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Eighth Doll  作者: セリカ
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近道を選んだら……


 森に入って数日が経過しました。

 最初のうちはそれなりに魔獣との戦闘もありましたが、順調に進んでいました。

 しかし……。

 

「シア、この方向で合っているのですか?」


「方角は間違いありません」


「そうですか……ですが、もう少し普通に歩ける道は無いのでしょうか?」


 私達はシアの案内で、道なき道を進んでいます。

 どんな所を進んでいるのかと言うと、私の背丈よりも大きく伸びている雑草が生えている地域です。

 先頭を進むシアが雑草を切り裂きながら進んでいるので、私達は付いて行くだけなのですが……足元が問題なのです。

 足元は湿地帯であり軽い沼地状態なのです。

 なので、私達が履いているブーツが泥だらけです。

 これが普通の靴だった場合は素足も泥だらけになるので救いはあるのですが、たまに転びそうになるので安心はできません。

 

「ありますが、遠回りになってしまいます。先ほどの分岐地点を地図通りの歩ける道の方角からは生体反応が多数ありました。その場合は全て始末していく可能性が高くなりますので時間を消費します」


 シアは最短コースを選びつつ時間を消費しないルートを選んでくれています。

 私がシアにどのように進むかを聞かれた時に目的地に早く進めるようにとお願いしたのですから、シアの行動は間違っていません。


「それなら仕方がありませんね」


 目的地に最短で辿り着きたいのですから、ここは我慢したいと思います。


「わらわは楽が出来るので、気にならんのじゃ」


「コレットは歩いていないからな」


 コレットちゃんの発言に対してゲイルさんが答えています。

 その理由は、コレットちゃんだけは私が抱えているからです。

 コレットちゃんが履いている靴では靴の中に泥水が入ってしまうので、私が抱き抱えて行くことにしたのです。

 昔の私でしたら、体力的に無理でしたが、いまは違います。

 コレットちゃんの体重ぐらいでしたら、右腕で軽く持ち上げられます。

 疲れに関しても激しい運動をしない限りは減っていくのは魔力だけなので、コレットちゃんぐらいなら片手で持てるのです。

 最初は嫌がるコレットちゃんにシアが冷たく自分の足で歩くように言っていたのですが、私が抱き抱えていくことにしたのです。

 こんな時ですが、可愛い子を抱き寄せながら進むことは私にとっては、ご褒美みたいなものです。

 三百年近く生きているのにコレットちゃんからは幼女の見た目で、なんとなくいい匂いがします。

 普段は仕方なく私に抱き着かれているのに今回は、自分から抱き着いてきてくれるのですから、私も気分が良いのです。

 顔の距離が近いので、たまに頬と頬が触れるのも悪くありません。

 その様子見ているシャーリーさんは、私のことを「エルナちゃんは本当に重症ね」と感想を述べています。

 シャーリーさんも可愛い物好きになったはずなのですが、コレットちゃんは例外のようです。

 聞いてみたのですが、自分よりも年上には流石にその気になれないとのことです。

 私は見た目以外は気になりませんのでコレットちゃんは十分に範囲内です。

 最後尾のゲイルさんは、「一番の年長者がこれとか示しがつかんだろう……」と呟いています。

 それを聞いていたコレットちゃんは「年長者は大事にするものなのじゃ」と言い返しています。

 普段は年寄り扱いをすると怒るのですが、コレットちゃんは都合よく使い分けています。

 私としては、次の段階に移行してくれれば問題はありません。

 次の段階と言うのは……もちろん夜の関係です。

 レンちゃんとの関係が深まりましたが、それとは別にコレットちゃんもいただきたいのです。

 勿論ですが……お互いに合意の関係に……。


「エルナちゃん……何を考えているのかは想像が出来るんだけど、まずはその涎を拭いて周りに注意してね。ここは魔獣といつ遭遇するのか分からない場所なのでいつもの妄想癖は程々にね」


 シャーリーさんに指摘されてハンカチを取り出して口元を拭くと意識を周りに戻しました。

 分かっているのですが、私は可愛い子のことを考えると妄想が止まらないのです。

 特に最近はレンちゃんとの情事の所為なのか更に深い想像をするようになってしまったのです。

 そんな私を呆れ顔でコレットちゃんが見ているのですが……その内にコレットちゃんも私の物にする予定です。

 私はレンちゃんから学んだのです。

 誠意と情熱を持って押せば相手にも伝わることをです。

 レンちゃんの熱意に私は負けてしまいました。

 なので、私もコレットちゃんに対して積極的に押し続ければその内に相思相愛の関係になれると気が付いたのです。

 その事を本当の意味で一番の年長者であるフィスさんに相談しました。

 レンちゃんから聞いたのですが、フィスさんは王宮内の女中やメイドを片っ端から攻略した実力とのことなので相談する価値はあると考えたのです。

 答えとしては、私の好きなようにすれば問題ないと言われました。

 フィスさん曰く「可愛い子を手籠めにしたいと考えるのは僕の最初の登録者であるルナティア様と同じ考えです。可愛い子を求めるのは本能みたいなものなので、エルナ様の行動は正しいのです。ついでに僕も押し倒して可愛がってくれるのを待ってますー」と言われています。

 

「はぁ……コレットを抱いているから妄想が止まらないみたいね。それは仕方のないことなんだけど、シアちゃん。私達は囲まれているんだけど、いいのかしら?」


 諦めたようにシャーリーさんが呟いたと思ったら、次に私達が囲まれていると発言しました!?

 それを聞いて私も周りに注意することにしたのですが……私にはまだ分かりません。

 どのくらいの距離から分かるようになったのでしょうか?

 シアは、気付いていても聞かなければ答えてくれません。

 現在までにシアに対処不能な魔物や魔獣を見たことがありません。

 必ず倒してしまうので私も安心をしているのです。

 苦戦した相手は今のところはフィスさんとライラさんだけです。

 現在は分かりませんが、最初に出会った時はフィスさんに片腕を斬り落とされていたこともあり、ライラさんに至ってはシア一人に専念されると身動きが出来なかったこともありました。

 なので、相手によってはシアが必ず勝つとは言い切れません。

 それでも私はシアを信じています。

 

「問題ありません。多少数はいますが処理可能な範囲です」


「シアちゃんがそう言うのならいいんだけど、昔の私達なら全滅は確実よね。その前に気付けないから突然襲われてお終いね」


 数がいるみたいですが、シアが大丈夫だと言うのでしたら大丈夫だと思います。

 それにしても相手はどこにいるのでしょうか?

 見渡す限りの伸び放題の雑草の中なので目視もできません。

 私はシア達とは違って離れている存在には気付けません。

 肉体強化はされていますが、そこまで万能ではないのです。

 シャーリーさんは記憶以外はシア達と変わらないので、シアほどではありませんが探知能力が上がっています。

 おまけに同じ存在に認識されない利点もあるので普通を装っていれば人と認識されます。

 代わりに演算能力と言うものが低下している為に動作のみでの魔法が使えないという欠点があるそうです。

 私としては、魔法が使えるだけすごいと思います。

 注意しながら進んでいるとシアが足を停めました?


「相手が距離を詰めてきました。こちらを狩る為の包囲が完了したようです」


 それって大丈夫なのでしょうか?

 シアが大丈夫だと言ったので安心をしていたのですが、相手の準備が調ってから襲って来るのですよね?

 そのままシアは立ち止まっていますが……なんだか不安になってきました。

 私の不安が伝わったのか、シアが私達の中央に地面を隆起させたので、そこにコレットちゃんを降ろすと剣を構えました。

 ゲイルさんも大剣を構えていますが、シアとシャーリーさんはそのままです。

 

「シャーリー。私達を中心に重力空間を展開してください」


「わかったわ。『グラビィティ・フィールド!』」


 シャーリーさんが両手を上に掲げて言葉を紡いだのですが、どうなったのでしょうか?

 私には変化が感じられないのですが、次の瞬間に空から沢山の矢が降ってきます!

 ですが、なぜか私達に近づくと勢いを無くして手前に落ちてきます?

 これは一体どうなっているのでしょうか?


「近づくもの勢いを殺してしまうとは、便利な魔法じゃな」


 先ほどシャーリーさんが唱えた言葉が魔法だったようです。

 シアは重力空間と言っていましたが、あれがその魔法のようです。

 矢の雨が止まると何かがこちらに近づいて来たと思えば、雑草の中から複数の槍が突き出てきました!

 ですが、私が急いで対処をしようとしたのですが、突きの速度が落ちています。

 自分に向かってきた槍を薙ぎ払うと槍の持ち主は爬虫類の頭の人型の魔獣です。

 一応ですが、会話が可能かもと思い話しかけてみたのですが、無視されて襲ってきます。


「エルナ。こいつらに話しかけても言葉は通じぬぞ。それよりも倒して数を減らせばこちらを脅威と判断して逃げていくはずじゃ」


 コレットちゃんが私に説明をすると範囲魔法で攻撃をしています。

 初めて見る相手ですが、コレットちゃんは読んだ書物で知っていたみたいです。

 私も会話が無理と言われたので、近づく相手から斬り倒しています。

 最初の頃は動きが鈍かったのですが、その内にシャーリーさんの魔法の効果が切れたのか素早い動きをするようになりました。

 その頃にはかなりの数を倒してしまったのか、相手が逃げ出してしまいました。


「終わったのですか?」


 私がシアに質問をすると頷きました。


「私達を脅威と判断したようです。もう少しで湿地帯を抜けますので進みたいと思います」

 

 その言葉を聞いて再びコレットちゃんを抱き抱えると進むことにしたのですが……周りを見渡せば死体がいっぱい転がっています。

 頭部は爬虫類なのですが、人型の魔獣なのでまるで殺人現場のような惨状です。

 昔の私なら、雰囲気的に落ち込みそうなのですが……慣れてしまったのかそのような気分にはなりませんでした。

 前に進めば、シアが殴り飛ばしたと思える死体が転がっています。

 体に穴が空いている死体はコレットちゃんの魔法だと思います。

 なんというか……湿地帯と言うよりも死体置き場になってしまった気がします。

 私がそんなことを考えていても他の皆さんは平然としています。

 これは私が深く考えすぎなのでしょうか?

 今までに人型の相手とは戦ったことがない弊害かもしれません。

 地下迷宮で戦ったことはあるにはあるのですが、あれは魔核をコアとしている土の塊であるゴーレムと呼ばれる魔物でした。

 湿地帯を抜けてシアの魔法で水を出して皆さんのブーツを洗い終わるとシアが話しかけてきました。


「エルナに警告しておきます。フィスの話を聞いて人型の魔獣を気にしているようですが、例え会話が可能な相手であっても躊躇ってはいけません。どんな理由があろうともエルナの安全が最優先です」


 一度は死にかけた命ですが、次があるとは限りません。

 むしろ助かったことの方が奇跡なのです。

 先ほどの戦いでも私の動きが鈍かったのを感じてフォローをしてもらっています。

 正直、私の本来の動きであれば大した相手ではありません。


「心配をかけてごめんなさい」


「エルナの考えは理解していますが、私はエルナの身が危険と判断すれば最善の行動を必ずします」


 私が頷くと再び進み始めました。私達もそれに付いて行きます。

 シアの取る最善の行動とは、相手を排除することです。

 私に対して敵対行動をする相手には容赦がありません。

 以前に私の実の兄を殺しかけたのですから、例え血の繋がりがあろうとも関係はありません。

 しばらく進んで暗くなりかけたところで、シアが足を止めました。


「手頃な地形に出ましたので、本日はここで休息を取ることにします」


 シアが立ち止まって声を掛けてきた場所は、周りに大きな岩が複数ある所です。

 普通に進むには困難なのですが、シアが進行方向の岩を排除しながら進むのです。

 目的地まで最短コースで行きたいとお願いをしたことで道を作り出しながら進んでいるのです。

 道を新たに開拓している所為なのか魔獣との遭遇率も低めです。

 そして、中でも大きな岩の前に立つと両手を前に出して、黒い塊の魔法を使い私達が入れるだけの空間を掘削していきます。

 正確には黒い突起の塊が岩場に触れると消滅していくのです。

 あれは私のお腹に穴を空けた魔法です。

 魔法名は『グラビィティ・グレイブ』と言うそうです。

 シアがソーニャさんとの戦闘で学習して習得したそうなのです。

 射程距離は短いのですが、触れた物を消滅させる魔法と聞いています。

 私もあの時は突然自分のお腹に穴が空いてしまったとしか認識できたいなかったのですが、受けた時に穴の空いた部分の私の体は消滅してしまったことになります。

 その時のことを思い出して自らの腹部に触れるとそんなことはなかったと思いたくなるのですが、左手で素肌に触れると僅かに生身の体とは違う気がします。

 私の右腕もそうなのですが、本当の自分の体と錯覚するほどに再現されていますが、攻撃を受けたりすると気付かされます。

 その他の部分は痛みを感じるのですが、復元された場所は痛みと言うものを全く感じません。

 そんなことを思い出していると私達が入れるスペースが出来上がったようです。

 中に入るとシアが頭上に光球を作り出して辺りが明かるなった所で、食事を済まして眠るまで寛ぐことにしました。

 

「それにしても重力魔法と言うのは便利な魔法じゃな。わらわにも習得が可能なのじゃろうか?」


 コレットちゃんがシアに問いかけています。

 シアは相手の能力を解析して蓄えた魔核の力を消費することで新しい魔法の習得が可能です。

 私は魔法が使えないので、普通に習得するには勉強をするのでしょうか?

 そうなのでしたら、魔法書などの書物を読まないといけないと思うのでやはり私には習得は無理だと思います。

 覚える前に眠ってしまう自信があるからです。


「コレットが習得するには適性がないので不可能です。一般的には重力魔法の適性がある存在は稀と判断します」


 魔法の習得には適性と言うものが必要みたいです。

 元々使えない私には適性など無いのだと思いますが……可能でしたら、私も使ってみたいです。


「私は使えるわよ」


 シャーリーさんがコレットちゃんの頭に手を翳して魔法名を唱えるとコレットちゃんが地面に押しつぶされています。


「こら! やめぬか!」


 コレットちゃんが怒ると直ぐに魔法を解除してくれたのですが、コレットちゃんはお怒りです。


「せっかく手加減をして、披露してあげたのに何が気に入らないのかしら?」


「わらわに対して使わなくてもいいのじゃ! こんな使いかたをするからお主の傍にはおれんのじゃ!」


 そう言うと私の背後に来ました。

 私を盾にすればシアと言う最強の守護者がいるので誰も何もできません。

 そして、シアが答えます。


「シャーリーの体は元はトウェルヴの物なので、コアの運用魔法が重力魔法を基礎としているからです」


「代わりに私が今までに使えていた魔法は一切使えないわ」


「それ以外にソリースを割いていないからです。更にそのコアの特性として常に本体に重力魔法を展開していないと基本戦闘能力は標準型と変わりません。相手が同等の能力を持っていて基本戦闘能力が優っていればシャーリーの負ける確率はかなり高くなります」


「だから、シアちゃんにまったく勝てないわ。基本能力が負けていたら、同じ系統魔法を使う相手とは相性が悪いのよね」


 シアは、相手の能力を選んで習得してしまうので、特化はしていませんが大体できるのが強みです。

 なので、シャーリーさんの得意分野の良い所だけ習得されてしまっているので恐らく勝つのは難しいと思います。


「相手の動作を鈍くさせれば、私以外には有利に戦えるはずです」


「シアちゃん以外はね。シアちゃんと立ち会った時に使っても何の効力も発揮しないのよね」


「私は同じことをして相殺しているだけです。トウェルヴが見せた魔法で使える物は習得しているだけです」


「私も他の魔法が習得したいわね」


「諦めてください。トウェルヴのコアは完成された物なので、手を加えることは出来ません。重力魔法は身辺展開のみなら魔力消費は少ないのですが、攻撃に使うと魔力消費が大きい欠点があります。更にトウェルヴのコアは登録者にも重力魔法の付与までしていますので、必要以外は魔法を使わないことを推奨します」


「俺はシャーリーの付与範囲内にいれば相手の動きの鈍化と剣に重さが追加できるので助かるな」


 話を聞いていたゲイルさんが利点をあげています。


「だから、指示があるまで使わないことにしているわ。試しに攻撃魔法を使い続けてみたら、動けなくなって倒れたと思ったら指一つ動かなくなるから大変な目に遭ったのよね……ゲイルが居なかったらもっと酷い目に遭っていたかもしれないけど、常に私の魔力を消費し続けているから基本的には攻撃魔法には使えないのよね」


「限界が知れるので一度は経験をしておいた方が良いと判断します」


 私は、シャーリーさんが魔力切れで動けなくなるところを見たことがありません。

 逆に私が動けなくなって悪戯をされたことはありましたが……もしかすると自分もされた経験があるので私にもしているのですか?。


「まあいいわ。それじゃ私は魔力回復の為に眠るから朝になるか襲われたら起こしてね」


 そう言うとシャーリーさんは横になって目を閉じると眠ってしまいました。

 最初は寝付きが早いと思ったのですが、よく観察すると寝息などはしていません。

 シア曰く「活動停止をして魔力回復の速度を上げているだけです」と教えてくれました。

 ゲイルさんも「俺も先に休むわ」と告げるとシャーリーさんの近くに腰を下ろすと壁にもたれ掛かって眠ってしまいました。

 こちらは普通に眠ってしまいましたが、ゲイルさんは基本的には魔物のなどの気配には敏感な方で直ぐに目覚めれます。

 そのお陰で昔から危険回避が出来て生き残れたと言っていました。

 今はシアがいるので、眠るというか目を閉じているだけなので即座に対応が出来ています。

 お二人が眠ったことで、私もコレットちゃんを抱き抱えて眠ることにします。

 シアは入り口側で私の隣にいます。

 目を閉じていますがシアは眠っていません。

 常に警戒をしてくれているので私は安心をして眠れます。

 目的地まであとどのくらいか聞いていませんが起きたら聞くことにしましょう。


 


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