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Eighth Doll  作者: セリカ
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ダンスのお相手は?


 あれから、国王陛下が現れると挨拶もほどほどにして、ゆっくりと寛ぐように言われました。

 私としては、なにか緊迫するような雰囲気にでもなるのかと思ったのですが、本当にただの交流会のようなものでした。

 それでもおじさまや公爵様に招かれて陛下に挨拶をすることになりました。

 初めてお会いしたのですが、お優しそうな方と言う印象を受けました。

 教えられたとおりに挨拶をするとそうかしこまらなくても良いと仰ってくれました。

 陛下の視線が私の背後に居るフィスさんに向けられているのですが……フィスさんが失礼な対応をしないかと不安になりましたが、いまのフィスさんは私の従者になりきっているのかいつもの雰囲気はありません。

 続いてフィスさんの隣にいるシアの方に顔を向けた時に少しだけ驚いた表情をしていました?

 少しだけ視線を向けたのですが、シアはいつも通りの無表情です。

 もしかするとシアのことを知っているのかと思ったのですが、陛下の様子を見ていると何かの確認でもしている気がしました。

 それから、私と少しだけ挨拶程度の会話をするとおじさまを連れてどこかに行ってしまったのです?

 よくわからないのですが、これで良かったのでしょうか?

 私が疑問に思っているとヘレナ様が「陛下はいつもあのような感じなので気にしなくても良いです」と教えてくれました。

 その後は普通の立食パーティーのような感じでしたが、最初にクリスさんと一曲踊った後はフィスさんと踊ることになりました。

 このような場で、私が踊ることが出来るなんて想像をしていなかったのですが、とても楽しかったです。

 私としては続けて踊っても良かったのですが、フィスさんと踊り終えた後に「僕のエルナ様と踊るのでしたら、それ相応の覚悟をしてください」と宣言をしたのです。

 いきなり会場で宣戦布告のような行動を取るので、一時は会場が静まり返りました。

 そして、フィスさんが礼をすると私を連れてその場を後にしたのですが……周りの視線が痛いです。

 クリスさんとシアが待機をしている室内の片隅に移動するとフィスさんに問いただしました。


「ちょっと、フィスさん。どうしてあんなことを言ったのですか?」


 その問いに対して直ぐに即答してくれました。


「エルナ様に声を掛けようとしていた奴らに釘を刺しただけです」


 警告のつもりだったみたいですが……配慮としては良いのかもしれませんが、これでは私が目立ってしまいます。

 ダンスの為の次の曲が流れているのに私とフィスさんの会話に耳を傾けている人が確実にいます。


「しかし、こんな公の場では逆に注目を浴びてしまうと思うのですが……」


 私としては、次にシアと踊ったら目の前の料理を堪能する予定だったのですが、そんな気分にはなれません。


「それに僕はこの国では有名人なので、ああ言っておけば仕掛けてくる奴らなんてまずいません」


「有名人なのですか?」


 私が小首をかしげているとクリスさんが教えてくれました。


「エルナさんはご存じないのかもしれませんが、過去に戦争に参加した一族の者達は「水を纏い踊る悪魔の個体ナンバー・フィフス」の恐怖を知っているからです」


「それはなんなのですか?」


「雇用されている身としては、これ以上の説明は本人の許可が無いと言い難いですね」


 クリスさんはそれ以上はフィスさんの前では言いにくいみたいです。

 代わりにフィスさんが私に小声で耳打ちをしてくれました。


「僕はこの国の人間を長きにわたって殺しています。艦隊戦以外にも単独で突入して大勢の者達を切り裂いてきました。僕が舞うような戦い方をするので、付けられた名称みたいですが敵対した者は全て殺したはずなので、映像として記録が残されていてそんな不名誉な名称が付いているのだと思います。僕達に命じられる命令は大抵は殲滅です。目の前に立つ者は容赦なく排除してきました。これが過去の僕なのですが、エルナ様は軽蔑しますか?」


 しかし、それは過去のことですよね?

 私の知っているフィスさんは、シアよりもちょっと強くて、色々と頼りにはなるのですが、私に対して変態的な行動をしてしまう性癖に問題ありの人物です。

 この国に対する過去の経緯は消せませんが、それは命じられたからなんですよね?

 例え人格が形成されていても、命じられれば行動するしかないのでしたら仕方がありません。

 私の考えは間違っているのかも知れませんが、私は自分の目で見たことしか信じるつもりはありません。

 それにシアは私を助ける為に多くの人の命を奪ってしまいました。

 それを非難することなど私にはできません。

 ましてやフィスさんは敵対関係をしている国とのお互いの存在を賭けた戦いなのですから、手加減などできないと私は思っています。


「理由は分かりました。ですが、それを理由にして敵を作るようなことは控えてください。過去の経緯はどうあれ私は今のフィスさんを信じています」


 他にも理由はあるのですが、私の為にフィスさんは結果的にバートランド王国を裏切ってしまいました。

 私は、フィスさんが味方でいる限りは信じると決めているのです。

 過去は変えられませんが、いまは私の知るフィスさんとして立ち回って欲しいのです。

 ちょっと変態的な所が問題なのですが、それ以外は頼りにしているのです。


「エルナ様が過去の僕の所業を知ったら、嫌われるのかと思ったのですが、僕を受け入れてくれて良かったです。エルナ様がそうお考えなのでしたら、今後は友好的に振舞いたいと思います」


「お願いしますね」


 気分的に落ち着いたところで、目の前のテーブルにある飲み物を飲んで落ち着きました。

 こんな時ですが、残りの時間は並んでいる食事に手を付けたいと思います。

 気を紛らす為に食事に手を付けたのですが、ここの料理もとても美味しいです。

 宿泊した所で出された料理もすごく美味しかったのですが、ここの料理は格別かと思いました。

 私も少しは料理が出来ますので、可能な限りの味を覚えて再現してみたいと思っています。

 完全ではありませんが似たような物を作る自信はあるつもりです。

 この場にレンちゃんが居れば、確実に再現をしてくれるはずです。

 王女様として育てられたはずなのにお料理や家事全般は完璧ですからね。

 私が料理に夢中になっていると、シアは順番に会場の方に視線を向けています。

 視線の先には、軍服を着た護衛と思わしき人が居ますが、どの方も若そうな人達です。

 シアに何をしているのかを尋ねると、この会場に来ている古代の個体の位置と数を確認していたのです。

 シアが言うにはこの会場には十七名の存在を確認しているそうです。

 立ち位置を確認しているのは、いつ襲われても対処ができるからとのことです。

 このなかに上位個体は存在していないらしいのですが、数で来られるとたとシアでも不利になるからです。

 宣戦布告のような行動をしたフィスさんも一度に全員は面倒なのでシアとの協力体制を取る予定らしいのです。

 私にはその気がないのですが、二人は戦うことを前提にこの場に来ているみたいです。

 お願いですから、問題を起こさないようにお願いをしましたが……とても不安です。

 何事も無いことを祈りつつ食事に集中をしているとシアが私の手を取り背後に促すような行動を取りました?

 シアの視線の先を見つめるとクリスさんに劣らない美形の方がこちらにやってきます。

 そして、私の前で立ち止まると声を掛けられました。


「私には覚悟があるので、次の曲の相手をしてくれないかな」


 改めてみると服装も立派な方です。

 そして、気になったのはこの方の背後に居る方です。

 見た目はなんとなく眠そうな目をしているのですが、私の体が警戒をしています。

 よく見ればシアの視線の先もその方に向いています。

 しばし沈黙が流れたのですが、丁度曲の切り替わりになると私の手を引いて中央まで連れられてしまいました。

 シアはと言うとあの眠そうな方と対峙でもしているような感じで動きません。

 私が心配そうな表情でもしていたのか、フィスさんが「後はお任せください」と声を掛けてくれました。

 なので、シアのことはフィスさんに任せていまは目の前の方のお相手をすることにしました。

 いざお相手をしてみると力強い動きで私をリードするような動きをしています。

 そして、踊りながら私に話しかけてきました。


「君はフィフスの登録者なのか?」


 フィフスはフィスさんの事ですが、私は事前に言われていることがあります。

 もしも登録者の所在を聞かれたら、答えを濁すように言われています。

 私の本来のパートナーはシアですが、この国ではフィスさんの登録者と思わせておく方が良いとおじさまが提案してきたのです。

 理由が分からなかったのですが、先ほどの話でなんとなく分かった気がします。

 

「さあ? どうなのでしょうか? 聞きそびれましたが、貴方のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」


 考えてみたら、自己紹介もないままに手を引かれて踊ることになりました。

 フィスさんの警告にも拘わらず私を連れ出すなんて、それなりの方なのかと思います。

 そのフィスさんも特に気にしていないどころか、シアと相対している方に注意を向けています。

 きっとあの方は実力的にはシアやフィスさんに近い存在なのかもしれません。

 そんな人物を連れているのですから、上位貴族なのは確かと思います。


「まさか私を知らない者がいるとは思わなかった」


「世間に疎い者なので申し訳ありません」


「私の名はゼフォンと言うのだが、聞いたことはないか?」


 はて?

 どこかで聞いたことがある気がします。

 最近ではありませんが……学園に通っていた時に友達が何か言っていた気がします……あっ!


「ゼフォン殿下なのですか!?」


 私の答えに満足したのか、目がそうですと言っている気がします。

 確か当時にこの国の王太子殿下が来られたとの話が持ち上がっていました。

 私は興味が無かったし、その日は夜更かしをして眠かった事もあり木陰で昼寝をしていたのです。

 後から聞いた話では、とても美形でしかも能力不足でこの学園に通っている生徒たちにも分け隔てなく接してくれたのでしばらくの間はずっと話題になっていました。

 適当に聞き流していたのは、単なる視察と顔見せでもしているぐらいしか私は思っていなかったのです。

 その事実に思い出したことで、私の対応は大丈夫なのかと不安になってきました。

 いくらなんでも一国の王太子に知らないから名前を教えて欲しいなんて質問をしてしまったのです。

 ゼフォン殿下は面白そうな表情で私を見ているのですが……大丈夫なのでしょうか?

 

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