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Eighth Doll  作者: セリカ
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日常はウェイトレスさん


「いらっしゃいませ!」


「今日もエルナちゃんは、元気がいいな。わしの息子の嫁にしたいところだが、エルナちゃんみたいな良い子とは、釣り合いがとれんからな」


「ありがとうございます、おじさま! でも私には恋人が既にいますから、お話を貰ってもお受けできませんよ?」


「それは残念だな。わしがもっと若かったら、それでも諦めんな」


「私をそこまで評価してもらえるのはとても嬉しく思います! それで、今日も本日のお勧めのランチで良いのですか?」


「ああ、お任せするから頼むよ」


「はい、畏まりました! エリックさん、ランチを1つお願いします!」


 本日もエリックさんのお店のウェイトレスさんの仕事をしています。

 次の探索に行くまでは私はここの店員さんとして働いているのです。

 数日前に私の新しい剣の製作依頼もしましたので、最低でもあと6日は地下迷宮に行くことはありません。

 前回の探索で、私のお小遣いもかなり増えましたが、私は体を動かしている方が好きなので、エリックさんのお店でそのまま雇ってもらうことにしました。

 エリックさんも私とシアがいるとお客さんが増えるので歓迎だと言ってくれました。

 私はおじさまに受けがいいみたいで、いつの間に私に会いに来てくれるお客さんが増えたので、まだ雇ってもらって短期間なのに看板娘と言われています。

 シアも注文を取るとき以外は無口なのですが、密かに人気があるみたいでシアに声を掛けるお客さんも結構います。

 何でも口数は少ないけど注文を取る時の見つめてくる瞳がとてもいいらしいのです。

 何が良いのかを聞いてみたのですが、「あの純真な目で見られると……」と、大体の人はそう言いかけて言葉を濁してしまいます

 私はシアに見つめられるとお菓子をあげたくなるのですが、それと近い気持ちになるのだと思います。


「エルナちゃーん……グラスが空になったから、お代わりをちょうだいー」


 いつもの指定席からシャーリーさんからの追加の注文がきました。

 あそこの席でいつも飲んでいますが、他のお客さんの迷惑にならないように片隅の特別席です。

 他のお客さんも察していますので、誰もあの席には座りません。

 この辺りでシャーリーさんの事を知らない人はいないぐらいの酔っ払いとして名前が売れています。

 優秀な冒険者として名前が売れていないのが残念だとエリックさんはいつも言っています。

 私が呼ばれていますが、追加を持っていくのはシアのお仕事です。

 最初の内は、私が持っていったのですが……私が行くと捕まってしまって話し相手をさせられてしまうからです。

 私は構わないのですが、お仕事中なのでシャーリーさんと付きっきりで話していると私の仕事になりません。

 なので、余計な話はしないシアにその役目を引き受けてもらったのです。

 シアが持って行くと逆にお説教が始まります。

 お説教というか、現在の状態を丁寧に教えてくれるのです。

 私も定期的に言われていますが、シアには触れた人の体調が分るという能力があるので、不健康な事をすると必ず指摘されます。

 他の人の場合は状況説明しかしませんが、私の場合はその為の改善策まで教えてくれます……いえ、教えると言うよりも足りない栄養を取らせようとするので、あの目でお願いされると私が断れないだけです。

 今もシアが私の代わりに自主的に追加を持って行きましたが……。


「シアちゃん、ありがとうー!」


「シャーリーに警告します。本日の貴女が摂取ができるアルコール摂取度は54%を超えました。このままだと暗くなるころには酔い潰れて行動不能になります」


 追加のグラスを置いてから、シアがシャーリーさんの手首を掴んで周りに聞こえない程度の声で何かを伝えていますが、きっと飲み過ぎだと注意されているに違いありません。

 いつも不思議に思うのですが、あれだけ飲んでいるのにどこに吸収されているのでしょう?

 私から見てもシャーリーさんは、同じ女性の私から見ても羨ましい体型をしています。

 成長途中の私よりも大きな物も持っていますので、そこに行っているとも思えません。

 第一に私の場合はあんなに飲んでしまったら、もう起きてはいられなくて絶対に眠ってしまいます。

 もしかしたら、大人になるとアルコールの摂取量が増えるのでしょうか?


「あれ? 私って、そんなに飲んでいましたかー?」


「分配された資金を元に計算すると次の予定の探索の日までには資金が底を尽きます」


「えっー……今回は、結構あったはずなのに……おかしいなー」


 今回の取り分は4人で分けたのですが、結構ありました。

 内訳は私とゲイルさんとシャーリーさんとコレットちゃんの分です。

 シアは私とセットという扱いになっているので、私とシアは2人で1人の計算になっています。

 実際は、地下迷宮でシアが倒した魔物の魔核はシアが全て独占しているので、お金に関しては不要としているのです。

 どうして、魔核の力を吸収しているのかを問われた時にシアが強くなる為と説明していますので、それならばどんどん強くなってもらった方が良いのでシアが倒した物に関しては干渉しないと決めたのです。

 素材に関しては、高く売れる物だけ手に入れば十分なので、荷物を抑えられる魔核については、私達が頑張らないとシアに殆ど取られてしまいます。

 それにシアは、お金に関心が無いので、私が持っていればいいと言っているぐらいです。

 今回は私も武器を買わなくて済んだので、ちょっと色々と買い物をしてしまいましたが、今回はちゃんと残っています。

 ただ、シアはお金に関心が無いと言いつつも私達の所持している金額を記憶しているので注意が必要です。

 

「余計な支払いをしたからです。2日前にもゲイルが頭が痛いと嘆いていました」


「うーん……記憶にないけど、ゲイルの財布は私の財布でもあるので問題はないわ!」


 お二人は結婚はしていないとエリックさんに聞いていますが、恋人というか実質的に夫婦とのことですから、間違ってはいません。

 本人達に確認すると……ただの腐れ縁としか言いません。

 私は仲が良いのはいいことだと思うのですが、大人になると素直じゃなくなるのかもしれません。

 シャーリーさんの相手はシアに任せて、私は仕事に励みましょう!

 

 忙しいお昼の時間帯が過ぎた頃に見覚えのある方が訪れました。

 あの人は……でも、お店に来たお客さんなので、まずは挨拶をしておきましょう。

 

「いらっしゃいませ! お2人様で宜しいですか?」


 お店に訪れたのは地下迷宮で遭遇をした、ライラさんとヴァイスさんと言う方です。

 ライラさんはシアと同じ存在とそんな話を聞きましたが、どう見ても普通の人にしか見えません。

 着ている服装は地下迷宮の時と同じ色っぽい服です。

 同じ女性の私から見ても立派な物を持っているので、羨ましいかと思います。

 もう1人は、あちらのメンバーのリーダーであるヴァイスさんです。

 あまり乗り気な感じではないような雰囲気で、取り敢えず付いて来ただけみたいな感じです。


「貴女達がここにいると聞いて来たのだけど少しお話をしても良いかしら?」


 私に話ですか?

 どのようなお話か分かりませんが地下迷宮でのような事もありましたので、お話をするのでしたら、リーダーであるゲイルさんに相談をしたいと思っています。

 もう1人相談ができる人はいるのですが……もう飲み過ぎで、真っ当な思考ができないのです。

 それに……今は仕事の時間なので、お受けするわけにはいきません。

 

「申し訳ありませんが、今は仕事中なので仕事が終わってからか後日で宜しいでしょうか?」


 今日は朝からシャーリーさんがここにいますから、私の仕事が終わる時間ぐらいにゲイルさんが来るはずです。

 2人はここお店の2階にある部屋の1つに住まわせてもらっているので、酔い潰れたシャーリーさんを部屋に運ぶのはゲイルさんの日課となっています。


「それじゃ、軽く食事もするから、その間の話し相手になってもらえないかしら?」


「申し訳ありませんが今は仕事に差し支えますので……」


「今なら他のお客も少ないから良いでしょ?」


 言われた通り残っているお客さんは数人の方と酔い潰れそうなシャーリーさんだけです。

 助けを求めるべくシャーリーさんの方を見たのですが……まだシアに何か話しかけています。

 私も慣れたのか、ああなってしまうと中々解放をしてくれないので、話を聞き流しているのか無視をしてしまうシアに全て任せているのです。

 でも私が声を掛ければ、話の途中でも無視して私の所に来てくれます。

 それはそうと……。


「ですが……」


「駄目なの?」


 確かに忙しい時間帯は終わりましたので、私も休憩を兼ねて食事にしようと思っていました。

 本来でしたら、お店の奥の休憩室でシアと2人で食事を取るのです。

 シアには食事は不要なのですが、私がスプーンなどで目の前に差し出せば食べてくれるので、その仕草が可愛いのです!

 なので、休憩時間の食事は私の労働に対する癒しとも言える時間なので、正直に言えばお断りしたいのです。

 私が困っているとエリックさんが代わりに返事をしてくれました。


「申し訳ありませんが、彼女はこれから食事と休憩をする時間なのです。それに夕方の時間帯までは所用があると言っていましたので、明日に致しませんか?」


 改めてエリックさんが断ってくれました。

 エリックさんは私が困っていると見て見ぬフリをしないで、ちゃんと助けてくれるのです。

 最初の頃はお店に来た悪酔いしたお客さんにお尻を触られたりなどと色々とされていました。

 私は、そのようなことをされても仕事中なのでなるべく嫌な顔をせずに対応していましたが、正直シアにお願いをして叩きだしてしまいたい気持ちでした。

 今回もエリックさんが気付いてくれたので、これで諦めてくれるかといいのですが……。


「それなら、私達と一緒に食事をしないかしら? その間だけお話に付き合ってくれるだけでいいの」


 エリックさんが小声で「受けなくても何とかするので、エルナさんの判断にませます」と言ってくれました。

 今後の事を考えると話だけは聞いておいた方が良いと思います。

 シアとコレットちゃんの話が事実だとしたら、目の前にいるライラさんはシアと同じ存在なのですから、最も注意すべき相手です。

 私にはヴァイスさんの実力は分かりませんが、私達が苦戦したガーディアンを定期的に倒しているのですから、きっと強い方なのかと思います。

 それに入り口で挨拶をした時にお店の中には連れてきませんでしたが、ヴァイスさんが使役している戦闘用の魔人形が表に待機していました。

 シアの実力なら倒せると思いますが、その時はお店に被害が出てしまいます。

 どんな話か分かりませんが、取り敢えずは聞いてみたいと思います。


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