提案は決まっています!
私は、コレットちゃんのお家に向かっているのですが、段々と町の中心部から離れて行きます。
周りには、ぽつぽつと一軒家があるのですが、もしかしてこの辺りは庭というか土地付きのお家なのでしょうか?
しばらくすると一軒の家の前で止まりましたが、私の実家程ではありませんが大きいお家です。
ここに1人で暮らしているとなると部屋の片づけや掃除は大変かと思います。
小さなお家で、新婚さんのような生活を期待していたのですが、これは毎日の掃除が大変です。
「ここが、わらわの家じゃ」
「コレットちゃんのお家は大きいのですね……」
「殆どが空き部屋か古代人の資料の本があるだけじゃからな。なので、適当に空いている部屋を選んで使っても良いぞ」
「ありがとうございます! では、2階の見晴らしが良さそうな部屋が良いので、空いている事を期待しますね!」
扉を開けて室内に入るとお家の中の説明をしてくれました。
「2階は、殆ど物置と化しているから、最初に大掃除でもしないといかんじゃろ。それに寝具の類がないので、掃除が終わったら購入せんとな」
「コレットちゃんの寝室は1階なのですか?」
「わらわは、いつも眠くなったら書斎のソファーで寝ておる。そう言えば隣の部屋に使ってないベッドがあるが……何年も放置してあるが、使えたらそれを運んで使うがいいぞ」
「ベッドがあるのでしたら、ちゃんとそこで眠った方が体にも良いと思いますよ?」
「めんどいから、そのまま書斎で調べ物をして眠っているだけじゃ」
「コレットちゃんって、生活能力が私よりも低いのですね?」
「そう思うのであれば、お主が何とかすれば良いのじゃ」
これは……コレットちゃんが毎日愛用している物でしたら、私としては使いたいのですが……何年も放置されている物では温もりを得るのは無理ですね。
シーツや毛布の類も大変なことになっていると思いますので、使用は不可能と思います。
ですが、毎日ソファーで寝ているのは体に良くないと思います。
ゆっくりとできるベットで3人一緒に眠れる環境を作るのが私の最初の使命と思いました。
まずは、環境を整えてコレットちゃんの生活環境を改善したいと思います。
「わかりました! 私がコレットちゃんを真っ当な生活者にしてみせます!」
「好きにするのじゃ。取り敢えずは今晩の寝る部屋の掃除と食事の用意を宜しく頼むぞ。買い物に関しては、先ほど適当に買ってきた物があるので、好きに使うが良い」
そう言うと一冊の本だけ指輪を嵌めている左手の辺りから取り出してから、自分の指に嵌めていた指輪を外して渡してくれました。
確かストレージ・リングと呼ばれている容量制限はあるのですが、物が仕舞っておけるものです。
とても貴重な古代の遺産と聞いています。
「これは、コレットちゃんの大事な指輪ですよね!?」
「中には食材しか入っていないから、全て出したら返してくれればよいぞ」
「とても高価な物なのに簡単に人に渡すのは良くないと思います」
「お主にはシアがいるのだから、それほど必要としていないじゃろ?」
「ですが……」
「これから共に暮らすし、お主達は命の恩人でもあるのだから、信用はしているつもりじゃ。分かったのなら、食事は任せたぞ」
私にそう言うと、そのまま自分の書斎と思われる部屋に入って行きました。
ですが、今晩はエリックさんのお店でシャーリーさんが御馳走をしてくれると言われましたので、コレットちゃんも一緒に行けば良いのですよね?
そのことを伝える為にも扉を開けると既に立派な机にコレットちゃんには大きすぎる椅子に座って先程の本を読んでいます。
ですが、それ以上に気になるのは室内がとても荒れています……脱ぎ捨てた衣服や読みかけ本が足の踏み場もないほどに散らばっています。
コレットちゃんの背後にはちゃんとした本棚があるのに整頓がされていないので空白が目立ちますが、そこに収まっていたと思われる本は足元に転がっているだけの状態です。
唯一の救いなのは、コレットちゃんが眠るのに使っていると思われるソファーの上だけが毛布以外はない状態です。
それにしても酷い有様です。
後ほど指摘するとして、今は今晩の用件を伝えましょう。
「今晩はエリックさんのお店で、シャーリーさん達が御馳走をしてくれると約束していますので、コレットちゃんも一緒に来れば良いと思いますが、どうでしょうか?」
「エリックの奴の店か……あやつの店の食事は美味しいので、行くことには賛成なのだが、シャーリーの奴と一緒なのか……」
行くことには賛成なのですが、シャーリーさんがいることに問題がありそうです。
予想はできますが、きっと酔っぱらったシャーリーさんに色々とされたりしていそうなのですが、一応は聞いておきましょう。
「シャーリーさんがいると何か問題があるのですか?」
「お主は知らんだろうが、あ奴はアルコールを一定量摂取すると人格が変わってうっとおしいのじゃ」
「今日は、その飲んでいる状態でお会いしましたので、最初は別人かと思いました」
「確か昼前にここに来たと言っていたが……その時にはもう出来上がっていたのか……日も高い内から飲んでいるとは良い身分だの」
「冒険者組合のアリサさんにも注意されていました」
「あの被害者の娘か。あれが無ければ飲んでいない時はまともなんじゃがな。町で、あ奴と一緒に食事をするとわらわの事を子供扱いをするから、こちらが静かに飲むこともできんのじゃ」
「コレットちゃんがアルコールを飲んでいる姿が想像できませんけど?」
「その指輪に先ほど購入してきた果実酒とワインが数本あるぞ。それとも、お主まで、わらわを子ども扱いするつもりか?」
私より幼く見えるコレットちゃんが飲酒をするなんて想像ができませんでした。
しかし、実際は私より遥かに年上なのですから問題はありませんが、一緒に飲むとしたらどちらが強いかで私の予定も変わってきます。
私としては、酔ってしまったコレットちゃんを介抱がしたいのですが……まずは一緒に飲んでも良いのか提案をしておきましょう!
「そんなつもりはありませんが、美味しいワインなのでしたら、私も飲んでも良いですか?」
「飲めるのなら構わんが、お主が飲むことの方が想像出来んわ」
「飲み過ぎなければ、私だって嗜むぐらいは飲めるつもりです。そうです! これと同じワインを知りませんか?」
シアのお家にあったワインの空瓶です。
私の鞄に入れておいたのです。
この町で、同じ物が手に入ったら、購入したいと思っていたのですが売っていませんでした。
とても飲み易くて美味しかったのです。
シアのお家にあった物は私が全て飲んでしまったので、無くなってしまったのです。
無くなってから、もう一度飲みたいと思ってシアにどこで手にいれたのか聞いたのですが、自分が目覚めた時に壊れた木箱の中に無事な物が何本かあっただけと教えてくれました。
なので、最初から、古代都市のあの家にあったのか、シアが落ちてきた時に一緒に落ちてきたかになります。
古代都市で作られた物でしたら、手にいれるのは無理だと思います。
コレットちゃんは空瓶を手に取ると少し驚いています?
もしかして、知っているのでしょうか?
「このワインの瓶はどこで手にいれたのじゃ?」
「えっーと……シアのお家に残っていた物です」
「シアの家だと? それはどこじゃ?」
「古代都市の……あっ!?」
つい本当のことを言ってしまいました!
古代人の研究をしているコレットちゃんに知られたら、根掘り葉掘り聞かれて質問攻めにあうと思っていたから、私は知らないふりをしていたのに口が滑ってしまいました。
「おい、エルナ。お主は地下迷宮で落ち合う場所の近くの他の入り口の森に棲んでいるとしか言わなかったはずじゃ?」
「確かにそう言った気がします……」
「ならば、その古代都市とはなんじゃ?」
「私の勘違いなので、忘れて下さい」
「そうか、シアなら知っているじゃろ?」
シアには、古代都市の事は口止めしてあるので、私が話しても良いと言わないと話さないと約束していますので、シアに聞いても無駄です。
ですが、シアの答えは……。
「エルナに口止めされているので、答えられません。古代都市についての詳細が知りたければエルナに許可を貰って下さい」
「だ、そうじゃ。エルナは、勿論わらわに許可をくれるじゃろ?」
確かにシアは、話しませんでした……しかし、私の許可が必要と説明をしています。
これは私が知っていると証明しているのと同じです……次からは、古代都市の話は無視するようにお願いしておきましょう。
そうしないと他で聞かれた時に同じ事が発生してしまいます。
しかし、コレットちゃんにとっては大事な情報になるのですから、このまま教えてしまうのは……そうです!
いいことを思い付きましたので、それと交換条件にしましょう!
「教えても良いのですが……コレットちゃんにとっては貴重な情報なのですよね?」
「わらわだけどころか、どこの国も管理していない古代都市となれば、最重要機密とされるわ! 場所によっては他国に対して戦略的な土地が手に入るのじゃから、王族に情報を渡せば場所次第では法外な報酬か貴族位が手に入るかもしれんの。今は国同士の力が均衡しておるから、戦争とは無縁な状態じゃが、どこの国も領地拡大は諦めておらんぞ?」
「そんな大事なことになるのでしょうか?」
「まあ、場所とそこに眠る古代人の遺産次第じゃな。特に古代人が少数しか建造しておらん特殊な魔道船が手に入れば、現在のわらわ達が作る魔道船などよりも高性能じゃからの。もしも一隻でも手にいれて浮遊島の1つでも確保すれば独立した国を作ることも可能じゃ」
「それはすごいのですね」
「現在、この大陸を治めている4ヵ国以外に浮遊島に独自の武装兵力を持って、どの国にも所属していな者達もおる。中には、その古代人の遺産の魔道船を保有する者達もおったはずじゃから、どの国も勧誘もしくは降伏させようとしたのじゃが、結果は失敗に終わっておる。このバートランド王国も手痛い目に遭って諦めて監視をするにとどまっていたはずじゃ」
「他にも国に近い集団がいたのですね。ですが、あの古代都市にそんな魔道船は無かったと思いますが……あんまり調べていませんので分かりませんね」
「おい、エルナ。いま完全に調べていないとか言っていたが、古代都市の事を知っていると認めたな?」
「あっ!……コレットちゃん。そういう誘導尋問みたいな事はいけないと思いますよ?」
「わらわがちょっと話をしたら、お主が勝手に話しただけじゃ。ほれ、早くシアに許可を出さぬか。お主に聞くよりもシアに聞いた方が確実じゃからの」
「……」
仕方ないので、シアに許可を出してコレットちゃんの相手をさせましょう。
ですが、私もタダで教える気はありません!
せめて私の望みを少しでも充実させるようにしましょう!
「では、シアに許可を出す代わりに私の提案を受け入れてくれる事が条件です」
「行き詰っていた調べ物が進むのじゃから、お主の提案ぐらいは聞くのじゃ!」
言質を取りましたよ!
そして、私の提案は……。
「それでは、2つだけ提案します。1つは、この家で眠る時は今晩から毎日私と一緒に眠ることです。勿論ですが、ベットの中では私の好きにさせることが条件です」
「……相変わらずお主の思考はブレないの……それで、もう1つはなんじゃ? 大体は想像がつくが……」
「私と一緒に体を洗いあうことです!」
「……この未成熟な体が有効的に活用される時がくるとは想像もしてなかったのじゃが……まあ、そのぐらいなら、よかろう。お主の好きにするが良い」
コレットちゃんは呆れながらも簡単に承諾してくれました!
学園では、私が気にいった下級生の子に勇気を振り絞ってお願いをした時は、あっさりと断られていました。
同級生の背が低い可愛い子にお願いした時は、それ以降は口も利いてくれなくなったので、女子の間では、容姿が幼い可愛い子が私に近付くと危険との噂が流れたぐらいです。
お蔭で、初めて会った可愛い子に話しかけて、自己紹介をすると次からは避けられてしまうという悲しい状態でした。
コレットちゃんは、見た目は幼女ですが、完全な大人の女性なので、きっと心が広いのだと思います。
その後は、シアに許可を出す前に今晩のベットの確保とまったく使われていない浴槽を優先的に掃除と片づけをしました。
コレットちゃんは早く許可を出せとしつこかったのですが、私の要望がまず叶えられないと駄目と念押しをしましたので、隣の寝室の片付けに協力的です。
後々に3人で眠る寝室は2階にするとして、いまはこの使われなくなったベットを直した方が早いのです。
夕方まではまだ時間がありますから、頑張って片付けてしまいましょう!




