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Eighth Doll  作者: セリカ
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ミッドウェール王国本国にて


「初めて来るのですが、あれがミッドウェール王国の本国である浮遊島なのですね」


 あれから数日が経過してから、本国に向かうことになりました。

 私達が乗るフィフス・エンジェルを中心にアヴェルさんが乗る古代の魔道船を先頭に数隻の魔道船を伴って出航したのです。

 途中で他の魔道船とも遭遇したりもしましたが、大抵は一隻か二隻の編成です。

 本国に近づくにつれ多くの魔道船が集まってきたのですが、私の想像よりも沢山の船が集まっています。

 フィスさんが魔道船の識別をしていたのか、古代の魔道船が意外と残っていると言い出しました。

 よく見るとたまに他の魔道船とは違う形の魔道船が混じっています。

 中にはシアが渓谷で手に入れてトランさんに譲渡してしまった魔道船まであります。

 私達が最初に手に入れた巡航空母と呼ばれる形をした魔道船が無いので、フィスさんに訊ねると空母型は数が少ないうえにフィスさん自身が過去に集中して落としたらしいのです。

 通常の古代の魔道船にもガーディアンを搭載しているタイプもあるらしいのですが、基本的には本体の火力優先で作られているそうです。

 多くのガーディアンを搭載するにはその分だけのスペースが必要です。

 魔道船の設計はその浮遊島の施設の設計者の思考が反映されていたそうなのですが、大抵は本艦の火力重視で火力を捨ててガーディアンの数に任せている魔道船は少数派らしいとのことです。

 それよりもっと昔は制空権を取る為に逆の発想だったらしいのですが、ガーディアンの数で圧倒しても倒せない魔道船が作られるようになってからは本艦自体の強化と火力重視に変化していったそうです。

 その代表的な倒せない存在が本国の浮遊島の上に滞在しています。

 最初は何かの黒い点が不自然に空にあると思っていたのですが……近づくにつれはっきりと見えると大きな球体の形をした古代の遺産の一つである要塞艦と呼ばれるものです。

 フィスさんが説明をしてくれたのですが、あれはミッドウェール王国に残っている要塞艦『サーティーン・ジュピター』と教えてくれました。

 フィスさんの船と違って、数字の後の名前が違うことを尋ねると製作者の好みとのことです。

 前回の大戦で失われたソーニャさんの要塞艦である『トウェルヴ・デーモン』は黒い重力球を近づく敵に撒き散らす攻撃をしてきたそうです。

 古代の魔道船と言えど発生させた黒い球体に触れると防御力無視で装甲が無力化されてしまうそうです。

 唯一の欠点は遠距離攻撃を苦手としているとのことです。

 近距離攻撃には絶対の自信があることから前回の大戦では前に出過ぎたことで深入りしたところを集中的に攻撃して修復不可能な損傷を与えるつもりが、まさかの自爆でバートランド王国の戦力も大幅に失ってしまった戦いです。

 特に確実にダメージを与えられる古代の魔道船も一緒に消滅してしまったので、戦力的にはどちらもかなりの痛手になったそうです。

 単艦で優位性を持つ要塞艦と複数の古代の魔道船の比較になるのですが、シア達のような存在を多く失うのもかなりの痛手と思います。

 そして、目の前に見えている要塞艦サーティーン・ジュピターは近距離攻撃はそこそこで雷撃を一点集中した砲撃ができるそうです。

 その射線内に巻き込まれれば大抵の魔道船は消滅してしまうそうです。

 ただ、その攻撃は多くの魔力を消耗するらしく連続では撃てない欠点があるのですが、密集した状態で撃たれると艦隊の大半を失ってしまうのでまともに相手などできません。

 大戦時には多くの魔道船もいますので、分散して戦うと今度はまとまった部隊が編成しにくいとのことです。

 それに要塞艦には数十隻の魔道船を駐留させることが可能なので、展開している艦隊の穴を開けても即座に補充されて防がれてしまうか、突撃して包囲される可能性があるそうです。

 ずっと聞いていますが、私には戦争の戦術などの説明をされても理解が難しいです。

 その説明を私にするフィスさんはなんだか楽しそうなので取り敢えずは聞いているだけです。

 私にわかることは、あれがとんでもなく恐ろしい兵器だと言うことです。

 仮にいま狙われて撃たれたら……今度こそ私の人生が終わってしまうことだけは理解しました。

 私が話を聞いている内にアヴェルさんの魔道船に続いて本国の港に到着しました。

 参加する予定の人だけが降りると魔道船は浮上して上空待機になります。

 フィスさんの船はいつもお屋敷の上空に待機しつつ姿を消しているので今までは気にならなかったのですが、常に飛んでいる状態なのは大丈夫なのでしょうか?

 疑問に思いつつフィスさんに質問をするとコアを起動させたままなら、通常の魔道船でも上空待機は可能とのことです。

 浮遊しているだけなら、常時回復している魔力消費の範囲内だそうです。

 改めて聞くと古代人が残した物はすごいと思います。

 それに浮遊島に全ての魔道船を駐留させることは不可能です。

 それをやってしまうと完全な軍事施設になってしまいます。

 浮遊島が移動できる時代の時は、そのような仕様の浮遊島もあったそうなのですが、いまは一部の軍事施設が集中している浮遊島のみとのことです。

 もっと言うのなら、古代人が大陸を浮かび上がらせたところまでは良いとしても、その大半を戦争で落としてしまって使えなくしてしまった為に地上を含めた土地の減少が主な原因です。 

 到着後は、おじさまを筆頭にこの本国におけるワグナー家のお屋敷に案内されました。

 ヘレナ様からも本日はしっかりと休むように言われました。

 明日は私の初めての社交界のお披露目となります。

 ドレス選びから着付けやメイクまで、全てフィスさんがしてくれるそうです。

 本当はヘレナ様が手配を全てするつもりだったのですが、フィスさんが私のコーディネイトは全て自分がやりたいと言い出したのです。

 要望が通らないのなら、ワグナー家に協力しないと言い出す始末です。

 不貞腐れているフィスさんを見ていたおじさまから肩を叩かれて頼むと一言言われたのでフィスさんにお任せすることにしました。

 ヘレナ様は残念そうでしたが、代わりにフィスさんは嬉しそうでした。

 特におじさまに対しても「じいさんは、話が分かるから生きている間は極力協力するようにするよ!」などと言っていました。

 おじさまも「健康に留意して長生きしないといかんな」などと呟いています。

 そんなこともありフィスさんに全てを任せているのですが、どんなドレスを用意してくれているのか私は知りません。

 一度も採寸などもしていないのですが、私が眠っている間に好き放題をしていたのですから多分ですが大丈夫かと思います。

 明日の衣装を楽しみにして本日はシアと一緒に眠ることにします。

 いつもならレンちゃんもいるのですが、レンちゃんはフィフス・エンジェルでお留守番です。

 以前にミッドウェール王国に嫁がせる話もあったので、国王陛下と側近の方は顔を知っているかもしれないので、船から下ろさない方が良いとフィスさんが判断をしたのです。

 護衛の為にゲイルさんとシャーリーさんも残してあります。

 ゲイルさんは、専属騎士になったとはいえ可能なら堅苦しい場に同伴はしたくないと言う理由です。

 そして、シャーリーさんは元の体が問題だからです。

 個体反応が識別しにくいとはいえ、正体がバレて重力属性なのが知られるのは避けた方が良いとの判断です。

 重力属性の個体番号は『トウェルヴ』しか存在しないからです。

 別に発見された個体と言って逃げ切ろうとしてもコアを判別できる個体ならシャーリーさんのコアに登録されているナンバーが知られてしまうからです。

 その場合は、どうして別の意志を持って行動をしているのかも追及されてしまうので面倒ごとが増えるだけなのでお留守番が決定したのです。

 こちらはゲイルさんと違って、私の騎士として同行して食事とワインに有りつこうと考えていたので、残念がっています。

 私は思うのですが、護衛の騎士が公の場で大っぴらに飲み食いをしても良いのかと疑問が浮かびましたが、結果は分からないことになりました。

 今頃はフィスさんの船に貯蔵してあるワインを飲みまくっているに違いありません。

 酔えないから控えていたのですが……仕方がありませんね。

 そんなことを考えつつシアを抱き枕にして眠るといつの間にか朝になったのかフィスさんに叩き起こされました。

 朝から直ぐに入浴を促されてフィスさんが手慣れた仕草で私の身支度をしていきます。

 普段のフィスさんと違ってとても気合の入った表情です。

 その甲斐があったのか、鏡に映る自分を見た感想なのですが……これが私なのかと感心をしました。

 自分で言うのもなんですが、鏡の中の私はとても綺麗な女性です。

 青を基本としたとても綺麗なドレスです。

 どこかで見たことがある気がするのですが、あれはどこだったのでしょうか?

 少し悩みましたが気にしないで、鏡を見ながら色々なポーズを取っていると背後に映るフィスさんが懐かしい物でも見るような表情で私を見ています?

 振り向いてフィスさんを見つめると……「僕のルナティア様……」と口に出しています。

 その言葉で思い出しました!

 このドレスを着ていた女性の肖像画をフィスさんの部屋で見ています。

 思い出しながら自分の姿と比較をするとかなり似ています。

 私に見とれているフィスさんを見てあることを思いつきました!


「フィス。いまの私はどうかしら?」


 ちょっと大人ぶって声を掛けるとフィスさんがその場で跪いて私を主のような礼を取っています。


「とてもお似合いで御座います。僕の主たるルナティア様」


 いつもの雰囲気が消えて真面目なフィスさんがいます!

 からかっているのか分かりませんが、私を過去の主と勘違いでもしているような態度です。

 本人がその気なのでしたら、ちょっと私も付き合うつもりで命令と言うかお願いをしてみたいと思います。


「いくつか頼みたいことがあるのですが、聞いてくれますか?」


 簡単なことは良いのですが、ちょっと手間のかかる事は私が身体的な対価を払わないと言うことを聞いてくれません。

 特に考えずに言ってしまったのですが、なにか言おうかと考えているとフィスさんの方から具体例を言い出しました。


「ルナティア様の望みはどんなことだろうと我が身に代えて達成いたします。差し当たって考えられるのはお好みの侍女の補充で宜しいでしょうか?」


「侍女の補充ですか?」


「そうです。ルナティア様好みの若い娘を勧誘して、いつも通りに躾を致します」


「……」


 フィスさんの最初の主であるルナティアさんと言う方は、フィスさんを使って若い子を手籠めにしていたのですか?

 私は、自分で行動する方が好きなのですが、ルナティアさんはフィスさんに躾までさせていたようです。

 それよりも躾と言うのが気になるのですが……答えてくれるのでしょうか?


「躾と言うのはどこまでするのですか?」


「ルナティア様の要望に全て応えられるように躾けて御覧に入れます。僕の能力で体内から教え込めば自ら求めるように致します」


 体内からと言うのは昔に私にしていたことですよね?

 過去の体験から躾の内容を十分に理解致しました。

 どうもルナティアさんはお膳立ては全てフィスさんにさせていたようです。

 だから、フィスさんのインチキを含めたテクニックが凄かったのです。

 私が言うのもなんですが、フィスさんが変態呼ばわりされているの理由が納得できます。

 

「それは良いので、本日のことに集中したいと思います」


「ご安心をしてください。会場では僕とシアがエルナ様を完璧に護衛しますので、傷一つ付けさせません。万が一にもそんなことになっても会場にいる奴らを全て始末するつもりです。シアも必ず賛同するはずです」


 話を切り替えると元のフィスさんに戻ったのか、私の名前で話しかけてきました。

 それよりも会場で何かあるとシアとフィスさんが暴走する可能性が出てきました。

 隣にいるシアにフィスさんが視線を向けると首を縦に頷いています。

 この点に関しては、二人の意見は同じになっているようです。

 そんなことが起きたら、私達はミッドウェール王国から追われる身にもなってしまうので、何事も起こらないことを祈ります。

 そんな会話の後ですが、改めて鏡を見ると私もしっかりとおめかしをすれば化けることが可能だと知りました。

 後はボロが出ないようにしっかりと振舞いたいと思います。

 用意が出来たところで、私をエスコートすのはクリスさんです。

 あの後にフィスさんはクリスさんの提案を受け入れることにしたのです。

 発想はシアと同じ理由でしたが、害虫避けに使えるからとのことです。

 そして、フィスさんは地下迷宮で着ていた服装に着替えて私の隣にいます。

 フィスさんもドレスを着ると思っていたのですが、上位ナンバーの個体には専用の正装があるらしくこれがフィスさんの正式な衣装とのことです。

 それにこの衣装は見た目と違って防御力がとても高いと以前に聞いています。

 私に何かあっても全力で対応もできるので都合が良いそうです。

 華やかさはありませんが、見ようによってはドレスのようにも見えます。

 それに付属で付いている長いリボンのような物は戦闘時には固い魔物を紙のように切り裂いていました。

 仮にフィスさんが公の場で暴れるようなことがあれば、恐ろしい光景が浮かびます。

 そんなことになればシアも黙ってはいないと思いますが……打撃が基本のシアと切り裂きがメインのフィスさん。

 いつぞやに見た基地の光景のような事にならないことを祈るばかりです。

 そして、そのシアは動きやすそうな少年のような服装です。

 私とおそろいのドレスにと提案をしたのですが、それでは動きが制限されるのでシアが却下したのです。

 用意が調うとヘレナ様に挨拶をして会場に向かいました。

 おじさまと公爵様とアヴェルさんは先に行っているそうです。

 色々とすることがあるそうです。

 私とシアの家にしていた古代都市に近い形をしたお城に到着すると案内をされて会場に向かいます。

 目的の場所について扉が開かれると豪華な装飾と沢山の人がいます。

 私達が現れると何故か静まり返って注目をされています?

 私の姿に何か問題でもあったのかと思ったのですが、視線の先を辿ると私の少し後ろの左隣にいるフィスさんに注がれている気がします。

 そんな視線にも気にせずにフィスさんは私の従者のように付き従うような立ち位置に居ます。

 私の右隣にいるクリスさんもどこかに視線を向けて何かを確認をしているみたいです。

 背後のシアにも視線が注がれている気がしますが、こちらもまったく気に留めていません。

 会場に着くとヘレナ様の後を付いて行きおじさまと合流を致しました。

 まだ国王陛下はいらっしゃらないようですが、何事もなく済むことを祈りたいと思います。


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