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Eighth Doll  作者: セリカ
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お誘い


「あそこのお店は、食事は美味しいんだけど値段が高めなので、たまにしか行かないかな」


「そうなのですか」


「私がお勧めするのは、いつも通っている飲食店なんだけど、エルナちゃんは、アルコールは好きですか?」


「普段は飲みませんが。一度だけシアのお家にあったワインを飲んだ事があるのですが、とても美味しかったと記憶をしています」


「それじゃ、飲めるのね? でも、どうして『記憶をしています』なのかしら?」


「それは……初めて飲んだのですが、美味しかったのでつい何本も飲んでしまって、そこから記憶がないのです。酔い潰れた私をシアが介抱してくれたのですが……」


「どんなワインを飲んだのか分らないけど、初めてで何本も飲んでしまうのだから……そうなると、エルナちゃんはアルコールには強いけど加減が分らないだけみたいね! それでしたら、今晩はお姉さんが介抱してあげるから、好きなだけ飲ませてあげますね!」


「いえ、一応はシアと一緒にいる時に検証をしましたので、どこまで飲んでも大丈夫なのかは分かっているつもりです」


「だったら、今日はその限界まで一緒に飲みましょうね!」


「シアにお願いをしてありますので、私はシアに止められたら、それ以上は飲まないと決めています」


「エルナちゃんは、決心が固いのね……お姉さんは寂しいです……」


「適度な量でしたら、お付き合いをします」


「うんうん、私はエルナちゃんのような可愛い子と一緒に飲みたいのです! いつもは飲食店にいるオヤジ達とかばかりだから、若い娘が増えるのは楽しみだわ!」


「それは楽しそうですね……」 


 町に着いてから、シャーリーさんに道案内をされています。

 最初に連れて行かれたのは、食事ができる所などでした。

 そして、現在はシャーリーさんがいつも通っている飲食店の近くに来ています。

 話を聞くと、先ほどまではここで軽く飲んでいたそうなのですが、まだお昼前ですよ?

 今日は何となく出掛ける気になれなかったそうなので、早くも飲んでいたので、こんなにテンションが高いみたいです。

 地下迷宮で話していたシャーリーさんは物静かで、頼りになるお姉さんの印象だったのですが、飲むととても陽気な女性になってしまうみたいです。

 お店に入るといつもの場所らしいテーブルに案内されましたが、そこにはまだ軽い食事や飲み物がそのままです。

 私を迎えに行くだけなので、そのままにしておくように頼んだのだと思います。

 席に座ると注文を取りにやってきた人がきましたが、エリックさんです!

 エリックさんは、冒険者と飲食店の店員をしていたのでしょうか?


「いらっしゃいませ、エルナさん。メニューはあちらに書き出した物があります。宜しければ本日のお勧めの物をお出ししますが、如何なさいますか?」


「こんにちは、エリックさん。えっと、メニューの方は、お任せでお願い致します」


「畏まりました。それでは少しの間だけ酔っ払いの相手をさせて申し訳ないのですが、お待ち下さい」


「このぐらいは、まだ酔っていないのに酷い言われ様だわ」


 そう言うとエリックさんはお店の奥に行ってしまいました。

 酔っ払い扱いをされたシャーリーさんは文句を言っています。

 私は、エリックさんがお店の従業員をしていた事の方が気になりますので、聞いてみることにしました。


「エリックさんは、普段はこのお店で働いているのですか?」


「ここは、エリックの実家なのよ」


「そうだったのですか!?」


 実家のお店があるのに冒険者をしているなんて、危険だと思うのですが?


「だけど、最近になって結婚をしたから、もうここで真面目に働くみたいよ」


「エリックさんは結婚をしたのですか!? それはそれでおめでたい話と思います!」


 すると結婚相手の女性の方は厨房で料理を作っているのでしょうか?

 周りを見渡しても年配の女性の方が1人いるだけなのです。

 多分ですが、あの方がエリックさんの母親だと思います。

 

「お蔭で私達のメンバーが減ってしまったから、最近は近場で狩りをしているぐらいになってしまったのよね……」


「どうしてなのですか?」


 あまり深くまで潜らなければ、コレットちゃんが魔力消費を抑えれば十分にゲイルさん達の実力で探索は可能と思います。

 シアが規格外すぎるので、私も勘違いしやすいのですが、ゲイルさん達の強さでしたら、私を護衛してくれた人達よりも実力は上かと思います。

 

「エリックは、記憶力が良いので地下迷宮の地図を通った所なら大体は把握しているのよ。私達だけで潜ったりしたら、確実に迷うのは目に見えているのよね……」


「それは重要な事ですね。この街に地下迷宮の地図などは販売をしていないのですか?」


「冒険者組合に売っているけど……それでも途中で迷ったりするのよ。特に相手にできない魔物と遭遇とかしたら、逃げるのに必死になるわね」


「それはそうですね」


「だから、メンバーに1人は地理に詳しい人物がいないと困るのよ。そこに行くとエリックは1階層限定だけど、地下迷宮を大体把握しているし、レンジャーとしても戦力になるから、重宝していたのよね。おまけに食事の用意から、荷物の管理までしてくれていたから、いなくなると私達に取っては致命的だわ」


「それでは新しい人をメンバーに加えたりしないのですか?」


「そこはエルナちゃん達に期待していたので、誰も加えていません!」


「私達をですか!?」


「そうよ! たった2人であの迷宮を探索しているし、シアちゃんの強さは言うべくもありません!」


 褒められて恐縮なのですが……。


「シャーリーさんの認識はシアのみが対象です。私はシアが居なければ何も出来ないぐらいですから……」


「シアちゃんは、エルナちゃんの恋人なのでしょ? それならば2人で一緒と考えればいいわ」


 いつもシアの事は私の恋人と宣言をしていますが、正面から言われると照れますね。

 2人で一緒と言われるのは、とても嬉しいのです!

 

「シアちゃんもエルナちゃんの為なら、それでいいのでしょ?」


 シャーリーさんがシアに話を振っています。

 普段から必要なこと以外には無口なのですが……。


「勿論です。私の全てはエルナの物なのですから、その考えで間違ってはいません」


 改めて言われると私の心はとても満たされます……しかも誰かの前で明言してくれるのは気分が良いです!

 今晩は、少しだけシアとの段階を深めて一緒に眠りたいです。


「ほら、シアちゃんも言っているから、問題はないわ。それにエルナちゃんの剣の腕も最初の頃に比べて上達もしていたから、ゲイルも褒めていたぐらいだし、私も筋が良いと思っているわよ」


「そう言ってもらえると光栄です」


「ゲイルは夕方まで、戻って来ないので、それから改めてエルナちゃん達が私達のメンバーに加わってくれる事を話す事にするけど、良いですよね?」


 シアに頼ることになるのですが、私のことも認めてくれているので、このお誘いを受けたいと思います。

 この町にきたばかりなので、色々と詳しい人がいることはとても心強いです。


「お誘いをお受けいたしますので、どうか宜しくお願い致します」


「こちらこそ歓迎するわ! これで地下迷宮に行けるし、稼ぎも増えそうだわ!」


 シャーリーさんはとても嬉しそうなので、私はホッとしていますが、地上と地下迷宮では、それほど稼ぎに違いが出るのでしょうか?

 私はその辺りの事が分かっていないので、良く分かりません。

 ついでに質問をして聞いておきたいと思います。


「お聞きしたいのですが、地上と地下迷宮では、そんなに違いがあるのですか?」 


「変わってくるわね。樹海の森に入らなければ地上の魔物とは遭遇率も高くないし、魔核の質も違うのよ。それに地上の魔物は討伐依頼が多いし、素材としての価値も需要が満たされているので、それ程高くないわ」


「そうだったのですか。それで、地下迷宮の魔物だと価値があるのですか?」


「前回に譲ってもらった大型のウォーアントの甲殻は魔道船の部品として需要があるのだけど、地上にはいないのよ。しかも普通なら、苦労して倒す相手なのにシアちゃんが一撃で仕留めてしまうから、綺麗な部分が多かったので、査定金額も良かったしね。そして、魔核については地下迷宮の魔物の方が不純物が少なくて質が良いらしいので、高く買い取ってもらえるの」


「虫さんはともかく、魔核にはそんな違いがあったのですね。だけど虫さんは地上にもいたと思いますよ?」


「この辺りの地上には生息はしていないはずなんだけど、いるとしたら樹海の森の奥深くに生息していると聞いているけど、樹海の奥深くに行くなんて自殺行為に等しいわ。探索をするのなら魔道船で空から目的地まで移動する方が安全だけど、エルナちゃんの口ぶりからすると地上で遭遇した事があるみたいね?」


「それは……」


 私達のお家がある古代都市は樹海の森の中にあったので、古代都市の周りには虫さんが一杯いました。

 他にも好戦的な魔物も多かったのです。

 樹海の森の中にある古代都市周辺にも古代人が防衛の為に生み出した魔物が今では支配下を離れて生息しているらしいのですが、基本的には一定の範囲を守る習性だけは受け継がれているらしく、古代都市を中心とした範囲で活動しているとシアが言っていました。

 シアと古代都市の周辺で魔物と戦っていた時はまったく気にしていませんでしたが、最初の頃にシアに教えてもらっていたのをすっかりと忘れていました。

 いずれは他の町に行くと決めていましたが、適度に知識を得ようとしてシアに色々と教えてもらっていたのに早くも余計な事を言ってしまったようです。


「深くは詮索しないけど、エルナちゃん達と一緒に居れば、樹海の森の奥深くに行けることは分ったわ」


「それなんですが……」


「だけど、他の人に話しては駄目よ? そんな情報は王国の人達か魔道船を所持している武装集団だけだから、怪しまれる可能性が高いわよ」


「分かりました。これからは迂闊に喋らないように致します」


「でも、私達も新たな道ができたみたいなので、歓迎する話でもあるわね!」


 いずれはゲートの事を教えて、古代都市に連れて行くことになりそうです。

 特にコレットちゃんは、この話を聞いたら絶対に行きたいと言うのは間違いないと思います。

 私には分らない物だらけでしたが、コレットちゃんなら知っている物もあるかも知れないので、そこからシアに質問をしていけば、シアが知っている事は答えてくれます。

 私が聞いても意味が分らなかったので、取り敢えずは納得していましたが、まったく理解をしていません。 

 そうこうしている内にエリックさんが料理を持って来てくれたので、御馳走になりたいと思います。

 久しぶりに真っ当な食事が食べれるので、とても美味しそうです!

 考えて見れば、シアと出会ってからは、適当に味付けして焼いた物しか食べていません。

 そして、栄養が偏るからとシアに言われて、知らない果実や何かと一緒に食べないと美味しくない野菜?しか食べていません。

 美味しくない物は拒否したかったのですが……シアが私の体調管理の為に絶対に摂取して欲しいと言われたので、食べるしかありませんでした。

 特に一時はすごくまずい粉薬みたいな物を飲むように言われていたので、あれは最悪でした。

 今の私に必要な栄養だと言われて3ヵ月近く毎日飲んでいました。

 途中から在庫が無くなったのか分かりませんが、シアが出して来なくなったので助かりました。

 そのような事もあって私の体調はとても良いと思います。

 これからは、この町で食事を取ることができれば体調については問題が無くなると思いますので、美味しくない物は避けれるかと思います。

 ですが……食事を終えた後にシアが摂取して欲しいと差し出して来た物は、何かの錠剤です。

 何か分らないのですが、最後に水と一緒に飲みました。

 特に味もしないので良かったと思いますが、これは何だったのでしょうか?

 シアに聞いても「これはエルナの体調管理の為です」と、しか答えてくれません。

 私としては不味くなければ問題はありませんので、シャーリーさんから何を飲んでいるのかと尋ねられましたけど、私には分らないとだけ答えておきました、

 シアにも聞いていましたが、私の健康管理の為としか答えていませんでした。

 私としては何の薬かだけでも知りたいのです。

 コレットちゃんに会ったら、調べて貰おうと思いますが、シアがコレットちゃんに渡すかが問題です。

 食事を終えた所で、今度は冒険者組合に案内をすると言われたので、エリックさんには今晩にまた来るとだけ伝えて店を出ました。

 支払いの方は、エリックさんの奢りで良いと言われましたので、今回はありがたく好意を受け取ることにしました。

 ですが、シャーリーさんからは、しっかりと回収をしていましたので、シャーリーさんは文句を言っていました。

 ゲイルさんとコレットちゃんとは、このお店で夜に会うことにして、この後は、シャーリーさんと冒険者組合に行くことにしましょう。

 

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