お腹が……
「あの……エーさん……いつになったら、外に出られるのか教えてもらってもよいですか?」
「この道をしばらく進むと分岐路があるので、右に曲がってしばらく進むと広い場所に出ます。そこに進める通路が5ヵ所あるので一番左の通路を進んでから、裂け目があるのでそれを飛び越えると上の階層に続いている坂があります。そのまま登ってすぐに分岐路があるので……」
「ちょっと待って下さい! それはどのくらいの時間が掛かるのですか!?」
道に詳しいのは助かります。
先ほどから、この少女はしばらくと言っているのですが、私の感覚では最低でも2時間以上も歩いているのです!
最初の頃は色々と質問をしたりして話しかけていたのですが、既に半日ぐらいは歩いていると思います。
少女のことをエーさんと呼んでいるのは、名前が無いと話しずらいので取り敢えず呼ばせてもらっています。
最初の頃は無視されていたのですが……ずっと呼んでいるうちに自分のことだと気付いてくれました。
美少女に無視をされるのは初めての経験でしたので、私はとても悲しかったです……。
それを踏まえると、今までの子達は私に貴族の身分があったので、返事をしてくれたのでしょうね……。
このことは良い経験になりました。
相手と本当に仲良くなるのには身分など不要と勉強を致しました。
それは今後の参考に致しますが、いまはこの洞窟からいつ出れるかです。
「時間ですか? いま話した場所までなら夜が明けるくらいの時間になるかと思います」
「いま聞いた場所までなのですか!? では、外までは……」
「いまのペースでは5日ほど掛かります」
「そんなに掛かるのですか!?」
すぐに出れると思っていたのですが、かなり深い洞窟かちょっとしたダンジョンなのではないのでしょうか?
外に出るのに5日も掛かってしまったら、食べる物もないので体力が持たないです……。
水に関しては、この子の魔法で出してもらえたので喉の渇きだけは満たすことができたのですが、食料はどうするのでしょうか?
この子が何か持っているとは思えないのですが……。
「私だけでしたら、もう外部に出られました。貴女の歩く速度に合わせていたのです」
私の歩く速度に合わせていていてくれたのですか!?
歩きでそんなに日数が掛かる道のりをこの少女だけならもう出られたと聞きましたが……エーさんの運動能力はすご過ぎます!
それなら最初に教えてくれれば良かったのに……いえ、この子が私の為に歩く速度を合わせてくれたのですから不満の前に感謝するべきです。
本来でしたら足手まといの私など見捨ててしまうのが正しいのです。
ですが……朝に食べたクッキー1枚と喉が渇いた時に飲ませてもらっていた水しか口にしていません。
恥ずかしいことなのですが、私はもうお腹がとても空いて歩き疲れていますので体力的にもそろそろ限界なのです。
そこに現在の状況を教えてもらったのですから、せっかく助かったのですが疲れが一気に襲ってきたのか、私は座り込んでしまいました。
少女が私を心配してくれたのか、座り込んだ私を覗きこんできます。
顔が近いのでこのままキスがしたいと不意に思ってしまいました……このまま口移しで水を飲ませてもらう提案をしたら、もしかして叶えてくれるかも知れません。
私が黙って座り込んだままなので、少女の方から話しかけてきてくれました。
「どうかしましたか? また、水が欲しいのですか?」
「確かに喉も乾いていますが……出口までそんなにあると分かったら、一気に疲れが出てしまったのです。それに……お恥ずかしいことにお腹が空いてしまってもう歩くのが辛いのですが……エーさんは先ほどから水もお飲みになっていないのですが平気なのですか?」
考えてみたら、私が水を飲ませて頂いている時もこの子は水分を取っていません。
疲れた様子もみられないし、私と違って黙々と歩いています。
私と違って体力や精神力が高いのでしょうか?
あんなに強いのですから、きっとそうに違いありません。
ですが、次の言葉を聞いた時は意味が分りませんでした。
「私には基本的には不要です。無理に摂取をする必要はありません」
「必要がないと言うのは食事のことなのですか!? いくらなんでも食事を取らないと死んでしまいますよ?」
人が生きる為には食事を取らなくては生きていけないのですが、この少女は違うのですか!?
そう言えば表情の変化もあまり見られないのですが……まさか本当にお人形さんなんてことはないですよね?
こんな可愛い子なのに別の種族なのかも知れませんが……もしかしたら、精霊が実体化しているのでしょうか?
歴史の伝承などで、まれに実体化をした強力な精霊が存在すると聞いたことがあります。
それでしたら、あの強さや食事を不要と言われても納得が出来ます。
「先程貴女がくれた物でしたら食べたいと思います。私には魔力さえあれば食物を摂取する必要はありません。緊急時は何かを摂取することで強制的に魔力に変換することもあります」
「魔力とは魔法を行使する時に必要かと思いますが、エーさんは魔力があれば食事などが不要なのですか!?」
「情報が欠落しているのでわかりません。ですが魔力が私の活動に必要なだけです」
「もしかしてエーさんは精霊さんが実体化した姿なのですか?」
「違います。私自身に関しては同調に失敗して記憶が失われてしまったのです。ただ、力を蓄えなければいけないとだけ覚えているだけです」
では、この子は記憶を失っているのですか?
何かに失敗したと言ってますが、それが記憶を失った原因らしいのですが……力を蓄えると言うのは魔物を倒すことなのですか?
「それは魔物を倒すことで蓄えられるのですか?」
「そうです。魔物の体内にある魔核から欠片が得られるので、それを回収をしているのです」
魔物を倒すと体内から魔核と呼ばれる物が手に入ると聞いています。魔物の強さに比例して純度が増すので強力な武器や防具の材料になると聞いたことがあります。
この少女はそれを得るのが目的らしいのですが……そのような話は聞いたことがないのですが、この少女は一体何者なのでしょうか?
突然の話に驚きましたが、私が次の質問をしょうとした時に私のお腹から可愛らしい音が……お恥ずかしいことに空腹感の限界のようです。
「いまの音は貴女から聞こえたと思います。生物が空腹状態になると起こる現象と思われます。何か食べたいのですか?」
「お恥ずかしいことですが……そうです。ですが……もう食べる物もないので外に出るまでは水で空腹感を誤魔化しますのでまた水を出していただけますか?」
食べる物が無くても水があるだけでも素晴らしいことです。
このような状況なのですから、いまは我慢しなければいけません。
外に出られれば何か食べれそうな果実があると信じて耐えなくてはいけません。
この少女がいなければ水すら得られないのですから、この洞窟で魔物に襲われて殺されてしまうか迷って行き倒れになっていたはずです。
そう思えば感謝をしなければいけません。
私が水を作り出して貰う為に両手で受けようとすると手のひらに見覚えのある物が乗せられています……これは、旅の道中でも食べたことのある干し肉の保存食です!
先ほど食事が不要と言っていたのですから食べる物など持っていないと思ったのですが、それ以前にどこから出したのですか!?
少女の服装はお世辞にも良いとは言えません。
いま着ているのは、所々が破れた古くなったワンピースだけなのです。
疑問に思いましたが、空腹感の方が優っていたので、私は干し肉にかぶりついてしまいました!
いつもなら塩辛くて美味しくないのですが、疲れと空腹感が限界でしたので、とても美味しく感じます。
私が食べ終わるとまた目の前に出してくれるのですが、どこから出したのかを聞くよりも食べることに集中をしてしまいました!
今の私はとてもお腹が空いていましたから……。
何枚か食べ終えると私が満足したと判断をしてくれたらしく、自分の両手に水を作り出して私に差し出してくれるので喜んで飲ませてもらいました。
可愛い少女に餌付けされているみたいですが、このような場所なのに私は大満足です!
お腹が満たされて私が感謝の言葉を述べると、ついてきて欲しいと言われるのでついて行くと、ひんやりとした広い場所に出ましたが、行き止まりのようです?
少女が通路の入り口に手を翳すと通路が塞がれてしまいました。
洞窟の行き止まりの密室に少女と2人っきりになってしまいました。
もしかして……この少女も私と同じ思考の持ち主だったのでしょうか!?
私としてはとても歓迎なのですが、いま室内にはこの少女が作り出した小さな光球が頭上にあるだけなのです。このままこの少女に襲われるのかと少しだけ期待をしています。
そして少女の取った行動は私の願望通りに着ている物を脱ぎだしたのです!?
私がその様子を見て立ち尽くしていると少女が……エーさんが服を脱いで裸になってしまいました!
衣服の下はとても綺麗な体をしています……つい見とれてしまいました。
頭上の小さな明かりが照らすと少女の美しい神秘的な黒髪がとても綺麗に輝いています。
私としてはこのままお持ち帰りがしたいと思ってしまいました。




