トリスの町
シアの案内で、ようやく地上に出られました!
バートランド王国側に出たのは初めてでしたが、こちらは入り口が建物というか門のような形をしています。
私達のお家としている古代都市の方は町の中の建物の1つから、出入りしていたので、あの建物自体が迷宮の入り口の為に作られた感じがしていました。
元々は古代都市の入り口の1つから、地下通路を使って各地に移動できるものだったとシアが教えてくれました。
しかし、こんな広い地下の通路を移動するよりも魔道船で空から移動して方が早いのでは?と思いました。
シアが言うには、かつては便利な乗り物があってそれで移動していたので、歩いて移動するなんて事は無かったと教えてもらいました。
どのような乗り物かは知りませんが、地下の通路自体の幅も高さもあるのですから、ある程度の大きさの運搬も可能だったのですね?
あんな大きな虫さんがゲイルさん達を追い回していたのですから、大きな魔物に襲われて地下迷宮に逃げ込んでも、そのまま追われることになります。
そうなると不思議なのは、どうして地下の通路に魔物が徘徊しているのでしょう?
古代人の人達は、常に戦いながら移動していたことになりますが、それなら尚更空から移動した方が良いと思われます?
その辺りの質問もシアにすると教えてくれました。
地下迷宮のどこかに生物を研究する施設があったそうなのですが、侵入者対策で各階層に迎撃用の生物を作り出す装置という物があるそうです。
その生物が現在の魔物と呼ばれる異形種になっているそうです。
倒されても一定の時間で生み出されるので、この地下迷宮の魔物の数は一定の数を維持しているので、尽きないとの事です。
なので、シアが出会った時に私に話してくれた「この階層の魔物はあらかた狩り尽した」と言うのは、そういう事だったのです。
地上の樹海の森に徘徊している魔物は、ここから溢れたのか、別の進化を遂げて亜種となっている物が混ざっているとの事です。
本来なら、ここを管理している古代人には決して攻撃して来ないように命令されているのですが、それ以外には侵入者として排除をしょうと襲ってくるのです。
そして、現在は管理をしている古代人もいないので、地下には定期的に生み出された魔物が溢れているそうです。
最下層の制御室という所に行けば、止める事もできるかもしれないそうですが、壊れていたら止めるのは不可能とシアは言っていました。
もしも、最下層に辿り着いたらシアに止める事ができるのかと聞いてみたのですが、答えは不可能とのことです。
例え辿り着いても、管理者キーという物がないと権限がないので、何も出来ないらしいのです。
それに下層の階の魔物は下に降りるほど強化された個体がいるので、可能でしたら管理者証明の権限を保持していることが望ましいそうです。
要するにその通行証があれば魔物が襲ってこないのです。
でしたら、それはどこにあるのでしょうか?
シアが言うには現時点で手にいれるには、どこかの浮遊島にある無事な施設で通行許可の証明を手にいれるしかないそうです。
浮遊島に行くには魔道船が必要ですが、民間の魔道船に乗るにも費用が高いので今の私達には無理です。
それに空に無数にある浮遊島のどこにその施設があるのかも分らないので、闇雲に行っても出費がかさむだけです。
なので、当面は無理な話なので、費用を稼ぎながら新しい町で生活の基盤を整えることが最優先となります。
地上に出てから、シアの案内でトリスの町に向かっています。
途中で何人かの人達とすれ違いましたが、あの地下迷宮に行く人たちは結構いるようです。
人数的には、ゲイルさん達のように4人から、6人ぐらいの集まりが多いです。
最初に私とシアが2人だけで出てきた時はすれ違った人達が、とても驚いていました。
初めは分らなかったのですが、あちらは人数もいるし武装の方もちゃんとしていましたので疑問に思うのは当然でした。
私は、動きやすい軽装の服装と腰に一本の剣しか持っていません。
シアも同じような姿だし、パッと見は少年にしか見えませんので、そんな2人が迷宮から出てくるので、不思議に思うのは当然です。
雰囲気的にも私達は散歩でもしているような感じで出てきましたから、人によってはどう見えているのかも分かりません。
途中で、私達を女子供だけと思って絡んでくる人達がいましたが、シアの強さに驚いて引き下がることもしばしありました。
普通に考えても、一応は舗装されている道とはいえ、魔物と出会うかもしれない道中を小娘が2人だけで歩いているのですから、不用心ですよね?
私にちょっかいを掛けてきた人は、シアに吹き飛ばされてとんでもないことになったり、たまたま魔物との戦闘を見ていた人達はシアの強さを目の当たりにしていたので、事なきを得ています。
そんな感じで、2日ほど野営をして町に辿り着きました。
町の周りは少し高い城壁に囲まれている感じで、入り口には門番さんらしき人がいます。
そのまま入ろうとしたら、通行証を要求されましたが、私は持っていません。
なので、シャーリーさんの名前を出せば良いと教えられていたので、門番さんにその話をすると近くの建物で待っているように言われたので、待つ事にしました。
門番さんにシャーリーさんの名前を出すと直ぐに対応してくれたのですが、どうも私達の特徴を本人から聞いているらしく訪ねてきたら教えて欲しいと頼まれていたそうです。
私は、シャーリーさんって、顔が広いのかと思いました。
待つ間に暇でしたので、シャーリーさんの事を尋ねたら、飲食店でよく一緒に飲んでいる飲み友達らしいのです。
聞く所によると、この町で有名な飲んべらしく一緒に飲んでいない者はいない程の勢いだそうです。
しかも、ここ最近は臨時収入があったらしく、機嫌が良いと奢ってくれるので、お友達も多いそうです。
それなりの冒険者としての実力もあるし、美人な方なので人気もあるのですが……飲んべの性格が災いして飲み友達止まりになっているそうです。
それが無かったら、結婚をしたい方はいるそうなのですが、とにかく飲むことに出費がかさんでしまうので、後々の事を考えると悩みの種になっているそうです。
一応は、ゲイルさんと付き合っていると噂になっているそうですが、ゲイルさんがいつも支払いをしている姿をみんなが見ているので、同情する声もあるみたいです。
私と話している門番のお兄さんも「あれが無かったら、俺が付き合いたいぐらいなんだが……俺の稼ぎじゃ生活が持たないからな……」と、言っています。
あの虫さんの素材は高く売れると聞いていたのですが、もしかしたら殆どシャーリーさんの飲み代に消えてしまったのではないでしょうか?
エリックさんはしっかりしていそうですし、コレットちゃんは分かりませんが、ゲイルさんは苦労しているみたいです。
そんな事を聞きながら、待っているとシャーリーさんが扉を開けて現れました。
「エルナちゃん、シアちゃん、こんにちは! そろそろ訪ねて来てくれると思って待っていたわ!」
いつもよりもシャーリーさんのテンションが少し高いです。
地下迷宮では、物静かなお姉さんと思っていたのですが、町では明るい方なのかもしれません。
「シャーリーさん、こんにちは! 今回は、お呼びたてして済みません」
「私が、言い出しっぺなのだから、気にしないでね。早速だけで、町を案内するから、一緒にきてね」
「その前に私は通行証がないのですが、どうしたら良いのですか?」
「それなら、もう2人の分は作ってあるから、名前だけ書いてね」
シャーリーさんから、私とシアの分の通行証を手渡されました。
手の平に収まるカードのようなサイズですが名前を書くだけになっているみたいです。
それを改めて門番さんに見せると町に入る許可を得られました。
一応は他国からの出入りを管理する為に確認を取っているそうです。
これといった事はないのですが、あくまでも形式上みたいです。
ここの町は他の三国とも繋がる地下迷宮が近い為だそうです。
以前に他国の冒険者がこの国で有名になったのですが、バートランド王国に召し抱えられた後に何か事件があったそうです。
その時はかなりの問題が発生したと言われていますが、詳しくは聞けませんでした。
一応はシアに聞いてみたのですが、古代人の事なら質問すれば分かる範囲は答えてくれましたが、それ以降の国同士の事は流石に何も知らないみたいです。
なので、国の国境付近の町で、新たに出入りをする者達を記録をしておいて、後に名前が注目された時には警戒をしているそうなのです。
私の場合は……もしも調べられたりしてしまうと詳しく調べられたらミッドウェール王国の出身ともしかしたら、知られてしまうかもしれません。
確認はしていませんが、私は死んだことになっていると思いますので、恐らくは実家の墓地に形だけ埋葬されていると思いますので、多分ですが大丈夫かと思っています。
それに私自身は大した実力も無い小娘なのですから、そんな事にはならないと思いますが、シアは注目されるかと思います。
私もシアの強さには驚いていましたが、ゲイルさん達も認める実力なのですから、表立った事態が発生すれば、シアに注目が集まるかと思います。
なので、なるべくは目立った行動は控えた方が良いかと思います。
後々に生活が安定してきたらミッドウェール王国に行って私がどうなったのかを確認もしてみたくなりましたが、外に出るとしたいことがいきなり増えてしまいましたね。
それはともかく、今はシャーリーさんに着いていって町の探索をしてみたいと思います!
お買い物もしたいのですが、今晩の宿も探さないといけません。
現在の手持ちの資金でも数日の宿代はあると思います。
シアに持っていてもらっている荷物はシアの不思議なベットと最小限の荷物だけにしましたので、後は何があるのかを私は知りません。
ただ、シアには町に着いたら、ゲイルさん達みたいに魔物の素材を売れば少しは資金になると思うので、適度に確保して持って来て欲しいとお願いがしてあります。
私には売れる物の相場なども知りませんので、素材の指定をする事もできません。
手持ちの資金が無くなる前に資金の心配も必要になりました。
町に向かうことしか考えていなかったので、着いたら着いたで色々と考えることが増えましたが、それを考えるのも楽しみの一つと考えましょう!
以前に憧れていた自由な生活を手にいれたと思えば、問題はありません。
私にはシアがいるのですから、最初から恵まれていますよね!




