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Eighth Doll  作者: セリカ
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数字持ち


「分かりました。それでは御一緒に食事をさせてもらいたいと思います」


「ありがとうね。もう1人の子も一緒に同席をしてもらっても良いかしら?」


 ライラさんは、隅の席でシャーリーさんの相手をしているシアの方を見て話しかけてきました。


「はい、シアも同席させてもらいます。それではメニューはこちらになりますので、ご注文をお願いします」


 シアの同席もご要望でしたので、私としては安心をしています。

 隣にシアがいれば何かあっても私を守ってくれるので心強いのです。


「それじゃ……これとこれと、あそこの酔っ払いが飲んでいる物をお願いするわ」


 あそこの酔っ払い……シャーリーさんの扱いがいつも通りに切ないです。

 最初の頃は気になりましたが、ここに来るお客さんがアルコールの類を注文する時は殆ど同じ事を言います。

 きっと美味しそうに飲んでいるから、あのアルコールが一番美味しいと思われているのかと思います。


「畏まりました。もう1人の方は何に致しますか?」


「彼は私と同じ飲み物だけでいいわ」


「はい、わかりました」


 このヴァイスさんという人は、お店に入ってからずっと何もしゃべりません。

 今も椅子に座って頬杖をついて詰まらなさそうにしています。

 地下迷宮で会った時は、もっと偉そうというか……別の印象を受けたのですが。大人しいのです。

 ただ、時折感じる視線は何か品定めでもしているような感じなので、私は好きにはなれません。

 過去にこのような目で見られたことが幾度とありましたので……。

 エリックさんにライラさん達の注文を伝えてから、私とシアの分の食事を作ってお2人の席に行くことにしました。

 私達以外の人といる時は、シアにも普通に食事を取ることをお願いしているのです。

 今日はシアに食べさせてあげることができないのが少し残念です。

 ここに来てから色々と料理も教えてもらったので、私の作った食事の感想を聞くのも楽しみの一つなのです。

 向かいに座ることを断ってから、椅子に座るとライラさんが話しかけてきました。


「貴女達の食事の時間に申し訳ないけど、食事をしながらでいいので少しだけ質問に答えて欲しいの」


「はい。それでは食べながらで失礼しますが、私達にどんな話なのでしょうか? こないだの事でしたら、ゲイルさんとお話をした方が良いかと思うのですが……」


「それもあるけど、彼等の事は知っているので貴女達のことが知りたいの。単刀直入に聞くけど、貴女はどこから来たの?」


 この人は私がこの町の人ではないことを知っているのですか!?

 地下迷宮に近いトリスの町は探索者が多く滞在しているので、この国の首都ほどではありませんが大きな町です。

 なので人口が数十人の村と違って、私達が増えてもよそ者だとは分らないと思ったのです。

 ここのお客さんにしても新しく入った子とぐらいにしか思われていなかったので、安心をしていたのです。


「私達は少し前までは近くの村にいたのですが、最近になってこの町にきたのです」


 一応、無難そうな返事をしておきました。

 ゲイルさん達にも私が『ミッドウェール王国』出身とは話していません。

 私には実家や学園で養われた平常心で答えられる表情もできますので怪しまれるとは思いませんが……。


「この町の近辺の村に貴女がいた記憶は無いのだけど、それでいいのかしら?」


 記憶!?

 この人は、この辺りの人を全て把握しているのですか!?

 そんな事ができるなんて……表情を崩さないつもりでしたが、いきなりの返事に早くも私はボロが出てしまいそうです。


「私は……」


「貴女の隣にいる娘も私と同じで、一度出会った人物は全て記憶しているはずよ?」


「シアがですか!?」


 シアの方を見ると話には参加する気がないかのように黙々と食事をしています。

 私がお願いをしないと殆どの人と会話はしません。

 

「言い方を変えましょうか? 私達は生物を『個体』として認識するわ。その子も同じ事を言っていなかったかしら?」


 確かにシアは最初に私の事を『個体名』と呼んでいました。

 やはりこの人はシアと同じなのでしょうか?

 どう見ても普通の人と変わらないのですが……そう言えばコレットちゃんもシアと同じ別の方の事を教えられるまで、普通の人と思っていたぐらいだと言っていました。

 この場合はなんと答えたら良いのでしょうか……私が答えに詰まっているとあちらから答えを教えてくれました。


「その子は目覚めたばかりなのじゃないの? 私達は長い時を経ると普通の人と変わらない人格を手にいれることができるの。人格に関しては初期の頃の『登録者』の影響力が大きいのだけど、貴女がその子の『登録者』で間違いないわよね?」


 この人は間違いなくシアと同じ方かと思います。

 シアも私を『登録者』と言っていました。

 確認の為にシアと相談をしたいのですが、シアは私の質問に正直に答えてくれるのですが……この場合は内緒話などがしたいのです。

 周りに私達以外の人がいる時は小声でひそひそ話をすることは教えましたが、今はそれを目の前でするのは……。


「平静を保っていたみたいだけど、これでも長い時間を過ごしているので、多少は言葉の真偽を見分けられるわ。別に責めているわけじゃないんだけど、その子って戦闘型なの?」


「私は、そういうことは分かりません」


「彼等の実力で、ガーディアンを倒すのは無理よね? その子の戦闘能力が戦闘型の魔人形よりも高いのは間違いないと思うのよね」


「あの……シアをそのように考えるのは止めて欲しいのですが……」


 私の言葉にライラさんが少しだけ驚いています。


「貴女は私達をそういう風に見てくれるのね……」


「日常の会話だけでしたら、私には貴女が普通の女性にしか見えません」


「貴女の気分を害したのなら、謝罪するわ。正直にその子が羨ましいわ……。それじゃ話を変えるけど私達の仲間にならないかしら?」


「私達をですか!?」


 ライラさん達の目的は私達の勧誘だったようです。

 ですが……。


「済みませんがお断りさせてもらいます」


「私達といれば彼等よりも最深部に行けるようになるわよ?」


「申し訳ありませんが、私の目的は地下迷宮の探索ではありません。私が求めているのはシアと一緒に暮らせる日常です。ゲイルさん達と行動する方が私には向いていると思います」


 シアの秘密を知る為にも最下層にも行ってみたいし、浮遊島にも行きたいとも思っています。

 でも、それはゲイルさん達と一緒にいずれ行きたいと思っているのです。

 天空人の遺産を調べたいコレットちゃんとの約束もありますので、私が仲間と思っているのはゲイルさん達です。

 武器屋さんで聞いた話が正しければ、ヴァイスさん達には良くない噂もありそうなので、ご遠慮したいと思います。


「日常ね……それじゃ無理は言えないけど、私から忠告しておくと目立たない方がいいわよ。特にその子はね」


「誘って頂いて済みません。特に目立つことはしていないと思いますが、シアに何かあるのですか?」


「その子も私も範囲内にいる相手を感知できるのだけど、王国が所有している個体に目を付けられたら、強制的に狙われるわよ」


「王国にですか?」


「感知範囲は個体差によるけど、私達は特有の反応を示すので『数字持ち』だと知られてしまうわ」


 特有の反応というのは、シアが生物でも無機物でもない反応と言っていた事だと思います。

 そこにいま『数字持ち』と言う新しい言葉が出てきましたが、それは何なのでしょうか?


「あの……その『数字持ち』とは何なのでしょうか?」


「私達が唯一の特性を持った個体のシリアルナンバーよ。製造情報を持っている者に知られると能力が知られてしまうので、番号は教えられないけどね」


 すると……シアに与えられている数字が分れば能力が分るわけですね?

 それは相手に知られると対策されてしまうので、もしも分かったら、知られないようにした方がよいのですね。


「私達の仲間になってくれたら、私の能力を教えてあげるけど、その子と私が組めば他の個体にも有利になると思うんだけど……私の交渉の時間は終わりだから、後はね……」


 ライラさんの話を聞いているとその『数字持ち』と呼ばれる相手と戦うこともあるみたいです。

 これだけ友好的に話してくれるライラさんを見ていると争いにならないと思うのですが……人格に関しては初期の頃に出会った人物に左右されるみたいですから、私の大っ嫌いな姉が登録者にでもなっていたら、嫌がらせをする嫌な人格になってしまうかもしれません。

 

「それじゃ行くけど、他の個体には気を付けるのよ。私も隠れている身だから、特に単独での夜道などは用心しているわ」


「色々と教えて頂いてありがとうございました。最後に1つだけ教えて欲しいのですが、もしもシアが王国の方に見つかったらどうなるのでしょうか?」


「間違いなく軍属を強要されるわ。私達は使いようによっては強力な戦力となりうる存在だわ。従えばそれなりの境遇が与えられるけど、逆らえばどうなるかは想像に任せるわ。過去に私達みたいに偶然目覚めた個体の力で、どこかの浮遊島の偉い様になった者もいたので、能力次第では売り込むのも手かもしれないわね。そうすれば好待遇は得られるけど、いざとなったら他の国と戦う戦力として扱われるけどね」


「そうですか……わかりました。ありがとうございます」


 シアの存在が国の偉い人に知られてしまうと私の平和な日常が終わりを告げてしまうようです。

 能力次第と言われましたけれど、私はシアの能力など知りませんが、確か戦闘型とは言っていなかった気がします。

 色々と出来て格闘戦がとても強いとだけ理解していますが、その前にシアは私の大事な恋人です!

 もしも、従って好待遇を得られたとしてもシアをそのように扱うのは認められません。

 仮にこの国で知られたとしたら、樹海の古代都市に逃げてしまえば恐らくは追跡は無理かと思います。

 あの古代都市の出入りに関しては、現在はシアの許可が必要と聞いています。

 それと気になるのは、逆らった場合はどうなるのでしょうか?

 シアは必要とされると思いますが、私は何の力も持たない小娘ですから、きっと……いえ、今は考えないようにしましょう。

 話が終わるとライラさん達は支払いを済ませて立ち去りました。

 最後にもう1人のヴァイスさんの表情がとても気になったのですが……もしかしたら、地下迷宮でもう一度遭遇をしたら、何かあるかもしれません。

 後ほどゲイルさんが戻ってきたら、相談をしておいた方が良いかもしれませんが……どこまで話したら良いのでしょうか?

 コレットちゃんに話したら、全てを聞き出されると思いますが、王国に関しては別の意見が貰えるかもしれません。


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