも前に出るのは男の俺の仕事と思っているので何があっても守るつもりだ」


「わかりました。状況的にエルナが危険と判断した時はそのように行動をしますので注意して下さい」


「まあ、基本は変えずに俺とシャーリーが相手を引き付けている間にエルナ嬢ちゃんに倒してもらう戦い方にすれば大型とも戦えそうだなと思ったんだよ。なのでエルナ嬢ちゃんには期待してるぞ」


 私に期待が掛けられるのはとても嬉しいのですがこれでどのくらいの効果があるのでしょうか?

 私には剣の輝きが増しているだけにしか思えないのです?


「あの……お聞きしたいのですが、私とゲイルさんでどれ程の違いがあるのでしょうか? 私には剣の輝き具合しか分からないのです」


「嬢ちゃんはいまも継続して同じ魔力を流し続けているみたいだが疲労感はないのか?」


 親父さんが聞いてきましたが手元の方に何か流れているような感じはするのですが、特に疲労感などはありません。


「特にそう言った感じはしません」


「そうか。だとするとかなりの魔力持ちでもあるな。剣の輝きに関してはそれだけ一度に放出ができる魔力が高いので嬢ちゃんぐらいの放出量なら大抵の硬い物は斬れるだろう。後は剣の技量にも因るが、普通の奴らはここ一番の時に魔力を多く籠めるのに、嬢ちゃんは今の状態を維持したままだから普通なら魔力が早く尽きてしまう。これはわしでも無理なので嬢ちゃんはかなり素質が高いと思う」


「そうだったのですか!?」


 よく見れば親父さんの剣は通常の状態に戻っていますので光ってはいません。


「ああ、そんな事ができるのは王国の選ばれた騎士共ぐらいと思っていたのだが、この町に埋もれているよりもいっそ王国に志願したら上位待遇で取り立ててもらえるかもな」


「それはいいことだと思いますが、私には興味がないことですね」


 私の場合は身元を調べられてしまうと、もしかしたらまずいことになってしまう恐れがあるので、国などに仕えるのは宜しくないと思われます。

 それに万が一にも王宮勤めなどになってしまったら、せっかく得られた自由を失ってしまいます。


「まあ、本人の自由だからな。もしもその気になったらここの領主に話はしてやるぞ? 一応だが昔からの知り合いでなので優秀な人材を見つけたら紹介をして欲しいとも頼まれているからな」


「その時はお願いしたいと思います。1つお聞きしたいのですが、ここの領主様は人材を募集でもしているのですか?」


「まあなんだ……現在この国は2人の王子の後継者問題で国が割れているのは知っていると思うが。詳しくは言えないがここの領主も片方の派閥に属している。なのでもしかすると現在の国王様が亡くなられると内戦状態になるやもしれんので、公にはなっていないが人材確保をしているんだよ。最近は国王様の体調が良くないらしく、明確な後継者を選ばなかった場合は確実に荒れるかもしれんが、選んでももう片方が黙っていないだろうな」


「そうでしたか。でも王様が後継者を決められたらそれに従うのが普通なのではないのですか?」


「この大陸で最強の国家と言えば聞こえは良いが個々の派閥が力を持ち過ぎてしまったので、国を半分に割っても1つの国家として成り立つのかもしれん。前回の戦争でこの国は勝ち過ぎて領土を広げた結果、皮肉にも個々の派閥の力が増大したのが原因とも言われている。いまの王様はその勢力を纏めている良い方なのだが……2人の王子も自分こそがこの国の後継者と宣言しているし、その後見人も同じぐらいの実力者が付いているので王様としてはどちらの勢力を認めるかで頭を悩ませているらしい」


「私は王様の命令は絶対なのだと思っていたのですが、臣下の方が力を持ち過ぎるのは大変なのですね」


「まあ、わしらには関係のない話だが争いになる前にこの国から出て行く方法もあるぞ? その時は北の『アストリア王国』まで行けば巻き込まれなくても済みそうだが、内戦状態になればどの国も動くかもしれんので安全な所などないかもしれんがな」


 人材募集の話を聞くつもりがとんでもない話を聞いてしまいました。

 もしかしたら、私がこの国にいる間に内戦状態になるかもしれないとは……その時は樹海の古代都市に逃げれば巻き込まれずに済みますが……この町で知り合いの方達もいますので自分だけ逃げるのは悩んでしまいます。

 お店を出てゲイルさんにも確認をしたのですが、この話は数年前から噂になっているので王様が健在の内になんとか上手くまとまって欲しい皆さんは思っているようです。でも、権力を持つ方達は違いますからね。

 その後はゲイルさんと別れてコレットちゃんの自宅に戻って剣の練習をしていたのです。

 取り敢えずは先の未来のことよりも次の探索までに新しい剣に慣れておこうと思ったのです。

 魔力の使い方も慣れないといけませんからね。

 そして、練習の前にシアに大事なことを警告されましたので、その事をゲイルさん達にも話すか思案中です。

 そろそろお昼ごろかと思われた時に突然上空が暗くなってきたのですが、どうしたのでしょうか?

 上空を見上げるとそこには……。


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