表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eighth Doll  作者: セリカ
111/141

そろそろ帰りたいのですが……

「ゲイル! そっちに行ったわよ!」


「よし、トドメは俺が貰うぞ!」


 囲んで疲弊させた地竜がゲイルさんに牙を剝いたのですが、ゲイルさんの電光石火の一撃で地竜を倒してしまいました。


「またしてもゲイルさんが倒してしまいましたね」


「ああ、この剣のお陰だな」


 そう言って一振りの大剣を掲げています。

 あの後にヴェルナーさんが目覚めるのを待ってから、奥の施設に案内をしてもらいました。

 安全に通れる道案内をしてくれましたので、起動しているガーディアンの障害も無く向かうことができたのです。

 案内された場所は何かの研究施設のようでしたが、壁に設置してある大きな装置にシアがコレットちゃんからカードを貰って何かをすると施設内が明るくなったのです。

 殆どの機能は死んでいたらしいのですが、動かすことは可能みたいです。

 その後は使える施設を再起動させてしばらく滞在することにしたのです。

 シアが施設を動かしたことで、ヴェルナーさんは驚いていました。

 いくらカードキーがあってもここまで使えるようになるとは思っていなかったようです。

 後は施設内の探索をしていた時に古代の武器を見つけたのです。

 コレットちゃんの杖と同じく溝が彫りこまれた大剣です。

 試作品らしく武器の名称はなかったのですが、シアが言うには雷属性の剣とのことです。

 コレットちゃんの杖と同様に実験的に作られた人体強化の為の武器です。

 ただし一つだけ問題があります。

 使用する為にはコレットちゃんの杖と同様に頭の中に情報を書き込むことです。

 これに耐えられないと場合によっては脳に障害が出ると言われています。

 コレットちゃんにもシアが警告していました。

 しかし、今よりも強力な魔法が使えるならと受け入れたのです。

 その時の私は眠っていたので分からないのですが、コレットちゃんは頭の痛みに丸一日耐えていたそうです。

 ゲイルさんもその時の状況を知っているのですが、シアから「これが使えるようになれば生身の人間が標準型の個体に近い戦闘能力が得られます」と言われて挑戦したのです。

 前回の戦闘であるヴェルナーさんとの戦いでは何もできなかったので、自身も強い力が得たいと考えたのです。

 最初はシャーリーさんに止められていたのですが、意志が固かったのでシャーリーさんも折れて見守っていたのですが……意外なことにゲイルさんは特に苦も無く自分の物にしたのです。

 コレットちゃんみたいに激しい頭痛にも襲われずに頭の中に声がする程度で無事に完了したそうです。

 それを見ていたヴェルナーさんは「相性が良かったのだろう」と言っています。

 同じ苦しみを味わうがいいなどと言っていたコレットちゃんは「詐欺じゃ!!!」と喚いていました。

 ゲイルさんからは「日頃の行いの違いだな」とコレットちゃんに聞こえるように話しています。

 そして、この剣の効果とは能力を発動させると電撃を纏い高速移動ができるようになるのです。

 相手に斬りつければ、電撃の追加ダメージまであります。

 更に魔力を上乗せすることで、威力まで上げられるのです。

 本来なら、ゲイルさんにはそこまでの力を発揮させる魔力はありません。

 シャーリーさんと繋がっていることで、魔力供給範囲なら、問題なく使えます。

 そこにシャーリーさんの登録者に対する付与まであるので、接触した相手に重力負荷まで与えれます。

 更に剣にも付与を上乗せすれば重さまで追加ができるのです。

 下手をすると全力の一撃はシアに匹敵する強さを手に入れたのです。

 ただし、シャーリーさんが魔力供給範囲内にいないと最小限の魔力で速さだけは維持ができるだけになります。

 それだけでも十分かと思うのですが、後はゲイルさんの体力だけの問題となります。

 いくら強くなっても生身の人間の体には限界があります。


「エルナ、もう少しで夜の時間帯になります」


「もうそんな時間なのですか?」


 光も殆ど届かない場所なので、時間の経過が分かりません。

 日差しが真上にある時だけは、少しだけ光が差すのでお昼の時間だと判断ができます。

 それ以外は暗い場所なので、シアが常に光球を作り出した明かりで魔獣を探し出して倒していたのです。

 もっとも作り出している明かりが広範囲なので、魔獣の方から寄ってきたりもします。

 ヴェルナーさんの言った通り施設から出ると地竜が徘徊していました。

 最初は小さな明かりだけで探していたのですが、それだと岩場の陰からいきなり現れることもあるので、シアが出せる光球を可能な範囲で作り出して明るさを保つことにしたのです。

 戦ってみると普段の魔獣よりも強めです。

 中には攻撃魔法を使ってくる地竜もいたので、強くなった私でも強敵と感じました。

 まともに打撃などを受ければ吹き飛ばされてしまうので、必死に攻撃を躱しているのですが、それでも避けきれない時があります。

 その時は、必ずシアが助けてくれるので大事には至ることにはなりません。

 シアは普段は傍観をしつつ最低限の補助に徹していてくれています。

 基本的には私とゲイルさんの訓練を兼ねた狩りになっています。

 シャーリーさんも戦いには参加しているのですが、基本的にはシアと同じくサポートに回っています。

 こちらは私とゲイルさんの手が回らない所の補助です。

 以前とは違いシャーリーさんの戦闘能力はシアに近いので、一人でも十分に地竜が倒せてしまうからです。

 そのことから、必ずと言っていいほどにゲイルさんが地竜を倒せるように手助けをしています。

 以前はゲイルさんがシャーリーさんのフォローをずっとしていたのに今は戦闘面では逆の立場になってしまいました。

 シャーリーさんからは「これからは、私が色々と面倒を見てあげるからねー」と言われているみたいです。

 当の本人は、「なら、頼むわ」と切り返しています。

 私が二人の仲が良いことを言うとゲイルさんは「腐れ縁だが、酔っぱらいの面倒と飲み代で苦労しなくなった分でも返してもらうか」と言っています。

 

「ところで、ここにはいつまで滞在する予定にするの?」


「特に決めていないのですが、コレットちゃんが動かないので……」


 シャーリーさんに今後のことを聞かれたのですが、予想通りにコレットちゃんが動きません。

 施設が復旧したことで、あちこちに行っているのです。

 最初の頃に襲ってきていたガーディアンは活動停止状態になっています。

 施設を掌握しているシアが待機状態を命じている為です。

 ライラさんに貰ったカードキーの権限はかなり高いレベルだったらしく現状では浮遊島の完全な再起動以外は全て行使可能とのことです。

 仮に最大の権限があったとしたら、この施設を浮遊島として再起動ができるのでしょうか?

 シアに訊ねると浮上させるにも大地を固定する魔力回路の消失と浮上させる為の動力部のコアが破壊されているので浮遊島としては機能しないそうです。

 それに起動させると一番近い地域に住んでいる民衆にも被害が出てしまう可能性があるみたいです。

 どちらにしても浮遊島を起動させる案は却下です。

 それ以外には眠っていた物があるので、そちらを使うことにしたのです。


「なら、コレットだけ置いていくか?」


 ゲイルさんは動かないコレットちゃんを置いて行けばよいとの考えです。

 これにはシアとシャーリーさんも賛成しています。


「ここに1人で置いていくなんて可哀そうなので……」


 ここに滞在してから、もう10日以上経過しています。

 ヘレナ様の記録では谷底まで遠回りのルートで到達してから撤退するのに20日以上の日数の記録がありました。

 私達は直線コースで最短距離で到達しています。

 谷底には遠回りではなく、そのまま落ちているだけなのですが……普通ならかかる日数をシアの能力と落ちると言う予想外の行動力で短縮をしているのです。

 それは良いとして、帰る為の日数計算をするともう少ししたら帰らないとワグナー家に迷惑が掛かってしまいます。

 ヘレナ様からは、自分達が帰還した日数よりも5日以上経過した場合には大規模な捜索をすると言われています。

 いくら私にはシアが付いているとはいえ、それ以上は何かあったと判断するそうです。

 そして、無事に捜索隊が見つけた場合は当分はお屋敷で過ごすことを約束させられたのです。

 そうなった場合は、私には恐ろしい勉強の時間が待っているのです。


「一人ではなければ良いのでしたら、あいつを置いて行けばいいのです」


 シアの言うあいつとはヴェルナーさんのことです。

 ヴェルナーさんは、過去の人格と違って外に出てみたいと考えているのです。

 これまでは、発見されれば始末される恐れがあるのでずっとここにいたのです。

 仮に戦闘になっても単体での戦いなら負けないとは考えていても数で来られたら勝てないと考えているのです。

 なので、私のお友達になって一緒に行きませんかとお誘いをしたのです。

 そのお誘いにヴェルナーさんは乗ることにしたのです。

 なので、現在は私のお友達になっているのです。

 お友達になると私に色々と格闘技術の稽古もつけてくれるようになりました。

 シアは必要が無いと言っていましたが、大柄な人との稽古は新鮮で勉強になることもあります。

 そんなことから、シアはヴェルナーさんのことを大抵はあいつ呼びをしています。


「ヴェルナーさんとは一緒に戻る約束をしています」


「エルナに警告をしておきます。あいつは危険です。現在は魔力も回復していますので、あいつがエルナを裏切って私達を各個撃破してくるようなことがあれば現在の私達が負ける確率が高いです」


 この中で、ヴェルナーさんと対等に戦えるのはシアだけです。

 それも私が危険な状態になっていることが前提です。

 次に強いのがシャーリーさんなのですが、元の体の持ち主であるソーニャさんよりも能力的にはダウンしている状態なそうです。

 一番の問題は自信の能力を最適化する演算能力が大幅に低下しているからとのことです。

 魔法を扱うにも大体の感覚で使用しており、魔法を使う為には魔法名を言葉にしないとイメージができなくて発動しないそうです。

 コレットちゃんは普通に魔法名を唱えていますので、それが普通だと思うのですが、シア達はそれらが全て最適化されていて方向性だけを示せば発動がさせられるとのことです。

 シア達が魔法を使うのに手や指でリアクションをしているのはそう言うことらしいのです。

 だから、私がヴェルナーさんに対して右手で行動を起こそうとした時に近距離で攻撃魔法を使われると思われて握りつぶされたのです。

 しかし、実際の私は魔法なんて一つも使えません。

 出来ることは右腕限定の大幅な身体能力の強化が限界です。

 あれから色々とお話をしたのですが、私の体にとても興味を持っています。

 異性とかではなくコアを宿した生命体としてです。

 シャーリーさんにも興味を示していましたが、私の方が面白いと……。

 少なくとも興味対象であるうちは裏切るとかされないと思っています。

 それになんとなくなのですが、ヴェルナーさんは信用ができると思います。

 私の勘なのですが、シアはそれでも警戒するように私に警告をしてくるのです。


「シアが心配をしてくれるのは分かりますが、私は信用ができると思っていますので今は私を信じてください」


「エルナがそう言うのなら、仕方がありません。しかし、次にエルナに危害を加えた時は必ず始末します」


 同じような警告を何度も受けているのですが、トランさんの時とは違って中々納得をしてくれないのです。

 トランさんは関わっていただけなので、それ以上のことはなかったのですが、ヴェルナーさんは私に対して直接危害を加えているのが問題なのだと思います。

 私の心配をしてくれているシアを説得させるにはどうすればいいのか難しい所です。

 現在滞在に使用している部屋に行くとコレットちゃんに質問攻めになっているヴェルナーさんがいます。

 必要以上の受け応えのしないシアと違って普通に会話をしながら質問に答えています。

 飽きもしないでよく質問をしていると呆れているゲイルさんとそれに対してシャーリーさんは真面目に受け応えをしているヴェルナーさんに感心をしています。

 取り敢えず食事の用意をしつつ、そろそろ帰ることを話し合いたいと思います。

 コレットちゃんをどうするかの問題なんですが……。

 




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 とある場所にて




「荒らされたような形跡は無いが、ここで間違いはないのだな?」


「時間は掛かりましたが、間違いはありません」


 確かに今までの遺跡と違い保存度が高い。

 探索に時間は掛かったが、解析した資料通りならあれが眠っているはずだ。

 疑問なのは妨害や侵入者に対するガーディアンが襲ってくるようなことがないのが疑問なだけだ。

 それらを想定して戦力を連れてきたのだが、拍子抜けでもある。

 戦力を減らすことなく進めるのは助かるのだが、肝心な物が無い可能性もあるな。

 途中で手に入れた遺跡の地図を頼りに最深部に向かう。

 神秘的な広い空間に出ると、そこには目的の物が存在した。


「殿下、ここの個体は全て完全に手つかずのようです」


 部下の指摘通り周りを見渡せば複数の個体が入れ物の中に眠ったままだ。

 中心部には一つだけ縦に固定された入れ物がある。

 今までにこのような保管をされていた個体を見たことは無いが、間違いなく液体に包まれた透明な容器の中に浮かぶ一体の個体が存在している。

 その姿は神秘的な美しい女性の姿だ。

 大抵の個体は男性とも女性とも見れるような中性的な感じなのだが、この個体は完全に女性型の姿をしている。

 中心部に本命の個体に近づくと眠っているはずの個体の目が開かれた。


「ここになんの用で御座いましょうか?」


 私が知る限り目覚めたばかりの個体が入れ物の中から質問をしてくるのは初めてだ。

 それ以前に休眠状態なのにこちらが干渉する前に自力で目覚める個体の話など聞いたことがない。


「確認がしたい。お前は十四番で間違いはないか?」


 情報通りなら、こいつは未発見の十四番の個体で間違いは無いはずだ。


「形式番号はその通りでございます。自己紹介をさせていただきますと私には『セイレーン』と言う名が与えられています」


「なんだと? するとお前は既に目覚めた後に眠っていたのか?」


 現在までに十四番が活動したと言う記録はない。

 こいつに以前の登録者が居たとなれば、確保に問題がありそうだな。


「私はずっと目覚めていました」


 こいつは休眠状態ではなかったのか?

 ならば、最後の登録者がここに待機するように命じて、それを守っていたのかもしれん。


「では、以前の登録者はどうしたのだ?」


「私にそのような者はいません」


 登録者不在だと?

 普通に会話が成立していることから、既に人格が完成しているみたいだが……。


「では、どうして名前があるのだ?」


 登録者不在で名前が与えられている個体の存在がいる話など聞いたことがない。

 そして、目覚めたばかりの個体は経験値が無い為に事務的な反応しかしない。


「私は最初から名前と人格が与えられています」


 こいつは……開発段階で既に全てが完成しているようだ。

 登録者との相性次第で弱体化しなくてもいいのは長所と言えるだろう。

 しかし、こいつの登録者になることができて従えられるかが問題だ。


「それでお前は私の命に従うのか?」


 最初から人格まであるとすれば、従わせるのは難しいかもしれんな。


「貴方は私に何をさせるつもりなのですか? その答え次第では従いましょう。しかし……答え次第では……」


 その言葉と同時に私達に複数の視線が向けられる。

 周りに眠っているはずの全て個体の目が見開き、その全てが私達を見ている。

 こいつは最初から目的が定められているのかもしれん。

 答えを間違えるとこいつらが動き出して、私達に牙を剥くかもしれんな。

 考えつつ、ふいに視線を下に向けるとかなり古いが何かが飛び散ったような跡がある。

 恐らくは不正解を言ってしまうと私もその跡の一つになるのだろうと予測ができる。

 考えても仕方がない。

 私の望みは初めから決まっている。


「私の目的は……」


 その答えを聞いた十四番は少し考えた仕草をしたと思うと私の目を見つめてきた。


「いいでしょう。貴方を登録者と認め協力したいと思います」


 私の答えは正解に近いようだった。

 目の前の容器の液体が消え去ると透明な容器が開いて中から十四番が私に近づくと左手を取り口づけを交わすと紋章が現れてが繋がった感じになった。


「これより貴方を私の登録者と致します。以後は私のことはセイレーンとお呼びください。我が主となった貴方のお名前を教えてください」


 私の名を告げると正式に私を主と認めたようだ。

 個体に品定めをされるとは思わなかったが、手付かずの戦力をえられたのは大きい。

 後は、どのタイミングで動くかだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ