受付さんは、お怒りです
エリックさんのお店を出てから、シャーリーさんの案内で、冒険者組合に向かうことにしました。
外部の探索をするのなら、登録をしておいた方が何かと良いとの事です。
それに身元を証明する証にもなるので、他の国に行っても役に立つそうです。
国同士は敵対していても冒険者組合と商業組合だけは、協力関係にあるそうです。
現在の私は、身元不明の少女ですから、持っておいて損はないと思います。
これが原因で、私の本当の身元が知られてしまうとなると避けたいところです。
まずは行ってみてから、詳しい内容を聞いてから決めることにします。
「エルナちゃん、着きましたよ!」
「大きな建物ですが、ここなのですね」
「それじゃ、入りましょうね!」
「はい」
先ほどの食事の時も更に追加して飲んでいましたのですが、シャーリーさんの様子は、私を迎えに来てくれた時と変わっていません。
一度この状態になると、どれだけ飲んでも変わらないのでしょうか?
でも、私としては、気さくに話しかけてくれるこの状態のシャーリーさんの方が好感がとても持てます。
こんな感じで私と接してくれる友達が欲しいと以前は思っていました。
もしくは、こんな感じのお姉さんが欲しかったです。
私の実の姉は本当に嫌な人でしたから……素質が無いというだけで、どうしてあんなに実の妹を貶せるのかとても不思議です。
お母様に似たと思えば納得ができるのかもしれません。
多分ですが、今は縁が切れたと思うので、忘れてしまいましょう。
私としても二度と会いたいとは思っていません。
そんな事を思いつつもシャーリーさんの後に付いて行くと室内の広さの割には人はまばらです。
中央にいくつかあるテーブルに数人で集まって座っている人達が何組かいる程度です。
組合というのですから、私はもっと人がいると思っていましたが、実は冒険者というか探索者は人気の無い職業なのでしょうか?
私が疑問に思っていると考えている事が顔に出ていたのか、シャーリーさんが答えてくれました。
「もう、お昼過ぎだから殆どの人が出払っているから、空いていて丁度いいわ」
「そうなのですか?」
「ここに人が集まるのは、朝と夕方だけよ?」
「どうしてなのですか?」
「仕事の依頼は、あちらの掲示板に貼り出されているものを昼までに決めてこなす人もいれば、地下迷宮の素材買い取りに来るのが大体は夕方に集中するからよ。私達は後者の方だったんだけど、今は何もしていないに等しいわね」
「どうしてかは分かりましたが、シャーリーさん達は何もしていないのですか?」
それだと毎日の食費などもどうしているのか不思議です?
「最近までは、例の素材を何往復もして取りに行っていたから、あれの買い取り金額だけで結構美味しかったのよね」
「あの虫さんがですか!?」
「無事な部分が多かったので、査定がとても良くて、造船業者が高値で買い取ってくれたのよ。本来なら、それなりの人数と実力がないと狩れないし、本体がほぼ無傷なんてまず不可能だから、最初はどうやって倒したのか質問されまくったぐらいよ」
「あの虫さんが、そんなに高く売れるなんて知りませんでした」
「魔道船の装甲に適しているらしく、普段は傷付いた素材を直したり繋いだりして使っているそうよ。だから頭部だけ貫かれて、綺麗に分解されて加工されていたから、その手間も省けて喜んでいたわ」
シアがゲイルさん達に言われた通りに解体していたと思いましたが、魔法の指輪に収まるように解体していたと思っていたら、高く買い取ってもらえるように解体をしていたのですね。
それにしても……。
「あの虫さんが、魔道船の部品になっているなんて初めて知りました」
「堅い材質の甲殻類の魔物がいいそうよ。適度に魔力も帯びていると大抵の魔法も弾くから適していると聞いているわ。ほら、コレットが魔法で攻撃しても平気だったでしょ?」
「確かにコレットちゃんの魔法は効いていませんでした。そうなると……あの虫さんの大型を倒すにはシアみたいに力押しで倒せる人が他にもいるのですね?」
「あんな事ができる人は滅多にいません。大抵は関節を狙うか上位の魔法で倒すのが普通です。王国の軍隊か造船所のお抱えのチームが倒しているはずよ」
「では、今回のシャーリーさん達の件は、どうやって説明したのですか?」
「以前に魔核の力だけ失って死体だけが放置されている事件が合ったのは話したと思うけど、あの時に私達もウォーアントの大型の死体を見つけて解体だけして地下迷宮に隠しておいて、それを運んだだけと説明したわ。私達の実力では倒せないのは分っているので、この話で納得してくれたのよ」
それは、シアが私と出会う前に地下迷宮の魔物を倒して魔核だけを乱獲していた時のことだと思います。
でも、それだと期間的に合わないような気がします。
「それは半年ほど前の話になるのではないのでしょうか?」
「そんなのは、偶然にまた見つけたと言い切ったわ。あそこで目撃者がいない以上は、私達の証言が真実ですよ?」
前回と同じくシアが倒した魔物を今回は解体して隠していたのですから、概ね間違ってはいませんね。
しかも魔核だけはシアがちゃっかり回収をしていましたので、今回ばかりは魔核の力を手にいれているのはシアとゲイルさん達も確信をしているはずです。
そしてコレットちゃんがシアの正体をある程度予測したので、余計に納得したのだと思います。
そうなるとコレットちゃんが知っている少女も魔核を必要としているのでしょうか?
この辺りは、後ほどコレットちゃんに質問をしたいと思います。
「まあ、今はそれよりもエルナちゃん達の登録をしてしまいましょうね!」
ここに来た本来の目的を忘れて違うことを話していても仕方ありません。
まずは自分の身分証明書を作る方が先です。
「はい、お願いします!」
そして、シャーリーさんは一番端に座っている受付の方の所に案内してくれました。
受付の方はシャーリーさんの姿を確認すると何故か嫌そうです?
「アリサ! この子達の登録をお願い!」
「……それはいいとして、貴女はまた昼間から飲んでいるのね」
「だって、飲むしかすることがないからねー」
「ちょっと、羽振りが良くなったと思ったら、最近は狩りにも行かないで飲んだくれているなんてね……そんなんだから、教会の護衛騎士をクビになるのよ。しかも教会の予備費を飲むことに使いこむなんて罰当たりどころか処刑されなかったのが不思議なくらいよ?」
「頑張って入ったけど、あそこは暇なのよね。しかも上司のハゲは飲むたびに煩いから、気分は最悪だったわ。追放だけで済んだのはハゲの弱みを知っていたからよ」
「ハゲ司祭に弱みなんてあったなんて初耳だけど……貴女ね……せっかくの出世コースだったのに……斡旋した私は始末書を書かされてしばらくは給金を減俸されたのよ!」
「それは迷惑を掛けたと思って減俸されていた分はちゃんと払ったし、散々奢ったんだから、そろそろ忘れてくれない?」
「それは当然よ。だけど、お蔭で私の出世の道が絶たれたわよ……どうして私が一番奥の受付席にいるか察して欲しいわ」
「そう思っているからこそ私達がしばらくは大型のウォーアントの素材を持ち込んでいたから、少し貢献値が増えたはずよね?」
「貴方達が倒したものならね……拾ってきただけだから、大した成果になってないわ。私が貴方達の担当なんだから、もっと成果を上げなさい!」
「アリサは厳しいわね。そう思って今日は、期待の新人を貴女に紹介してあげるわ!」
「それがこの子達なの?」
アリサさんと呼ばれる受付の方が私とシアを品定めでもしているかのように見つめています。
何となく実力を見透かされている感じがします。
先ほどのシャーリーさんとの会話で昔からの付き合いみたいですが、色々とあったようです。
お互いに出世の道から外れてしまったような内容でしたが……。
担当とか貢献値というのは何なのでしょうか?
「初めまして、エルナと申します。もう1人は恋……じゃなくて友達のシアです」
危うくシアの事を恋人と紹介する所でした。
シャーリーさん達は認めてくれていますが、この町では公にしないように注意されていましたので、控えることにします。
「期待の新人ね……まあ、貴女と違って素直で可愛らしい娘さんなのは分ったけど、実力の程はどのくらいなの? 見た感じでは、エルナさんは駆け出しよりは出来そうな感じはするけど、もう1人のシアさんは、そういったものをまったく感じないんだけど?」
するとシャーリーさんが、アリサさんに近付いて周りに聞こえないように小声で話しかけています。
「ここだけの話なんだけど、こないだまで私達が運んでいた大型のウォーアントを倒したのは、そこのシアちゃんよ」
「……シャーリー、貴女ねぇ……私はここで色んな人達を見てきたけど、その子があんな大物を倒せるなんてあり得ないでしょ? それだったら、エルナさんが持っている剣が特別で実は貴女達よりも強いと言われた方が少しは考える余裕ができるわ」
「本当なのよ。それ以前に持ち込んでいた素材だって、殆どシアちゃんが倒した魔物を貰っただけなのよ」
「以前って、いつもよりも成果がいいから、貴女達が頑張っているのだと思っていたのに……それすらも貰っていたなんて、冒険者としてのプライドは無いの?」
「ちゃんと物々交換で手にいれていたんだから、問題無いわよ。それに無事に五体満足で戻ってくる方が冒険者としては大切な事よ? 私達は体が資本なんだから、手足とか失ったら、もうお終いよ」
「貴女の言う事も一理あるけど、あの素材と何を物々交換していたのかしら?」
「えっと……それは……」
「……エルナさん。シャーリー達と交換した物は何ですか?」
アリサさんが私に話しかけてきたので、つい正直に答えてしまいました。
「塩とかの調味料を色々と貰いました! 後は、衣服とか全般が欲しかったので、サイズの方はシャーリーさんに測ってもらって何着か予備も含めてお願いしていました。そして……下着などもです……」
「シャーリー……貴女って人は……」
「だって、エルナちゃん達がそれしか欲しいって言わないから……」
アリサさんに睨まれて、シャーリーさんが迫力負けしているとアリサさんが、私にまた質問をしてきました。
「エルナさん。どのくらいの量を貰ったのか知りませんが、シャーリー達は、それ以上に儲けています。衣服に関しても高い服でも要求したのですか?」
「調味料の類は1ヶ月分くらいを目安です。衣服の方は今着ているのを何着かです。下着は……これです」
今日は町に着くと思ったので、スカートを穿いていたので、ちょっとだけまくって見せてしまいました。
下着を見せるなんて恥ずかしいのですが、相手は大人の女性だし、衣服などの価格を知らないので、見てもらうしかないと思ったのです。
いつもは、可愛い子の素肌や下着姿が見たいと思っていましたが、自分から見せるのはとても恥ずかしいですね。
「エルナさん……女性がそのような行為をするのは感心しません。ですが、シャーリー達がどれだけ私腹を肥やしたのかは理解ができました。中には強力な魔物の素材もあったのですが、良く倒せたと感心していたし、傷が少ないから、高めに買い取ったのですが……」
「だ、だから、こうして町に来てから、2人を持て成しているのよ?」
「当り前よ!!! 大方、素材の価値などを知らないと思って、この子達を騙していたのね!」
「私は、ちゃんと要望を聞いて……」
「黙りなさい! 余分に儲けたお金はちゃんと返すのよ!」
「他のみんなは知らないけど、私は殆ど飲んじやったからありません……エリックは、お店と結婚資金に使ったと思うけど……」
「貴女って人は……あれだけのお金を全て飲んで使ってしまうなんて、どうしょうもない人ですね……景気よく奢りまくって使い切ったと思いますが、少しは貯めることを覚えなさいよ……」
アリサさんの言葉を聞いて、シャーリーさんが慌てています。
そして、その後の使い道が聞けましたが、やはりシャーリーさんは飲むことに全て使ってしまったみたいです。
エリックさんは分かるとして、ゲイルさんとコレットちゃんの使い道も知りたくなってきました。
ただ、私としては、生活用品さえ手に入れば問題無いので、ここはきちんと説明をしておきましょう。




