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Eighth Doll  作者: セリカ
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謝罪と道しるべ


 あれからしばらくはライラさん達が現れる事はありませんでした。

 私がお店に働きに行く時も2人だけでは心配だと言ってコレットちゃんも同伴してくれる事になりました。

 シアの感知が出来る範囲内に入れば分かるので事前に距離を取るなどの行動はできると思いますが、その時はコレットちゃんが少し距離を取っていつでも魔法が撃てるようにしておけば良いとのことです。

 私には何も案など浮かびませんでしたので、家に引き篭もっているコレットちゃんが出掛けるのであればそれは良いことだと思って賛成を致しました。

 後ほどシアが恐らくライラさんよりも感知ができる範囲が自分の方が広いと教えてくれましたが、その時は私を抱いて即座に移動すれば遭遇しなくて済むと教えてくれましたが、コレットちゃんがやる気なのですからそのことは黙っているようにしました。

 ですが……コレットちゃんはお店に着くとシャーリーさんと同じ席で自宅の書庫から持ってきた書物をずっと読んでいます。

 酔っているシャーリーさんがいくら絡んできても無視をして読書に夢中です。

 お昼の作り置きはしてこなかったので、私と一緒に遅めの昼食も取っています。

 普段のコレットちゃんはずっとこうなのでしょうか?

 本が大好きなのは分かりましたがこれでは不健康かと思いましたので、エリックさんに相談をして私と一緒に働かないかと提案をしました。

 ですが答えは……「わらわに接待などをさせるつもりなのか? そんな事はしとうないのじゃ! いまのわらわはエルナの護衛という立派な仕事をしておるので問題はないのじゃ!」と、言われてしまいました。

 私の護衛をしてくれるのは嬉しいのですが、果実酒をたまに飲みながらシャーリーさんの食べている料理をさりげなく摘みながら読書をしているだけにしか見えません。

 シャーリーさんは酔っているのでコレットちゃんにつまみ食いをされているのにまったく気付いていないのか普段よりも料理の追加が増えていることに違和感を感じていません。

 大した度数がない果実酒とはいえそれをコレットちゃんも昼間から飲んでいるのですが……これで護衛が務まるのでしょうか?

 陽気になっているシャーリーさんと違って表情がまったく変わりません。

 私と一緒に飲んでいても必ず私が負けてしまいますので、酔っているコレットちゃんを介抱をした事がありません……私のささやかな夢は叶いませんでした。

 シャーリーさん程は飲んでいませんが、コレットちゃんはアルコールにとても強いのかと思います。

 そんな日が数日続いたと思ったら、シアが私に警告をしてきました。

 近くにライラさんの反応があるとの事です。

 こちらのお店に向かっているみたいですが、同じ行動をしている生物の反応が無いので単独行動とシアは予測をしています。

 その事をコレットちゃんに話すと店の前で待機をして先に話をすると言い出しました。

 現在はお昼時も過ぎて時間ができたので片付けと掃除をしていただけですが、店内にはまだ何人かいます。

 どちらにしても、お店には酔っぱらっているとはいえシャーリーさんもいますし、エリックさんにも話はしてあります。

 万が一にもライラさんの能力で行動不能にされてもシアを抑えるので精一杯みたいなので、ライラさんだけでしたら私達にも勝ち目はあります。

 逆に私達を行動不能にするとしてもその時はシアを止める事ができないので、こちらも十分に勝算があります。

 前回の様子を見てもライラさんは戦闘向きではないみたいなので、1人だけでしたら何とかなるかと思います。

 問題なのはお店で何かあるとエリックさんに迷惑が掛かるのでそれだけは避けたいと思いましたが、エリックさんが逆にそのような力があるのなら人が多い方が相手の能力の分散ができるので人気のない所よりは良いと言ってくれました。

 もしもシアが戦うことになったらお店が壊れてしまうかもしれないので、その時は弁償をしないといけませんから……そうなってしまったら、シアが売らずに残している魔核を売却して何とかするしかありません。

 シアは賛成をしてくれると思いますが、私の心の借金としてしっかりと覚えておくつもりです。

 コレットちゃんが店の前に待機をしてからしばらくすると店内に戻って来ました?

 話を聞くと私に話したい事があるのであって欲しいとのことで、武器などを持っていない代わりに大きな鞄を持っているそうです。

 なんでも私に渡したい物らしいのです。

 中身はコレットちゃんが確認をしたので武器の類ではない事はわかっているそうですが、コレットちゃんは「余計な物を持ってきおって……」と呟いていました。

 私はライラさんが悪い人ではないと思っているので、話をしたいと思いましたから、コレットちゃんにお店の中に来てもらうようにお願いをしました。

 コレットちゃんはそのまま距離を取る為に入り口で私達の方を見張っていますので、シアが私の所まで案内をしに行きました。

 少しでも入り口のコレットちゃんと距離を取る為と他の人に会話が聞き取りにくいように店内の端であるシャーリーさんの定位置の隣のテーブルに来てもらいました。

 お店の常連さんはシャーリーさんの近くにいると絡まれることを知っているので、混んでいない限りは近くに来ません。

 別に悪い意味ではないのですが、アルコールの摂取量が増えてしまうのでお店としては良いことなのですが、本人の懐が軽くなってしまうからです。

 無限のように飲みまくるシャーリーさんの相手をしていたら追加がとても増えてしまいますからね。


「こんにちはお嬢さん。この間はごめんなさいね」


「こんにちはライラさん。こちらの席に座って下さい。私にお話があると聞きましたがなんなのでしょうか?」


 私としては話すことなどはないのですが、訪ねてきた方を追い返すことがちょっと躊躇われたのです。

 謝られましたが、どんな話なのかは知りませんけど聞くだけですからね?


「そんなに警戒をしなくても私はその子と違って単独では一般の人と変わらない能力しかないわよ」


 そうは言っていますが相手を無力化できるのでしたら、戦闘能力がなくても動きを止められてしまったら相手は無抵抗なのでナイフなどで心臓を一突きで相手を倒すことが可能です。


「エルナに対して手を向けた時点で背後から貴女のコアを破壊します。背後の私に向けようとした時点でも同じです」


「わかっているわよ。これだから能力を見せたら相手を倒しておかないと駄目なのよね」


 シアにライラさんの事を聞いているのでこの状態でしたら対処は可能です。

 現在ライラさんは椅子に座って手はテーブルの上に伏せています。

 ライラさんが相手の動きを止める為には手の平を相手に向ける必要があるのです。

 シアもそうですが魔力の類を相手に発動する為には手や指で相手を指定しなければいけないそうです。

 シアの場合は指で対象を指定しているので無詠唱で魔法が使えているのです。

 そして、ライラさんの場合は手の平で相手を掴むイメージで相手を拘束しているのだとシアが予測したのです。

 私達の動きを止めたりシアを完全に抑えていた時も相手に対して手の平を向けていたので、シアが言うには次に戦う時は腕を落とせば無力化ができると言っていましたが……そこまでしなくてもと思ったりもしています。


「それでお話とはなんなのでしょうか? 申し訳ありませんが、お誘いの類は絶対に受けるつもりはありません」


「今日は私が個人的に来ただけなので、彼はこの事を知らないわ。本当は貴女達を殺したいと言っていたけど、彼の怪我も完治していないし、時間も無いのよ。それでお話というのは、私達はこの町を出るのでもうちょっかいを掛けたりしないということよ」


 あのヴァイスさんという人はきっとまだ寝込んでいるのかもしれません。

 怪我の方は腹部の骨が折れているみたいですから、高位の回復魔法が使える人がいないと体の内部の治療には時間が掛かると聞いたことがあります。

 ああいう人はベッドに大人しく寝ていればいいのです。

 その方が世の女性が不幸に遭わずに済みます。

 それで他の町に行くみたいです。

 移動の方は荷台に縛り付けて行くことをお勧めしたい気分ですが、どうして他の町に行くのでしょうか?


「他の町に行くのですか?」


「ちょっとこの町にいるとまずいことになったのよ」


 この町にいられないような悪い事でもしたのでしょうか?

 考えてみたら、当然でしたね。

 私も危うく毒牙に掛かる所でしたが、操られている人がいるのですから普通に考えてもあの人は悪人です。

 

「差し出がましいとは思いますが、悪い事をしたら罪を償うべきかと思いますよ?」


「貴女は良い子みたいだけど、この世にまっとうな者達などいないわ。偉そうにしている王族や権力者達も元をただせば盗人みたいなものよ?」


「ライラさんの言い方ですと悪い人達が国を治めているように聞こえますが……」


「私はただ知っているだけよ。調整実験体の娘が過去のことを調べているみたいだから、一緒に調べていればいずれは真実に辿り着くわ」


 調整実験体?

 それは誰の事ですか?

 娘と言いましたが……昔の事を調べていて私と一緒に調べる事が可能な人物はコレットちゃんしか思い付きませんが……まさかコレットちゃんがそうなのですか?


「済みませんがいま聞いた実験体とは誰のことなのでしょうか?」


「勿論、貴女と一緒に居るエルフと呼ばれる種族の娘の事よ」


「コレットちゃんは実験体などではありません! 私の大事な人の1人です!」


「ちょっと声が大きいわよ? 私は構わないけど他の人が聞いたら疑問に思うわよ?」


「済みませんでした……でも……」


「ユニット持ちなので知っているのかと思ったら、知らないみたいね。そうだわ。貴女にこれをあげるわ」


 ライラさんはシアに一言断りを入れて首に掛けていた四角いペンダントを外すと私に渡してきました。

 よく見ればペンダントではなく綺麗なカードのように見えます。

 これはなんなのでしょうか?


「これはなんでしょうか? 綺麗なカードのように見えるのですが?」


「ある施設に入る為の鍵よ。使い方は後ろの怖い娘が知っているわ」


「ある施設ですか?」


「そこに過去の資料が眠っているので自分の目で確かめればいいわ。あのエルフが知りたがっていたことも分かると思うけど同時に知らなければ良かったことも知ることになるわね」


 要するに古代人の情報が眠っている場所に入る為の鍵なのだと思います。

 しかし……。


「どうして私にくれたのですか?」


「知りたいんでしょ?」


「それはそうですが……」


「私の気まぐれよ。もっとも私がそこに行くことはもうないので不要な物だけど、貴女達には価値があると思うので、それもお詫びの1つと思ってもらえればいいわ」


「古代人の情報の鍵ですか……それでこれはどこで使うのですか?」


「自分で調べてと言いたいけど、ミッドウェール王国のとある危険地帯の峡谷よ。興味があるのなら後は自分で調べて行ってみなさい。私が言っていることがきっと分かるわ」


 まさか自分の母国であるミッドウェール王国ですか!?

 私のことが忘れられるまではもう二度ど帰るつもりはなかったのですが、古代人の事を知る手掛かりの鍵が手に入るなんて……コレットちゃんに話をしたら絶対に行くと言い出すに決まっています。


「それと私が持ってきた鞄があるのだけどそれも貴女にプレゼントするわ。こっちは彼が破ってしまった衣類関係の代わりだけど、私が貴女に似合うと思って用意したのだけど気に入ったら身に着けて頂戴ね」


 破かれた衣類と言うと……あの鞄の中には代わりの服が入っていることになります!

 ライラさんが私に似合うと思って選んでくれた物なので大人の女性のライラさんが選んだのですから、きっと上品な服なのかと予想します。

 私としては、こちらの方がちょっと嬉しく思います!


「それはありがとうございます!」


「それじゃ私は行くので、この国もしくはミッドウェール王国に行くとしたら会うことはないわ」


「別の国に行くのですか?」


「そのつもりだけど行き先は教えられないわ。貴女も気を付けた方がいいわよ。それじゃ」


「よく分かりませんがわかりました。あと鍵と衣服はありがとうございました!」


 そのまま席を立つと出て行ってしまいました。

 何に気を付ければ良いのか分かりませんが、私が気を付けるとしたらミッドウェール王国に行ったりしたらになります。

 行くにしても、私としては忘れられていると予想する数年後が望ましいかと思います。

 なので鍵の事はコレットちゃんには内緒にしておきます。

 隣にいたシャーリーさんは酔っているのにしっかりと聞き耳を立てて覚えているみたいです……いつの間にか新しいワインの瓶を私にちらつかせています。私が「そのワインを奢ります」と提案すると「エルナちゃんの心遣いでしっかりと忘れられそうねー」と言ってワインを開封して飲んでいます。

 あのワインは確かちょっとだけ高い物なので私の本日のお給金から引いてもらうとして……高い口止め料になりそうです。

 後ほどお家に帰って鞄を開けると私に似合いそうな可愛い服と沢山の下着が入っていました。

 大人の女性が身に着ける物が多かったのですが……当分は買わなくても済みそうです。

 変わった物も入っていましたが、肝心な部分が欠けている物は意味が無いのでは?

 物色していた私をコレットちゃんが見ていてそれの使い道を知っていたので私にはまだ早いとというか不要だと断言していました。

 何故かと聞いても答えてくれませんが、取り敢えずは仕舞っておきましょう。

 他にも何を話していたのかを色々と聞かれましたが、古代人の施設に入る為の鍵の事は伏せておきました。

 そのうちに教えたいと思いますが、しばらくはミッドウェール王国に行きたくないと思っているからです。


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