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Eighth Doll  作者: セリカ
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状況は最悪です


「弟は無事に逃げられたのでしょうか?」


 まだ明るいと言うことは落ちてからそれほど時間が経っていないのかそれとも私は一日も眠っていたのでしょうか?

 立ち上がりたいのですが、足が痛くて立つことも出来ません。

 擦り傷などの怪我はあるのですが、大きな怪我はしていません。

 出血は少ないのですが、もしかしたら足を骨折でもしてしまったのでしょうか?

 それにしても大きな地面の裂け目から落ちたと思ったのですが、生きているとは思いませんでした。

 頭上を見ると壁から樹木が何本か生えていますが、折れています。

 きっとあの木々が衝撃を吸収をしてくれたので、私は運よく助かったのだと思います。

 私が落ちた場所は裂け目の途中に突き出した場所みたいですが、正面に洞窟らしき物があります。

 歩けるようになりましたら進むしかないのですが……武器も持たないので魔物と遭遇をしたら私には対処が不可能です。

 剣を持っていたのですが、落ちた時に底まで落ちてしまったのかと思います。

 お腹も空きましたが状況的に最悪かと思います。

 私はこれからどうなるのでしょうか?

 これは困りましたね……。


 私の名前は、エルナ・アシュレア。

 とある貴族の娘ですが弟と一緒に祖父のいる町に向かう途中で魔物に襲われたのです。

 護衛の方達も奮闘をしたのですが、魔物の数が多いので護衛の隊長の指示で一番体力と足が速い者に弟を任せて残りの者達で踏み止まりました。

 その後に私達も逃げようと思ったのですが、突然大型の魔物が現れて何人かが殺されてしまい私達は散り散りに逃げ出したのです。

 隊長さんは私にも逃げることを進言していたのですが、私も少しぐらいなら剣が扱えるので残ることを決めたのです。

 いずれ家督を継ぐ弟が助かれば家に問題はありません。

 それに今回の祖父の町に行く件は私の問題なのですから、私が皆さんを置いて逃げるなんて考えられませんでした。

 あのまま大型の魔物が現れなければ、何人かは亡くなってしまいましたが、私達も引くことが出来たのですが……その魔物に隊長さんが殺されてしまうと指示が出せる者がいなくなって連携をした戦いが出来なくなってしまったのです。

 後は逃げ出す者や私の護衛を最後までしてくれた方もいました。

 その方が追い付いてきた魔物の相手をすると、私に先に行くように言われたので、私は申し訳ないと思いつつ逃げ出したのです……後は開けた場所に出た時に大きな裂け目がある場所で別の魔物に襲われて、突撃してきた魔物に剣を突き刺した時に勢いで一緒に裂け目に落とされてしまったのです。

 ここには私だけしかいませんので、そのまま魔物と一緒に落ちたはずなのですが、魔物だけはそのまま下に落ちたのでしょう。

 そして、今に至ります。

 体のあちこちが痛いし、特に足の痛みが治まるまではこのまま転がっていましょう。

 どちらにしても、今の私には何も出来ないのですから……。


 いつの間にか眠ってしまったようですが、目が覚めると上空の隙間から照らしていた光がなくなって暗くなっています。

 足の方は……とても痛いのですが、無理をすれば何とか立てるぐらいになりましたので骨は折れていないみたいで安心をしました。

 もしも、立つことも出来なかったら私は確実にここで死んでしまいます。

 しかし、ここがどこなのかも分らないし目の前にある洞窟が外に通じているとは限りません。

 それに食料も持っていないので空腹を満たすことも出来ません……スカートのポケットに数枚のクッキーが入った包みがあります。

 これを全て食べてしまったら、もう食べる物が無くなってしまいます。

 とてもお腹が空いていますが、一枚だけ食べると明るくなるまでもう少しだけ休む事にします。

 明かりも無しで洞窟に入るなど危険なことだし、周りが明るくなれば少しはましかと思ったのです。

 そう考えると眠くなってきたのですが、先ほど起きたばかりなのにもう眠いなんて私の日頃の居眠りの成果なのかも知れません。

 寝る子は育つと聞きましたが、こんな危機的な状況なのに私の神経は図太いみたいですね?

 目が覚めた時は明るくなっていて足の痛みがもう少し引いていると信じて眠ることにします。


 それから、日の光で目が覚めると朝になったようです。

 当然ですが、昨夜からクッキーを1枚しか食べていないのでとてもお腹が空いています。

 足の痛みの方は少しだけ良くなっている程度ですが、何か支える物があれば歩けないことはありません。

 周りを見渡すと杖にするのに手頃な折れたの木の枝が落ちていましたので、それを支えにして立ちました。

 これなら十分に杖代わりに出来そうです。

 貴重なクッキーを1枚だけ食べてから目の前の洞窟を進もうと思いますが、魔物に襲われたらそのまま私は死んでしまうと思います。

 武器も有りませんし、足も痛くて走ることも出来ないのですから、魔物からみたら私は弱っている餌としか映らないと思います。

 それでも、ここで何もしないよりは進むことで助かるかもしれないのですから進むしかありません。

 心残りなのは、お風呂に入れないことです。

 道中も水浴びも出来なかったので濡れた布で体を拭くぐらいでしたから、お風呂好きの私には耐えるのが大変でしたのに……。

 せめて、この先に綺麗な湧き水があればとても助かります。

 喉も乾いていますが、どうしても水浴びがしたいのです。

 そうです!

 湧き水の探索と思って前に進めば私の生きる希望も湧いてきます!

 そんなありもしない希望を持って足を引き摺りながら進んで行くと、洞窟の中は意外と明るいのです?

 鉱物なのか分かりませんが、壁が薄っすらと光っています。

 お蔭で明かりが無くても進むことは出来ますが……静か過ぎて不気味です。

 しかも一本道なので、魔物に遭遇をしたら元来た道を運よく逃げられても行き着く先は行き止まりの崖なのですから、そこで殺されるか落ちて死ぬかの二択しかありません。

 しばらく進むと少し広い所に出たのですが……魔物がいます!

 私達を襲って来た狼型の魔物が何匹か眠っているのですが……いま来た通路の少し横に別の通路があります。

 ですが、あそこに行くまでに気付かれたら私はお終いです。

 このまま戻っても意味はありませんので意を決して私はそっと進むことにしました。

 杖を突いたりすると音が出てしまうかと思って痛みに耐えて歩き出したのですが……杖無しで歩いた為に私は体勢を崩して倒れてしまったのです!

 当然ですが魔物達が気付いて立ち上がります。

 私は急いで立とうとしますが、壁を背に立つのが精一杯です。

 木の杖はというと魔物の方に転がっていますので、取りに行くなど自殺行為です。

 あちらは私が弱っているのを分っているかのように、ゆっくりと囲むように近づいてきます。

 少しづつ噛まれて死ぬのではなく、一思いに首を噛まれて意識を失って即死できることを祈ります。

 残念ですが私はここまでのようです。

 こんな事でしたら、お母様に言われた通りに素直に自宅で謹慎をしているのでした。

 ちょっと可愛い後輩の子に手を出しただけなのに謹慎なんかにさせるのがいけないのです。

 まだ私の理想の少女と出会っていないのにこんな死に方をするなんて、私は女神様に見放されているのでしょうか?

 魔物達が一斉に飛びかかってきたので私は目をつぶって最後に可愛い子と会いたかったと思っていると、何時まで経っても噛みつかれたりしません?

 私が恐る恐る目を開けると、私の前に黒髪の少女が立っています。

 私に襲い掛かっていた魔物達は弾き飛ばされたのか離れた所で転がっています。

 この子は一体どなたなのでしょうか?

 

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