表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eighth Doll  作者: セリカ
35/141

挑発


「ゲイル、久しぶりだな。まさか、お前達が2階層に降りてくるなんて想像もしていなかったぞ」


「俺は会いたくなかったぞ、ヴァイス」


 相手の方はヴァイスさんという方みたいです。

 知り合い見たいですが、ゲイルさんは嫌っている相手みたいです。

 

「相変わらずつれない奴だな」


「お前とは関わる気が無いので、行かせてもらうぞ」


 ゲイルさんに続いて通り抜けようとすると、魔人形と思われる人達が私達の前を遮ります。

 相手の方は、素直に通してくれる気は無いみたいです。


「何か用でもあるのか?」


 ゲイルさんが質問をすると……。


「お前達がここから出てきたということは、この先のガーディアンを倒したのか?」


「気になるなら、自分達の目で調べてきな」


「おい、ライラ。この先の魔物の反応が消滅したのは確かなんだろう?」


 ヴァイスさんという人の隣にいた色っぽい女性に語り掛けていますが、あの人はライラさんという名前みたいです。

 地下迷宮の中なのにとても戦い向けの服装をしていないのですが、魔導士の方なのかもしれません。

 私と違って美人の綺麗なお姉さんなのですが、何となく人離れした感じがするのは私の気の所為なのでしょうか?


「かなりの数がいたはずなんだけど、もう何もいないみたいよ」


 この人は、シアのように魔物の存在が感知ができるみたいです!?

 こんな便利な能力はシアにしかないと思っていたのですが、熟練の冒険者の方にはそういう能力を持っている人もいたのですね。


「お前達があれを倒したのか? しかもその人数で倒せるとは思えないが……良い武器でも手にいれたのか?」


「どうでもいいだろう? 話がそれだけなら、俺達は行くぜ」


「ちょっと待てよ」


「なんだよ」


「ここのガーディアンは数十日に一度しか発生しないから、普段は雑魚が数だけ存在する部屋なんだが、知っていたのか?」


 あのガーディアンさんは、一定の周期で復活する魔物だったみたいです。

 いない時は、小型のサソリさんがいっぱいの部屋のようです。


「そんなの知るか。たまたま偶然に遭遇して倒しただけだ」


「部屋を見つけたのが偶然? まあ、それはいいが、お前達にあれが倒せるとは思えんのだが?」


「倒したのは事実だから、どうでもいいだろ? お前らみたいに数に物を言わせるんじゃなくて、知恵を絞っただけだ。お蔭で新調した俺の剣がボロボロになったから、災難だったぜ」


「……お前達の実力でか? よく見ると新顔が2人増えているが、その小娘達の力か?」


 あちらの指摘が私とシアに向いています。

 私は戦力とは呼べませんが、シアはとっても強いので、シアがいなかったら、私達は全滅しています。

 それ以前に2階層に降りる事もできませんのですから、来ることもできません。


「ふっふふふ……わらわの魔法が大活躍をしたので、倒せたのじゃ!」


 先ほどまで、ゲイルさんに口論で敗北したコレットちゃんが、ここぞとばかりに自分の魔法のお蔭と強調しています。

 私も今回のコレットちゃんの貢献度はかなり高いと思っていますので、言っていることは間違っていないと思います。

 ですが……。


「自分勝手に魔法を使いまくって、肝心な時に役立たずのロリババァは黙っていろ」


「誰がロリババァじゃ!」


 この方は、コレットちゃんの本当の年齢を知っているみたいです。

 もう少しで、300歳になるのですから、可愛い幼女の姿をしていますが、否定ができないのは残念です。

 しかも、肝心な時に魔力切れを起こしていることも知っているのですから、行動を共にしていた事があるのかもしれません。


「大体、お前の魔法があのガーディアンに通じるとは思えんな。魔法に対する耐性が高めだし強めの魔法は、盾の魔法まで使いやがるから、魔法は牽制に使って、直接攻撃で削った方が有効だからな。だから、お前が活躍など天地がひっくり返ってもあり得んな」


「貴様……魔力が回復したら、その自慢の人形と一緒に風穴を開けてやるのじゃ!」


「お前の魔法にそこまでの威力なんてあるのか? こいつらは正規軍の戦闘用を更に強化した魔人形だから、半端な魔法なら耐える事も可能だ」


 やはり私達を囲っている方達は、戦闘用の魔人形さんみたいです。

 トリスの町で見かけた生活の補助をしている魔人形さんの方が人に近いので、あちらの方が愛着が持てるかと思います。


「ふん。わらわの魔法は強化されたのじゃ! 耐えれると思ったら、大間違いなのじゃ! 少しぐらいなら、魔力が回復しておるから、わらわの魔法を試しに受けてみるかの?」


「この先にいたガーディアンを倒したと想定して、少しは話を信じてやるが……当然だが、こちらも反撃させるから、死んでも恨むなよ?」


「ぐっぬぬぬ……それならば、わらわの護衛はシアに任せるから、受けて立ってやるのじゃ!」


「シア? それは、そこの小娘のことか?」


 コレットちゃんはシアに護衛をさせて相手の魔人形と戦うつもりです。

 同じぐらいの強さでしたら、シアが足止めすれば、コレットちゃんの魔法が決まれば勝てると思います。


「面白い! ならば、その小娘の護衛は認めてやるから、一緒に痛め付けてやるよ!」


「わらわの本気を見せてやるのじゃ! お主が操れる魔人形を全て自分の護衛に回すことじゃな! シアよ、頼むのじゃ!」


 コレットちゃんの自慢話から、相手の方との争いに発展してしまいました!

 あちらの方は2体の魔人形がヴァイスさんの前に立ち塞がりました。

 あの方は、1人で2体も使役していることになりますが、魔人形は複数同時に使役する事ができたのですね?

 私が町で見かけた時は、1人1体しか持っていなかったのですが、どうも間違った認識だったようです。

 シアは、コレットちゃんのお願いで正面に立っていますが、私は不安で仕方がありません……もしも、あの戦闘用の魔人形の強さがシアと同じぐらいだった場合は負けてしまいます。

 私が不安そうにシアの方を見ると普段は無表情に近いのですが、私に対して少しだけ笑顔を見せてくれました!

 シアが感情的な表情をしたのは、私が助けてくれたお礼にお菓子を渡した時だけです。

 その時に不意に思い出したのですが、シアは「私は、魔人形などと言う量産型とは違います」と、言っていたはずです。

 シアの言葉を信じるのでしたら、シアが負ける訳がありません!

 ゲイルさんとシャーリーさんは、コレットちゃんを止めようとしましたが、シアが魔物と遭遇する前に止るようにと警告する合図をするので、踏み止まったようです。

 こうなってしまっては、恋人の私にはシアが無事であることを信じて見ているしかありません。

 今後の事も考えると争わない方が良いのですが、言葉では伝わらないことがあると誰かが言っていたような覚えもありますが……下手をすればどちらかに死人が出てしまうかもしれません。

 ですが、この争いを止めたのは以外にもあちらのお仲間の人です。

 

「ちょっと、ヴァイス止めなさいよ」


 地下迷宮にの探索に向かない色っぽい服装のお姉さんです。


「何で止めるんだ、ライラ? これはあのロリババァから言い出したことなんだぞ?」


「わらわをロリババァと呼ぶでない!」


 年寄り扱いをされて、コレットちゃんはお怒りです。

 ヴァイスさんという方も不満そうですが抜きかけの剣を納めてしまいました。

 もしかしたら、あの女性がリーダーなのでしょうか?


「確認がしたいんだけど、ガーディアンを倒したのは貴女で間違っていないのよね?」


 シアは無言で、答えません。

 代わりにコレットちゃんが答えました。


「2体おったが、わらわとシアが1体づつ倒したのは紛れもない事実じゃ! そのわらわ達が相手なのじゃから、ヴァイスの魔人形など相手ではないわ!」


 改めてコレットちゃんが自分の成果を強調しています。

 ゲイルさんは私の隣で「最初と美味しい最後だけなだがな」と呟いています。


「ふーん……それはすごいわね。貴女の魔法が強くなったのは分ったけど、そのお嬢さんは単騎でガーディアンを倒したのかしら?」


「わらわの魔法がすごく貢献したのじゃ! まあ……シアの強さに比べたら、見劣りはしてしまうが……」


 倒したから、貢献したに変わってしまいました。

 少しだけ認められたので、コレットちゃんの強気発言の勢いが落ちてしまいました。

 コレットちゃんは、ちょっとした褒め言葉でも機嫌が良くなってしまうので、意外と可愛いのですよね!

 私もトリスの町のコレットちゃんの自宅にいる時に度々褒めていたので、私に対する警戒心が薄れたのかあっさりと私の要望を通してくれました。

 普段から、否定されたり駄目出しをされたりするので怒りっぽいのですが、長生きしている割には煽てに弱いのです。

 お蔭で、町にいる時はシアとコレットちゃんに挟まれて眠る時間は幸せでした。


「貴女が単独で倒したとなると……ヴァイス、ここで争うよりも別の場所に行きましょう」


「はぁ? 何でだよ?」


「いいから、私の言う通りにしなさい。地下迷宮に潜る為の約束をしたわよね?」


「わかったよ。お前がそこまで言うのなら、仕方ないな。お前達、いくぞ」


 ライラさんという人が強く言うと戦うのを止めてくれたみたいです。

 やはりあの女性がリーダーのようです。

 ヴァイスさんという人は不満そうでしたが、他の仲間に声を掛けてさっさと立ち去ってしまいました。

 最後に残っているのはライラさんという女性だけです。


「うちのリーダーが短気でごめんなさいね。私も行くけど、トリスの町に戻ったら、改めてお話をしましょう」


 リーダーはヴァイスさんという人でした!

 では、この女性はお姉さんか恋人なのでしょうか?

 何にしても争いが避けられたのは良かったです。

 私達に軽く手を振ると行ってしまいましたが、あの女性はいい人なのかもしれませんね。

 コレットちゃんは消化不良なのか、何かブツブツ言っていますが、私が後で褒めておけば機嫌も良くなると思います。

 冒険者同士で争いが無くて本当に良かったです。




 一方、立ち去った者達は……。


「おい、ライラ。どうして止めたんだ? まさかとは思うが、俺があのロリババァに負けるとでも思ったのか?」


「あのエルフは確かコレットという名前の魔導士だったわね?」


「確かそんな名前の魔導士だったな。長く生きている癖に女の魅力に欠けるから、最近はロリババァとしか記憶してないけどな」


 エルフは長命なので、歳は仕方ないとして、あの個体は他のエルフに比べて成長率が低いから仕方ないのよね。

 問題は、もう1人の方よ。


「あの魔導士はともかく、護衛を頼まれた少女は危険よ」


「ロリババァが指名した小娘がか?」


「あの娘は私と同類の気配がしたわ」


「それは本当か!?」


「感情が薄いのは目覚めたばかりなのかもしれないわ。それに単独でガーディアンを倒せるとしたら、私と同じ数字持ちの可能性があると思うの。しかも戦闘型だとしたら、あのまま戦っていたら、殺されていたのは貴方の方よ」


「こっちは戦闘型の魔人形が数体いたんだぞ?」


 数字持ちの個体と戦闘型の魔人形では、その戦闘力の差は明確になる。

 能力次第では、何もさせてもらえずにこちらが全滅もありうるから、戦うのなら相手の能力は確実に把握しておかなければいけない。

 逆に属性や相性次第では戦闘型でも倒すことは可能だけど、勝率がかなり低いことには間違いない。


「私は戦闘型じゃないから単独では勝算はないけど、私達が数で倒しているガーディアンをあの人数で倒したとなるとかなりの戦闘能力があると見てもいいわ」


「そう言えば、ゲイル達は5人しかいなかったからな……初めはあいつらが、ガーディアンの部屋から出てきた時は驚いたぐらいだからな」


「あの子の名前はシアだったかしら? 誰が登録者なのか予測すると……新しく仲間にしていた、もう1人の少女が恐らく主で間違いないと思うわ」


「もう1人の娘か……そんなに強い数字持ち持ちなら、こちらに勧誘するか断るなら殺して数字持ちの娘だけ手にいれるか?」


「殺すのはダメよ。私達には登録者を指名できる相性というものがあるから、適合する人物を探し出すだけでも大変なことになるわ。それに目の前で主を殺されたりしたら、貴方は必ず殺されるわよ?」


「主を失ったのにそんな行動をするのか?」


「私だって登録者の貴方が殺されてしまったら、殺した相手を陥れる思考に染まるのよ? これは、主だけを殺しても相手の物にならない為のプログラムが私達にはされているからなの。そして、次の主を選ぶ基準を前の主を基本とするから、難しいのよね……可能なら、最初に目覚めた無垢な状態の時に波長が適合して主と認められるのが理想ね」


「無垢な状態ね……それならお前はどうして俺を主と認めたんだ?」


「貴方が祖父と同じ波長をしていただけよ。昔から今の貴方だったら、まず選んでいないよわ」


 昔は素直で良い子だったのにあんな事がなければ、祖父と同じような生き方ができたかもしれない。

 目覚めてから、彼の一族と長い時を過ごして今の人格を持つようになったお蔭で、私はどこにでもいるような人間として振舞えるようになった。

 思考がここまで変化するなんて、私達の製作者は何を考えていたのかしら?

 私としては、あちらと友好関係を築いて仲間になる方が今後の為に良いと思う。


「子供の時にお前の登録者になれたのは幸運だな。それで、仮に波長が合えば主が事故で死んだりしたら手に入るのか?」


「寿命や事故で亡くなった場合は、私と貴方のように登録者になることは可能よ。さっきも言ったけど、前の主に近い存在を選ぶ傾向になるので、波長が適合しても状態を初期化しないと貴方は無理よ」


「その初期化とかいうのはどうすればいいんだ?」


「私達数字持ちが眠っていた施設があるはずだから、そこで調整ができるけど……この広い大陸のどこかを見つけるなんて不可能よ。ましてや浮遊島の施設だったら、もっと無理ね。殆どの浮遊島は各国が空の領土として所有しているし、どこかの空賊が独立している浮遊島だったら、近づいた時点で撃墜されるでしょうね」


 私の施設は既に存在していないから、初期化をされる心配は無い。

 人形だった頃から、ようやく完成された人格を手にいれたんだから、破壊されるまではいまの暮らしも悪くないのよね。


「お前達って、便利だけどめんどくさいんだな」


「文句は私達を作った製作者に言って欲しいわね。それよりもこのまま手ぶらで帰るよりも3階層のガーディアンでも狩りに行くことを勧めるわ」


「あそこか……魔人形が破壊されると修理費が高くつくんだよな」


「それが嫌なら、このまま2階層の魔物を狩るしかないわね。東の地区のガーディアンの所まで行ってもタイミングが悪いと今回と同じになるわよ? あそこは誰かが定期的に倒しているみたいだから、その周期が合わないと無駄足になるかもしれないけどね。後はお仲間と相談でもして決めて頂戴」


「仕方ないな」


 そう言うと、仲間の者達とこれからの事を相談し始めている。

 この辺りは昔と変わらないのだけど。

 それにしても、町で会うことができたら、あの子達と話をした方が良いわね。

 あの子が戦闘型なら、私と組んで戦えば他の個体よりも優位に戦えるはず。

 今の私達は、強力な個体と遭遇したら、逃げるしかないので戦える個体は味方に欲しいのよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ