旅立ち
あれから古代都市のお家に帰ってから、私は荷物の整理をしつつ剣の練習をしています。
魔物の狩りにはシアが1人で出掛けてしまっているのです。
ここを離れる前にできるだけ魔核を集めておきたいそうです。
一度出掛けると夕方まで戻って来ません。
私の体調管理と安否を確認する為に戻って来てくれるのです。
安心して私が眠ってしまうといつの間にかいなくなっているので、深夜も狩り続けているのだと思います。
あの後にシアにバートランド王国に向かう提案をすると賛成をしてくれました。
特にここに拘りは無いので、私が行きたい所にどこにでも付いて来てくれるそうです。
私とどこまでも一緒に居てくれるなんて……これはプロポーズと同じですよね?
確認の為に私のことを愛しているのかを質問してみましたが、シアは愛などの意味が分らないらしいのです。
代わりにいつもの「エルナは私の登録者です。登録者の側に付き従うことは当然です」と、答えてくれます。
コレットちゃんはシアを特殊な魔人形と判断しました。
私としては、そのような扱いはしたくないので、大事な恋人として接するつもりです。
なので、その恋人が私と一緒に居ることが当然と言ってくれているのですから、私を愛してくれていると勝手に思うことにします。
意味が分らないのでしたら、シアが理解できるように少しづつ教えて行けばよいのです。
そうすれば、いずれは私の理想的な恋人になります!
差し当たっては、狩りに出かけている恋人の為に食事の用意をしながらシアを待っている生活をしています。
そんな感じで大体1ヶ月ほどが過ぎるとシアから、バートランド王国に向かいましょうと提案をされました。
私はシアがいつまで狩りを続けるのかは聞かされていなかったので、シアにその判断を委ねていたのです。
ちょうど私が交換で手に入れていた調味料の類なども底を尽きかけていたので、もしかしたらシアは私の持っている在庫の分だけと決めていたのかも知れません。
私の体調管理や食事をどのくらい摂取するのかも全て把握をしていましたから。
シアは特に食事を必要としませんが、私が用意した物に関しては同じように食べてくれます。
その辺りも全て計算ができるなんて、私の恋人はとてもできた子です。
バートランド王国に向かうことになったので、必要な物だけシアに預けてから早速向かいたいと思います。
持っていく物といっても私とシアの着替えとシアがたまに入っている『休眠装置』だけです。
後は、直ぐに調理が出来るように加工した食料ぐらいになります。
残りの生活に使っていた物は全てここに置いていくことにしました。
ここは私とシアのお家なのですから、いずれは戻って来ることもあると思います。
半年近くほど過ごした場所ですが、誰にも何も言われずに自由に過ごせただけでも私はとても満足しています。
欲を言えば、どこかの町が近くにあれば買い物などがしたかったのですが、それはこれから向かうバートランド王国で堪能したいと思います。
私は自国のミッドウェール王国からは出たことがありませんでしたので、初めての国外旅行と思っています。
私は死んだと思われているはずですから、あちらでの貴族の身分は失った物と考えて普通の庶民として暮らしていこうと思います。
当面の目標は、バートランド王国での生活基盤を確保をしてから、シアの事を調べてみようかと思います。
幸いにしてコレットちゃんが古代文明の事を調べているようなので、一緒に調べれば良いのです。
私には思い付かないことでもコレットちゃんがシアに説明を求めれば、シアが知っている事もあるはずです。
準備ができると早速迷宮に向かいました。
まずは、ゲイルさん達と待ち合わせをしていた場所に向かいます。
あそこがバートランド王国に繋がる最短のゲートなのです。
ゲイルさん達は、あの場所に隠してある虫さんの素材を往復して取りに行っていると思いますので、もしかしたら遭遇するかもしれません。
その時は、一緒にバートランド王国に向かうつもりです。
いなかった場合でも、迷宮に最短の距離にある『トリス』という町にいけばシャーリーさんの名前を出せば門番の人と話をしてくれる事になっているので、町に入れると思います。
以前までに約束をしていた調味料などとの交換の約束は、いつもシャーリーさんと話し合っていましたので、あんまり間が空くようでしたらシャーリーさんが私がバートランド王国に来ることを話すことにもしていました。
ゲイルさんからはシアが居てくれたら、今まで戦えなかった魔物の討伐も可能になるので仲間になって欲しいとも勧誘を受けていましたので、受け入れてくれると思います。
私はシアのオマケ程度の実力しかありませんが、ゲイルさんからは出会った時に「若い娘なのに剣の基礎はちゃんとできているので、後は経験を積むことで強くなれる素質がある」と褒めてくれました!
私はその言葉を信じて時間のある時は練習をしつつ、シアに見守ってもらいながらですが、それなりに頑張ったと思っています。
まだまだ至らないところはあると思いますが、私にはもうこれしかないと決めましたので、剣の腕を磨いて頑張りたいです。
この半年近くで少しは成長したと思いますので、私もある程度は迷宮の魔物と戦えるようになりました。
進行するペースもシアに少しは着いて行けると思っています。
昔は、すぐに休憩をしてばかりでしたので大きな進歩です。
最初の頃は何日もかかっていた南のゲートの手前の隠し部屋にも頑張れば2日ほどで到着できるようになりました。
体力もそうですが、戦闘に関しても早く魔物が倒せるようになったからです。
隠し部屋に着いてから最後の休息をとって、ゲイルさん達と待ち合わせをしていた場所に出ます。
意外と広い場所なのですが、岩が沢山隆起しているので、魔物に襲われても隠れてやり過ごしたりできる空間なのです。
ゲイルさん達がシアと一緒に虫さんの素材を隠していた場所も調べてみると何もありませんでした。
あれから1ヶ月近くも経っていますから、往復して全てを回収をしたと思います。
大型の虫さんの素材は流石に運ぶのに何往復もしないといけないのですが、あれは魔道船の資材として結構高く買い取ってくれるらしいので、往復をして持ち帰る価値があるそうです。
シアが力を吸収してしまった魔核も重宝されるのですが、あれはシアに最初に言っておかないと必ずお約束で輝きを奪ってしまいます。
魔核は本来は魔道船の動力や武器や防具に特殊な力を付与する為の素材として用途がかなり広いのです。
特に強力な魔物の魔核は秘めている力が強力なので、高額で取引されているそうです。
ゲイルさんの折れてしまった剣にもそこそこの強化付与がしてあったそうなのですが、シャーリーさんの剣の方がかなり強力な魔核を使っているそうです。
確かにゲイルさんが使っていた大剣に比べてシャーリーさんの剣の方が折れてしまってもおかしくないのですが、刃こぼれもしていませんでした。
私も町に行ったら付与がしてある剣を買いたいと思っていますが……先立つ物がないので手持ちの僅かなお金とシアが持てるだけ持ちだした魔物の素材がいくらになるかです。
私に魔物の素材の価値は分かりませんので、シアに全てお任せしました。
シアには、触れた相手の情報がわかるのですから、もしかしたら魔物の素材の価値も分かるのでは?と思ったのです。
ですが、どちらにしてもあの便利な空間に入る量は限られていますので、大量に運ぶことは不可能です。
魔核にすれば、そんなにも容量を使わずに沢山運べるし強い魔物の物ならば高値で買い取ってくれるそうなのですが……あれはシアの成長の為に必要なのですから、シアが倒して手にいれた物に関しては全てシアの物です。
私が倒して手にいれた物もシアに譲っていますので、私達は魔核を持っていません。
普段の冒険者の方達は、コレットちゃんが持つ魔法の指輪を所持していなければ、大抵は魔核を回収して換金しているのです。
討伐依頼などでしたら、証明の部位さえあればよいのです。
私も町に着いたら、まずは冒険者組合の登録をしないといけません。
そうしないと魔物の素材を買い取ってもらえないそうです。
それはともかくまずはこの迷宮を突破してバートランド王国の方に出ましょう。
私は、この先はあまり知らないので、シアの道案内が頼りです。
シアは、私と出会う前にこちらの迷宮もある程度は探索しているらしいので、ゲイルさん達が住んでいるトリスの町の近くの出口も知っているみたいです。
あの頃は遭遇する魔物を片っ端から倒していたらしく、こちらの迷宮には魔核の輝きを失った魔物の死体がごろごろしていたと聞いています。
一時的に楽して魔物の素材が手に入ったと話題になっていたそうです。
弱い魔物は意味がありませんが、強い魔物の死体まで転がっていたので、魔法の指輪を持っていた冒険者の人達は儲かったらしいです。
魔核だけがなかったので、当時は魔核だけを回収するハンターでも現れたと話題になっていましたが、シアが私と出会ってからは迷宮よりも地上の樹海の森をメインに狩りを始めたので、魔物に倒されてしまったのか更に最下層に向かったのかと思われていたそうです。
この迷宮の最下層には通常は行けないので、そんな話が流れたそうです。
一応は熟練の人達は、下層に行ったりしているそうですが、ここよりも更に強力な魔物が徘徊しているらしく、かなりの実力が求められるそうです。
私も、この4国と繋がっている樹海の地下迷宮の下の階に行った事はありません。
シアは恐らくですが、下層に行く方法を知っていると思います。
以前に最下層にこの迷宮を管理する部屋があると言っていました。
落ち着いたら、私も下層に行ってみたいのです。
それにもしかしたら、シアに関する事を知ることができるかもしれません。
空に浮かぶ浮遊島にも行ってみたいので、情報を得る為にも早く町に行きましょう!




